FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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VSバニッシュブラザーズ

「ここだ。カービィ邸よりもでかいな……じゃ、ルーシィ、ホム。頼むぞ」

 

「任せて。簡単な仕事よ」

 

「ホムにお任せください」

 

 エバルー邸前に着くと、女性陣をエバルーのメイド募集として邸宅に潜入させるため、ホム君と共に茂みに隠れて様子を伺う。メイド服を着て準備万端、用意周到なルーシィ、ホムはエバルー邸の門前に立つと大きく声を上げる。

 

「すみませーん! メイドさん募集見てきましたーー!!」

 

 するとルーシィのすぐの横の地面がもこもこと盛り上がり、地面からガタイの良すぎる女性メイドが飛び出してきた。

 

「メイド募集? ご主人様ー! メイド募集広告を見てきたそうですがー!」

 

 するとメイドの出てきた穴から、男性の返事が聞こえる。ルーシィ、ホムが不思議そうに穴を見つめていると、凄まじい勢いで穴からこの屋敷の主、エバルーが飛び出してくる。

 

「ぼよよよ~ん。吾輩を呼んだかね?」

 

「エバルー様、よろしくお願いいたします」

 

 ルーシィが突然に現れたエバルーにたじろいていると、それをフォローするようにホムがスカートの裾を摘み一礼する。

 

「よろしくお願いしまぁす」

 

 ルーシィも何とか気に入られようとビジネススマイルで対応する。

 

「どれどれ……」

 

 エバルーは、ルーシィとホムを下から舐めるように、足、胸と観察する。ルーシィは鳥肌が立つほど気持ち悪がっているが、必死にエバルーの視線に耐え続けている。

 

「いらん、帰れブス」

 

 ルーシィ、ホムがエバルーにそう言われ、切り捨てられると見守る茂みの後ろで拳を悔しさに地面に叩きつけた。娘のように可愛がっているホムがブスと切り捨てられたことに激昂している。己が己でなくなりそうな怒りだ。もし依頼では無かったら今すぐエバルーの胸倉掴んでブスなどと言えなくなるくらボコボコにしているだろう。前線のルーシィも自分がブスと言われたことに納得がいかないのか食い下がる。

 

「ちょ、ちょっと」

 

「そういうことよ、帰りなさいブス共」

 

「吾輩のような偉~~~い男には美しい娘しか似合わんのだよ」

 

 そうエバルーが言うと、その背後から彼のメイド4人がまたしても地面から飛び出した。しかし、そのルックスは一般的な美的感覚をして『美しい娘』とはかけ離れたものである。エバルーの残念な美的感覚に惨敗を喫したルーシィとホムはとぼとぼと待っている茂みの方に帰ってくる。

 

「ホムちゃん、お前はブスじゃない。世界一可愛いよ。あんなことを言うやつは俺が成敗してやる。気にするな」

 

「お気遣いありがとうございます。ホムは嬉しいです」

 

「ちょっと私にもなんか言いなさいよ!」

 

「ルーシィも美人で可愛い。あのハゲがおかしいだけだ。屋敷ごと爆破してやる……」

 

「あ、ありがとう……そんなに言われると照れるわね……って爆破はだめよ!?」

 

 ルーシィは少し顔を赤らめて、こちらを見る。しかし今はそんなことは気にしていられない。ポーチから小さな爆弾を取り出し握りしめる。しかし流石にまずいと思ったルーシィに腕にしがみつかれ爆弾を取り上げられた。

 

「作戦変更だ……本を燃やすついでにあいつの悪事を暴いて刑務所に放り込んでやる……作戦Bだ」

 

「ぼんばー」

 

「あんた意外と器小さいわね」

 

「自分の娘みたいな子がブスと愚弄されて怒らない方がおかしい」

 

 怒りの拳を握りしめながら双眼鏡でエバルー邸を覗く。あまりの怒りで歯ぎしりの音を響かせてしまったためか、ルーシィは若干引いていた。

 

「屋根まで行って2階の窓から入るしか無いな」

 

「でもどうやって? 誰も空なんて飛べないわよ」

 

「大丈夫だ。これを使う」

 

 取り出したのは、古びた茶色い壺に布の蓋が施されたもの。物々しい見た目ではある、そして効果も中々に物々しいものだ。

 

「何これ」

 

「これは魔物の棲む壺。中にモンスターを封じ込めていて、蓋を取ることでモンスターを一時的に使役することが出来る。これは鳥族モンスターの壺だ。悪いがこれは作るのに時間がかかるし、珍しい素材がいるから一つしかない。デュプリケイトで複製しても2つ。ホム2人と俺達2人でわける。飛んでる間は俺にしがみついててくれ」

 

「でゅぷりけいと?」

 

「俺が使えるコピースキルだ。魔力を使ってアイテムを複製できる。錬金術で作った物以外には使用できないから限定的なもんだ。しかも複製したのは少し品質が落ちる」

 

「へぇ、じゃあ複製し続ければ、ずっと使えるじゃない」

 

「複製すればするだけ品質は落ちる。オリジナルを一つでも保有してないと俺の戦闘力はがた落ちさ。デュプリケイトにかかる魔力も馬鹿にできないしな。よし、できた」

 

 オリジナルの壺に左手を置き、右手からデュプリケイトで複製する。複製した壺をホム君に渡すとホム君はそれを地面に置いて蓋を開ける。すると中から茶色い鳥のモンスターが現れる。

 

「うーん、アードラか。そもそもの品質が高くなかったかな」

 

 ラランは自分が作成した壺の出来に首を傾げながら、オリジナルの壺を開ける。するとホム達のモンスターと姿形は全く同じだが、黒い羽に白い身体を持つモンスターが現れる。

 

「ロック鳥ならまぁ上出来か。ほら掴まれ」

 

 一足先にホム達はアードラの足を掴み、屋敷の屋根へ飛んで行った。それに続こうとルーシィに手を差し伸べる。ルーシィは、うんと頷いて手を掴んで体にしがみついてくる。

 

「うん、やはりいい乳だ」

 

「あんた、叩き落すわよ」

 

「やめろ」

 

 ロック鳥に乗ること数十秒、エバルー邸の屋根に到着すると窓を開けようとするが、もちろん鍵が掛かっているので開くことはない。

 

「まぁ流石にそこまで不用心じゃないか。ホム、液化溶剤ってあったか?」

 

「はい。マスター」

 

「よーし」

 

 ホムから瓶に入った緑の液体を受け取る。液体の溶かす力が強すぎるのか、ビンすらも溶け出している。コルクの蓋を外し、窓に液体を塗りつけると窓ガラスは流れるように溶け出し、中へ通じる穴が開いた。

 

「鍵を開けてっと」

 

「流石、錬金術士。万能ね」

 

「どうも」

 

 窓からエバルー邸に潜入に成功。入った部屋は物置きのような部屋で慎重に部屋を出て、探索を始める。廊下を静かに渡り、次の部屋に入ろうとした時だった。廊下の床がもこもこと盛り上がる。

 

「侵入者発見!!! 排除します!!」

 

 再びあのメイド五人衆が行く手を遮る。しかし、何を思ったのか、見つかったことに動揺した脳が勝手に体を動かす。気づくと既に体の大半が隠れているローブで顔まで覆いつくし、手だけを出して攻撃を仕掛けていた。

 

「風操り車!」

 

 風操り車を前方に投げると風操り車は強烈な風を発生させ、メイド五人衆を全員まとめて吹き飛ばして、気絶させた。このメイド5人衆、戦闘力自体は高くないのが救いだ。この顔で接近戦を迫られたら勝てる気がしない。

 

「はぁはぁ……危なかった。騒がしくするわけにはいかないんだ……」

 

「普通に騒がしいわよっていけない!きっと誰か来るわ、隠れましょう!」

 

「来るなら来い……」

 

「いいから隠れるの!」

 

 ルーシィに引きずられて、近くの部屋に隠れる。ホム達もその後を走って追いかける。部屋に入ると一面に本が並べられた書庫がそこには広がっていた。

 

「はっ……ここは書庫か」

 

「やっと正気に戻った」

 

「マスター、どうされますか」

 

「ここは手分けして探そう。ここまで数が多い本の中から一冊を見つけるというのはかなり大変そうだが、やるしかない。頼むぞ」

 

 ホム達と力を合わせて無言で必死に大量の本を一冊一冊、見ていくのに対し、ルーシィはこの本が凄い、作者が凄い、こんな本もある、これは絶版されているプレミア本だと、『日の出』を探すことよりもエバルー邸の本、一つ一つを見て感動していた。

 

「おい! ちゃんと探せ!」

 

「わかってるわよ~。あっこれケム・ザレオンの!」

 

「早速か……っておいそれ!? 『日の出』!!」

 

「あっーー! こんな簡単に見つかっちゃって言いわけ!?」

 

 ルーシィがたまたま手に取った金色の本は元魔導士の大作家、ルーシィも大ファンというケム・ザレオン著の『日の出』であった。早速、本を消滅させるため、ルーシィに本を貸してくれと言うとルーシィは文化遺産だとして拒否し、両腕で抱え込んだ。

 

「いや、そんなこと言ったって、これは仕事だ。燃やさなきゃいけない」

 

「じゃあ、燃やしたってことにしといて。これはあたしがもらうから」

 

 ルーシィと口論をしていると。またしても地面が盛り上がり、ぼよぼよという声が聞こえてくる。すると次の瞬間、床からエバルーが飛び出してくる。

 

「貴様らの狙いは『日の出』だったのか。泳がせておいて正解だったな。やっぱり吾輩って賢いのぉ。魔導士が必死に探している物がそんな下らん本とはな」

 

「ルーシィ! さっさと燃やすぞ」

 

「ダメ! 絶対ダメ!」

 

「ルーシィ!」

 

「じゃあ今読ませて!」

 

 ルーシィはそう言うと、その場に座り込んで『日の出』を読み始める。エバルーもその瞬間は呆気にとられたが、自分の本に手を出すのが気にくわないとして、大きな声で叫んだ。

 

「来い!バニッシュブラザーズ!」

 

 すると、書庫の隠し扉が開き、奥から二人の男が出てくる。一人は大きな鉄なべを持った中華風の髪型の男。もう一人は鼻が高く、バンダナを頭に巻いた、インディアン風の髪型の大男だ。

 

「あの紋章……マスター。彼らは傭兵ギルド、南の狼と思われます」

 

「傭兵……ボディガードか」

 

「……」

 

「「「「おい!!!」」」」

 

 バニッシュブラザーズ、エバルーと睨み合っている中、ルーシィは『日の出』と睨み合って、夢中で読んでいた。その緊張感の無い光景に敵味方関係なく、ホム達以外が一斉にツッコんだ。

 

「ルーシィ! 読むなら違うところにしろ!」

 

「うん! この本、なんだか秘密がありそうなの!」

 

「ぬっ!? 秘密!?」

 

 ルーシィはそう言い残して、その部屋から出て、違う部屋に逃げて行った。ルーシィの「秘密」という発言に目を光らせたエバルーは目を光らせ、作戦変更と言うと、バニッシュブラザーズにその場を任せ、地面に潜り、ルーシィを追いかけて行った。

 

「ホム君! ホムちゃん! ルーシィを追え!」

 

「「かしこまりました」」

 

 ホム達はラランの命令を受けるとルーシィが出て行った方に走っていく。その場に残るバニッシュブラザーズと対峙すると臨戦態勢を取る。

 

「来い、所有系魔導士」

 

「ん? 何でそう言い切れる」

 

「監視水晶にて見ていた。鳥の魔物を使役し、謎の液体で窓を溶かした。メイド共は風の魔法で撃退。色々と使えるようだが、少々器用貧乏だな」

 

「人が気にしてること言うなよ」

 

「ふん。では始めよう……とう!」

 

 鉄なべが頭上から振り下ろされ、それを躱すところから戦闘が開始される。するともう一人に肩を掴まれ、壁に向かって投げ飛ばされる。そのまま壁を突き破って廊下に飛び出したが、手すりをつかんで何とか着地する。視線を右に移すとあの、最初に見たメイドが気絶したまま横たわっているのを確認する。

 

「貴様は魔導士の弱点を知っているかね」

 

「知らん」

 

「それは肉体だ。魔法とは知力と精神力を鍛錬せねば身につかぬもの」

 

「結果、魔法を得るためには肉体の鍛錬は不足する」

 

 バニッシュブラザーズはそう話しながら、二人で猛攻を仕掛けてくる。それを紙一重で躱しながら、反撃の機を窺うが、彼らの言う通り、確かに肉体の鍛錬が不足しているのは事実であり、徐々に二人の猛攻に押され気味になっていく。

 

「くそ、アイテムが使えん……」

 

「兄ちゃん、一気に決めちまおう。合体技だ!」

 

 弟の大男が兄の鉄鍋に乗ると、兄は鉄鍋を振り上げて弟を上空に飛ばす。すると目線は自然と上空の弟の方に向いていく。それを計算し尽された動きで地にいる兄が鉄鍋で襲い掛かってきた。それに気づくことが出来ず、鉄鍋が顔に直撃する。やり返そうと兄の方に視線を向けると今度は上空にいた弟が襲い掛かって来た。それにも気づくことが出来ず、地面にめり込むように殴りつぶされてしまった。

 

「相手の視界から味方を消し、敵は必ず消し去る。これぞバニッシュブラザーズ合体技、『天地消滅殺法』! これを受けて生きてたやつは……!?」

 

「先に神秘のアンクを使っといてよかった。素の俺ならノックアウトだったな……」

 

 傷だらけになりながらも、フラフラと立ち上がる。口から出た血をローブで拭うと、バニッシュブラザーズを睨みつける。鉄で人の頭を殴るもんじゃねえ。記憶吹き飛んだらどうしてくれるつもりだ。錬金術復興の野望が全部パーになってしまうだろうが。

 

「馬鹿な!? こいつ本当に魔導士か!?」

 

「言ってなかったな。俺は魔導士じゃない……錬金術士だ。売名よろしく」

 

「れ、錬金術士!? なんだそれは!」

 

「それはお前らがこれから広めてくれ! フラム!」

 

 手にダイナマイト状のアイテムを取り出すと、バニッシュブラザーズに向かって放り投げる。すると、二人の元で爆発を起こし、一面が煙にまみれる。

 

「残念だったな、錬金術士。最後の最後で詰めが甘い。我々が炎の魔法を最も得意としていると知らなかったがが故に」

 

 煙が晴れると、二人は無傷のまま立っており、兄の鉄鍋にフラムの炎が全て吸収されていた。兄は鉄鍋を手元で回し、更に炎を大きくさせていく。

 

「これぞ対炎の魔法専用兼必殺技、『火の玉料理』 私の平鍋は炎の魔法を吸収し、威力を倍加させ、噴き出す!」

 

「妖精の丸焼きだ!」

 

「レヘルン!」

 

 雪だるまの形をした爆弾を床に叩きつけると爆弾は地面で爆発し氷の盾が出現する。『火の玉料理』で返された炎はレヘルンの氷で相殺された。蒸発した水蒸気の合間を潜り抜けて、一気にバニッシュブラザーズとの距離を詰める。

 

「なっ!?」

 

「これで終わりだ! ドナーストーン!」

 

 今度は雷マークの爆弾を二つ取り出し、兄弟それぞれの腹部に押し付ける。するとドナーストーンが爆発し兄弟の身体には電撃が走る。そのまま二人は丸焦げになって、気絶してしまった。それを見届けて一つ息をつく。

 

「アイテムを使いすぎたな。さてルーシィを探しに行くか」

 

 ルーシィを探しに走り出すと、エバルー邸に潜入した直後に撃退したゴリラメイドの目が光ったように感じた。

 

 

 




登場した錬金アイテム

魔物の棲むツボ
古びた壺に布の蓋がされただけのシンプルなもの。蓋をあければ一定時間、魔物を使役できる。今回は鳥のモンスターだったが、品質が上がれば、戦闘に役立つ強力なモンスターを使役ることも可能。

液化溶剤
瓶に入れられた緑色の液体。ほぼ全ての物質を溶かす液体で、錬金術で作り出した瓶すらも若干溶かしている。下手に使うととんでもないことになるので使用には注意が必要。

フラム
ダイナマイトの形をした典型的な爆弾。敵にぶつけるで起爆し、火属性ダメージを与える。比較的簡単に作ることが出来る。

レヘルン
雪だるま型の爆弾。フラムと同じく敵にぶつけることで起爆し、氷属性ダメージを与える。フラムより少し作るのが難しい。

ドナーストーン
雷マーク型の爆弾。フラムと同じく敵にぶつけることで起爆し、雷属性ダメージを与える。レヘルンより少し作るのが難しい。

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