エルザの招集により最強チームが結成された翌日、ナツ、グレイ、ルーシィがマグノリア駅に集合していた。いつも通りナツ、グレイは喧嘩を始めていたが、ルーシィの機転によって、何とか収めている状況だった。大量の荷物を荷車に乗せて引っ張っているエルザと共に合流した。今日はホム達は危険な仕事には連れて行きたくない為に連れてない。
「悪い、遅れた」
「すまない、待たせたか」
エルザはルーシィを見ると彼女が話題の新人であることに気づく。エルザはエバルー邸でのルーシィの活躍を少々勘違いをしているようだった。ルーシィはペコリと頭を下げると挨拶をする。
「新人のルーシィと言います。今回はラランとミラさんに頼まれて同行することになりました。よろしくお願いします」
「私はエルザだ。よろしくな。ラランとチームを組んでいるようだが、ラランをよろしく頼む」
「いえ、私がいつも助けられてばかりです」
エルザはルーシィと他愛無い話をしていたが、列車の汽笛が鳴ると、顔を引き締めて本題に入る。今回は少々危険を伴う可能性があると言うとルーシィはたじろいて、ハコベ山の時のように帰りたいと言い出す。そしてナツは今回、エルザを手伝うには条件があると言う。エルザの頼みに条件を付けるなんてとんでもないとグレイは冷や汗をかきながら自分は無償で手伝わせていただくと言いながらナツを宥める。
「帰ったら俺と戦え。あの時とは違うんだ」
ナツがそう言うと皆が驚く。曰く強者の集まる『妖精の尻尾』で最強の女性であり、ナツやグレイという上位の力を持つ男性ですら敵わないエルザに戦いを挑むというのは誰がどう見ても無謀というものである。エルザはそれを聞いて笑うとナツの条件を受け入れる。ナツは条件が了承されるやいなや、テンションが高まり頭から炎が噴き出す。そのすぐ後、列車出発の汽笛がなり、全員は急いで列車に乗り込んだ。
「ララン、ナツの乗り物酔いを止める薬とかないの?」
「そんなものはない」
列車が動き出した途端、ナツは乗り物酔いでぐったりとする。席はボックス席でナツ、エルザ、グレイが一つのボックス席に座ったので、ルーシィと通路を挟んで横のボックスに座った。酷い乗り物酔いのナツをエルザが隣の席に呼ぶと腹に一発パンチを入れて、ナツを気絶させた。エルザ自身はこれで少しは楽になると言うあたり全く悪気は無い。
「そういえばあたし、ラランとナツ以外の魔法見たことないかも。エルザさんはどんな魔法を使うんですか?」
ルーシィがそう言うので、説明する。
「エルザの魔法は綺麗だ。敵の血が舞い散り、まるで芸術のようだ」
「それって綺麗なの?」
「たいしたことはない、綺麗で言うならグレイの方が綺麗だと思うが」
エルザがそう言うと、グレイは左手の手のひらに右手の拳を当て円を描くようになぞる。すると『妖精の尻尾』のマーク型の綺麗な氷の結晶が出来上がる。ルーシィはそれを見るとはっと気づいたような顔をして、グレイは氷、ナツは炎、だから仲が悪いのかと妙に納得してしまった。それに拗ねてしまったグレイはさっさと本題に入ろうとエルザに促す。
「そうだな、話しておこう。先の仕事の帰りのことだ。オニバスの街で魔導士が集まる酒場に寄った時に少々気になるやつがいてな」
エルザは思い出す様に話し始める。エルザが寄った酒場では酒が遅いと店員に文句をつけている客がいた。その客は『せっかくララバイを見つけたのに封印が施されていて解けやしない』と大きな声で言い放った。すると客の仲間と思われる男たちが声が大きいとやけに慌てていた。するとその内の一人が『必ず三日以内にララバイの封印を解き、持って帰るからエリゴールさんに伝えておいて』と言った。
「ララバイ?」
「ララバイには封印が施されているという話を聞けば、かなり強力な魔法だと思われる」
「なるほどな。ララバイは初めて聞いたが、エリゴールなら知ってる。かなり危険な男だ」
「ラランの言うように私もエリゴールという名を思い出すまでは全く気にかけなかった」
「エリゴール、魔導士ギルド『
列車が駅に到着し、大きな荷物を持ったエルザが先頭になって四人が降車しながら話している。闇ギルドという言葉を聞いてルーシィから汗が噴き出し、また帰ろうとするとハッピーに「出た」と突っ込まれる。エルザからは彼らを見逃してしまったことを悔いる気持ちが顔に現れ、言葉にも表れる。
「不覚だった……あの時エリゴールの名を思い出しておけば……全員血祭りにあげていたものを……」
「だな、確かにその場にいた連中だけならエルザだけでどうにかなったかもしれねぇ。だがギルド一つ丸々相手となると」
グレイがそう言うと、エルザが静かに頷き、皆はエルザがチームを結成した意図を汲み取る。そしてエルザは本題中の本題、今回の目標を喋り始める。
「奴等はララバイなる魔法を入手し、何かを企んでいる。私はこの事実を看過することは出来ないと判断した。『鉄の森』に乗り込むぞ」
「面白そうだな」
グレイがエルザに賛同したところで、ルーシィが周りを見回しながらあることに気づく。
「あれ? 嘘でしょ!? ナツがいないんだけど!?」
それを聞いた途端、全員が目を丸くする。既に街の中腹まで来ていた四人は急いで駅まで戻った。駅に戻ると列車は既に次の駅に向かって出発してしまっていた。
「なんということだ! 話に夢中になる余り、ナツを列車に置いてきた。ナツは乗り物に弱いというのに! これは私の過失だ。とりあえず私を殴ってくれないか!」
エルザがルーシィにそう言うがルーシィはまぁまぁとエルザを宥める。その会話を聞いていたので状況を打破すべく駅員に近寄っていく。
「て訳で、列車止めてくれ」
「どういう訳!?」
「『妖精の尻尾』ってこんな人しかいないのかしら」
「俺はまともだぞ!」
「露出魔が何言ってんのよ」
駅員と交渉するが駅員は降り損ねた一人の為に列車を止めることは出来ないと頑なに拒んでいる。いつまでも平行線を辿っている二人の交渉が続く中で、ふと駅員の後ろにある緊急停止スイッチに気づいた。ハッピーに緊急停止スイッチを入れること命令するとすぐさまハッピーが翼で飛び、緊急停止スイッチを入れる。すると非常用ベルが駅中に鳴り響き、駅にいた人々は事故か事件かと騒ぎ始めた。列車のレールを照らすランプも全て点灯する。
「じゃ、追うぞ」
「だな」
「よし、ではこの荷物をホテルチリまで頼む」
エルザがたまたま居合わせたカップルに荷物を押し付けると、ルーシィを覗いた三人はナツを追いかけ始める。唯一まだ『妖精の尻尾』についていけないルーシィはもう滅茶苦茶だと言いながら三人の後を追った。
「おい、魔道四輪で行くぞ」
借りてきたのは魔力を動力源に動く四輪車。その速度は運転手の魔力量によって変化する。運転席に座り、魔力を流し込むための腕輪であるSEプラグを装着する。エルザ、グレイ、ルーシィ、ハッピーが後部座席に乗り込むと同時に魔道四輪に魔力を流す。すると列車も凌ぐスピードで走り始めた。それからナツの列車を追うこと数分、緊急停止スイッチによって停止した列車が見えてくる。
「見えた。あれだ!」
停止した列車に飛び込むためにグレイが魔道四輪の外に出て座席の上によじ登る。すると駅員の声が放送で流れた。それによって列車は徐々に動き始める。魔道四輪のスピードを緩めていたが、再び魔力を込めて魔道四輪を出発させる。その直後、列車の窓を割ってナツが飛び出してきた。それに気づくと急いでブレーキをかけるが、間に合わず、魔道四輪の天井にいたグレイと飛んできたナツが交錯し、二人の頭と頭がぶつかり後方へ飛んで行った。
「ナツ、無事でよかった」
そう声をかけると鬼の形相でナツが食い掛る。
「無事なもんか! 変な奴に絡まれたんだ! なんつったかな……アイなんとかバルトみてぇな……」
ナツが思い出しながら言うと、エルザのビンタがナツの頬に炸裂した。エルザはナツの遭遇した『鉄の森』は今、我々が追っている者だと言うとナツは聞いていないという。それにエルザはなぜ人の話を聞いていないんだと叱責するが、エルザがその話をしていた時はナツはエルザに腹パンチを食らい気絶している時であり、聞いているはずがない状況だった。全員がそれに気づいてはいたが要らぬことは言わないでおこうと黙っている。
エルザはすぐに列車を追おうとナツが出会った人物の特徴を聞くがナツは人物に特に特徴は無いと言う。
「ドクロっぽい笛持ってたな。三つの目があるドクロだ」
「趣味悪い奴だな」
ドクロの笛やララバイという名前、眠りや死と言った関連する言葉からルーシィはまさかと震え始める。そしてルーシィは一つの結論を導き出した。
「その笛がララバイだ!
ルーシィは自分も本でしか読んだことはないと前置きしながらもララバイについて話し始める。元々禁止されている魔法に呪殺という対象者を呪うことで死に至らしめる黒魔法がある。そしてララバイは笛の音を聴いた者を全員を呪殺する『集団呪殺魔法』であると。
それを聞いた皆は再び魔道四輪に乗り込み、『鉄の森』が乗った列車を追った。その途中にあるクヌギ駅の様子を見ると既に国の軍兵が駅を取り囲んでおり、民衆も駅周辺に大勢集まっていた。聞こえる話し声を聞くとエリゴール率いる『鉄の森』は列車を乗っ取ったようだ。
「やばそうだな。皆! 飛ばすぞ!」
魔道四輪にありったけの魔力を込める。するとナツを追う時の比にならないほどのスピードで魔道四輪が走り抜ける。運転席に乗ったナツは乗り物酔いでルーシィの介護を受け、グレイとエルザは心配してくれたのか声を掛けてきた。
「ララン! 魔力を枯渇させる気か!」
「そうだ! SEプラグが膨張してんじゃねえか!」
「俺は魔力が切れても戦える。お前らはいざという時のために魔力を溜めとくべきなんだ。この中で一番戦力にならないのは俺だ。出来ることはこのくらいしかない!」
そう言って更に魔道四輪を飛ばす。そのおかげもあって街の大きな駅である、オシバナ駅には想定よりも早く到着した。オシバナ駅では民衆の数も身動きが取れないほど大量であった。魔道四輪を降りると民衆の隙を潜り抜けながら全員が駅に入る。その後からフラフラとしながらも何とか歩いて駅に向かう。
「ララン、しっかり!」
「ルーシィ、俺のことはいいから皆と行け。相手がギルドともなるとお前の力も必要だ」
「そんなこと言ったってラランのことほっとけないわよ! いいから黙って肩貸す!」
「悪いな。今ちょうど回復アイテムも尽きてるし、攻撃アイテムもほとんどない……ホム達が完成させるまでは皆に隠しとくつもりだったんだが」
「じゃああんた……」
「ああ、今の俺はほぼ無力だ。ルーシィを守ることも出来ん」
ルーシィの助けを借りながら、何とか駅に入り、進んでいくと軍兵が既に全滅し、そこら中に倒れていた。それを見るとエルザは敵のおおよその戦力を確認する。ホームに向かって更に進むと、大きな鎌を持った『鉄の森』の魔導士エリゴールを筆頭に『鉄の森』の魔導士が大量に待ち構えていた。
「貴様らの目的はなんだ。返答次第ではただでは済まさんぞ」
エルザの質問にエリゴールは風の魔法で空を飛びながら答える。
「まだ分らんか。駅には何がある」
エリゴールは駅内の放送スピーカーを拳でこんこんと叩く。その瞬間、皆が察し、ラランがなけなしの元気で声を上げた。
「こいつ……ララバイを放送して民衆を……!!」
「ふはははは!! 駅周辺には何千ものやじ馬が集まってる。さらに音量を上げて町全体に笛の音を響かせたらどうなるかな」
「大量無差別殺人だと!?」
「これは粛清なのだ。権利を奪われた者の存在を知らずに権利を掲げ、生活を保全している愚か者どもへのな。この不公平な世界を知らずに生きるのは罪だ。よって死神が罰を与えに来た。死という名の罰をな!!」
「『鉄の森』が闇ギルドに指定されてしばらく経つ。今更こんなことをしたって権利は戻ってこないぞ」
「ここまで来たら欲しいのは権利じゃない。権力だ。権力があれば全ての過去を流し、未来を支配することだって出来る」
「そんなことはさせん。すべて俺達が阻止する」
エリゴールはそれを聞いても鼻で笑い飛ばし、笛を吹きに行くと言って風の魔法で飛び去ってしまった。そしてその場を任されたのは大量の『鉄の森』ギルドメンバー。エリゴールが去ったのを見たエルザがナツとグレイに彼を追わせる。場に残ったのはエルザ、ルーシィ、そして魔力をほぼ使い果たした自分。戦力になるのはエルザとルーシィだが、彼女と『鉄の森』メンバーの力の差はかなりあり、ルーシィが相手取るには格上の相手だ。
「ルーシィ、エルザはこの程度の奴らなら一人で十分だ。少し離れよう、そして見届けてやれ。『
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