東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
買い物を済ませ、卓袱台の前に座る。
仕入れてきたものは、食料やナイフ、灯油や縄など。
この後の作戦に使うモノは全部買ってきたつもりだ。後は上手いこと作るのみ。
「ねぇ、クワクワさん、今日は何を作るんだい?」
ガキの時によく見ていた某教育番組を思い出す。
眼鏡を掛けていたおじさんが怪物レベルの大熊と共に子どもを笑顔にするおもちゃを作る、そんな狂気の制作番組だ。
「へへッ、今日はね、爆弾を作ろうかな~って!」
空いた緑色のガラス瓶に灯油を流し込んでいく。
ざっと数にして5本程度。
量的に少ないが、手持ちだとこれぐらいが限度か。
「作りたくないよ~だ!」
魔法の森――。
里の人の話によると、幻想郷最大規模の森らしい。
更に言えば、『魔法の』と付いているだけあり、魔法に掛けられたような場所なのだという。
詳しい事は分からないが、魔力やら霊力やら何かを持っていれば大丈夫だで!と鍛冶屋のおっちゃん(商店街で慧音が仲良くしていた)は言っていた。
まぁ何やかんやで何とかなるだろう。
「ヌッ!これを見ればね、あーぼっくも作りたい!ってなるよ!」
縄は2メートル間隔に切っていく。
切った縄を縦に揃え、すぐに取り出せるように袋に詰める。
「ほんとかなぁ~?」
案外にも制作はすぐに終わった。
卓袱台の上を片付け、月のイメージ、煙草を吸おうと箱に手をかざす。
(ぬんっ!!)
引力が発生し、掌に箱が吸い寄せられる。
能力の発動にも慣れてきて、自由に引き寄せる事が出来てきた。
「本当だとも!ほら、試しに作ってみなって!」
?『一体ひとりで何をやっているんだ?』
玄関から何かを置く音、もぞもぞと黒い影が入り込んできた。
帽子を脱いだ魔理沙が奇異の眼をオレに向けている。
「子どもたちの明るい未来を作っているのさ」
魔理沙「独り言で未来を作られたガキたちはたまったもんじゃないな」
魔理沙はオレの一人芝居を異様な物と捉えているらしい。
そして卓袱台の横に並べられた道具を指差した。
魔理沙「……戦争でもするのか?」
「戦争、というよりも任務だ。ミッションインポッシブル」
はぁ、と魔理沙は出来上がった火炎瓶を持ち上げている。
魔理沙「そういえばさ、魔導書持ってきたぜ」
「君はタイミングが非常によろし!」
魔理沙は積まれた魔導書的なモノの数々を引っ張り、オレの脇に置いた。
めちゃめちゃ重い。今にも床が抜けそうだ。実際少し陥没している。
「これが、魔導書ってやつか」
魔理沙「あぁ、結構分かりやすいものを持ってきたつもりだ。初心者のお前でもすぐに使えるようになるぜ」
まるで簡単にスポーツでも始めるような錯覚に陥りそうだ。
試しに一番上にあった魔導書を開いてみる。
【 orl eoiuar gawpo slpebnvmn s^ekoxx^ slpal’skimi akpe qawsedrtgyhujikol owata yomenai murige- kagerou daisuki kekkonnsite 】
「おい読めねぇぞ」
魔理沙「そんな筈はないだろ。『勇気ある魔法使いよ、この書から元素の基本を学び、大地と和解し世界と調和せよ』って書いてあるじゃないか」
「言語の壁は厚いな」
今すぐ本を投げ出したい衝動を抑え込む。
魔法使いの基礎と言われる書のクセにそれさえも理解できないとは癪だ。
「仕方ねぇ、意地でも読解してやろうじゃないか」
魔理沙「がんばれよー、簡易的な辞書なら貸してやるぜ」
「あるならくれ」
魔理沙から辞書を貰い、早速魔法習得に移る。
――能力と魔法。
この二つを一気に会得するのは難しいだろう。
サッカーと楽器のような異なる二つの能力を同時に極めるようなものだ。
だが、能力と魔法の大元は同じ、[イメージ]。
(幻想郷に来た頃じゃあ考えられないな)
能力が使えなかったはずのオレが、今、使えるようになっている。できないことは無い、はずだ。
なるようになるのが人生である。
魔理沙「ま、一番頼りになるのは私だがな。いつでも頼ってくれよ?」
「気が向いたらパイセンの手を借りるよ」
煙草に火を付け、魔導書の海に飛び込んだ。
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