東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
魔法は様々な種類存在する。
身体能力を高めたりする魔法を[強化魔法]という。
練り上げた魔力を身体に纏い、攻撃・防御を行う魔法である。
これらは術者の個性の影響を受けず、汎用的な魔法ともいえよう。
(ダイアキュートとかリバイアとかだな)
火や水など属性的な魔法を[属性魔法]という。
これは火・水・木・土・金の五属性を指したものであり、これらにはそれぞれ得意・不得意が存在する。
(RPGとまんま一緒だな)
所謂「火は金に強く、水は火に強い」という相性である。
ざっと示すならば「火は金に強い、金は木に強い、木は土に強い、土は水に強い、水は火に強い」だ。
これを意識し、どの局面でどの属性魔法を使うか判断すべし、だという。
相性関係を図にすると、ちょうど星の形になる。
「まるで五行思想だな、魔理沙」
魔理沙「……zzz」
「…何が先輩だよ、使えねぇな」
魔理沙はとっくに眠りについていた。
昼間に活発な人ほど熟睡しやすいのだろう、涎を垂らして、子どもみたいな寝顔だ。
彼女の帽子を取り、毛布を掛ける。
「さて、続きだ」
気を取り直してページを捲る。
次は「属性魔法の得意・不得意」について。
魔法には属性がある、それにはもちろん使用者の得意・不得意が大いに関係してくる。
例えば体質的に「火」に優れていたとしよう。
そうすると、まず対極の存在である「水」の魔法は基本的に使うことができない。
また、「火」に優れていると、その両隣にある属性「金」と「木」を、「火」ほどではないが扱う事が出来る。
これは、「火」が100%だとすると、それぞれ50%程しか性能が発揮されない。
「つまり三つまで使うことが出来るってか」
自分なりの考えをノートにまとめる。
魔法の理念的分野は意外にも単純で、分かりやすい。
「ぼかァね、理念よりも実際に使いたいんだよ!!」
次のページを捲ると、オレの求めている項目が来た。
[魔法の使い方]の項目だ。
「オレ好みの項目だ……」
煙草を灰皿に押し付け、読んでみる。
――魔法はイメージだ。身体の中を循環する魔力を引き出すには、イメージによって魔力を集中させる必要がある。
――息を深く吸い込み、身体の外部に存在するエネルギーを取り込む。そして魔法を出したい所に意識を置き、魔力を溜める。
――イメージを行い、具現化する魔法を頭に思い描く。
――魔力が溜まったら、後は手から発するように、イメージで練り上げた魔力を開放させる。
「ほぉ……」
魔理沙の言っている事は正しかった。
要約すれば、確かに『バッと手を出して、ピタっと動作を止めて、意識を集中して一気にグッと開放するだけだ』である。
雑を極めればそれは個性になる、とはよく言ったものだ。
「…………」
掌を上にして手を突き出す。
そして、息を深く吸い込んで、外にあるエネルギーを吸収する。
イメージは、「火」だ。
メラメラと燃え盛る赤き炎。
熱を帯び、触れたモノを熱し燃やす。
火事、焚火、煙草の火、火、炎。
それを、手から出すイメージ――。
「……ハッ!!」
一喝。
すると、掌に熱を感じ、そこから炎が生じた。
「おぉ……」
自分には魔法が使える。
今まで出来ないと思っていたが、出来たのだ。
全身を震えさせるほどの感動に包まれる。
「…ちっちぇえなぁ…」
炎は蝋燭の火ほどの大きさだ。
しかし炎は炎。取り出した煙草を口にくわえ、息を吸う。
すると、細い白煙が上がった。
「くゥぅ~~~んめぇ~~」
達成感と煙草は何とやら。
手を握って炎を消す。
イメージを消すと魔法も消えるようだ。
「これで炎は使えるってことが分かったな」
他に何が使えるか試すことにする。
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