東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
「風の声よ!!」
風をイメージし、掌の魔力を開放する。
しかし、微風どころか、無風。
風が吹くことは無かった。
「風には向いてないということか」
あっさりと使えない魔法は認め、次を試す。
「火」の両側は「木」と「土」。
木属性が使えないということは、土属性が使える可能性が高い。
しかし、妙な想いだった。
(せっかく魔法が使えるのに、土属性がメイン……?)
少し嫌な予感がした。
恐る恐る「土」をイメージする。正確には岩石だ。
「ファーストカムズ……ロック…!!」
掌に溜めた魔力を開放する。
すると、掌からボーリングの球ほどの大きな岩石が生み出された。
「でかッ」
ズシリと重い岩、完全に完璧な何の変哲もないパーフェクトなただの岩。
しかし、デカイ。
魔法初心者にしては大きすぎるのでは――
「……!!!」
脳裏を駆け巡る嫌な予感。
――属性魔法には適応性があり、最大三つの属性までしか使えない
――自身の最適である属性の両側に位置する属性はある程度使うことができる。
「いやっ…!」
現実から逃れるべく、水のイメージをする。
流れる水、清らかな水、水、水。
水が今無いので明日汲んでくるか。
意識を集中させ、掌の魔力を開放する。
「ブリザラ!!」
しかし水は生まれない。
現実から目を背け続ける俺は、もう一度魔力を練る。
「アイスストーム!!!」
しかしながら水は生まれない。
「エターナルフォースブリザードォォォ!!!」
正直に言おう。
オレには「水」属性は適してないらしい。
つまり、もう確定である。
オレの属性は――
「……セカンドカムズ、ゥロック」
二つ目のボーリング球サイズの岩を生み出す。
漬物石になりそうな程よいサイズの岩。
そいつを隣に置き、オレは卓袱台に突っ伏した。
「土属性、だと……!!」
土属性――。
またの名を、「不遇なモブキャラが持つ打たれ強いが序盤で死んでしまう残念属性」である。
異名として、「おっさん属性」と言われている。
特徴としては「遅い」「堅い」「水に弱い」の三連打。
はっきりと言えば、あらゆる属性の中で一番ダサイ。
それが、オレにとって、最適なのだ。
いうなれば、若者が使っていると『あぁこいつは序盤で死ぬんだな』属性。
クールなキャラとして俺は水や風魔法を使いたかったのだが、臭そうな、汗びっしょりそうなどんくさい、土属性だとは。
現実は非情である。
「……」
いや、仕方がない。
風や水を求めるのは欲張りというもの。
与えられた力で生きていくしかないのだ。
「お前も、もう、おやすみ……」
ちなみに相当適性があるのか、両手で一個ずつ生み出すことが出来た。
これほど土属性に適した人間はいるのだろうか。
現実は非情である。
§
魔理沙「お前、徹夜したのか?」
「……あぁ」
魔理沙「魔法は勉強できたか?」
「……あぁ」
魔理沙「……最後にいいか?」
「……」
魔理沙「この岩の数々は、お前が生み出したのか?」
「……君のような勘のいい娘は嫌いだよ」
魔理沙は腹を抱えて笑い出した。
床には埋め尽くされんがばかりの岩の数。
もちろん全てオレが生み出した岩だ。
魔理沙「こ、こんなに土属性に適した外来人なんてそうそういないぞ!!」
「……」
魔理沙「残念だったなぁ、一番使いにくい属性になるとは」
「それ以上口を開いたら土葬するぞ」
ひー、と目じりに溜まった涙を拭きつつも、まだ笑う魔理沙。
オレは徹夜で練習しすぎたせいか、岩石を生み出すことは造作もなくなっていた。
102個目の岩を放り投げる。
魔理沙「でも、土属性なら、火と金も使えるだろう?」
「あぁ、もちろんだ」
オレは火をイメージし、魔力を集中させる。
これも徹夜で練習したおかげで、安定して発動できるようになっていた。
燃え盛る炎を描き、具現化する。
「ファイアフラワー!!!」
ボウッと掌から熱が放たれる。
魔理沙はそれを見て、また、噴き出した。
魔理沙「アッハハハ!!ちっこい!ちっこい炎だなぁ!!」
「ぐっ……」
魔理沙「まるで土属性以外認めない、と言われてるみたいだな!いや~珍しい!逸材だ!!」
メチャメチャ馬鹿にされている。
火属性は使えるはずなのだが、一向に蝋燭の火状態である。
その炎で煙草に火を付ける。
「現実は非情だ…」
魔理沙「まぁまぁ、それでも魔法が使えるんだから良いだろ?」
「そういうこった」
朝ごはんを食し、魔理沙も自分の食べた食器を流しに置いてくる。
床に岩が転がっているので、歩きづらそうだ。
魔理沙「で、この岩はどうするんだ?」
「どうするって何もないが」
魔理沙「だったらいい考えがある、とびっきりのな」
魔理沙がほくそ笑んでいる。
何を企んでいるかは分からないが、無限に生み出せるのだから別にいいだろう。
「構わん、ただし金が絡むなら収入の半分はオレにくれ」
魔理沙「あぁ、保証するぜ」
どうやら営利目的だったらしい。
漬物石として売るのだろうか。
§