東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~   作:ようひ

108 / 122
問答

MINATO                             NO PAINT

-- WITH GIRL

▭▭▭▭▭ ▭▭▭▭▭ ▭▭▭▭▭

 

 

CAUTION

82.96

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

気付いた時にはオレ達は建物の中にいた。

目の前がチカチカと輝いている。マラソンで最後全力ダッシュを決めた後に起こる現象だ。

本気で走ったのだ。足も棒のようになって、ぷるぷると震えている。

 

?「ハァ……たぶん、ここまで来れば大丈夫だと思う」

 

「ハァ……そうか、誰だか分からんが助かった」

 

?「……いいえ、人の反応がしたから気になってみてみたら――」

 

女の子が帽子を脱いだ。そこから長い金髪が零れ落ちる。

それは、後ろで束ねられていて、何処かで見た事のある髪だった。

その女の子が、驚いたようにオレの顔を見ていた。

オレも同じように、驚いたように女の子の顔を見た。

 

?「――なんでアンタがここに!?」

 

「…やっぱりな。お前だと思ったぜ、ナギ」

 

その女の子は、[御船ナギ]だった。

ナギはあの日――オレが外の世界を離れた時――と同じ格好をしていた。

所々汚れていたり少しやつれている。その容姿は彼女が幻想郷に来てから過酷な時間を過ごしていた事を物語っていた。

 

ナギ「え?待って、理解できない。どういうこと?なんでアンタがここにいるの?」

 

「その前にお前の話を聞かせてくれ」

 

目の前の現実をまだ理解できてないのか、頭を押さえながらうーんと唸るナギ。

少し待っていると、気持ちの整理を付けたように顔を上げた。

 

ナギ「…まず初めに、あの日の事を話すわ」

 

「あの日か」

 

恐らくオレ達が失踪したとされている日の事であろう。

 

ナギ「ミナトが突然いなくなって、アタシ達はアンタを探したの」

 

「悪かった、オレも突然の出来事で不可抗力だった」

 

ナギ「……まぁいいわ、そうしてたら、突然目の前に美女が現れたのよ」

 

「美女?」

 

突然の美女という単語に目を丸くする。

オレの前には[列車]が現れた。

ナギ達の前には[美女]が現れたというのか?

 

ナギ「それで、その女性が何かを言ったのよ。何を言ったのかは覚えてないんだけど……そしたら、急に足元が無くなって、落ちる感覚がして――」

 

「気付いたら、ここにいたってわけか」

 

こくり、と金髪が揺れる。

彼女達はやはり何者かの力で幻想郷に連れてこられたのだろう。

博麗大結界をも超える力、そんな力を持つ者もいるのか。

 

「凌雅とソラは?」

 

ナギ「その前にアタシの質問。アンタはなんでここに来たの?」

 

「……人里で『妖怪から上手く逃げている人間がいる』という噂を聞いてな」

 

ナギ「噂?人里って?」

 

「今度はオレの番だ、凌雅とソラは?」

 

ナギは首を振った。

どうやら別々の場所に飛ばされてしまったらしい。

ナギとは奇跡的に合流出来たが、凌雅とソラとは今、どこにいるのだろうか。

 

ナギ「で、次。アンタは今[人里]って所にいるの?」

 

「あぁ。人間しかいない小さな村で、さっきのような妖怪が入り込ない場所だ」

 

厳密には[頭の良い妖怪以外は入れない場所]だが。

やっぱりあれは妖怪なんだ、とナギ。飛竜やら熊やらは妖怪ではないと思うが。

 

「お前はどうして妖怪から身を守れたんだ?」

 

ナギ「それは、シッ――」

 

咄嗟にナギの指がオレの口に当てられる。

しばらくすると、地響きが鳴り、ぴりぴりとガラス戸が揺れた。

外ではまだあの飛竜が巡回している。

 

ナギ「……厄介ね、まだアタシ達を探してる」

 

「お前、妖怪の場所が分かるのか」

 

ナギ「そ。こっちに来てから急に分かるようになって。その、妖怪?が近くにいる事が分かるの」

 

彼女の説明によると、妙なチカラを持った者が近づくと寒気に近いものを感じるらしい。それは近づけば近づくほど大きくなる。

この魔法の森では、魔法を探知することが出来る。魔力の探知数は少ないが、魔法生物個々の持つ力が強いため、離れていても存在が感知出来るらしい。

そして、遠くの方で魔法生物が暴れている事を感知し、更にそこで人間が戦っている事も感知した。

人間は魔法生物に比べ、暖かいような感じがするのだという。

 

「だから、こうしてオレを助けに来てくれた訳か」

 

ナギ「うん。でも、まぁ……ミナトが来てくれて本当によかった」

 

というと、彼女の赤い瞳から一筋の涙がこぼれた。

幻想郷に来てから良い思いは一つもしていないだろう。

彼女はこの過酷な場所で、一人で闘っていたのだ。

 

「……遅くなって悪い」

 

ナギ「……別に、待ってない」

 

口から出た言葉は彼女の感情と相反しているようだ。

しばらく窓の外を眺める、飛竜は何処かに飛んで行った。

ナギが落ち着いた所で、現状を確認する。

 

「身体に異常はないか?」

 

「……うん」

 

「少しここで休憩するか」

 

オレはナギの手を引き、彼女を抱き寄せた。

思えば、こんな紳士のようにナギをエスコートするのは初めてかもしれない。

あんなに野蛮で高飛車なお嬢様が、捨てられた子犬のような目をしているのだから、環境は人を変えるのだなと思う。

 

 

§

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。