東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~   作:ようひ

116 / 122
釜火

野次馬は解散し、オレ達は自宅へとたどり着いた。

ナギは緊張状態から解かれ、今ではすっかり元気になっていた。

元気、と言っても、いつも通り高飛車で煩い訳だが。

 

ナギ「なんか言った?」

 

「……別に」

 

ナギ「なら、早く火起こししなさい。料理はスピードが命なのよ?」

 

「ほいさっさ」

 

火釜に薪と木炭と、今朝の[文々。新聞]を放り込み、火の魔法をぶち込む。

と言ってもロウソク程の炎を何とかして新聞に引火させ、そこから竹筒で空気を送り込む

何度も何度も息を吹きかけ、やっと大きな炎が立った。

 

「てかお前の魔法使えばよかったんじゃ?」

 

ナギ「この家爆発させちゃうけどいいの?」

 

「……次の修行は[爆発しない程度に爆発魔法を使いこなす]だな」

 

ナギ「爆発しない爆発って羽の無い扇風機みたいね」

 

キャベツを千切りしながらナギが言う。

オレは火の様子を見つめながら煙草を咥え、火釜へと煙草を寄せる。

 

「あっつっつ」

 

顔面に熱を浴びながらなんとか火を付ける。

この火の着け方はキャンプに行った時以来だ。

去年の夏のキャンプでは凌雅が火に近づきすぎて前髪を燃やし、[頭部デコランド]と囃し立てられていた思い出がある。

 

ナギ「何バカな事やってんのよ」

 

「バカってのはな、身の程を知らねぇ奴の事なんだよ」

 

ナギ「何となくだけど凌雅を思い出したわ」

 

「奇遇だな、俺もだ」

 

米の入った釜をセッティングし、サラダも作り終えた所で、台所を片付ける。

後は米が焚けるだけだ。

卓袱台にお茶を置き、俺とナギはぐったりとその場に寝転がる。

 

ナギ「んーーーはぁーー…」

 

「んーーーふぇーーー」

 

ナギ「ちょっと、マネしないでよ」

 

「ちょっと、マネしてねぇよ」

 

ナギ「……魔法の練習しようかしら」

 

「オーケイオーケイ話せばわかる」

 

ナギが寝転がりながら湯呑みを傾ける。寝ながらお茶を飲むとは器用な奴だ。

 

ナギ「ねぇ」

 

「ファッツハプン」

 

謎の返事で応じる。

 

ナギ「ミナトはさ、凌雅とソラちゃんは何処にいると思う?」

 

窓の外は既に日が落ちている。

パチパチと薪の弾ける音、部屋の中は暖かい。

 

「何処にいるかは知らんが、大体検討はつく」

 

ナギ「え?どこにいるか分かるの?」

 

「あぁ」

 

思い出すのは、ナギ達が出会った金髪の美女と、ナギのいた場所。

女性が話したと思ったらいつの間にか落ちていた、という話を聞いたが、一緒に落とされたはずの彼女達。しかし魔法の森にいたのはナギだけだった。

何故、彼女達は一緒にいないのか?

答えは簡単だ、その女性によってそれぞれ別の場所に落とされたからだ。

となると、鍵となるのはその金髪の美女。それも外の世界と幻想郷を一瞬で繋ぐ力のある人物だ。

ナギ達を元の世界に戻すには、その人物に会うしかない。

 

「おそらく、あいつらは里の外にいる。ナギが魔法の森にひとりで落とされたってことは、それぞれ別の場所に落とされた可能性が高い」

 

ナギ「なるほど。ってことはあの二人を見つけるためには」

 

「無論、里の外に出なければならないな。ナギの場合はオレの所に噂が入ったから行けたが、正直幻想郷のもっと奥に居たら簡単には見つけられないだろう」

 

だが、そこで諦めます、って訳にもいかない。

いずれにせよ、どうにかして合流し、外の世界に還す必要がある。

オレを追うようにして幻想入りした訳だ。オレに非が無いとは言い切れない。

 

ナギ「……時間をかけてゆっくり探すのね」

 

「そういうことだ。アイツらも生きてくれるよ。なんたってナギもあの環境で生きてたしな」

 

ナギ「運を天に任せるしかないわ」

 

恐らくあいつら二人も何らかの能力が開花していることだろう。

そう思っていると、バチィ、と室内に薪の破裂音が響いた。

忘れられていた火釜君が存在意義を主張している。

 

「そいやナギ、お前あのタイプで米焚いた事あるか?」

 

ナギ「……いや、炊飯器でしか焚いた事無いわ」

 

「たった今、嬉しいニュースと悲しいニュースが届いた。好きな方を選んでくれ」

 

ナギ「どうせこのタイプで炊いたことないんでしょ?」

 

「お前はオレの心が読めるのか?」

 

ナギ「まあ、少しはね」

 

なにやら意味ありげなセリフだった。

幻想郷に来てからというもの、毎日が挑戦の繰り返しだ。

それも悪くはないのだが。

 

 

§

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。