東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
野次馬は解散し、オレ達は自宅へとたどり着いた。
ナギは緊張状態から解かれ、今ではすっかり元気になっていた。
元気、と言っても、いつも通り高飛車で煩い訳だが。
ナギ「なんか言った?」
「……別に」
ナギ「なら、早く火起こししなさい。料理はスピードが命なのよ?」
「ほいさっさ」
火釜に薪と木炭と、今朝の[文々。新聞]を放り込み、火の魔法をぶち込む。
と言ってもロウソク程の炎を何とかして新聞に引火させ、そこから竹筒で空気を送り込む
何度も何度も息を吹きかけ、やっと大きな炎が立った。
「てかお前の魔法使えばよかったんじゃ?」
ナギ「この家爆発させちゃうけどいいの?」
「……次の修行は[爆発しない程度に爆発魔法を使いこなす]だな」
ナギ「爆発しない爆発って羽の無い扇風機みたいね」
キャベツを千切りしながらナギが言う。
オレは火の様子を見つめながら煙草を咥え、火釜へと煙草を寄せる。
「あっつっつ」
顔面に熱を浴びながらなんとか火を付ける。
この火の着け方はキャンプに行った時以来だ。
去年の夏のキャンプでは凌雅が火に近づきすぎて前髪を燃やし、[頭部デコランド]と囃し立てられていた思い出がある。
ナギ「何バカな事やってんのよ」
「バカってのはな、身の程を知らねぇ奴の事なんだよ」
ナギ「何となくだけど凌雅を思い出したわ」
「奇遇だな、俺もだ」
米の入った釜をセッティングし、サラダも作り終えた所で、台所を片付ける。
後は米が焚けるだけだ。
卓袱台にお茶を置き、俺とナギはぐったりとその場に寝転がる。
ナギ「んーーーはぁーー…」
「んーーーふぇーーー」
ナギ「ちょっと、マネしないでよ」
「ちょっと、マネしてねぇよ」
ナギ「……魔法の練習しようかしら」
「オーケイオーケイ話せばわかる」
ナギが寝転がりながら湯呑みを傾ける。寝ながらお茶を飲むとは器用な奴だ。
ナギ「ねぇ」
「ファッツハプン」
謎の返事で応じる。
ナギ「ミナトはさ、凌雅とソラちゃんは何処にいると思う?」
窓の外は既に日が落ちている。
パチパチと薪の弾ける音、部屋の中は暖かい。
「何処にいるかは知らんが、大体検討はつく」
ナギ「え?どこにいるか分かるの?」
「あぁ」
思い出すのは、ナギ達が出会った金髪の美女と、ナギのいた場所。
女性が話したと思ったらいつの間にか落ちていた、という話を聞いたが、一緒に落とされたはずの彼女達。しかし魔法の森にいたのはナギだけだった。
何故、彼女達は一緒にいないのか?
答えは簡単だ、その女性によってそれぞれ別の場所に落とされたからだ。
となると、鍵となるのはその金髪の美女。それも外の世界と幻想郷を一瞬で繋ぐ力のある人物だ。
ナギ達を元の世界に戻すには、その人物に会うしかない。
「おそらく、あいつらは里の外にいる。ナギが魔法の森にひとりで落とされたってことは、それぞれ別の場所に落とされた可能性が高い」
ナギ「なるほど。ってことはあの二人を見つけるためには」
「無論、里の外に出なければならないな。ナギの場合はオレの所に噂が入ったから行けたが、正直幻想郷のもっと奥に居たら簡単には見つけられないだろう」
だが、そこで諦めます、って訳にもいかない。
いずれにせよ、どうにかして合流し、外の世界に還す必要がある。
オレを追うようにして幻想入りした訳だ。オレに非が無いとは言い切れない。
ナギ「……時間をかけてゆっくり探すのね」
「そういうことだ。アイツらも生きてくれるよ。なんたってナギもあの環境で生きてたしな」
ナギ「運を天に任せるしかないわ」
恐らくあいつら二人も何らかの能力が開花していることだろう。
そう思っていると、バチィ、と室内に薪の破裂音が響いた。
忘れられていた火釜君が存在意義を主張している。
「そいやナギ、お前あのタイプで米焚いた事あるか?」
ナギ「……いや、炊飯器でしか焚いた事無いわ」
「たった今、嬉しいニュースと悲しいニュースが届いた。好きな方を選んでくれ」
ナギ「どうせこのタイプで炊いたことないんでしょ?」
「お前はオレの心が読めるのか?」
ナギ「まあ、少しはね」
なにやら意味ありげなセリフだった。
幻想郷に来てからというもの、毎日が挑戦の繰り返しだ。
それも悪くはないのだが。
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