東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
ドロワーズ「危なかったなお前、もう少しで喰われてたぜ?」
ドロワーズがオレに話しかけてくる。
ふわふわと浮いている身体、眼下には緑と黒の森が広がっている。
オレは今、ドロワーズが乗る箒で飛んでいた。
(すげぇ!ニンバス2000だ!)
恐らく魔法の箒という奴なのだろう。
初めて乗った感覚としては、風を全身に浴び、風景も綺麗だし、首も締まって……
「く、苦しい」
ドロワーズ「あぁ、だろうな。妖怪に喰われちゃあ誰だって苦しいぜ」
このドロワーズ、分かってないぞ!
オレの首元に掛かる重力+αが、更に頸動脈を優しく締めていく。
「く、首が…」
ドロワーズ「奴らは人間の首物が好きでさ、柔らかくて美味いら」
「首が…締まってんだよ!!」
ドロワーズ「え?」
首元の拘束が緩む。
同時に、オレの身体が重力に従って下へ落ちていく。
「え?」
オイオイマジかよ。
こんなお約束の展開ってあるか?
「ああああああ!!!」
ドロワーズ「っと、悪い悪い」
すかさずドロワーズがオレを箒に乗せた。
その時に初めて、ドロワーズの顔を確認できた。
黒と白を織り交ぜた服に身を包み、黒のとんがった帽子から金色に光る髪が流れている。
多分、恐らく、いや絶対と言っていいほどに。
(魔女っ娘ってやつか!!)
巫女といい、魔女っ娘といい、幻想郷はコスプレが流行っているのか?
でも霊夢は本気で巫女をやってたし、この魔女っ娘もたぶん本気で魔女っ娘をやっているのだろう。
魔法の箒もしっかりと操縦できていて、安定している。
ドロワーズ「で、どうして森の中で妖怪に襲われていたんだ?」
「妖怪?」
ドロワーズ「あぁ…その反応から、本当に何も知らないみたいだな」
「さっき博麗の巫女から幻想郷について聞いたんだけどな…そうか、あの化け物たちは妖怪っていうのか」
現実世界でも妖怪という言葉はある。
それは古典文学や物語に於ける話であり、実在する存在ではない。
幻想郷では、本当に化け物として妖怪が存在するようだ。
「何やら物騒な世界だぜ」
ドロワーズ「そんなこと言うなよ、住めば都ってよく言ったもんだぜ?」
「アンタは妖怪を退治するために魔法を?」
魔理沙「アンタじゃない、霧雨魔理沙だ!」
ドロワーズ――もとい、霧雨魔理沙は帽子をクイッと上げて、そう言った。
「…魔理沙は何故パンツじゃなくてドロワーズなんだ?」
魔理沙「そりゃあもちろん、魔法が好きだからだ!」
見事にスルーされる。
魔理沙「好きなモノをどんどん追究していったら、いつの間にか妖怪を退治できる程になってたぜ」
「へぇ…最初に使った魔法は?」
魔理沙「最初は…確か、指先の爪を赤く光らせる魔法だったな」
それは魔法と言えるのだろうか?
光ればいいってもんじゃあないだろう。
魔理沙「でも、そこから魔導書とか読んだり自分で実験とかしてたら、こんな魔法が打てるようになったんだ!」
魔理沙が帽子から六角形の物体を取り出す。
それを握ると、中心の赤い珠が淡く輝き始めた。
その光は次第に強くなっていき、それと同時に魔理沙も集中力を高めていく。
魔理沙「目開けて見とけよ!恋符[マスタースパーク]!!」
ため込んだ魔力を、一気に開放すると。
六角形から飛び出した虹色の太い線――魔力の塊が、青空へ向かって吸い込まれていく。
(凄い威力だ…!!)
箒に伝わる衝撃からも、伝わっていく。
日本の兵器が生み出せるエネルギーでは無いだろう。
魔法とは科学さえも乗り越えるのか?
魔理沙「ま、こんなもんだぜ!!」
得意げに(ない)胸を張る魔理沙。
オレにわざわざ見せるとは、よっぽど魔法が好きなのだろう。
空を仰ぐと、先ほど光線を放った先の雲が霧散していた。
「…すげぇ」
魔理沙「だろ?まぁ霧雨魔理沙様に掛かればこんなもんよ」
「…頼みがある。魔法を、教えてくれないか?」
外の人間が使えるか分からないが、魔理沙も努力して会得したという。
この魔法が使えるなら、妖怪に出くわした時に使えるのでは?
しかし魔理沙は、首を横に振った。
魔理沙「だめだ、私は弟子を取らない主義なんでな」
「…そこを、何とか、先生!!」
魔理沙「…そうだな、良いぜ!」
「良いのかよ!」
魔理沙「ただし条件がある、私よりも上手くなるな!」
「…………あぁ」
多分負けず嫌いなのだろう。
いかにも魔法使いっぽい性格である。
そんな話をしている内に、オレたちは先ほどの博麗神社に辿り着いた。
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