東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
「で…話ってのは?」
ほうじ茶を啜り、霊夢に聞く。
霊夢は、卓袱台の上に数種類の紙を置いた。
その中には、オレが持っているスペルカードのような硬い紙もある。
霊夢「…アンタ、何か私に隠していることない?」
「隠していること、とは?」
霊夢「さっき魔理沙の言っていた[秘め事]よ、アンタが森で妖怪を退治したって話じゃない」
正確には「妖怪を退治したらしい」だが。
オレは首を傾げるような素振りを見せる。
「それがどうか――」
霊夢「[能力]、持っているんでしょ?」
「[能力]?」
霊夢「アンタはスペルカードを発動した。そのカードはね、持ち主の[能力]に関連した術が発動するようになっているのよ」
というと、霊夢は卓袱台のカードを握った。
そしてその絵柄をオレに見せるようにして提示してくる。
絵柄は、青色の模様が波紋状に広がっている絵。
「それは?」
霊夢「――[靈撃]」
パリン、と音がしたと思うと。
前方から、衝撃波が飛んできた。
「ふはぁ!?」
風圧にも似た圧力に押し飛ばされ、後ろの襖に激突する。
「い、ってぇ……」
霊夢「これは誰でも持っているスペルカード。持ち主の霊力に応じたチカラが出るわ。身の危険を感じたらまずこれね」
霊夢の身の回りは卓袱台を含め、ぐちゃぐちゃになっている。
わざわざオレにスペルカードを見せたのだろうが…ここまでする必要はあったのか?
「…それを見せたことと[秘め事]ってのはどういう関係が?」
襖を嵌めなおし、卓袱台を所定の位置に戻す。
霊夢は先ほどよりも真剣で、静かな顔をしていた。
霊夢「スペルカードを使えるってことは、その人が[能力]を持っているってことを意味している」
「はぁ」
霊夢「森でスペルカードを使ったのよね?」
「使った覚えはないけどな」
霊夢「使ったのよね?」
「……使いました」
まるで取り締まりを受けているような気分だ。
よろしい、と頷く霊夢。
霊夢「だから、理論上アンタは[能力]が使えるはずなのよ。それで、私は[能力]を隠しているんじゃないかって思うのよね」
「…残念だが、オレは火を出したり消えたり、空を飛んだりできないぞ」
霊夢「……本当に?」
「ホントホント」
霊夢「神に誓う?」
「誓うから[靈撃]を構えないでくれ」
スペルカードに手を添えた霊夢は、オレを睨み続けている。
もちろん、能力とか言われたら忘れていた中学二年生の頃の記憶がよみがえってきそうだが、そんなモノを持っているほど人間離れしていない。
外の世界でも能力を持っている人もいるが、そういった稀有な人間は研究所送りか、国家の戦力として国に従事することになる、と話で聞いたことがある。
霊夢「……急がば高火、ね」
「うん?」
霊夢「なんでも。今日の話はこれでおしまい」
卓袱台に出した紙を懐に戻し(さらしは素晴らしい)、部屋を後にする。
とりあえず、事情聴取は終わりらしい。
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