東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~   作:ようひ

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朝食

「……ん」

 

美味い飯を食って、煙草も吸って、ふかふかの布団でよく眠れたのだが…変な夢を見た。

夢の内容は、結構な悪夢だ。

 

「[靈撃]を100回ぶっ放してくるとかアホじゃねえか…」

 

鬼のような霊夢(まさに鬼巫女)であった。

とにかく夢で良かった。

 

布団を畳み、境内側の襖を開けて太陽光を迎え入れる。

 

「たいよおおおおおおおおお!!!」

 

朝の10秒チャージ完了。

そのまま居間へ向かう。

 

霊夢「あら、おはよう」

 

廊下でばったり霊夢に遭遇。

彼女も起きたばっかりなのだろう、髪の毛がクルンとねこっけになっている。

 

「ん、おは――」

 

と言いかけてオレは気付く。

彼女が右手に持っている物。それは、青い衝撃波の模様が描かれた[靈撃]。

 

「待ってくれ話せばわかる右手を下ろしてえーりんえーりん」

 

霊夢「どうしたの?」

 

「頼むから、靈撃はもうやめてくれ」

 

霊夢「…よくわからないけど、昨日渡しそびれてたから、はい」

 

といって渡された[靈撃]。

なんだ?トラウマを持つことで精神的に強くなれ、ということか?

第一、発動するのか?このスペルカードは。

 

(人はトラウマというものを持ってはいないってアドラーも言ってたしな)

 

[靈撃]を受け取る。

あんな衝撃がこんな紙切れ一枚で発動するのか。

 

霊夢「護身用に、持っておきなさい」

 

「…発動、出来るんです?」

 

霊夢「それはミナト次第ね」

 

「うわーお」

 

なんだか意味ありげな言葉だ。

その後、霊夢と二人っきりでの朝ごはん。

ご飯にお味噌汁、漬物に卵焼き。

the素朴にしてtheベストな飯を一気に平らげる。

 

「今日のご飯もエクセレンティブだったぜ」

 

霊夢「それはどうも」

 

ご飯を食べ終え、霊夢が食器を片付ける。

こうしていると霊夢と二人屋根の下で暮らしているようだ…あれ、オレ、今…生きてる!?

 

「…外来人明利に尽きるってもんだ」

 

外にいた頃と比べて幻想郷への偏見が払拭されていく。

実際には「妖怪もいるけど優しい人間もいるよ!」ぐらいの感覚だが。

 

霊夢「人里に向かうんでしょ?」

 

台所から戻ってきた善人…もとい、霊夢が温かいお茶を淹れてくれる。

 

「サンキュ、まぁな」

 

霊夢「今度こそ妖怪に気を付けなさい。ミナトのスペルカードが発動しないかもしれないし」

 

「霊夢からもらった[靈撃]があるじゃあないか」

 

霊夢「それはあくまで猫だましであって、時間稼ぎにしかならない。ま、発動できるかどうかの問題だけど」

 

「ウイッス」

 

霊夢のありがたい忠告を貰ったことで、朝早いが身支度をしよう。

一旦寝室に戻り、持ち物を確認する。

 

(携帯電話、煙草、ジッポライター、家の鍵、乗車券、スペルカード二枚と…)

 

手持ちは少ない。

逆にあの場でこれ以上の物を持ってくる暇がなかったので、割り切るしかない。

 

(…乗車券とスペルカード、か)

 

謎の多い紙きれだ。

この幻想郷は紙という物に何か込められているのだろうか?

と、どうでもいい考察をしながら持ち物を全てポケットに詰め込む。

 

霊夢「ミナト」

 

襖が開かれる。

霊夢が神妙な顔をして立っていた。

 

「どした?」

 

霊夢「……」

 

霊夢は何も言わず、上目遣いでこっちを見ている。

あれ、これ、ルート入ってんのか?ツン霊夢がデレ霊夢になっているようにみえるってことはこれはもしかして――

という甘い妄想はさておき。

 

霊夢「…その、困ったら、また来ていいから」

 

「え?」

 

やっぱり入ってるじゃないか!

キタコレマジかいつフラグ立てたんだあっもしかしてオレが気絶している時かいやそうだそうに違いない寝ているオレの寝顔見ながら何かしら考えたんだろう――

そんな想像はほどほどにして。

 

「…さんきゅ」

 

そういいながらオレは縁側に置いといた靴を履き、境内に降り立つ。

昨日よりも強い春の香りが、鼻孔を満たす。

 

霊夢「…それと!」

 

後ろから霊夢の声。

何だかんだ言いつつオレの事を心配してくれているようで。

まるで我が子を思う母親のような、そんな思いがあるような、気がする。

 

「なんだよ、まだなんかあるのか?」

 

春の風が、霊夢の亜麻色のおさげをゆらゆらと揺らしている。

太陽の日差しが霊夢の表情を照らしている。

霊夢は少し笑った。

 

霊夢「…父親、ちゃんと見つけなさいよ」

 

ぽん、と背中を押されるように、オレは境内に降りる。

 

「…言われなくても」

 

目の前に広がる光景は、まるで山奥に来たかのような光景だ。

そんな自然に囲まれた幻想郷。

ワクワクしないはずがない。

 

「じゃ、またな」

 

霊夢に別れを告げ、博麗神社を後にする。

散っていく桜、その匂いは、オレの心に沁みついていた。

 

 

§

 

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