東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
「おっちゃん、煙草くれ」
『あいよ』
古びた煙草屋から煙草を購入する。
お金はどうやら外の世界と変わらないようだ。
ただ、お釣りは見たことの無い絵柄(千円札が聖徳太子)であった。
「…ま、煙草変えたからよしとするか」
箱をポケットに突っ込み、歩いて行くと、大広場に着く。
どうやらここは里の中心部のようで、真ん中には巨大な掲示板が設えてある。
人だかりも商店街に負けず、老若男女労働者婦人子ども問わず入り乱れていた。
「まるで人の宝石箱だな」
?「お宝がなんだって?」
「…………」
ひとまずオレは空気と同化し、ここにいない存在となる。
?「無視は良くないぜ?兎を殺すことになる」
「兎はお前か?魔理沙」
魔理沙「まぁな、暇を持て余している可愛い兎だぜ」
「……小娘にダイレクトアターックッ!」
魔理沙「ふぎゃっ!?」
可愛い、とか自分で言っちゃう系女子の額に威力1割のデコピンをお見舞いする。
スパコーンと段ボールをボールペンで叩いた時のような音がした。
「アッハッハッハッ!!粉砕!玉砕!大喝采!」
まるで滅びの炸裂疾風弾が打てそうな気分だ。
魔理沙「てて…そいや、昨日はお楽しみだったな」
「昨日?……あぁ」
患部をさすりながら、恐らく昨日の[秘め事]について聞いてくる魔理沙。
ニヤニヤしながらオレへ肉薄し、肘でつついてくる。
魔理沙「霊夢はどうだった?外来人からしてもイイ女だろ?」
「お前は親戚のおっさんか」
魔理沙「私から見ても霊夢は良いぜ、外見も中身もな」
「そうですかい」
確かに霊夢は可愛い、それは認める。
が、鬼嫁(鬼巫女)はごめんである。
脳内悪魔が『やっぱり襲った方がよかったじゃねぇか』とひとりごとを言う。完全無視。
「そんなことより、魔理沙よ」
魔理沙「なんだ?霊夢のスリーサイズでも聞きたいのか?」
それは猛烈に得たい情報だが、オレはそこをグッと堪える紳士さ。
「……いくらだ?」
魔理沙「今日の夕飯、おごれ」
「かしこまッ!!!」
***少年少女秘密共有中***
「ファ!?うせやろ!?」
魔理沙「これがほんとだって!私と裸の付き合いしたから間違いなしだ!」
やんごとなきみやびな霊夢のスリーサイズに驚愕する。
意外にも霊夢は着太りするタイプらしい。
ゆったりとした巫女服はどうしても身体のラインが出にくいもので――
「ってそんなことを聞きたいんじゃない!」
魔理沙「興味津々で聞いていたじゃないか」
それは事実だが同時にまた偶然の事故によって生まれた情報ということにしておく。
「魔理沙、お前はこの里の事は詳しいんだな?」
魔理沙「あ?まぁ、そりゃあ」
「この里の中をよく知っている人、または人の顔を覚えるくらいの記憶力を持った人に会いたい」
闇雲に情報を集めては不効率だ。
こういった人間の集まる場所には不思議とリーダーなる者が生まれる。
その人間は自然と一番偉くて、一番知恵のある者になる。
オレが親父の尻尾を掴むためには、その人の協力が無ければならない、と考えた。
魔理沙は腕をポンと叩くと、
魔理沙「それなら、良い所知ってるぜ!」
「いや、良い所とかではなくてただ単純に偉い人のところにだな」
魔理沙「大丈夫だ!人里を知り尽くしたこの私にかかれば、お茶の子彩々意気揚々だぜ!」
「……」
これは、まずい拾い物をしたのではないか?
この魔法使いは魔法という記号を愛したがために、言葉が通じなくなっているではないか…。
魔理沙「どうした?早く行かないとなくなるぜ?」
「一体何が無くなるんだ?」
その人か?人が無くなるのか?
よくわからないまま、不安な気持ちで魔理沙の後を追う。
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