東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
あれは妖怪だったのか?
――いや、人に危害を加える種類ではなかった。
じゃあ人?
――人があの時間をうろつかないってさ。
そしたら、オレと同じ外来人?
――貫禄が違うだろ、オレの目は節穴か。
(訳が分からん…)
銀髪が居なくなって、ベンチで横になりながら考える。
月は真上に昇っていて、周りの雲を照らしている。
(てか炎だぞ?アレ、熱くないのか?)
恐らくあれが霊夢の言う[能力]なのだろう。
炎を自在に出したり操ったりする能力とか、そういった感じの。
そうなると妖怪と思えるが…霊夢も魔理沙も[能力]を持った人間だ。
(訳が分からんばい)
頭がこんがらがってきた。
とりあえず周りを見ても人影のようなものは見えないので、自身の無事を祈りつつ新聞を被る。
今日はここがオレの寝床だ。天然由来の超自然的な宿。つまり野宿なのだが。
(明日はいい宿を見つけられるといいんだが)
最悪困ったら霊夢の元へ――
(いや、それは男としてダメだ)
かろうじでプライドが勝る。
憧れだけじゃ本当は何も見えないよって思う。
だが諦めだけは夢から覚めても言わない。
(…何とか明日は今日以上の宿を見つけよう)
ポケットから携帯を取り出す。
低電力&機内モードなので充電の節約はぬかりない。
午前11時12分。どうやら外の時間とは正反対らしい。
日本と米国みたいなものだ。
(…とりあえず)
頭の中で明日の事を整理する。
明日の行動としては、広場で聞き込み調査を行う。
手がかりが無ければそのまま宿を見つける旅に出る。
もし気力があれば里の外―――はまだ厳しいか。
霊夢の言う[能力]とやらを自在に使えるようになれば、視野に入れてもいいだろう。今はまだ里の中に限定した方がよさそうだ。
(そのぐらいだな)
新聞紙を顔に乗せる。
まるで電球に照らされているようだ。本当に月が明るくて、文字が読めるほどだ。
【妖怪の森に新たな妖怪が現れた。完全な姿は確認されていないが、大きな翼と鋭い爪を持ち、全長20メートルにも及ぶ巨大な身体を持っていて――】
目で追っていくうちに、睡魔がやってくる。
抗う術はない、ゆっくりと眠りに落ちていく。
(…クリームソーダ飲みてぇ)
そんなことを思いながら。
いの1ばんに言うことは
命は2個も無いもんさ
3つ数えりゃ後ろに何かが
4るは目を瞑らない
5人はペロリと食べられて
6でもない死体が転がった
7時に外を出歩くな
8つ裂き人形の出来上がり
9るしむことを忘れたならば
里の関門10り越せ
(人里に伝わる『数え歌』より)
§