東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~   作:ようひ

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序章 Ⅴ

凌雅「どうだ?ミナト」

 

「…お手上げだ」

 

パソコンのウィンドウを閉じ、背伸びをする。

緑の丘が描かれたデスクトップを眺めながら、煙草を吸う凌雅。

 

凌雅「まさか本気で調べてるとはな、冗談だと思ってたぜ」

 

「ほっとけ、あと部屋では煙草吸うな」

 

凌雅「いいだろう?お前女いないし」

 

「いなかったとしても部屋で吸う奴は死んだ方がましだぞ?」

 

凌雅「まぁまぁ、いつか死ぬから問題ない」

 

にしし、と白い歯を見せる凌雅。

コイツも女はいないのだが、何故かいつも余裕そうである。

そのまま出来た女に殺されてしまえ。

 

凌雅「で、[げんそうきょー]について得られた情報は?」

 

「ほぼない。検索しても出てこないし、過去ログも漁ったが手ごたえなしだ」

 

凌雅「ネットにも書かれていない都市伝説…それを信じるのかい?ミナトくん」

 

「……」

 

今や世界中の情報を共有できる時代。

ネットを使えば一般人でもいろんな情報を得ることが出来る。

しかしそんな社会でも、出てこない情報はもちろんあるし、ましてや幼い女の子の言った事など上がっている訳がない。

 

凌雅「とりあえず、今すぐ行くってのは無理そうだな」

 

「だな」

 

凌雅「ま、そんなことよりゲームしようぜ!!このレトロゲー結構練習したんだぞ」

 

「おうよ、すぐさま即死コン決めてやる――」

 

と言ったところで、こたつの上に置いてあった携帯が震えた。

とても激しいバイブレーションが、部屋に響く。

 

「電話」

 

珍しい。

オレに電話が来るとしたらバイト先ぐらいだ。

今日はオフだったはずだが、間違えたのだろうか?

 

(だるいな)

 

一息置いて、通話ボタンを押した。

 

「はい、一之瀬です」

 

?『もしもし?ミナト?』

 

声の主は女性だった。

あれ、と画面を見ると、表示は[御船 ナギ]。

どうやらバイト先ではなかったらしい、が。

 

(…マジか)

 

御船 ナギ。

この女は、あまり言いたくはないが、爆弾であった。

 

「すまん今日は忙――」

 

ナギ『今日夜暇でしょ?いやだよね?今夜正午ジャストに学校の裏山にある神社集合!以上!ばいちゃ』

 

「おいふざ」

 

フッ、と電話が切れる。

通話時間、4秒。どんな話し方をすればこんな最短記録をたたき出せるんだ?

 

(…学校裏の神社だって?しかも深夜かよ)

 

その4秒で内容をすべて理解したオレも彼女に毒されているのだろう。

 

凌雅「誰だ?急な呼び出し喰らったみたいだけど」

 

「凌雅、逃げッ――」

 

――ブブブ。

今度は凌雅の携帯が震えた。

 

凌雅「なんだぁ?今日はバイト深夜からだからまだなハズ…あ、もしかして早く来れないか的な奴か…まぁ俺は大丈夫なん」

 

ナギ『早く来い殺すぞ?』

 

凌雅「スイマセン今すぐ行きますんで少し待っててください」

 

表情を一変させた凌雅。

彼の首にかかる漆黒に濡れた死神の鎌が見えた。

 

凌雅「……逝ってこようぜ」

 

「…凌雅、その眼から零れてるのは?」

 

凌雅「さぁな…もう、忘れちまったよ…」

 

彼は深夜勤のバイトがある。

しかも明日の朝は一限必修(出席リーチもしくはアウト)もある。

現実は彼に対し非情であった。

 

§

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