東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
凌雅「どうだ?ミナト」
「…お手上げだ」
パソコンのウィンドウを閉じ、背伸びをする。
緑の丘が描かれたデスクトップを眺めながら、煙草を吸う凌雅。
凌雅「まさか本気で調べてるとはな、冗談だと思ってたぜ」
「ほっとけ、あと部屋では煙草吸うな」
凌雅「いいだろう?お前女いないし」
「いなかったとしても部屋で吸う奴は死んだ方がましだぞ?」
凌雅「まぁまぁ、いつか死ぬから問題ない」
にしし、と白い歯を見せる凌雅。
コイツも女はいないのだが、何故かいつも余裕そうである。
そのまま出来た女に殺されてしまえ。
凌雅「で、[げんそうきょー]について得られた情報は?」
「ほぼない。検索しても出てこないし、過去ログも漁ったが手ごたえなしだ」
凌雅「ネットにも書かれていない都市伝説…それを信じるのかい?ミナトくん」
「……」
今や世界中の情報を共有できる時代。
ネットを使えば一般人でもいろんな情報を得ることが出来る。
しかしそんな社会でも、出てこない情報はもちろんあるし、ましてや幼い女の子の言った事など上がっている訳がない。
凌雅「とりあえず、今すぐ行くってのは無理そうだな」
「だな」
凌雅「ま、そんなことよりゲームしようぜ!!このレトロゲー結構練習したんだぞ」
「おうよ、すぐさま即死コン決めてやる――」
と言ったところで、こたつの上に置いてあった携帯が震えた。
とても激しいバイブレーションが、部屋に響く。
「電話」
珍しい。
オレに電話が来るとしたらバイト先ぐらいだ。
今日はオフだったはずだが、間違えたのだろうか?
(だるいな)
一息置いて、通話ボタンを押した。
「はい、一之瀬です」
?『もしもし?ミナト?』
声の主は女性だった。
あれ、と画面を見ると、表示は[御船 ナギ]。
どうやらバイト先ではなかったらしい、が。
(…マジか)
御船 ナギ。
この女は、あまり言いたくはないが、爆弾であった。
「すまん今日は忙――」
ナギ『今日夜暇でしょ?いやだよね?今夜正午ジャストに学校の裏山にある神社集合!以上!ばいちゃ』
「おいふざ」
フッ、と電話が切れる。
通話時間、4秒。どんな話し方をすればこんな最短記録をたたき出せるんだ?
(…学校裏の神社だって?しかも深夜かよ)
その4秒で内容をすべて理解したオレも彼女に毒されているのだろう。
凌雅「誰だ?急な呼び出し喰らったみたいだけど」
「凌雅、逃げッ――」
――ブブブ。
今度は凌雅の携帯が震えた。
凌雅「なんだぁ?今日はバイト深夜からだからまだなハズ…あ、もしかして早く来れないか的な奴か…まぁ俺は大丈夫なん」
ナギ『早く来い殺すぞ?』
凌雅「スイマセン今すぐ行きますんで少し待っててください」
表情を一変させた凌雅。
彼の首にかかる漆黒に濡れた死神の鎌が見えた。
凌雅「……逝ってこようぜ」
「…凌雅、その眼から零れてるのは?」
凌雅「さぁな…もう、忘れちまったよ…」
彼は深夜勤のバイトがある。
しかも明日の朝は一限必修(出席リーチもしくはアウト)もある。
現実は彼に対し非情であった。
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