東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~   作:ようひ

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和服

射命丸文との取材による会談を終え、文は帰っていった。

帰る際に背中から黒い翼が生え、猛烈なスピードで飛び去って行った事にはもう驚かない。

消えた後の風圧が強すぎて、入れなおした玄関の扉が倒されていったが、めげないしょげない。

 

(幻想郷の女の子ってのは、天真爛漫な人が多いんだろうなぁ)

 

それは土地柄もあるのだろう。

扉を直し、オレは台所で煙草に火を付ける。

煙をぼんやりと見つめながら、先ほどの取材を思いだす。

自分的にとても色濃いものになり、特に自分の言いたいことは言えたことがプラスだった。

 

(何より親父の事を捜している、って言えたな)

 

そこはかとなく記事に乗せてもらえばよし。

これで反響があればいいのだが。

 

(あったとしても、果たして親父に辿り着けるかな)

 

さて、今日も正午過ぎに寺子屋にて、子どもとの格闘が待っている。

オレに慣れてきたのか、鉛筆を針のようにしてオレに刺してくる子ども(ミント)や、折り紙を折って遊ぶ子ども(テツ)、寝だす子ども(ベン)などそれぞれの個性が見えてきた。

その対策を練ったり、予習をしたいがため、早めに向かうことにする。

 

「自由はいいぞ、時代は個性を売れる奴が勝つからな」

 

煙草の火を灰皿で消し、歯磨きをする。

嬉しい気分の時は吸いたくなる。が、これから会うのは子どもたちだ。煙草対策はしっかりとすべきである。外の世界では加熱式煙草が流行っていたが、買っておけばよかった。

しかし、教育現場で煙草の存在を気付かれてはいけない。子どもとはそういう生き物だ。彼らが初めて正しく使える時まで、大人が必死に隠すのだ。合ってる間違っている以前の問題である。

 

「さぁて、今日も一丁やりますか」

 

髪の毛を整え、慧音がくれた和服に身を包む。

紺を基調とした薄地の和服で、少し肌触りは硬いが、慧音のプレゼントだ、喜んで着ることにする。

初めて着た和服は何とも言えず、本当に服を着ているのか疑問になるぐらいに軽い。

しかし、これを着ると、なんだか仕事をしようと思えてくる。

 

「わふ~」

 

オレは家を出る。

頭上には真白い太陽が輝いていた。

 

 

§

 

寺子屋に行くと、廊下で慧音とばったりエンカウントした。戦闘BGMはない。外でちゅんちゅんと鳴く雀の鳴き声が遠くで聞こえるくらいだ。

彼女も予習やら準備やらで早めに来ていたのだろう。

 

慧音「おはよう。昨日はありがとな」

 

「お、おおはよう慧音。それはなにより」

 

昨日の出来事を思い出して顔から火が出る思いだったが、彼女がスッキリとした顔立ちをしていたので、マッサージしてよかったな、と思う。

その後の事については彼女が単に覚えてないのかもしれない。すぐに寝落ちしたし。

 

慧音「今日は随分と早いな、授業の準備か?」

 

「や、気まぐれだ」

 

本当は予習をしたり生徒の個性表を作ろうとしていたが、慧音の顔を見て気分が変わった。

せっかく出会えたのだから何かお話ししたくなるのが常であろう。流されやすく、どんどん目的が変わっていく俺である。

 

慧音「そうか。和服、似合ってるよ」

 

「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

オレは褒められると伸びるタイプなんだなこれが!

まるで子ども同然だが、それでもいい。

 

「じゃ、今日も一日頑張りますか!」

 

そして戦争がはじまる――。

 

§

 

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