東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~   作:ようひ

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序章 Ⅷ

寒い寒い空の下。

 

ソラ「で、ここから大事な話なんですが、この神社はなんと千年前から存在している神社なんですよ!」

 

現在、鳳先生による講演会が開かれていた。

もちろん拝聴者はオレ一人のみ。

青空教室ならぬ、夜空教室だ。

 

(どうしてこうなった?)

 

考えようとしても頭は働かない。

煙草を吸おうにも吸えない空気だ。

 

ソラ「これほど小さくても、昔の人は神の居所を大切にしてた訳なんですね!」

 

相変わらず、先生は饒舌に語ってくれている。

先生、メチャメチャ喋るじゃねーか。

まるで人が変わったかのような――いや、これは人が変わっているぞ、実際。

そんな熱意に押され、オレもへーとかほーとか適当に相槌を打って聞き流す。

 

ソラ「それで――ミナトさん?」

 

「あ、あぁ聞いてるよ、千年前だろ」

 

ソラ「そうです!聞いてなかったら殴ってましたよ~」

 

(…殴るのかよ)

 

目の前にある神社は人に管理されていないのか、所々破損している。

とてもじゃないがそこには神がいらっしゃるようには見えない。

 

ソラ「まぁ、今の人たちもこういった神社を大切にしないと、いけません!」

 

しかし、ソラはあたかもそこに神が居るかのように語っていた。

オレではなく、まるで神に語りかけるように。

 

(この子、神社が大好きなんだな)

 

でなければ突然『行くぞ』何ていう荒々しい口調になるはずがないし、殴るなんて言う訳が無い。

興奮すると人が変わってしまうのだろう。

オレに熱弁するソラは、ビシッと指を突き出した。

 

ソラ「で、ここからが大切な事ですが!」

 

(そのフレーズは5回ほど聞いたんだが? )

 

もちろん声には出さない。

静かにオレは彼女の言葉を待つ。

ソラはその大切なことを中々言わない。

 

ソラ「……え…なんで…?」

 

「……ん?」

 

口を開けたまま止まるソラ。

その眼は信じられない、といったように見開かれている。

 

「…鳳先生?どうした?」

 

その視線は、オレの後ろへ伸びていた。

――何かを見ている?

 

「…………?」

 

振り返る、そこには何もない。

オレたちが辿ってきた道が伸びているだけだ。

確かに今、ソラは[何か]を見ていた。

しかしその[何か]はオレには分からない。

視線を戻すと、「はっ」と我に返るソラ。

 

「どした?」

 

ソラ「……え、あ、あの…そのっ…」

 

突然、顔を赤らめ、慌てて前髪を弄り始める鳳先生。

オレと目を合わせないように顔を背けていた。

 

「早く続きを、先生」

 

ソラ「そ、そそうなんですが……えっと、その、あれ…」

 

「…大丈夫か?」

 

ソラは話すどころの話ではない様子だった。

[神社が好きな彼女]から[いつもの恥ずかしがりやな彼女]にスイッチが切り替わったように、突然口ごもってしまう。

多重人格、とは言わないまでも、唐突な切り替えだった。

 

ソラ「……確かに……見えたはず…」

 

「……本当に大丈夫か?」

 

怪訝な顔を浮かべながらぼそぼそと呟く彼女。

なんて言っているのか聞こう、と耳を顔に近づける。

 

ソラ「んひっ!!?」

 

ボン、と何か空気のようなものが爆発するような音がした。

 

ソラ「~~~~!!!」

 

どうやらオレの行為は逆効果だったようだ。

ソラは脱兎の如き慌てて走り去って行く。

 

「…よくあれで大学生やっていけるな」

 

オレは茫然と立ち尽くしていた。

 

 

§

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