東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~   作:ようひ

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種

『赤せんせーおはよう!』

 

朝の寺子屋。

子ども達が元気な声を上げて挨拶をしてくる。

 

「ん、おはよう」

 

流石にいつもの抱き着きはやってこない。皆心配したような眼で見上げてくる。

 

『その腕のぐるぐる、どうしたの?』

 

「これか?これはだな……実はお化けの仕業なんだ!」

 

『おばけ!?赤せんせーこわーい!』

 

「お前たちも野菜残したり人を大切にしないと、こうなっちまうぞー!」

 

キャーと声を上げて逃げていく子どもたち。

別にオレ自身がお化けではないのだが、何か勘違いされているような気がする。

教室に入ってオレは教卓に授業で使うプリントを置いた。

 

「よーし、授業すんぞ」

 

オレの呼びかけに子どもたちがドタバタと席に着く。

黒板に書こうとチョークを持つ、と。

ふと、外の景色が目に映った。

 

「…………」

 

そこは、なんてことの無い、いつもの中庭だ。

太陽が輝き、空がどこまでも続き、雲が浮かんでいる。

オレは持っていたチョークを置いた。

 

「みんな、筆を置いて良いぞ」

 

『ふぁ?』

『赤せんせーどうしたの?』

 

「気が変わった、今から別のコトするから、中庭に出てくれ」

 

戸惑う子どもたちに指示を送り、中庭にある花壇へと集合させる。

 

『花壇で何やるんだ!!?』

 

「いい天気だし、昨夜雨が降ったからな。植物でも育ててみようじゃないか」

 

ひとりひとりに種を渡す。

それぞれが違う種だが、育つスピードはどれも同じようにしてある。

 

『せんせー、これ、何の種?』

 

「実ってからのお楽しみ。大切に育ててくれ」

 

『はーい!!』

 

意外にも子どもたちの食いつきは良かった。

先を争うようにして種を花壇に植える。

自分の植えた所には目印として厚紙を立て札にし、種には名前が付いた。

 

『俺の種は[超種]だ!!』

 

随分と強そうな名前である。

スーパーシードとСпасибо(スパスィーバ)は発音が似ている、とどうでもいいことを思う。

 

『じゃあアタシは[惡の華]!』

 

クソムシのような花が咲きそう。

そんなこんなでわいわいと盛り上がりつつも、無事種を植え終わる。

後の方ではどろだんごを作ったり庭で遊んだりと、種は関係なかったが、注意はしなかった。

しばらくして、教室からひょっこりと姿を現した慧音が、中庭に下りて来た。

 

慧音「随分楽しい事をしているな」

 

「すまんな、慧音。勝手な事をして」

 

慧音「いいさ、お前の授業だ、お前の好きにやるといい。……でもそうすると、害獣を追い払う案山子が必要だな」

 

「案山子、か」

 

少しして授業終了のベルが鳴った。

子どもたちは次の慧音の授業を受ける準備をし始める。

その後はいつも通り補習の時間なので、その合間に案山子を作ってみるとしよう。

 

 

§

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