東方礼夜鈔~nothing's written in the extract~ 作:ようひ
「名前?」
職員室で眼鏡をかけた慧音(超絶プリティ、本当にありがとう)が「あぁ」と言う。
慧音「ほら、子どもたちも名前があった方が愛着湧くだろ?」
先日、花壇の守り神として案山子を立てた。
その案山子に名前を付けたらどうだ、ということだ。
ぶっちゃけ名前も何もそこに案山子があればよかったのだが、なるほど、愛着ね。
「そいつはグレートだ、少し考えてみるよ」
慧音「うん。あ、私の名前とかは止めてくれよ?」
ひとつ浮かんだ名案は即刻潰されてしまった。
§ § §
「という訳で、あの案山子に名前を付けようじゃないか」
チョークで案山子に名前を付けよう、と題目を書く。
子どもたちは「おー!」とやる気に満ちていた。
「じゃー適当に挙げてってくれ、黒板に書いていくから」
ハイハイ!と一斉に手が挙がる。
『ヒソウテンソクが良いと思います!』
『けーね先生弐号機!』
『カブ!』
『メメント・モリ!』
『アブラカタブラ!』
『春姫!』
『畑マモリ!』
『チュパカブラ!』
『ただのカカシですな!』
それぞれ挙がった物を板書していく。
子どもの発想とはどこまでも柔軟で、底がない。
『k君!』
『ネオアームストロング砲!』
『あ、アルティメットインフィニティクライシスヘッドバッド!!』
『太陽ぉぉぉぉ!!!』
もはや案山子の名前とは思えないが、子どもの手は止まらない。
どんどん黒板の余白が無くなっていく。
この中から俺が選ぶのか、相当大変そうだ。
§ § §
「ん、大体挙がったかな」
最終的に黒板一杯までヘンテコリンな言葉で埋め尽くされた。
子どもたちはまだ手を挙げているが、キリがないので打ち止め。
「さて、ここからどう選ぶか……」
ネーミングセンスは皆ずば抜けていた。
そこからいかに愛着が湧く、かつ案山子として花壇を守ってくれるような名前にするかだ。
ぶっ飛んだ名前でもいいが、皆が親しみを持って、名前を呼んでくれるような名前を選びたい。
個人的には「慧音先生弐号機」がお気に入りだが、それでは慧音が困ってしまうだろう。
「…………よし」
こういう物は直感で決めるものだ。
オレは一つの名前に色チョークで囲った。
「今日から、あの案山子の名前は『畑マモリ』で決定だ」
『はーい!!』
意外にも満場一致で決まった。
子どもたちにも受けが良かったのだろう。
「じゃあ、空いた時間で漢字テストするぞ」
『『えーーー』』
教室からは子どもの声、
畑マモリはそんな教室を眺めている。
その顔は、にっこりと、マジックで書いたような笑みを浮かべていた。
§