刀剣乱舞の花丸さんも再放送をしてました。
いい機会だと思ってまた見直そうかなぁ(*´▽`*)
そんな近況です。
それでは三話、どうぞご覧下さい。
軽快な音が店内に鳴り渡り、来客の訪れを知った店員、榎本梓は、その音の発信場所となった扉に目をやり、目を丸くした。
「……すまんが、ここがポアロであっているんだよな?」
何も言葉を発さない梓に、居心地の悪さを覚えさせてしまったのか、その場に佇む男の子が、チラリと後ろに目をやった。その視線を辿ると、彼の後ろから見守るように、梓にとっても見知った子供達が並んでいた。
「あ! ごめんね? 大丈夫。ここがポアロだよ? 黒田鶴丸君……であっている、よね?」
見た目は、同じくここ、喫茶ポアロの店員である、同僚、安室透から聞いていたが、彼と同じく、しかし方向性のまるで違う整った顔立ちに、思わず固まってしまっていた己を恥ずかしく思った。
安室の話では、彼は安室の姉の息子であり、父親の都合で少しばかり治安の悪い国へ行かなければならないため、大事をとって、幼い鶴丸は安室のところへ預けたのだという。
梓と対峙した彼の方も梓の特徴を安室から聞いていたのか、人懐っこい笑みを浮かべて溌剌と言葉を返してくる。
「いかにも。黒田鶴丸だ。透殿から話は通っていると思うが、しばらくはここにも世話をかけるだろう。宜しく頼む」
古めかしさの残る仰々しい口調と言い、ぺこりと頭を下げて口角を上げる仕草と言い、どこか年齢にそぐわない大人の様な雰囲気を覚えるが、生家が躾に厳しい環境なのだろうかと思考を巡らせる。
年頃になれば叔父である安室に負けず劣らずの好青年になりそうな片鱗は、間違いなく現れていた。
思わず彼の将来に思考を向けていた梓は、次いで聞こえてきた聞き慣れた子供達の声に、ようやく我に返った。
「あっ! コナン君、元太君、光彦君、歩美ちゃんも!!」
特にコナンは、ここ、喫茶ポアロの上階に住む、毛利家に居候している身の上であるために、梓にとっても見慣れた存在と言えた。
また、コナンと共に少年探偵団を名乗る彼らにも、何度かコナンを通じて関わったこともあり、梓にとっては気安く話せる小さな常連さん達であった。
「そっかぁ……鶴丸君を探偵団に……それで、安室さんに聞きに来たのね」
事情を聞いて納得した梓は自分も協力しようと胸を張る。
それに強力な味方を得たと盛り上がる子供達を眺めながら、コナンはチラリと鶴丸に視線を投げた。
今し方までは子供達と共に笑い合っていた鶴丸は、梓が彼らと同調した直後に、ごく自然な様子で、彼らから一歩後ろに下がっていた。
それは、物理的な距離か、もしくは精神的な距離か。
今喋る彼らを見つめるその瞳は、どこか子どもを見守る年長者のものに似ている気がする。
「……どうした?」
極力、視線を抑えるようにはしていたはずだった。
そうでなくても、実年齢が十に満たない子供の注意力で気づかれる程の拙いやり方ではない。
それにも関わらず、鶴丸は迷いのない様子でまっすぐにこちらへ目線を向けた。
「……え? 何が?」
咄嗟に子どもらしい反応を示してみるが、それに対する彼の反応は読み取りにくい。
彼が見た目通りの幼い子どもに過ぎないのならば、年は自分の方がずっと上な筈なのに、まるで幼い子供が見栄を張る様を眺めているような、呆れが混じった諦観を、彼は浮かべていた。
「まぁ、言いたくなければ良いさ」
まるで全てを分かっていると言うかのように。
「やぁ、おかえり。鶴丸君」
二人の間に密かに流れた沈黙を破ったのは、バックヤードから出てきた彼の保護者、黒の組織の一員でもあるバーボンこと、安室透その人だった。
「あっ! 安室さん!」
こんにちはと、声を揃えた子供達に笑顔で対応する様子は、子供好きな面倒見の良い好青年にしか見えないだろう。
鶴丸自身が興味を持ち、具体的な障壁は彼だけだからか、コナンが口を挟むでも無く、順々に鶴丸に付いてくる形でここへ訪れた訳を説明する子供達に、安室は少しばかり考えるような形をとったが、その答は既に決まっていたようだ。
常に浮かべる人に好かれる笑みを浮かべて、構わないよと笑いかけている。
「やったぁ!」
「良かったですね!! 鶴さんっ!!」
喜び笑いかける子供達とは異なり、微かな苦笑を零す鶴丸は、彼等の高すぎる調子に順応仕切れていないらしい。
ちょうどシフトの時間が終わったという彼に連れ立つように、鶴丸は別れを切り出していた。
残念がる子供達に対して、引っ越してきたばかりで荷物の整理が終わっていないからと言葉を並べる鶴丸に、コナンの視線が注がれている。
あからさまなものではない為、バレはしないと思っているのか、バレても構わないのか、その姿は端から見ると悪目立ちしている。
(……若しくは、その事実に気付かないほど余裕が無いのか)
どちらだろうなと、頭の片隅で考えながら、鶴丸は安室と連れだって歩いて行く。
「……どうだった? 初めての小学校は」
幾つかの世間話と共に切り出された本題に、僅かな思慮と共に、なかなか面白いぞと、返した。
「君といい、あの子達といい……この町には随分、まともに名を名乗れない
「……それは君もだろう?」
間髪入れずに放たれた
いつもに比べて短めです。
次はどうなるかなぁ。
またご縁があればよろしくお願いします。