夢のチカラ Episode origin~Before the Animarle   作:みーぷ

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今回は言い方は違うかもですが日常回です


第6章 ささやかな休息

「えっ、なんで?僕らって私も含まれるの?」

どうやら美来は自分たちが帰らなければならない理由を把握していないようだ。

日付は5月12日の日曜日。確かに月曜日になれば学校は始まるが、腑に落ちない点が1つ。

「玲音時間戻せるじゃん。いつもみたいにそうすれば別に構わなくない?」

「今までならそうなんだけど。

――実は、僕がいろいろと巻き戻すせいで一定期間使用禁止になった」

「……。おうまいがぁ」

事実、今までの事件の度に1度は時間を逆転していたおかげで、さすがに研究所の娘として不謹慎だと思われたらしい。そこで1ヶ月の禁止期間が設けられたそうだ。

「そしたらこの2日間の経過はどうするの?親に何も言わず出てきちゃったよ」

「そこは大丈夫。泊まりってことを説得させといた」

「誰とです?」

鋭くつっこむユヅカにうぐっと言葉に詰まる。

「一応…変な事言えないから…部活の合宿って言っといたけど。どこまで信じているかは知らない」

「そもそも玲音…慧はサッカー部じゃん。声でバレない?」

「多分…大丈夫なはず…だ!玲音の時に電話したから大丈夫だと思う!」

珍しい慌てて言い切って、この話題は終わりとばかりに話を変える。

「そこでなんだけど、時間戻せない都合で今日は…僕の家に泊まりだな」

「おっけーおっけー…。

――え?れいんちにとまり…?」

棒読み感満載な物言いにあっさりと頷く。

「ユヅカ、ネネに一応は連絡してあるから少し抜けるわ。その間…」

「了解です、気をつけますね。情報が何か入り次第連絡します」

「頼んだ。それじゃまたな。

ほら、行くぞー」

動じないユヅカ達の会話により混乱してあたふたする。

「え、いや、お泊まりなんでれいんちどうしてきゅうにそんな」

「とりあえずついて来いって。移動するよ」

 

瞬間移動で瞬きをする間にもう玲音の家の前に着いていた。

「れいんちおおきい…」

口を開けたままぽかんとしている美来を無理やり引っ張って玄関まで引きずる。

「ただいまー美来連れてきたよ」

文字通り直立したままずるずると引きずられていく美来はもはや何も言わずに玄関のドアをくぐる。

パタパタとスリッパの音を立てて左の扉から1人の女性が顔を覗かせた。おそらく玲音のこちらの世界の母親だろう。

「おかえりなさーい。2日ぶり?ご飯食べてんでしょうね。

――あ、その子が美来ちゃん?」

「は、はいそうです!

お、お邪魔しま…す…?」

「敬語はいらないよーむしろフレンドリーに接してほしいタイプだから。

その様子だと説明なしに引っ張ってこられたのかな?いつも玲音は解説不足だもんねー。お互い苦労人だよねー」

「ああもう分かってるよ。説明するからとりあえず中入らせろって」

めんどくさそうな表情を隠さずに靴を脱ぐ玲音の後をそろそろとついて行く美来。2人の背中に向かって、

「お茶とお菓子持ってくねー」

という声がかけられた。

 

「玲音のお母さんて陽気?なんだねー。優しそう。面倒見いいお姉さんタイプ?」

「ただのお節介だろ。まったく…」

右から2つ目のドアの先にあったリビングの、これまた大きいソファに体を投げ出す。美来はその隣にそっと腰掛けてから、静かにため息をついた。

「それで、どうして玲音ちにお泊まりなの?」

寝そべったまま宙を見つめてそりゃあ…と話し出す。

「前に僕は時間の巻き戻しや進行に影響されないって言ったろ?」

「誰かが歴史変えても玲音は何も受けないってやつ?」

「そそ。その効果が家にもかかってんだよね。だからここだけは時間の流れから切り離された空間、って感じの場所。

それで今の日本時間は午後8時36分。今向こうに戻ってそのまま時間を進めるとまたこっちに来れるのはほぼ1日後。そうすると時間がもったいない」

礼儀正しく背筋を伸ばしたまま聞いていた美来は無言で続きを促す。

「それで、僕が時間をいじれないだけでかあ――」

「お母さんは使えるのよ。

はい、お菓子置いとくね。程々にしてご飯食べに来なさいよ?まだ作ってないけどね」

「クッキー持ってきといてご飯か…」

玲音の代わりに言葉を繋いでから小皿をテーブルに乗せる玲音母。苦笑いしながらもくるみがふんだんに入ったクッキーをさっそく口に入れて、美来にも勧める。

「ありがとうございます、いただきます」

星型のアーモンド味を食べて目を見開く。

「美味しい…!」

「やったねママ褒められちゃった!

あと敬語はなしなし」

「はいはい、とりあえず母さんはご飯作ってきてください」

強制的に追い出して、今度はココアのクッキーをほうばる。

「続きだけど、僕が出来ないだけで母さんは使えるから代わりにやってもらう算段。ただ、夜の時間くらいは稼げるように今日はここに泊まっていけってこと」

「うーん、よくわからん。

でも時間がもったいないし、玲音のお母さんが時間を戻すためにここでってこと?夜だけはなるべく巻き戻さないでその間だけは時間稼ぎ的な?

まぁ一応泊まらせてもらえばいいってことだよね。それなら1日お世話になります」

「ん、任せろ。

そんじゃご飯食べに行こうぜ。クッキーは夜食で」

「太る。けど食べる。このクッキーまじ美味しい」

「お前なぁ…都合の良い奴。ま、いっか」

 

「オムライスー!!!」

ダイニングテーブルの上に乗ったお皿を見るなり美来は歓声を上げた。ほかほかと湯気を立てるオムライスは卵がトロトロでとても美味しそうだ。

「母さん…図った?」

「お客様には好きな物をさりげなく出してあげるのがおもてなしでしょ?冷めないうちに食べてね」

席につくなり待ち遠しそうに、玲音が座るのをそわそわして待っている。

「…まじで調子良い奴」

半分笑って半分呆れながら向かいの椅子に腰掛ける。

「いただきまーす!」

「いただきます」

1口食べるなり再び叫ぶ。

「おいしー!玲音のお母さん、このオムライスめっちゃ美味しい!ふわふわトロトロだしチキンライスも美味しい!これなら毎日いける。うん、毎日食べたい」

猛烈に褒めまくる美来。

「いや、オムライスどれだけ好きなんだよ…」

「世界一!」

「うげっ…。

僕初めて美来のことウザいと思った」

玲音の悪口(?)もスルーして黙々と食べ続ける。

これにはお母さんも

「玲音からオムライス好きらしいって聞いたから作ってみたけど…。

ここまで喜んでくれると本望だわー。良かった良かった!デザートもあるからその分はお腹空けといてね」

「ふぁーい」

「さっきのガチガチに緊張した誰かさんはどこ行ったんだ…」

――美来にとっては幸せな、玲音にとっては呆れ続けた夕食だった。

 

お風呂(これまた広い)にも入り、布団を床に敷き終わって後は寝るだけの状態になった。

もちろん美来はパジャマなんてものを持ってきてはいないので、玲音のものを借りて着ていた。

「玲音のやつ大きい…ぶかぶか」

「仕方ないだろ。僕は157で美来144なんだから」

「むぅー…。ばか」

枕を玲音の方にぶん投げてその勢いのまま布団にダイブする。空中を進んだ枕は玲音のそばを通過してそのまま落ちた。

「つーかお前さ、僕んち来てからなんか幼少化してない?どうもおかしい気がする」

掛け布団を頭まで被っていた美来は顔だけを覗かせて

「ん。妹にいつも絡まれすぎてうんざりだからたまには構ってもらう」

何事もないようにそう言ってまた中に戻る。

「いや、同学年のやつにかまってもらってどうする。しかも所詮僕だって男子でもあるんだぞ…」

「いいの。そーゆー対象がいたっていいでしょ別に」

「なんか違うけど…まぁやられる分にはスルーだから心置きなくどーぞ」

「んじゃ遠慮なく」

落ちた枕を拾って椅子に座っていた玲音の後頭部に思い切り叩きつける。その反動で転げ落ちた玲音は笑顔で2個目の枕を構える美来を見て悟った。

(なんだこいつ…枕投げしたいのかよ…高一にもなったってのに)

「悪いけど手加減しないぞ?」

「よし来い!」

「じゃ、後方注意」

言うなり玲音は枕を手放し、美来の後ろに瞬間移動の時に使う穴を出現させ――。

「わっぷ!?」

そこから枕を出現させた。思い切り布団に向かって倒れた美来はぶんぶんと両手を振って叫ぶ。

「反則反則!レッドカードで退場!」

「それじゃおやすみ」

「わーっ、もっとダメー!」

寝ようとする玲音のタオルケットを引き剥がして、敷き布団を傾ける。ころころとボールのように転がり、壁に激突して止まる。

「こんにゃろ――!」

「ひゃあー!逃げろー!」

ふたつの枕を棍棒みたく握りしめて、逃げる美来を追い回す。そこそこ広い部屋なので2人程度なら鬼ごっこは容易かったが。

「2人共ー夜だから静かにね」

ドアから少しだけ顔を出した玲音ママの声で我に返った。

「ごごごごめんなさい!」

「元気なのはいいことよー、でもさすがにそろそろ寝た方がいいと思うからね。

明日もまた忙しいでしょ?」

「はい…寝ます…。おやすみなさい」

「おやすみ〜。寝た振りしてる誰かさんもおやすみー」

母親が入ってくるなり光速で布団に潜り込んだ人にもさらりと告げて、ドアは閉まった。

「…バレてるのに寝た振りしなくても」

掛け布団を直しながら美来は呆れたように言った。

「だってなんとなく寝る意識あった方がいい気するじゃん」

「無駄無駄。起きてるのわかってれば効果ないって」

それきり黙り込む2人。しばらく布団の擦れる音だけが響いた。

「――なぁ、今回の事件、捕まえられると思うか?」

唐突に、珍しく玲音が弱気な発言をした。

「正直厳しいよね…自分の姿を原子レベルまで分解できちゃうんだもん」

小さな声で応答がある。

「それでもあいつを拘束しなきゃ事件は終わらないんだよなぁ…。

なんかいい案ないかなぁ」

もはや投げやりとも言えるその態度に、不満げに美来は寝返りした。

「玲音らしくなくてなんかやな感じ。

まぁ事実だよね、とるべき手段が見当たらない」

「原子を無理矢理結合させて、分解できなくする…そんな都合いいやつないよな…。

一度捕まえたとしても再分解化抑制の何かを施さなきゃ何回でも逃げられる」

やることは決まっているのに方法が見つからず、状況は進まない。

一度尻尾を掴まれて逃走したクロが簡単に捕まえられるわけはなく。

「何か…誘い込む方法を考える?」

「それしかないんだよなぁ。向こうもより警戒してるはずだし、よっぽどのことを起こさなきゃ出てきてくれないよきっと」

「クロくんに対して致命的な何かを呈示する?」

眠たげにあくびをする玲音。

「内容がいかにあいつにとって重要か…。

逃げ出した理由…いくら意見が合わないと言っても限度があるだろ?どれだけ嫌になったんだ?

いや待てよ、ユヅカと対立したんだよな。何があった?二人の間にどんな問題があった…?」

目をこすりながら美来は呆れて言った。

「ほらまたやってる。なんだかなぁ。

意見的には賛成だけどそこをユヅカが教えてくれるかどうか…。

あーでもゆいちゃんの方がこっそり聞かせてくれそうかも」

玲音は天井を見つめていた目をそっと閉じた。

「そうだな、明日にでも聞きに行こう。でも流石に今は休もうぜ。

――おやすみ」

「了解。おやすみなさい」

 




さて、お泊まり解除後の2人は一体どんな行動を起こすのか…。
次載せるのは長くなりそうです。
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