夢のチカラ Episode origin~Before the Animarle   作:みーぷ

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いろいろと長くなってる…。


第7章 真実のラビリンス 2

「僕…の父さん…?

いやいや、冗談よせって。だってただの人間で魔力なんて――」

「そこが元々の間違いなんだって。

俺も少し前に知ったばかりなんだけど…」

※ ※ ※

 

隠れ家を飛び出した俺は行くあてもないので、適当に街をぶらぶらしていた。すると、後ろから自分を呼ぶ声がする。

振り向くといたのは慧の父さんだ。何回か授業参観などで見かけたことがあるので間違いはない。

もちろん驚いた。彼がここにいるはずがないのだから。

それを言ったら自分もそうなのだろうけど。

何も言えずにいた俺に――偽物ではない限り――慧の父さんである人物は信じられないことを言った。

慧と玲音の父親は同一人物だ、と。

当たり前だが、俺は慧がこっちで違う人物で存在しているということを知らなかったので、何か別な事情…それこそ異母兄弟なのかと思った。けどそうではないらしい。慧は玲音であり、玲音が慧であるという事を受け入れざるを得なかった。根拠も何も無いけど、そう感じた。

その時に、その人が発した言葉に驚いた。

「君たちの生み出した技術を代用してみないか」

…と。

なぜ知っているのか。それを聞くと「国家に関わっているからだ」と一言、偉い人が持ってるパスコードの書かれているようなカードを一緒に見せられた。

確かに何回かこの国の王女とやらが来てたし、国家に知られているのはおかしくはないと思ってさ。

流石に初めこそ何に使われるか知ったもんじゃないから拒んだぞ。だけど親身になって話してくれるもんだから少し…表面上の浅い部分なら教えてもいいかなって思うようになって…。

 

※ ※ ※

 

「それで内容を教えたんだ?」

「原子と放射線を基本としている…それだけな。流石にノーギャラって言われたから詳しく教えてやる必要もなかった」

「いや、だとしたら尚更おかしい」

衝撃的な話を聞いた後だからか、若干顔が蒼白になっている玲音。僅かに震える声でクロの言葉を否定する。

「お前が教えたからといってクロが逃げる必要はないだろ。そりゃ原理を伝えた時点で間違ってはいるけどだからって…」

するとクロは思い切り顔を顰めると、

「おいおい何言ってんだよ。俺はずっとここにいたんだぞ?」

『――――は?』

誰もが予想していなかったことを言い出した。

「冗談よしてくださいよ…」

「じゃあそこの王女さんに聞いてみろよ!俺何も嘘ついてないぞ?」

誰もが一斉にネネを見つめた。

「ほんとに…全部事実だ…こんなにも自分の能力に疑いを持つのは初めてだよ」

彼女自身も信じられないように目を見開いている。それを聞いて玲音が続けた。

「じゃあ…僕の父さんがやったとして、父さんはどこにいるんだよ。お前が黒幕じゃないなら今までの事件は初めから全部僕の…僕の父さんが…」

「玲音、少し座った方がいいよ。顔が青白いよ」

美来が半ば強制的に玲音を座らせて、代わりに喋り出した。

「クロがやってないなら、どうして事件の内容を知ってるの?そこがそもそも矛盾してるのでしょ。玲音のお父さんから内部情報として受け取ったりしていた?

この国にテレビやラジオはなくて街の掲示板を見るしかない。ずっとここにいたんだよね。ならそれは不可能なはず。

…どうして?」

情報を得る手段がほとんどないこの国では、壁新聞のように毎週1回張り出される掲示板しか内政を知ることが出来ない。そのためにはそこそこ大きい都市に行って、中央部にある役所まで赴かない限り、国民は政治がどうなっているか把握する術がない。

「いや、だってその情報はあいつが教えてくれたから…ついさっき…」

「ついさっき?その人は誰なんです?」

「まだそこにいるよ」

そう言って指さした先は本棚の隣。

すると、壁だと思われた1部がごっそり内側に開いて、隠れていた扉が現れた。

「――ユイちゃん!?」

 

「ユイ…どうしてここに…。そもそもネネが気配を感じられなかった…!」

愕然とした様子でユイを注視すると、気持ちを切り替えるように首を振って問うと

「問題はそこだよね、ユイがなんでここにいるのか。ネネ達より先に本当のクロの所へたどり着いた理由」

ユイが申し訳なさそうに恐る恐る差し出したのはアルバム――。

「あっ」

ユヅカが小さく声を上げた。

「追跡番号…」

「それって…アニマーレ全ての書物についてる、本の紛失を防ぐ対策だっけ?

個人的なアルバムにも付いてるの?」

「ネネ…全ての本、雑誌、その他そのように分類できるものは大衆個人関わらず申請しないといけないって前にも言った気がしますけど…」

「しーらんしらん。覚えてない」

アニマーレでは書物関係がとても貴重なため、その一つ一つに番号が割り振られ、特殊な魔法陣を用いることによって1冊ごとに探し当てる方法があるのだ。

「そっか…ユイは司書の仕事を兼任してる。だからその魔法陣の書き方も教わってるのか…」

コクリと頷き、アルバムを開いたユイは呟くように言った。

「個体識別番号mjh1632trcl…忘れるはずないよ。絶対に、忘れたくない。少なくともうちらだけは」

どこか切実な様子で分厚いアルバムを抱きしめる。

「それで…本物のクロが事件を起こしたわけじゃないってどうしてわかったんですか?」

「だって来てみたら呑気に寝てるんだよ?ドアの鍵も閉めずに窓だって半分開いてたし。

今まで会っていた偽物のクロならそんなことしないだろうなって思って。

ほら、あんなに警戒してたじゃない」

クスクスと笑うユイに少しばかりクロはふてくされたように見えた。

「元からだろ…今更か?

そりゃ偽物の俺が用意周到になるのも分かるけどさ…」

「で、その偽物は誰なんだ?

僕の父さんが成り代わりでもしてたのか?」

厳しい顔の玲音にクロは肩をすくめながら返答した。

「そこまでは知らんなぁ。でもここにいるってことは何らかの能力が使えるわけで、姿成り代わりされてたらなんも言えないな」

「それで玲音パパらしき人は今どこに?」

クロは知らないとばかりに首を傾げた。

「あれきり会ってないから検討もつかないよ。

あー…でも慧の父さんっていったら…」

「海、ね。

本物なら暇になった時、父さんは海によく行ってた。だから行く価値はあるけど逃げられそうだな…」

「存在を消して行く?」

いうものように1人で考え込みそうになる玲音を遮るように美来が口を挟んだ。

「でも僕の父さんかもしれない人はなかなかの手練だよ?

いくらなんでも僕だけの力じゃバレる可能性があるような」

「だから、玲音プラス私プラスネネで3重にしたら行けそうじゃない?」

「まじかよ」

得意げな美来にクロが真顔でつっこんだ。

「まじっす」

それに対していたって真面目な表情で返す。

「ま、やってみるだけやってみますか」

 

3重に隠す、といっても全て違う魔法である。

初めに美来が大暗黒天を司る隠蔽魔法を使用、それに乗せるようにネネがカメレオンの原理を利用した同化魔法を加える。

最後に玲音が時空本体を歪ませ、強力な結界を発動、これで稀に見る大掛かりな存在隠蔽のための準備が整った。

「ここまでやって看破されたらたまったもんじゃないよなぁ…。とりあえず全力で破られないように魔力込めろよ?」

「玲音もね!」

「よし、じゃあこのままワープだ。1、2の――3!」

 

 

(術中は喋るなよ?解けるからな)

(百も承知だっての。で?玲音パパさん見える?)

(ネネは何も感じないけど。半径5キロほどにも聴力視力で捉えられる範囲にはなし)

(確かに気配自体はないな。

一回4次元まで広げるか…。いやでももし既に僕らがバレてるとしたら――)

「背後っ!!!」

玲音が思念でそう気づくと同時にネネが反射的に飛びすさり、後ろに向かって防御用の魔法陣を展開させた。

「誰…って聞くまでもないか。姿を見せなよ、本物と確信はしないけど玲音の父さんになりすましているか本人か」

警戒態勢を厳重にしながらネネは後方の空間に向かっていつでも魔法を飛ばせる体制をとる。

するとネネが見つめていた先が滲むように揺れて、1人の男性が姿を現す――。

「待て待て待て嘘だろっ皆逃げろ!!」

急に悲鳴をあげた玲音が、右手を全力で振り抜いてその場にいた仲間全員を優先して強制転移させた。

そのせいか、玲音だけが一瞬、自身を移動させる動作が遅れた。

「玲音!?」

「先行け…!転移を繰り返せっ!!」

そこで魔法が発動し、玲音の姿は見えなくなった…。




さて、玲音くんは何に気づいたのでしょうか?
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