夢のチカラ Episode origin~Before the Animarle   作:みーぷ

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とりあえず王宮内部に入れた二人。
ネネにどう交渉するのか…。
(前書きは苦手です)


第2章 手掛かりを探って 2

「すごいね、外からだとそんなに広く見えないのに」

廊下を進みながら玲音にこっそり耳打ちすると、「誰かが空間を操れるんだな…ここまで大掛かりな術式を保持するなんてよっぽどの手練だぞ…」

極わずかな声量での会話だったのだが。

「いやはやそんなに褒めてもらえるなんてね〜鼻が高いよ〜」

前方20メートル先を進んでいたネネが器用に後ろを向いてスキップしながら照れ始めた。

「聞こえたの!?小声だったのに…」

「ふっふふーん、生まれてこの方耳がかなーりいいんだよね。ネネの前で内緒話なんて効かないから注意することだぞ」

かつてないほどのドヤ顔でさらりと暴露するネネ。かなり、なんてものではないのだが。素直に感心する美来と少し顔を顰める玲音。

「探りを入れてるわけじゃないんだろ?」

「ちょっと玲音…?」

王宮にいる人物なのだから子供とはいえ大物であるはずなのに、玲音はいきなり敬語を捨ててそう問いかけた。にこにことこっちを見ていたネネは少しだけ眉の角度をあげた。

「そんな大層なもんじゃないよ。ただやっぱり疑問は残るわけだ。どうしてそこまで中に入りたかったのか。それを聞かなきゃこっちの立場としても困るからね」

微笑さえも消し去って、鋭い目で二人を見つめる。玲音とネネの間に散る火花に戦々恐々としながら成り行きを見守る美来。存在感を消そうと元から小さい体をより一層縮こませていた。

「じゃあ率直にこっちの要件を言おう。

今人間界で人体が消失する事件が各地で発生している。その謎を解くための手がかりがこの国にあると踏んだ」

「その…もっと詳しくいえば大学病院での論文とかなんだかが似たような研究発表してそこに入るためには許可がいるからとか言って…」

厳しい顔をしたままの玲音に代わって、目をそらしたまま美来が補足で付け加える。

「でも一般人だしそれ以前に他国の人だから急に行ったら怪しまれると思ったんだけどやっぱりこれしか方法が浮かばなくて叫びましたすみません」

早口で言い終えてまた縮こまる。

黙って聞いていたネネはふーむと唸って、

「通常ならばネネを怒らせた罰としていろいろあったかもしれないけどまぁ…今の状況なら逆に好都合だし乗ってあげようじゃないの」

「今の状況…?」

訝しげに繰り返した玲音にぽりぽりと頬をかきながら

「いやさ…いずれ引き継ぐ身だし? 今のうちから社会勉強しとけとかで一息つく暇もないんだよね。朝から晩まで捺印押してばっかだっての」

「ちょ、ちょっと待て。捺印て…お前まさか」

鋭く息を吸い込んだ玲音を見て、してやったりといった表情でにやりと笑ったネネは。

「次期女王を怒らせたなんてバレたらどうなるかね…?」

どこまでも人を試すような顔つきで二人のことを正面から見つめていた。

 

答えを予想していたらしい玲音はそれでも驚いた様に一刹那、目を見開いた。美来はと言うと、顔を真っ白にして、瞬きをしてからほっぺをつねって、夢じゃないことを再確認するとものすごい勢いで頭を下げた。

「私の連れが失礼しました!ごめんなさい、ちゃんと色々説明します!」

二人を睨む目をほんの少し緩めて、

「いやそんな謝らないで、少しストレス溜まってたからからかっただけだよ。

部屋行こっか」

「「…………え?」」

スタスタと再び先を歩き始めるネネを信じられないものを見るような目で思わず凝視してから、

「あれ全部演技ー!?」

と叫ばずにはいられない美来だった。

「なんてやつだよ…」

ため息をついて歩き出す玲音。

未だにさっきのシリアスじみた雰囲気から抜け出せない美来に

「ごめんごめん、そこまで間に受けられるつもりはなかったんだって」

前から声がかかって、いたずらっ子のように笑うネネがいつの間にか至近距離にいた。

「ひゃっ!?い、一瞬で移動…」

すると今度は玲音ですらあきれたように

「あのなぁ、僕ですら毎日のように使っている瞬間移動だぞ?」

「あぁ…うん、そうかそうだね。

ちゃんと歩くから二人とも子供扱いしないで」

美来に目線を合わせて話すネネと小さい子にものを教えるときのような目をする玲音に向かって、不満げに呟いた。

 

応接間に案内された美来も玲音。中は和風テイストで、畳(靴で歩けるように特集加工してあるとネネが教えてくれた)の床に窓には障子。ご親切に雪見格子まであった。

椅子やテーブルは、応接室にありがちなゆったりした心地よさ気な椅子ではなく、こたつだった。

「なんでこたつ…」

とてつもなく不思議そうにそれを見つめる玲音だったが、如何せん外が寒いので速攻で入り込む。

「ネネのママが和風のもの好きなんだよねー。こたつって重宝だと思わない?」

「めっちゃ思う」

肩まで潜り込んで顔しか見えない美来が同意…

「いや、お前の方が失礼だな、そんな潜るなって」

「いやいや別に構わないよ。堅苦しいのは嫌いだし。

さて、本題に入ろうか?」

いとも自然に話題を変えたネネ。さっと空気が変わる。

「大学病院の論文を見たのはわかった。人間界で色々事件が起きてることも把握してる。だから手がかりを求めてここまで来て、事件解決に至る証拠またはそれに繋がるものを探しに来た。

でも当然いくつか質問はさせてもらうよ」

コクリと頷く美来を一目見て、再び口を開く。

「まず一個目。どうして機密文書を読むことが出来た?

あれは院内と限られた一部でしか閲覧できない。公共の場では出したことがない。なぜ?

ちなみに嘘つくと分かるからね」

「わかったよ…ぶっちゃけ、俺が勝手に見た。つまりはハッキングってやつだ。逮捕するならしろよ。でも事件解決してからな」

「へぇ…ほんとにいるんだそんなことできるやつ。まぁ理解はした。

次、どうして病院が関係すると思った?

論文がそこから出てるから、以外に」

今度はこたつから出た美来が答える。

「機密文書なんだからよっぽどの重要事でしょ?それなのにも関わらずこうやって論文内容に重なる事件が起きてるんだもの。

病院内、もしくは論文作成者本人に会うのがまずやるべき事じゃないかなって思ったの」

「ふーむ…なるほど。

じゃあ最後」

ニヤリと笑ったネネは

「逮捕される可能性は考えた?」

ストレートに尋ねてきた。

「考えたに決まってるだろ…。でも何かしなきゃ何も始まらん。誰かが何か起こすしかないからな」

「そう根拠を持てる理由は? どこからその自信が湧いてくるの?」

再びの質問に迷いなく、きっぱりと言い切る。

「そりゃ間違いなくこいつのおかげ」

隣に座る美来を軽く肘で小突く。当の本人はこたつが温かいのかうつらうつらしていて、気づいていない。

「ほんとにこいつ、自分からトラブルに突っ込んでくんだよ。だから僕らは何回もそれに巻き込まれた。

でもそのせいか諦めることが馬鹿らしくなってくるんだよね。何事もやってみなきゃわからないってな」

「…………そうか」

ネネですら黙り込み、しばらく二人は完全に寝ている美来を見つめていた。

小1分、先に動いたのはネネだった。

「わかったよ。許可証だそう。美来を起こして着いてきて」

表情を柔らかくして立ち上がり、どこかに電話をかける。

一方、玲音は

「起きろって」

「…んー…」

「許可証貰いに行くから早くしろってば」

「こたつ…やだ…おやすみ…」

「このやろー…」

ほっぺをつねっても叩いても起きない。

「あれま、完璧に熟睡してんのねー」

どこか呆れたような、それでいて感心するような雰囲気をにじませて笑いをこらえるネネ。そのまま鼻をつまむ。

「むにぃ…ふぐっ!」

がばっと起き上がって回りを見渡して真ん前でついにこらえきれなくなって爆笑しているネネを見つけて叫ぶ。

「死にたくないっ!!」

 

「あはははは…ごめんごめんって、トラウマだったのか。ごめんよ」

「確かに寝てた自分が一番悪いんだけどさぁ…窒息だけは勘弁だよぉ」

「てかまず寝るな」

また長い廊下を歩きながら無人の廊下を進む。

どうやら今からネネが仕事を丸投げしている相手のところに行くらしい。あの気の強いネネですら多少体が強ばっている。

「そんなに怖いの?」

「ん?怖いというか…あまりにも仕事押し付けすぎたなーという後悔というか…。うん、仕方ないどうにかなる」

廊下の突き当りから一個手前のドアの前で立ち止まる。一応、といった感じで控えめにノックを2回してから、

「入るよ」

扉を押し開ける。――と、その瞬間。

「ちょーっと!どこ行ってたんですか!こっちは2倍やってるんですよ2倍!捺印許可証住民届け!消費税住民税その他もろもろの税金!

こんなの一人でやれとか鬼ですか鬼畜ですか悪魔ですね!?」

入った途端に不満をぶつける誰かがいた。

「おつかれー、いやいやユヅカならできと思ったまでの読みだよ」

「またそんなへりくつというか嘘というか…分かってますよこんな文句じゃ聞かないくらい…」

ユヅカと呼ばれた女子は凹みながらまた文書の処理を始めた。

「ごめんねー、作業抜け出して二人のとこに直行したもんで。いいやつだからさ、仲良くしてあげて」

なんやかんや面倒見はいいらしいネネ。

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