夢のチカラ Episode origin~Before the Animarle 作:みーぷ
※ ※ ※
それは1年と少し前のことでした。
ある一定範囲内でいきなり行われた強制転移現象。
抗えた者は誰ひとりしていませんでした。
戻る術も知らずに、未踏の地で、皆はどうにか生き残るために行動し始めました。
――全員がいい方向へ向かったのかは分かりません。なにか事件を犯した人もいたと聞いています。
ただ、少なくとも彼らだけは死なないために前に進みました。
何も無いところからのスタート。
彼らはただの人間です。魔法は全く使えず、異世界の知識も皆無でした。
だからこそ虚無から何かを作り出す方法を考えました。生きるためには食料が必要です。住居があればもっといい。何か着るものもあると助かる…。
お金は1円もありませんでした。でもここには魔法があります。自分たちにも出来るものがあるのではないか。そう考え、みんなで寄せ集めてなんとか形になったのが原子論を使った物質生成の理論でした。
そこからは試行錯誤を繰り返して2ヶ月後、ようやくその魔法が完成したのです。
新種の異能と言えるからか、その場の全員が使えることが判明し、なんとか4人はこの地でのまともな生活を送ることが出来るようになりました。
ただしその頃には仲間のうち1人が唐突に姿を消し、連絡先も残さず行方をくらませてしまいました。
多少の不安を抱えながらも日々生活していた後日のことです。なにかの役に立つのでは…と大学に研究として発表してみたところ、彼らの元にすっ飛んできたのはなんと国王の娘――つまりネネと、そばで縮こまるユヅカでした。
2人は簡潔に話しました。
「この技術はとんでもない可能性を秘めている。その分、悪用されると一大事になる」
…と。
そこで大学側は3人の許可を取り、この文書を秘匿し、万が一にでも発見されないように厳しく入校を制限しました。
そこで1年がすぎ、何も無かったと思われていた時に人間界のニュースを耳にしました。
『人間の蒸発現象』
あれは紛れもなくこの魔法を使った事件だと確信しました。すぐに4人の中のひとりが他の人に連絡を取りました。しかし、1人だけ電話にも出ず、家にもいませんでした。それはやはり例の行方知らずの彼でした。
そこから推測しました。もしかして、今回の一連の事態は彼が招いたのではないかと。
同時に思いました。もしこれをネネや美来さんに言えば事件とは別の、とある事実を説明しなければならないと。
それは、告げるにはあまりにも悲しい、悔しい現実です。
でもこの状況を打開し、国を守るためには5人…あるいは6人の過去なんてちっぽけなものです。しかし、この事は私たちと、あと1人しか覚えていない過去です。
きっと打ち明ける必要は無いでしょう。
今、自分に出来ることは…。
さて、誰のモノローグだったかお分かりいただけたでしょうか?
次はようやく犯人が出てくるかもしれません。