あらすじ
 ツチノコによって、パークで飛行機が発見された。かばんたちが旅立った後、フレンズたちが協力して、飛行機を飛ばそうと奮闘する。
 ※実験的にBGM 指示を付けたバージョンです。

2018/10/12 『通常版』を大幅に加筆修正しましたが、こちら(BGM 指示付き版)は、古い内容のまま置いておきます。

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 まえがき

 くにむらせいじ (SEY_Y)です。
 このテキストは以前書いた「ひこうじょう(通常版)」に実験的にBGM 指示を付けたバージョンです。普通に読みたい方は、「ひこうじょう(通常版)」を読まれることをお勧めいたします。
 BGMは、基本的には「TVアニメ けものフレンズ オリジナルサウンドトラック」に収録されている曲です。音声ファイルをスライダをいじりながら再生して、聞きながら読まれるといいかもしれません。(かなり難しいですが)
 通常版にあった注釈は削除しています。

2018/10/12 『通常版』を大幅に加筆修正しましたが、こちら(BGM 指示付き版)は、古い内容のまま置いておきます。


 BGM終了      :CDと同じように曲が終わります。曲が長い場合は途中をカットして短くします。曲が短い場合は途中をループさせて延長します。

 BGMフェードアウト :曲の途中でボリュームを徐々に下げて曲が終わります。

 BGM停止      :曲の途中でぷっつりと切れて曲が終わります。

 BGMボリュームダウン:BGMの音量が下がります。次の曲がかかると音量が戻ります。

 BGMボリュームアップ:BGMの音量が上がります。(下げた音量が元に戻ります)



第1話

 アニメ1期 12話の、黒いセルリアンとの戦いと、遊園地のパーティーの間。

 

   BGM「水辺のやすらぎ」

 

サーバル  「すっごーい、なにこれ」

 海岸に、長い、舗装された道がのびていた。

かばん   「ヒトが作ったもの、かな、何のためにあるんだろう」

ラッキービースト「コレハ、滑走路ダネ、飛行機ガ、離着陸スルタメノ設備ダヨ」

かばん   「ひこうき?、紙飛行機のようなものかな?」

ラッキービースト「飛行機ハ、空ヲ飛ブ乗り物ダヨ」

かばん   「そういえば、ミライさんが飛んできたって言ってましたよね。」

ラッキービースト「アノ格納庫ニ、予備機ガ残サレテイルカモシレナイネ」

 

   BGMフェードアウト

 

   BGM「風を感じて」

 

 格納庫に入る一行。そこには双発のプロペラ機が残されていた。

サーバル  「すっごーい、大きな鳥みたい!」

かばん   「真ん中の部分は、ちょっとバスに似てますね。ラッキーさん、これにヒトが乗って飛ぶんですか?」

サーバル  「えー、こんな大きいもの飛ぶわけないよ」

 

   BGMフェードアウト

 

ラッキービースト「飛行機ガ、飛ブ仕組ミヲ解説スルヨ」

 

   BGM「けもの達のクッキング」(中盤、40秒あたりからスタート)

 

ラッキービースト「ココデハ無風状態ト仮定シテ解説スルヨ。エンジンニヨッテプロペラヲ回転サセルト、前ニ進ムチカラ、スナワチ推力ガ、生マレ、コノ推力ニヨッテ機体ガ前進スルンダ。機体ガ前進スルト、主翼ノ周リニ、空気ノ流レガ生マレルヨ。コノ空気ノ流レト主翼の断面形状ニヨリ主翼ノ上面ト下面ニ、気圧ノ差ガ生マレルヨ。コノ気圧ノ差ト、主翼ノ迎エ角ノ作用ニヨッテ機体ヲ持チ上ゲルチカラ、スナワチ揚力ガ生マレルンダ。揚力ハ、機体ト空気ノ相対速度、スナワチ対気速度ガ早イホド、大キクナルヨ。機首ヲ上ゲテ主翼ノ迎エ角ヲ大キクスルコトデモ揚力ガ大キクナルヨ。機体ガ加速シ、必要ニ応ジテ機首ヲ上ゲ、揚力ガ、重力ヲ上回ルト、機体ガ、路面カラ離レ、飛行機ハ、空ヲ飛ブンダ。チナミニ、現代ノ多クノ飛行機デハ、主翼ニフラップト呼バレル揚力ヲ増スタメノ…………」

 

サーバル  「みゃみゃみゃ、みゃ……」

 

   BGM終了

 

 サーバルが倒れた。

かばん   「サーバルちゃん!」

かばん   「ラッキーさん、もういいですから!大丈夫ですから!」

 

   BGM「曲名不明(9話冒頭の曲・サントラ未収録?・水辺のやすらぎの別アレンジ)」

 

 サーバルは、弱弱しい声で言った。

サーバル  「わたし、がんばりすぎちゃった。わかろうとしたけど、だめだった」

かばん   「サーバルちゃん、大丈夫?」

サーバル  「海の、むこう、かばんちゃんと、いっしょに行きたかったな……はっ……」

 サーバルが意識を失った。……ように見えた。

かばん   「サーバルちゃん!」

かばん   「どうして、どうしてこんなことに」

 

   BGM停止

 

ツチノコ  「何やってんだお前ら」

 

   BGM「ほがらかな2匹」

 

 飛行機の陰から、ツチノコが現れた。

かばん   「ツチノコさん!サーバルちゃんが!」

ツチノコ  「深刻な状況には見えんがなー」

サーバル  「ううう、あたまが、いたいよ」

ツチノコ  「とりあえずちょっと休め」

 

   BGMフェードアウト

 

   BGM「かわいい2匹」

 

 飛行機の後部座席に座る3匹。サーバルとかばんが隣り合う席に、ツチノコがかばんと向かい合う席に座っていた。

サーバル  「ツチノコ、さっきから気になっていたんだけど、その恰好なに?」

かばん   「僕も気になっていたんですが、なんか触れちゃいけないというか……聞けなかった」

 ツチノコは、フードの上から焦げ茶色のカウボーイハット(ソフトハット) をかぶり、茶色のレザージャケットを羽織っていた。いつもの下駄ではなく、茶色のブーツを履いていた。

ツチノコ  「考古学者に飛行機っつったらこの恰好なんだよ!」

かばん   「こすぷれってやつだね。でも、それならムチが必要なのでは?」

ツチノコ  「なんでお前はそんなこと知ってるんだよ!」

 ツチノコはしっぽを床にピシピシと打ち付けた。

かばん   「しっぽがムチの代わりなんだね」

サーバル  「よくわかんないけど、なんか似合ってない気がするな。フードの上からぼうしをかぶるのも変だし」

サーバル  「フードかぶってると落ち着くんだよ!」

サーバル  「ツチノコはここで何してたの?」

ツチノコ  「例の改造がうまくいかなかったら、こいつを飛ばそうと思ってな」

サーバル  「知らないところでがんばってたんだね、ツチノコはやさしいね」

 ツチノコは顔を赤くしてうつむいた。

かばん   「例の改造ってなに?」

ツチノコ  「それは……そのうち分かるから気にするな」

かばん   「それで、飛ばせそうなんですか?」

ツチノコ  「キビシイなー。あちこち傷んでるし、操縦も難しい。飛ばせたとしても、飛行中にトラブルが起きたらおしまいだからな。あの映画みたいになっちまう」

サーバル  「やっぱり飛べないのか……」

ツチノコ  「あれには間に合わんかもしれんが、燃料は残ってるし、図書館で調べて、博士たちと協力して、時間をかけて整備すればいつかは……」

 

サーバル  「いつか、飛ばせるといいね」

 

   BGM終了

 

かばん   「そういえばあのヒト、ヘビが苦手だったよね?」

ツチノコ  「…………」

 

 

 かばんら一行が旅立った後のキョウシュウ。

 

   BGM「風を感じて」

 

 ツチノコによって、海岸の飛行場の格納庫で発見された双発のプロペラ機。フレンズたちは、試行錯誤しながらそれを修復していった。

 飛行機は、大物部品の状態は良かったが、劣化した消耗部品や損傷した部品などがあり、修理と調整が必要だった。

 燃料は貯蔵タンクに残されていた。

 

 

ワシミミズク(助手)     「読めないのです」

アフリカオオコノハズク(博士)「わけがわからないのです」

ツチノコ           「ちきしょう……難解すぎる……」

 

 ……図書館の本によって知識を得た。格納庫に残されていた、整備マニュアルの解読が行われた。

 

 

ライオン       「こんなのしかなかったけど、どうかな?」

博士         「穴径を大きくすれば、使えるかもしれないのです」

 

アリツカゲラ     「ランプの部品、使えないでしょうか?」

ツチノコ       「分解すれば……」

 

コツメカワウソ    「川の底に落ちてたよー」

助手         「すごいです。ピッタリなのです」

 

 ……多くのフレンズに協力してもらって、交換部品(の代用品)や工具を探した。

 

 

ツチノコ       「パッキンが劣化してるな……」

アメリカビーバー   「バスのタイヤ、加工して使えないッスかね」

 

 ……放置されたバスや、ヒトの作った遺物の部品の流用が行われた。

 

 

アメリカビーバー   「きれいな図面ッスね……」

タイリクオオカミ   「ここの合わせ、高い精度が必要だけど、測定じゃわからないから現物合わせになるね」

オグロプレーリードッグ「大きめに作って、削って調整できるであります」

 

 ……タイリクオオカミが新規に作る部品の図面を引いた。

 

 

オグロプレーリードッグ「出来たであります!」

アメリカビーバー   「相変わらず速いッスね」

ツチノコ       「木工だけじゃなく、金属加工も早いのかよ……。」

 

 ……アメリカビーバーとオグロプレーリードッグによる、足りない部品の製作、修復作業が行われた。

 

 

ツチノコ       「この解説書、誰が持ってきたんだ?」

博士         「それは、たぶん…………」

 

 ……ラッキービーストは相変わらずしゃべらなかったが、陰で協力してくれた。

 

 

スナネコ       「本当にこんなものが飛ぶんですか?」

 スナネコが脚の格納部に手を突っ込んでいた。

ツチノコ       「やめろ!余計なことするな!」

 

 ……スナネコに邪魔された。

 

 

 

   BGM・ここからサビ

 

 

ツチノコ       「ダメだ、作動油が漏れてる……」

 

 

博士         「ここは、われわれの手には負えないのです」

 

 

アメリカビーバー   「なんか、動きが固いッスね、あれだけ調整したのに」

 

 

ツチノコ       「カバーが閉まらねえぞ、寸法間違ってねえか?」

 

 

オグロプレーリードッグ「また折れてしまったであります……」

 

 

アミメキリン     「無理しちゃだめですよ」

タイリクオオカミ   「早く上げないと、あの子たちの作業が止まってしまうんだよ」

 

 

ツチノコ       「いてっ、切っちまった」

 

 

 

 長い時間が流れた。無線等の一部の電子機器を除き、飛行機はほぼ修復された。

 

   BGM終了

 

   BGMなし

 

 修復はできたが、飛行機の調整やテストには、予想以上の時間がかかった。

 

 飛行機がエプロン(駐機場)でプロペラを高速回転させていた。

 機内。コックピットの左側、機長席にはツチノコが座っていた。

 部品の痛みこそ少なかったものの、恐ろしく複雑で調整に一番苦労したのがエンジンだった。

ツチノコ       「今日は快調、だな」

 ツチノコは右を見た。誰もいなかった。初飛行時の機長はツチノコに決まっていたが、副操縦士が必要だった。

 

   BGM「けもの達のいきづかい」

 

 まずシミュレーター(温泉宿のゲーム)でパイロットの試験が行われた。

 期待されていた、鳥系のフレンズは、自分の飛行感覚で操縦してしまい、かえって危険なことが判明した。

 縄張りが遠く、飛行場に通う、あるいは飛行場付近で生活するのが困難なフレンズは、選抜から外された。

 特に優秀だったのは、キタキツネだった。「ゲームで鍛えてる」というのは伊達ではなかった。

 

   BGMフェードアウト

 

   BGM「とぼけた仲間達」

 

  副操縦士選抜試験 第2回 兼 操縦訓練 第4回

 シミュレーターで成績の良かったフレンズが、ハイスピードタキシー(地上滑走)試験を行った。

 

 

  ---- タイリクオオカミ ----

 

ツチノコ       「止まれ、止まれええええ!オーバランしちまう!」

 飛行機は、オーバラン寸前で止まった。

タイリクオオカミ   「いい表情(かお)いただき」

 タイリクオオカミ:器用で物覚えも良かったが、心臓に悪い操縦を行ったうえ、試験中にスケッチを行う問題行動があったため失格。

 

 

  ---- パンサーカメレオン ----

 

パンサーカメレオン  「怖かったでござる……」

ツチノコ       「まあまあだな…………半分、消えてるぞ!」

 パンサーカメレオン:一通りこなしたが、緊張しすぎて姿を消してしまい、動作が見えなくなって危険だった。保留。

 

 

  ---- スナネコ ----

 

 スナネコは、ツチノコと仲がいいから、といういい加減な理由で連れてこられた。シミュレーターの操縦は上手かったが、すぐに投げ出してしまった。

ツチノコ     「よし、エンジンスタート…………って居ねえええ!」

ツチノコ     「…………ま、わかってたけどな……」

 スナネコ:コックピットに入った時は興味津々だったが、エンジンスタート前にどこかへ行ってしまい失格。※3

 

 

  ---- アルパカ・スリ ----

 

アルパカ・スリ    「うまくいかないもんだにぇ」

 アルパカ・スリ:ひと通りこなしたが、不安定なので保留。

 

 

  ---- ジャガー ----

 

 ジャガーの縄張りは飛行場から遠かったが、頼まれたら断れない性格のためやってきた。

ジャガー       「わからん……全然わからん……」

 ジャガー:初めはシミュレーターよりはるかに複雑なコックピットを見て困惑したが、操縦は器用にこなした。合格。

 

 

  ---- カバ ----

 

カバ         「あら、取れてしまいましたわ」

ツチノコ       「なにやってんだ、お前ええええ!」

 カバ、精神面は強かったが:操舵輪(ヨーク)を破損させ失格。

 

 

  ---- リカオン ----

 

リカオン       「オーダー……完了しました……」

ツチノコ       「なかなかいいな」

 リカオン:そつなく一通りこなしたが、緊張しすぎなのがやや不安。合格。

 

 

  ---- サバンナシマシマオオナメクジ ----

 

ツチノコ   「誰だお前!、選抜メンバーじゃねえだろ!、つーかどうやって操縦する気だ!」

ツチノコ   「うああ!!なんだそれ!なに出してんだ!やめろさわるな気持ちわりい………」

 サバンナシマシマオオナメクジ:そもそもフレンズなのかも不明。なぜか操縦できたが、突っ込みどころが多すぎて失格。そのあと座席がベタベタになった。

 

 

  ---- フンボルトペンギン(フルル)----

 

 フルルはシミュレーターではキタキツネと並び天才的な操縦をみせた。

マーゲイ     「さすがフルルさん!無骨なコックピットとのギャップがいいですねえー」

フルル      「このいす座りやすいねー」

ツチノコ     「そろそろ行くぞ」

マーゲイ     「アイドルにそんな危険なことさせられません!」

ツチノコ     「なんでだよ!もったいねえだろが!」

 フルルがうしろを振り向き、何かを見ていた。

フルル      「…………」

マーゲイ     「フルルさん?」

 フルル:マネージャーのストップがかかり棄権。※4

 

   BGM終了

 

  ---- キタキツネ ----

 

   BGM「けもの達のいきづかい」

 

 滑走路の端。  

 飛行機のプロペラとエンジンの音が変わった。ブレーキリリース。飛行機が滑走路を走り、速度を増していった。機首を上げ、エンジンの出力を落とした。飛行機は徐々に減速し、自然に機首が下がった。前脚が接地し、主脚のブレーキとプロペラピッチ角の変更(逆推力)により、さらに減速した。滑走路に余裕を残し、十分に減速した飛行機は、滑走路の端でUターンして、エプロンへ戻っていった。

 

   BGMフェードアウト

 

キタキツネ(機長席)「飛べないとおもしろくないね」

 ツチノコは驚いた様子で言った。

ツチノコ       「……完…璧……だ…………」

キタキツネ      「…………うしろ、なにかいる」

 

   BGM「けものおばけ」

 

 ツチノコが振り返って、後部座席を見た。

ツチノコ       「何もいねえぞ、怖いこと言うなよ…………」

 

   BGM停止

 

 飛行機が駐機場へ戻ってきた。上空で様子を見守っていたハシビロコウが降りてきた。

ハシビロコウ     「しっかり真ん中を走ってて、ふらつきもほとんどなかった」

 

   BGM「けものおばけ」(イントロなし)

 

 その後、後部座席にペンギンの幽霊が現れるという噂が流れ、ほかの訓練生が怖がって試験が出来なくなってしまった。

 

   BGMフェードアウト

 

   BGM「風を感じて」

 

 初飛行時の副操縦士はキタキツネに決まった。機上整備員として、アメリカビーバーとオグロプレーリードッグが搭乗することになった。

 

 その後、訓練と機体の調整が繰り返し行われた。

 キタキツネはシミュレーターでも地上滑走でも驚異的な操縦能力をみせた。シミュレーターでは普通に飛ばすだけでは飽き足らず、空対空戦闘やアクロバット飛行までこなした。もともとの能力が高かったのに加えて、訓練によりさらに上達していった。

 

 飛行場のそばの空で、博士と助手が訓練の様子を見守っていた。

助手    「博士 あれはいつ飛ぶのですか?」

博士    「ツチノコとビーバーは慎重すぎるです。もういつでも飛べるのです。」

助手    「無理もないですね、命がかかっているですから」

博士    「命がけなのはわかるです。でもキタキツネの能力は異常なのです。飛行機を自分の体にできるです。鳥になれるのです。もう訓練する必要はないのです」

 

 飛行機の調整がひと段落つくと、ツチノコは、飛行機の調整をアメリカビーバーたちにまかせて、温泉宿のシミュレーターで訓練した。

 

   BGM終了

 

   BGMなし

 

 格納庫。飛行機は整備中だった。飛行機のそばのテーブルで、タイリクオオカミが図面を広げていた。

ツチノコ       「なんだ、ごりゃああああ!」

 機内に入たツチノコが叫んだ。

 

   BGM「洞窟の奥」

 

 飛行機の操舵輪(ヨーク)が操縦桿(スティック)に変わっており、座席のシートベルトが

全て、5点式シートベルトに変わっていた。

 副操縦席にキタキツネが座っていて、客席ではアメリカビーバーとオグロプレーリードッグが、座席のわきにある折り畳み式テーブルを取り外していた。

ツチノコ       「……オレのいない間に……なんでこんな…………」

 ツチノコはうつむいて、怒りに震えた。

 キタキツネが、操縦桿を握って言った。

キタキツネ      「このほうが操縦しやすい」

アメリカビーバー   「えっと、シートベルトは、このほうが安全ッスから……」

オグロプレーリードッグ「軽くするために部品を外していたであります!」

 

   BGMフェードアウト

 

   BGM「不安な瞬間」

 

ツチノコ       「…………ほかに、どんな改造を……」

アメリカビーバー   「以前から、ちょいとずつやってたんスけど……エンジンの制御系をいじって出力制限を上げて、翼の後縁を延長して動翼の面積を増やして、動翼の制限角度を変更して、操縦応答性を上げるように…………」

ツチノコ       「やりすぎだ!そんなことしたらバランスが狂っちまうだろが!」

アメリカビーバー   「…………えっと、計算上は問題ないはずッス」

 ツチノコは顔をあげ、言った。

ツチノコ       「…………お前ら……お前らは死ぬ気か!!」

 ツチノコは機外へ飛び出し、走って行った。

アメリカビーバー   「ツチノコさん…………泣いてたッス……」

 キタキツネはコックピットから素早く客席へ行き、機外へ出てツチノコを追った。

 

   BGMフェードアウト

 

   BGM「けもの達の哀しみ」

 

 ツチノコは滑走路の端に立って、そこから伸びる滑走路を見ていた。

 キタキツネが走って滑走路にやってきた。

キタキツネ 「はあ、はあ……ごめん、ごめんなさい…………ぜんぶ、ぼくがやれって言ったの」

ツチノコ  「お前と、あの心配性なビーバーがやったことだ。安全なんだろうよ」

キタキツネ 「…………」

ツチノコ  「オレはな、怖いんだよ。……オレのわがままで、こんな面倒なことにみんなを巻き込んじまって。ひとりで飛べりゃいいが、落ちるだろうな。オレはそれでも構わんが、みんなの苦労が無駄になっちまう。…………それに、時間がかかりすぎた。…………ほかのやつら、みんな、あんなもの飛べないって思ってるんだ」

 

   BGMフェードアウト開始

 

キタキツネ      「あれは飛べるよ、だいじょうぶ」

 

   BGMフェードアウト終了

 

   BGM「凪」

 

ツチノコ       「………………くやしいが……お前は……」

オグロプレーリードッグ「ツチノコどのー」

 オグロプレーリードッグとアメリカビーバーがやってきた。

アメリカビーバー   「ツチノコさん、申しわけないっス、全部もとの形に…………」

ツチノコ       「もう遅い。無理に戻すとかえって危険だ」

タイリクオオカミ   「やっぱりここにいたね」

 タイリクオオカミが歩いてきた。

タイリクオオカミ   「私も謝らなければいかんな。済まない。…………なにか悩んでいるようだが……みんな楽しんでいるんだよ。あれを飛ばすこと……君を手伝うことをね」

ツチノコ       「…………改造個所を教えろ。……全部オレが確認する」

 

   BGM終了

 

   BGMなし

 

 初飛行前夜。格納庫。

 ツチノコが一匹で、飛行機の点検をしていた。

 ガチャリ、と格納庫わきのドアが開き、誰かが入ってきた。

ツチノコ       「うああ、誰だああ………………スナネコ!、何でここに?」

 

   BGM「ようこそジャパリパークへ ~オルゴール ver.~」

 

 スナネコはツチノコのそばへ歩くと、飛行機を見て、言った。

スナネコ       「これは本当に安全なんですか?」

ツチノコ       「何度も言っただろ。落ちねえよ」

スナネコ       「絶対に、ですか?」

ツチノコ       「………………」

 スナネコはツチノコの顔を見た。スナネコは無表情だった。

スナネコ       「…………明日は見に行けません。ボクは夜行性なので」

ツチノコ       「…………そうかよ……」

 

 間。

 

 スナネコは一歩踏み出し、ツチノコに顔を近づけた。

ツチノコ       「…………な……なんだよ」

スナネコ       「なにもしないんですか?」

ツチノコ       「……何も?………………」

 ツチノコは、顔を赤くして目をそらした。

ツチノコ       「そういうのは……こいつが飛んでからだ」

 スナネコはかすかに笑うと、ツチノコから一歩引いて、ツチノコに背を向け、足早にドアから出て行った。

 

   BGM終了

 

   BGM「水辺のやすらぎ」

 

 初飛行の日。

 エプロンにはたくさんのフレンズが集まっていた。

ツチノコ       「なんでこんなにいるんだよ……」

 ツチノコは飛行機の陰に隠れていた。 ツチノコは、フードの上から焦げ茶色のカウボーイハット(ソフトハット) をかぶり、茶色のレザージャケットを羽織っていた。いつもの下駄ではなく、茶色のブーツを履いていた。

アメリカビーバー   「点検終わったッスか?」

 アメリカビーバーが飛行機のドアから顔を出していた。

ツチノコ       「問題ねえよー」

タイリクオオカミ   「こっちも問題ないよ」

 脚の陰にしゃがんでいた、タイリクオオカミも答えた。

 

 

 初飛行のメンバーは以下の通り。

 

・ 機  長  : ツチノコ

・ 副操縦士  : キタキツネ

・ 機上整備員 : アメリカビーバー・オグロプレーリードッグ

・ 付き添い  : ギンギツネ

・ チェイサー(随伴機): トキ・ショウジョウトキ

・ 管  制  : アフリカオオコノハズク(博士)・ワシミミズク(助手)

・ 地上整備員・記録係   : タイリクオオカミ

・ 地上整備員・マーシャラー: ハシビロコウ

 

 

 エプロン

 飛行機のそばに、博士と助手が飛んできた。

助手      「ついに、この時がきたのですね」

博士      「待ちくたびれたです」

ツチノコ    「博士、その……お願いがあるんだが……」

博士      「なんですか、いっしょには乗りませんよ」

ツチノコ    「ジャパリまん持ってたらオレに一つくれねーか?  あとで必ず返すからさ」

タイリクオオカミ「本来は私の役割なんだが、あいにく持ってないんだよ」

博士      「意味がわからないのです。というか、なんなのですかその恰好は?」

ツチノコ    「考古学者に飛行機っつったらこの恰好なんだよ!」

 

   BGM終了

 

   BGMなし

 

 全員の搭乗が完了した。

 ツチノコが、コックピットわきの窓をから顔を出し叫んだ。

ツチノコ    「お前らー、近寄るんじゃねーぞー!」

 ハシビロコウが飛行機の前に立ち、後ろを振り向いた。

ハシビロコウ  「みんな、私よりも下がって」

 

   BGM「けもの達のいきづかい」

 

 ハシビロコウが手を上げ、パイロットにハンドサイン(エンジンスタート)をおくった。

 ガスタービンの始動音と共に、飛行機の左のプロペラが、ゆっくりと回り始めた。観客からどよめきが起こった。プロペラは徐々に回転数を上げっていった。続いて右のプロペラが回り始め、回転数を上げっていった。

 

 長い点検を終えた飛行機が、エプロンから滑走路へとゆっくりと移動していった。滑走路に乗ると左へ曲がり、滑走路の北の端までゆっくりと移動していった。

 

   BGMボリュームダウン

 

  機内

 客席に座っているギンギツネが、自分を固定している5点式シートベルトの一本を掴んで言った。 

ギンギツネ      「なんでいすに縛り付けるのよ?」

アメリカビーバー   「それはシートベルトといって、安全のための装備ッス」

 ギンギツネはあたりを見渡した。空席があった。

ギンギツネ      「もっと乗れたんじゃないかしら?もったいないわね」

キタキツネ      「犠牲は少ないほうがいいから」

ギンギツネ      「また不吉なことを……」

キタキツネ      「いいよ、ギンギツネといっしょなら」

ギンギツネ      「……そう……」

 ギンギツネは目を細めた。

オグロプレーリードッグ「ビーバー殿といっしょなら、かまわないであります!」

アメリカビーバー   「オレっちも同じッスよ……」

 アメリカビーバーは頬を赤らめた。

ツチノコ       「お前らなんで死ぬのが前提なんだよ!」

 

   BGMボリュームアップ

 

  機外

 飛行機が滑走路に乗った。機首を滑走路の方向に合わせた。ブレーキをかけたまま、左のエンジンの出力を上げ、すぐに落とした。今度は右のエンジンの出力を上げ、すぐに落とした。

 

  チェイサー

 トキとショウジョウトキが、飛行機の真上でホバリングして待機していた。

 

  機内

ツチノコ       「全て正常。滑走路上に障害物は無いな?」

キタキツネ      「だいじょうぶ」

 ツチノコは外、左側を見た。その視線の方向、少し離れたところに、博士と助手が浮かんでいた。

 

  管制

助手「鳥はいませんね。チェイサーの位置も予定通り。少々横風気味ですが、問題ないでしょう」

 

   BGMフェードアウト

 

博士「くりあーど、ふぉー、ていくおふ(離陸に支障なし)、なのです!」

 

 博士は緑色の巨大な旗を上げた。

 

   BGM「サンドスター」

 

  機外 

 プロペラの音が変わった。ブレーキリリース。飛行機が動き始めた。

 

  チェイサー

トキ         「行くわよ」

ショウジョウトキ   「ええ」

 トキとショウジョウトキが、飛行機を追った。トキが左側、ショウジョウトキが右側についた。

 飛行機は徐々に速度を上げていった。

 

  機内

 ツチノコが一瞬、操縦桿を引くのをためらった。

キタキツネ      「はやく上げて」

 

  機外

 機首が上がり、すぐに主脚が路面から離れた。

 

   BGM・ここからサビ

 

 飛行機はやや急な角度で上昇した。すぐにフラップを上げた。

 

  エプロン

 観客から歓声があがった。

 タイリクオオカミは小さなスケッチブックを持ち、ページをめくりつつ無言でスケッチ(クロッキー)していた。飛行機だけではなく、観客や景色なども描いていた。

 

  管制

博士    「本当に飛んだのです…………」

助手    「……ちょっと角度が急なのです………

 

   BGMフェードアウト

 

………何か変ですよ」

 

   BGM「強大な敵」

 

  機外

 離陸した機体は、左に傾いていった。

 

  チェイサー

トキ         「早い!、置いていかれる」

ショウジョウトキ   「なんか、傾いるんですけどー!」

 

  機内

キタキツネ      「戻して、かたむいてる」

ツチノコ       「わかってる!」

アメリカビーバー   「ツチノコさん!パワーを落とすッス!」

 ツチノコは、ほぼ全開だったスロットルを戻した。

 

  機外

 機体はゆっくりと水平を取り戻した。だが今度は左右(翼を振る方向)にふらつき始めた。

 

  機内

ツチノコ       「おさまらねえ!……なんでっ……」

キタキツネ      「おちついて、まんなかに」

 機体は安定を取り戻した。

 

   BGMフェードアウト

 

ツチノコ       「さすが……だな……」

 

   BGM「風を感じて」

 

  機外

 チェイサーが飛行機に追いついた。飛行機が中央、左がトキ、右がショウジョウトキの3機編隊を組んだ。コックピットとチェイサーのやり取りがしやすいように、アブレスト(横一列)編隊を組んだ。チェイサーは飛行機を見ながら、間隔を保って飛行した。

 

  管制

助手    「安定したようですね」

博士    「何なのですかあのスピードは……遠すぎてよく見えないのです」

 

  機内

アメリカビーバー   「やっぱり、シミュレーターとは違うんスね……」

オグロプレーリードッグ「本当に、本当に飛んだであります!」

アメリカビーバー   「……オレっち、ちょっと涙が出てきたッスよ」

ギンギツネ      「ひこうきって、こういうものだったのね…………」

 ギンギツネは、窓の外を見て顔を引きつらせていた。

 

  機外

 飛行機は直進を続け、軽く左右に旋回するのを繰り返した。

 

  機内

ツチノコ     「感覚がつかめてきたな。旋回して戻るぞ」

 

  機外

 飛行機は、ゆるやかに旋回していった。

 

   BGM・ここからサビ

 

  機内

キタキツネ    「気持ちいい飛びかた…………ツチノコは下手だけど、やさしくて、すごく気持ちいいときもある」

ツチノコ     「変な言い方するな!」

アメリカビーバー 「多分、飛行機の操縦も、フレンズによって得意なことが違うんスよ」

 

  機外

 飛行機は旋回を終え、進路を飛行場に向けて直線飛行に移った。

 

  機内

ツチノコ     「操縦、代わってみるか?」

 ツチノコは前を見たまま言った。ツチノコからキタキツネへ操縦が移った。

ツチノコ     「やっぱり……安定してるな……」

 キタキツネが突然、機長席側に手をのばしてランディングギア(脚)レバーを上に上げた。

 

   BGM停止

 

   BGM「とぼけた仲間達」

 

ツチノコ     「おい!初飛行ではギアを上げるなと……」

 ガコンと音がした。

キタキツネ    「足が出てるとかっこわるい」

ツチノコ     「そういう問題じゃねえ!…………表示は……上がってるな……確認するぞ」

キタキツネ    「ちゃんと上がってるよ。へんなかんじ、なくなったから」

 ツチノコが窓の外のトキに手まねきをした。

 

  チェイサー

トキ       「呼んでるわ」

 トキが飛行機に近づいた。

ショウジョウトキ 「あまり近づくとあぶないですよー」

  機内

 ツチノコが窓の外のトキにハンドサインをおくった。(脚は上がっているか?)

 

  チェイサー

 飛行機の脚は上がっていた。トキが飛行機の方を向き、両腕をあげて丸を作った。

 

  機内

ツチノコ     「大丈夫だ……仕方ねえ、まだギアは下ろさない。このまま行くぞ」

 

   BGM終了

 

   BGMなし

 

  管制

博士    「戻ってくるのです」

助手    「足が上がってますね」

博士    「脚のテストもしたのです…………さっきより安定しているです」

 

   BGM「ほがらかな2匹」

 

  機内

 ツチノコが足を動かした。つま先がラダーペダルにコツンと当たった。

キタキツネ    「!」

 キタキツネがビクッとなった。ツチノコはさらにコツンコツンと軽く蹴った。

キタキツネ    「ん……はっ……」

 キタキツネがビクッビクッ反応した。

 ツチノコはニヤリとして、手をはなしていた操縦桿を軽くにぎった。

キタキツネ    「ふぁっ……なに?なにしてるの?」

 キタキツネは驚いたが、前を向いたままだった。

ツチノコ     「操縦に集中しろ」

 ツチノコは操縦桿を指でパチンとはじいた。

キタキツネ    「いたっ」

 今度は操縦桿を下から上へ、人差し指でこすった。

キタキツネ    「ぁあああ……くすぐったい……やめて」

 ツチノコは怪訝な顔をして、いたずらをやめた。

 

   BGMフェードアウト

 

   BGMなし

 

  機内

 右斜め前に、飛行場が見えてきた。

ツチノコ       「コースを滑走路へ。高度を下げてローパスする…………まだギアは下ろさない。ファンサービスだ。」

 

   BGM「セルリアン」

 

キタキツネ      「ふぁんさーびす……まっすぐじゃおもしろくない…………ちょっと遊んでみる……シートベルト、しめてね」

ツチノコ       「お前何する気だ!」

オグロプレーリードッグ「キタキツネ殿、何をするでありますか?」

 オグロプレーリードッグは楽しげだった。

アメリカビーバー   「オレっち、嫌な予感がするッス……」

ギンギツネ      「シートベルトは締めてるわよ?」

 キタキツネは、ギンギツネの言葉を聞くと、スロットルを上げた。

 

   BGM・イントロここまで

 

 プロペラの音が変わる。

 

  機外

 飛行機が速度を上げ、飛行場の前へと差し掛かる。

 

 チェイサー

ショウジョウトキ   「早くなってるんですけど!」

トキ         「旋回するわ、ついていくわよ」

 

  機外

 飛行機が、機体を大きく傾けて左に急旋回。

 

  管制

博士    「あんな動き、予定にないのです」

 

  機外

 飛行機は左に360度旋回して円を描くと、飛行場の前で切り返し、今度は右にに急旋回。

 

  機内

ツチノコ       「なにしてんだお前えええ!」

 

  チェイサー

ショウジョウトキ   「こんなの予定に無かったんですけど!」

トキ         「大きいのに、よくこんな旋回できるわね」

 

  管制

助手    「パイロットが代わったのでは?」

博士    「あれは……キタキツネなのです」

 飛行機が旋回を終え、直線飛行に戻り、ゆっくりと上昇していく。

 

   BGMボリュームダウン

 

  機内

ツチノコ       「無茶しやがって……」

オグロプレーリードッグ「さすがキタキツネ殿、すごいであります!」

アメリカビーバー   「そんな激しくしたら壊れちゃうッスよ」

オグロプレーリードッグ「……その言葉、昨夜も聞いたでありますな」

アメリカビーバー   「……それは言っちゃだめッスょ……」

 アメリカビーバーは顔を赤くして手で覆い、うつむいた。

ツチノコ       「…………オレも、そうすりゃ良かった……」

 

  機外

 飛行機が上昇を終え、右に180度旋回して反転、降下を始める。

 

  機内

キタキツネ      「もう一回……」

ツチノコ       「やめろおおお!」

ギンギツネ      「……死ぬ……死んじゃう…………」

 ギンギツネがうつむいて青ざめ、ぶつぶつ言っている。

 

   BGM終了

 

キタキツネ      「準備運動やめる…………ちょっと苦しいけどがまんしてね」

 

   BGM「けもの達のたたかい」(最初のほら貝みたいなのは無しで)

 

  機外

 飛行機が右にに急旋回。さっきと逆の動きだが、傾きは90度に近く、旋回半径が小さい。主翼がわずかに上に反る。翼端からベイパーが発生し、白い筋状の軌跡を引く。筋状のベイパーは長くのびず、すぐに消えていく。主翼の上面にもわずかにベイパーが発生するが、機体が白いためはっきりとは見えない。

 

  機内

ツチノコ       「腹に力入れろお!」

 

  機外

 飛行機が飛行場の前で切り返し左へ旋回。こちらも旋回半径が小さい。

 

  機内

オグロプレーリードッグ「ちょっと苦しいどころじゃ……ないであります……」

 

  機外

 飛行機はそのまま旋回を続け、ベイパーを引きながら、らせんを描いて上昇していく。

 

  機内

アメリカビーバー   「意識が……飛んじゃうッス……」

 

  チェイサー

ショウジョウトキ   「もう無理なんですけど!」

トキ         「だめ、ついていけない」

 

  管制

博士    「チェイサーがおいていかれたです」

助手    「やはり猛禽類に頼むべきだったのでは?」

博士    「あの図体でこんな動き、想定外なのです」

 

  機外

 飛行機が高度を落として加速し、機首を引き起こして急上昇。垂直、を通り越して一瞬背面になる。ツチノコの帽子が飛ぶ。

 

  機内

オグロプレーリードッグ「さ、さかさま、で、ありますー」

 

  機外

 飛行機はそのままの勢いで降下に転じ、水平飛行に戻る。ループ(宙返り)が完成した。

 

  チェイサー

トキ         「好きにやらせるしかないわね」

ショウジョウトキ   「そうですね」

 チェイサーが飛行機を追うのを諦め、ホバリングに移る。

 

  機外

 飛行機が再度上昇して反転、滑走路に向けて急降下。

 滑走路上を低空で通過しつつ、観客の前でグルグルと右回りに2回連続ロール(横転)。すぐに左回りに2回連続ロール。

 

  機内

ツチノコ       「本当に……壊れ……ちま……」

アメリカビーバー   「目が回るッス……」

 

  エプロン

 観客からどよめきが起こる。

 タイリクオオカミが、上空を見て、サラサラと描いて、すぐにページをめくる、を繰り返している。絵のわきに文字も書き込んでいる。

 

  機外

 飛行機は、また上昇。こんどはやや緩い上昇で、高高度へ上昇していく。

 

 チェイサー

ショウジョウトキ   「楽しそうですね」

トキ         「踊ってるわ…………ひこうきーはー…そらをーのぼーるー……♪」

 

  管制

助手    「どこまで上がるのです?」

博士    「点にしか見えないのです」

 

  機内

キタキツネ      「歌が聞こえる。トキさんだね」

ツチノコ       「……お前……何する気だ……何を言って……」

 

  機外

 十分に高度をとると、飛行機が反転し、飛行場前の海へ向かって急降下。速度が増していく。

 

  機内

 機体がガタガタと振動し始める。

アメリカビーバー   「だめッスよ!バラバラになっちゃうッス!」

 

キタキツネ      「気絶しないでね」

 

 キタキツネが操縦桿を思い切り引く。

 

  機外

 降下していた飛行機が、低空で機首をガクンと引き起こして上昇に転じ、U字を描く。

 

  機内

 一同、声も出ない。機体がきしむ音がする。

 

  機外

 飛行機がロケットのように垂直に上昇。上昇中に、ドリルのように連続ロール。

 

  機外

 飛行機がロールを止め、徐々に速度が落ちていく。プロペラの音が途切れる。さらに速度が落ち、飛行機が一瞬、空中に止まる。

 真上に投げた石が落ちるように、飛行機はわずかに後退。すぐにクルリと回転し、機首を下に向けて降下。プロペラの音が再開。

 

  エプロン

 観客から再びどよめきが起こる。

 タイリクオオカミは無心でスケッチ(クロッキー)している。相変わらずペースが速い。

 

  管制

助手    「……止まった……というかうしろに進みませんでしたか?」

博士    「……ありえないのです」

 

  機外

 飛行機が不安定に回転しながら、海に向かって木の葉のように落ちていく。先ほどより速度は遅いが、高度が低い。

 

  管制

助手    「落ちるのでは?」

博士    「おしいフレンズを亡くしたです」

 

  機外

 飛行機が海面近くできりもみを止め機首を引き起こし、海面に突入する寸前でわずかに上昇、水平飛行に移る。

 すぐに飛行機が大きく右に機体を傾け急旋回を始める。右の翼端がかすかに海面に接触し、海面に白波を立てる。左の翼端からは筋状のベイパーが発生する。飛行機はそのまま急旋回を続け、海面に円を描いていく。

 円を描き終えた飛行機は、傾きを戻し、ゆるく上昇していった。

 

   BGM終了

 

   BGMなし

 

  機内

キタキツネ      「もっと遊びたかったけど、燃料が少ないね。ざんねん」

ツチノコ       「…………ここまで……とは……」

 ツチノコは悔しそうだった。

オグロプレーリードッグ「すごいであります!楽しかったであります!」

アメリカビーバー   「……回復……早いッスね……オレっち……震えが止まんないッス……」

アメリカビーバー   「……えと、ギンギツネ……さん?」

ギンギツネ      「…………」

 ギンギツネは失神していた。

キタキツネ      「着陸するよ。操縦代わる?」

ツチノコ       「………………いや、お前のほうが安全だ」

 

   BGM「お家ができた!」

 

  機外

 飛行機は、旋回して進路を滑走路に合わせ、高度を落としていった。

  チェイサー

ショウジョウトキ   「終わったみたいですね」

トキ         「また、追うわよ」

 

  機外

 飛行機とチェイサーは3機編隊を組んだ。中央が飛行機で、トキが左側、ショウジョウトキが右側についた。

 

  機内

キタキツネ      「ふぁんさーびす」

 

  エプロン

 編隊が観客の前を通過し、飛行機が大きく翼を振った。

 観客から拍手と歓声が沸き起こった。

 タイリクオオカミはちらりと横を見て、すぐにスケッチブックに目線を戻した。

 

   BGMフェードアウト開始

 

 彼女はスケッチブックに、「空を見上げる猫のフレンズの横顔」を描いていた。

 

   BGMフェードアウト終了

 

   BGM「自然の中で」

 

  機外

 飛行機はチェイサーを引き連れて、旋回して速度を落とし………………フラップを下げ………脚を下げた。ツチノコが、トキに脚が下がっているかハンドサインで確認した。

 

  管制

 博士が緑色の巨大な旗を振っていた。助手が巨大な(着陸方向の)矢印のパネルを掲げていた。

  機外

 ……滑走路に進路を合わせ……徐々に高度を落とし…………………………主脚が接地した。

 

  機内

 ドン、と軽い衝撃があった。

 

  機外

 機体はバウンドせず、スムーズに滑走路を走った。ブレーキ、リバースピッチ。

 チェイサーの二羽は高度を保ち、上から飛行機を見守りながら併走し、滑走路上を通過した。

 

   BGM終了

 

   BGM「フィナーレ」

 

  エプロン

 飛行機がエプロンに戻ってきて、ハシビロコウに誘導され、観客の前に止まった。チェイサーの二羽も戻ってきて、飛行機の上でホバリングした。ハシビロコウがパイロットにハンドサイン(エンジン停止)をおくった。飛行機のプロペラが回転数を落とし、止まった。

 

  機内

 ツチノコとキタキツネは機体の点検を済ませ、ドア開放の準備をした。

 キタキツネは、後部座席のギンギツネのそばへ行き、ツチノコもその後を追った。操縦席のうしろに例の帽子が落ちていた。ギンギツネは意識を取り戻していたが、顔色が悪く、放心していた。

キタキツネ      「ギンギツネ……ごめん……」

オグロプレーリードッグ「二人は先にいくであります!」

アメリカビーバー   「主役ッスから……ギンギツネさんは任せるッス」

 ツチノコは例の帽子を拾ってかぶると、飛行機後部、左側にあるドアを開けた。ドアは外側へ下に開き、タラップになった。

 

 飛行機のドアが開き、タラップを搭乗者が降りてきた。観客から拍手が起こった。

 

   BGM・ここからサビ

 

 ツチノコは、恥ずかしそうに、うつむいて降りてきた。

 キタキツネは降りるとすぐ、ツチノコのうしろに隠れて歩いた。

 アメリカビーバーがうしろを気にしながら降りてきた。

アメリカビーバー   「大丈夫ッスか?」

 オグロプレーリードッグが、ギンギツネを支えながら降りてきた。

ギンギツネはオグロプレーリードッグに支えられ、おぼつかない足取りで降りてきた。

ギンギツネ      「……うっ……おえぇ…………」

 ギンギツネはひどく気分が悪そうだったが、吐いてはいなかった。

 

  管制

助手      「泣いているのですか」

博士      「泣いてないのです…………ジャパリまん……返してもらう…です」

 

  エプロン

 観客の前に並んだ5匹。上にはチェイサーの2羽がホバリングしていた。

タイリクオオカミ「みんないい表情(かお)だ…………ほら、行きなさい」

 タイリクオオカミは誰かの背を押すと、目の前の光景をスケッチした。彼女の足元には、10冊を超えるスケッチブックが積み重なっていた。

 

 観客の中から、スナネコが飛び出してきた。

ツチノコ    「なんだおま……」

 スナネコは、ツチノコに抱き着くと、頬をツチノコの頬に押し付け、耳元でささやいた。

スナネコ    「……ねむい……です…………夜まで寝てます……まってて…くだ……」

ツチノコは、無理やり頬を離し、顔を赤くしてそっぽを向いた。

 

 ツチノコは、そっぽを向きスナネコに抱き着かれたまま、隣に立つキタキツネの背中を押し、前へ出るよう促した。そして、キタキツネの手首をつかみ、高く掲げた。

 

 再び、歓声が沸き起こった。

 

 

 

 

 

 おわり

 

   BGM終了

 




 あとがき

   BGM「動物紹介」

 読んでいただきありがとうございます。
 「BGM付きSS」という無謀な実験をしてみました。私がBGMを聞きながら読むと、30分ぐらいで読み終わります。
 これは問題点だらけ、というか問題しかないですね。読み手がサントラを持っていることが前提で、曲を覚えなければ脳内再生が出来ないうえに、指示が複雑で文章に集中できず、読むスピードと曲をシンクロさせるのはほとんど不可能です。曲が盛り上がったり静かになったりするタイミングも考えているのですが、それを文章に書き込むと、さらに複雑でぐちゃぐちゃになってしまいます。ゲームのBGMみたいにループ再生させるしかないのかもしれません。
 ラストシーンに「フィナーレ」をかけることが、このテキストを書いた最大の目的です。正直に言うとそれ以外はおまけみたいなものです。自己満足です。
 曲が場面に合っていないと思う個所がたくさんあります。選曲や開始・終了のタイミングがおかしいだけでなく、サントラの中に、場面に合う曲がないという問題もあります(サントラ未収録の曲も多いようです)でも他作品の曲を持ち込むと別の問題が発生するので、アニメ1期の曲だけを使用しました。
 インディージョーンズのテーマを使おうと考えたのですが、浮きまくるのでやめました。

   BGM終了

 「けもの達のたたかい」がかかる所は、複雑なので本文には書きませんでしたが、CDそのままだと曲の長さが足りません。「飛行機は、また上昇。こんどはやや緩い上昇で」で、曲が静かになり、「低空で機首を引き起こして上昇に転じ、U字を描く。」で曲が盛り上がります。
 「飛行機がロールを止め、徐々に速度が落ちていく。」で再び曲が静かになり、「飛行機が海面近くできりもみを止め機首を引き起こし、」で再び曲が盛り上がり、「ゆるく上昇していった。」で曲が終わる感じです。終半はCDと同じ流れになります。


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