ONE PIECE 自由気ままに   作:海鳴

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主人公の能力が明かされます。


2.修行と準備

「多分、俺の能力は引力と斥力を操る力だと思います」

 カイトはレイリーにそう答える。

「引力と斥力……自然系(ロギア)ではなく超人系(パラミシア)か」

 レイリーはカイトの能力に納得した。

 カイトは天啓のように自身の異常な力を把握していた。実を食べた時より生じた違和感は、実によって引き起こされた身体の変容であり、そうなると同時にカイトは自身がどのような能力が使えるか理解したのだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「まずは来る時にも言ったが、基礎を鍛えることからだ。君は身体能力は申し分ないが何分戦うための基礎を知らん」

 レイリーはカイトを凪の帯(カームベルト)にあるバランダム諸島に連れてきていた。この諸島に来るまでに何度か海王類との戦闘があったが、カイトは戦わずレイリーの戦闘から学んでいた。

「このバランダム諸島は34からなる諸島であり、そのどの島も環境が全く違う。この海で生きていくためには過酷な環境を制覇しなければいけないのだ」

「了解」

「次に覇気だが、覇気には大別して3種類ある。一つは見聞色。一つは武装色。もう一つは限られた者のみが持ちうる覇王色の覇気だ」

 カイトは事前に聞かされていたことの再確認も兼ねて耳を傾ける。

「俺には前者二つの素質があるわけですね」

「そうだ、覇王色の覇気の素質は残念だが感じられない」

「それで俺はこの諸島でどうすればいいんですか?」

 カイトはこの諸島に来る時に唯一教えてもらえなかった修行の内容を聞いた。

「なに、簡単だ。この34ある諸島の猛獣たちを、覇気を用いて攻撃し防御し倒せばいいのだ」

 34ある諸島とは言うが、その島々で気候・環境が違うのだ。つまり島によって生息する猛獣も違ってくるということになる。それを未だ全容を把握できぬ覇気で倒すことはできるのか。カイトは性格に似合わず不安に感じた。

「能力は……」

「飽くまで能力は保険として使いたまえ。よし、基礎の基礎はこの2週で叩きこむ」

「分かりました」

「その後はひと月ごとに経過を見に来る。私もずっと家を開けてはおれんのでな」

 カイトは何の不満もなくレイリーの言葉にうなずいた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「では、またひと月後ここで」

 レイリーはそう言い残すと海へ飛び込み悠々と泳いで行った。

 二週間で覇気の基礎の基礎をカイトに叩きこんだ。カイトはレイリーの言葉の通りに覇気を扱おうとしたが一週間ほどなにも感じず、覇気の「は」の字すら感じることができなかった。

 しかし一週間ただ作業するように、覇気を心に描き続けると世界の声が聞こえた。それからはすぐに武装色の覇気を見に付けた。一度感覚を覚えればカイトにとってこれほど簡単なことはないといわんばかりにスムーズに上達した。

 そして二週間を終えるころ、覇気の基礎の基礎はマスターしたと言っても過言ではないほどになったのだ。レイリーもこの成長速度には舌を巻きつつも、弟子の育つ姿を嬉しい気持ちで見ていた。

 二週を過ぎた後、レイリーは別れ際にカイトへさらなる修行内容を伝えたのだった。

 

 修行1ヶ月目

「おし! いっちょやるか!!」

 カイトはレイリーが海王類を屠るのを見届けてから、自らに気合を入れた。

 レイリーから言い渡されたこのひと月での課題は、現在カイトがいる島の猛獣の数を把握することだ。つまりさらに見聞色の覇気に磨きを掛けろということであった。

 カイトは島の中央を目指す。その際も覇気を使いつつも戦闘は避ける。能力を使えば一瞬殺すことができる猛獣たちだが、レイリーに言われたことはなぜか律儀に守っている。これもこの二週での自身の力が格段に上がっていると実感できるためだ。カイトはレイリーの言うことを聞いていれば強くなれる確信し、レイリーに貰った無個性な剣を握りしめた。

 

 修行12カ月目

 すでに覇気の基礎は朝飯前となった修行開始より一年。カイトは現在34ある島のうちの12こ目の島にいた。一ヶ月で一つの島を制覇、つまりカイトの地力で倒せてきている。月に一度レイリーが来る際、レイリーが次なる島を明示する。カイトはそれに素直に従った。カイトは、レイリーが順に強くなっていくように指定している、と推測した。

 実際34ある島々では強さが異なっている。レイリーはそれを分かった上で指定していたのだ。

 

 修行34カ月目最終日

 カイトは第34の島でレイリーを待っていた。体は修行開始より一回りは大きくなり、一端の剣士となっていた。修行開始から二年と数ヶ月。長かったかと聞かれればカイトはNoと答えるだろう。それほどこの諸島から学ぶことが多かったのだ。

 海面から水しぶきを上げつつレイリーは陸に上陸した。

「ふむ、見違えるようにたくましくなった」

 レイリーは弟子が立派に育ったと確信した。

「そうか? まぁ鏡もないこんな湿気たところじゃわかんないけど」

 カイトは出会った当時よりもかなりフランクな言葉遣いとなっていた。

「さて、最後の仕上げだ」

「準備はできてる」

 カイトは自信満々に、肩に担いだ10代目の剣を振って鞘を後方に飛ばした。

「では、ルールはいつもと同じだ」

「了解」

 いつものルールとは、カイトの能力によりレイリーとカイト自信に斥力の壁を生成して本気で切りあってもダメージを負わないようにすることと、剣に覇気を付加しないことを示している。覇気を纏わせないのでカイトの斥力の壁を越えることはない。

 レイリーもカイトの様子を見て自身の剣を鞘から抜き出す。カイトがレイリーの肩に手を置いて数秒固まり、そして離れた。

 カイトの自身の斥力場は無意識のうちに常駐しているが、他人に発動させるには一度触れて形成しなければならないのだ。

 両者は10mほど空けた距離で剣を構えて硬直する。彼らにとってはあって無いような距離である。

 どちらも相手の隙を窺い、いかにして切るかの初めの読み合い。

 激突はすぐさま訪れた。じれったさに耐えかねたカイトは能力を駆使し、常人ならば確実に見失う速度でレイリーの後ろに回り込み、袈裟切りを放つがレイリーに容易く防がれる。

 そこから二人は音速の世界で剣戟を繰り広げた。見聞色で互いの攻撃を見切り、反撃する。剣の激突する火花は、場所を目まぐるしく変えて光る。

 決着は最初の激突から数十分後に起こる。それはカイトの持っていた剣が根元付近から折れたのだ。

「ゲッ!? 折れやがった」

「君の負けだ」

 レイリーはカイトの首筋に剣を添えてそう宣言した。

 武装色の覇気を纏わせておけば剣が折れることはなかったが――。

 レイリーは数度目の剣戟から、ほぼ毎回カイトの剣の刃の同じ位置に剣戟を差し込んでいたのだ。それが何重にもなりカイトの剣は破壊された。カイトはレイリーの攻撃を防御することや反撃することに気を取られていて、武器にまで気を配っていられなかったのである。レイリーとカイトの勝敗を別ったのは純然たる戦闘経験の差だったのだ。

「3年弱でよくぞここまで成長したものだ」

 レイリーは弟子の成長をしかと感じていた。

 レイリーはカイトにこのような方法でしか勝てなくなってしまったことに、不思議と悲しさはなかった。逆に弟子が師を超える日は近いという嬉しさがあった。

「結局勝てずじまいか」

 カイトは折れた直剣をみて呟いた。

「これで私からの修行は終わりだ。私の家に来ると良い。今日はごちそうを食わしてやろう」

「そういえばレイさんの家ってどこにあるんだ?」

偉大なる航路(グランドライン)前半の海。最後の島であるシャボンディ諸島だ」

「分かった。ならそこへ行こうかな」

 カイトはレイリーの言葉に頷きながらそう言った。

「よろしく頼むよ」

 そう言ってレイリーは一本の木を切り、船のような形状に仕上げ、頑強なツタを船首に繋いだ。

「まさか……」

 カイトは嫌な予感がした。

「そのまさかさ、年寄りは労わるものだ」

 カイトはレイリーの意図を察して渋々ツタを握ったのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 バランダム諸島を出てから3時間後の日暮れ時。カイトとレイリーはシャボンディ諸島へと無事着いた。

「いやいや、これほどまで速いとは。これは運送業をやった方がいいんじゃないか?」

「……いやいや、時間に縛られる運送業なんてごめんこうむるって」

 カイトはレイリーの冗談を、息を整えつつ軽く流した。

 カイトにとって水面は地面となんら変わらないものである。どちらかというと地面より

 海面のほうが疾駆しやすい。

 カイトはレイリーの乗る小舟を引っ張り、海を走って渡ってきたのだ。しかもその速度は帆船などと比べるまでもなく圧倒的に速い。一歩ごとに引力と斥力を操って加速しているのだ。最大時速は音速を軽く超えるほどである。今回は小舟を引くこともありそこまで速くは走っていないが、泳いで渡るよりも速いことは確かである。

「さぁここが私の家としている場所だ」

 シャボンディ諸島13グローブの、少しだけ飛び出た根の上にレイリーの住まいはあった。

「シャッキー'SぼったくりBAR……ね」

 ぼったくる気満々な店名を見てカイトは少しだけ顔を引きつらせた。

シャボンディ諸島は偉大なる航路(グランドライン)前半最後の島であり、様々なルートを渡航してきた海賊はここで一堂に集うのだ。こんな名前をしてこの物騒な島でやっていくとは、シャッキーなる人物はよほどの人なのか、とカイトは思った。

「シャッキー、今帰ったぞ」

「あらレイさん。今回は早いかったわね。そこのイケてる子は?」

 シャッキーなる人物は、レイリーに連れだって入ってきたカイトに気付くと誰であるのかと質問をした。

「紹介しよう。この子が私が修行を付けていたカイトくんだ」

「はじめまして、引間海人(ヒキマカイト)です」

 カイトはそう言って軽く会釈した。

「ヒキマ・カイトちゃん? ヒッキーちゃんって呼んでいいかしら」

「……え、いや、まぁいいですけど」

 カイトはシャッキーのペースに虚を突かれる。それと同時にヒッキーってひきこもりみたいだな、とも思った。

「さぁ紹介も終わった。シャッキー、今日はカイトくんの修行の修了祝いだ」

「あら、おめでたね。分かったわ」

 シャッキーはそう言うと店の戸口に掛けてあるOPENと書かれた札を裏返しCLOSEにした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 カイトは昨夜のレイリー達との祝いで、酒を飲まされ二日酔いの状態となっていた。

「いてぇ……」

 もう酒は飲まん、カイトは心にそう誓った。

 カイトは修行も終わったので、「これからは好きに生きろ。そして新しい時代を見せてくれ」とレイリーに言われたことを思い出す。

 そして手始めに手っ取り早く金を稼ぐことにした。レイリーから選別として受け取ったのは数万ベリーである。これではいくらなんでも心もとない。

(何事も先立つものがないとな)

 カイトは近場の酒場に入る。酒の臭いが充満して少し気分が悪くなるカイトだが、新聞を一部取って定員に水を注文した。

 水が届いてから一口含み、新聞に付属している賞金首の紙に目を通す。

「さて、今この島にいる賞金首は誰だか」

 目を通したのは良い者の近場にいないと意味がない。カイトはそう呟いて、新聞に何かしら書いてないかと読み始めた。

 新聞を読み進めると気になる記事を発見する。内容はシャボンディ諸島に続々と上陸しつつある海賊たちの名前だ。

「惨忍のサムエル、激昂のヘンリー、星屑のロックスター、火拳のエースねぇ」

 カイトはここに集ったと書かれた海賊たちの名前を読み上げた。

 ふと新聞を読んでいたカイトに影が落ちる。

「俺を呼んだかい?」

 カイトは声のした方掛けられたに目線だけ向けた。そこにはオレンジのテンガロンハットをかぶり、シャツを着崩し上半身を露出した、そばかす顔の気のよさそうな短パン男が立っていた。

「あんたは……?」

「俺はエース、火拳のエースだ」

 エースは「よろしく」とニカっと笑った。カイトは最後に名前を呟いた賞金首かと納得した。

(火拳……ロギアのメラメラの実の能力者か)

「よろしく、ここに上陸した海賊の名前を呟いてただけなんだが」

 カイトは火拳には特に用はないと言う態で、今度は手配書を見る。

「ここいいか?」

 カイトの意思は伝わらなかったのか、エースはカイトとの相席を希望した。

 断る理由もないカイトは相席を承諾した。そしてカイトは新聞の説明から、最も被害を出しており、懸賞金が一番高いサムエルをカモるかと考えた。因みにサムエルの懸賞金は2億3000万である。

「あんたも海賊か?」

 エースはカイトに気さくに声を掛けた。

「いんや、どっちかと言うと今から賞金稼ぎになるところだ」

 そう言ってカイトは新聞を閉じ、エースの顔と手配書を見比べた。

「おいおい、俺を海軍に突きだそうってのか?」

 エースはそうおどけて見せて炒飯を頬張った。

「あんたは自由を求めて海賊やってんだろ? 俺はそういうやつは好きだぜ」

 カイトは新聞に書かれてあったエースの来歴を流し読んでそう結論づけた。カイト自身と同じように自由に生きようとしているのわかったのだ。

「そこに書いてあったのか」

 エースは少々驚いた顔をしてから、カイトにそう聞いた。

「ああ」

 カイトは素直に頷いた。

「あんた、名前は」

 エースはカイトと名乗った青年が良い奴だと直感して名前を聞く。

「俺はカイトだ。それよりお前の仲間はどうした」

 エースはスペード海賊団の船長だ。船長が1人でフラフラしていていいのか、気になったカイトは疑問を口にした。

「今は自由行動の時間だ」

 そう言いつつエースは2杯目の炒飯を頼んだ。

「新世界に向けての準備か」

 カイトは椅子の背もたれにだらしなく体重を掛けた。シャボンディ諸島の次の目的地は魚人島である。海底1万mにあるらしいとカイトは聞いており、「マリアナ海溝より深いのか」と少々驚愕したもので、その水圧に耐えうる魚人は深海魚の一種かと少々疑った。

「ま、そう言うこった」

 エースはそう言って2杯目の炒飯をかきこむ。

 カイトも二杯目の水を飲み、酒場の店主にサムエルの手配書を拝借する旨を伝えた。

「一期一会だ。ここで会ったのも何かの縁かもな。エースお前にこれをやるよ」

 そう言ってカイトはエースにガラスの球を2つ渡す。白と黒、それぞれ色が異なっている。

「なんだこれ?」

 エースは用途の説明をカイトに求めた。

「それは俺の能力で作った一対の球だ。命の危機にでもなった時、それを片方だけ割れ。そしたら俺が助けに行ってやるよ」

 カイトはそう言うと酒場から出て行こうとする。

「おい、カイト!! 俺の船に乗らねーか?」

 エースは人懐っこく邪気のない笑みでカイトを誘う。

「そいつは嬉しい提案だが、俺はこの世界をいろいろ見て回りたいんでな」

 カイトはそう言い片手を上げて酒場を後にした。少々後ろ髪を引かれつつも、カイトはサムエルの居場所に関する情報を集め始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 24番GRの海岸に一隻の大型ガレオン船が停泊している。そのガレオン船の船長は、穏やかに暮らしてきた人々の村をいくつも潰し、蹂躙してきた惨忍の二つ名を持つサムエルである。

 サムエル海賊団の総数は500人超であり、賞金首の数は船長と幹部の合計5人である。最高懸賞金額は船長の2億越えで最低懸賞金は幹部の1000万ベリーである。合計懸賞金額は3億6000万に上る海賊団であり、ルーキー海賊団の中で最も合計金額が多い海賊団だ。

 しかし現在その海賊団の所有するガレオン船は血と硝煙の煙る臭いで満ちていた。

「おい、残念なサムエルはどこいったんだ」

 500人ほどの死傷者の山で、一人の青年は返り血一つ浴びずに立っており、口がまだ聞ける船員に尋問をしていた。

「わ、わからねぇ……夜には帰ってくるって船長は、おいやめろ、助けてく……!!」

 海賊が命乞いを言い終わる前に、青年――カイトは頭を踏みつぶす。彼自身の足で踏みつぶしたはずが、彼の衣服に血痕は付着しなかった。

「使えねぇクズだな。もう夜だぞ」

 カイトは手持無沙汰を紛らわせるためメインマストを蹴り折った。カイトにとって船は航海に必要ないものである。サムエルの船を見つけるのに思った以上に時間が掛ったので、二日酔いの腹いせも兼ねて蹴り折ったのだ。そんな腹いせでメインマストを蹴り折られた側はたまったものではないが。

 カイトはサムエルの船を散策して目ぼしいモノは全て亜空間に放り込んでいく。

「なんだ!! どうなってる!!」

「マストが折れたぞ!!」

 カイトの耳に数人の怒号が入る。

 やっと来たか、そう思ってカイトは甲板から陸へと飛び降りた。

「てめぇは誰だ!!」

 カイトはそんな怒りの声を聞き流しつつ手配書と同じ顔を探す。丁度5人の男の中心に同一の顔を発見した。

「この船が誰の船かわかってんだろうな……!!」

 サムエルは自分の船を破壊されたのに青筋を立てて怒りをあらわにする。

「まぁまぁ落着こうぜ、怒るなって」

 カイトは半笑いで言葉を口にした。カイトは好かない相手には煽りから入るという癖がある。血気盛んな海賊には効果はてき面である。この態度に海賊たちは全員ブチ切れる。

「教育が必要のようだな……クソガキ!!!!」

 サムエルは激昂する。

「何枚に卸されてぇんだ!!?」

 一人は刀を二本持ちそう声を荒げる。

「ぶっ殺す」

 一人は静かに呟く。

「ミンチにしてひき肉にしてやる!!」

 一人は大槌を構えて怒鳴る。

「死に去らせ!!!」

 一人は直剣を抜き放ちカイトに切りかかる。だがその剣は空切った。切りかかった男はカイトの手刀によって首の骨を砕かれ絶命する。

 その一瞬の出来事を見た他の四人は絶句した。誰もカイトがなにをしたのかが把握できなかったのだ。ただ仲間の男が突撃し、剣を振り折りしたと思ったら骨の砕ける音がした。切られたと思った青年の立ち位置は変わっていない。

「怯むな!! 囲んじまえばどうとでもなる!!」

 サムエルは残った仲間に指示を飛ばす。

「これが今話題のルーキーなのか」

 カイトは興味なさげにそう呟く。その言葉は海賊たちにとって嘲笑に見えた。

「かかれ!!」

 船を背にしたカイトを囲った四人の海賊は、指示と共に一斉に切りかかる見事な連携だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌朝。カイトは海軍本部に来ていた。サムエル海賊団を滅ぼしたカイトは船長のサムエルを生け捕りにしてシャボンディ諸島の海軍支部へと届け出た。しかし、そこでは今は2億もの大金は用意できないと言われ、渋々海軍の船に乗り合わせて本部へ来たのだ。

「ここが世界最高戦力が集うマリンフォードか」

 カイトは港で深呼吸をした。思えば船に乗ったのは初めてか、と益体もないことを思いつつカイトは先導する海兵のあとに気絶したままのサムエルを引きずって続いた。

 歩くこと十数秒で目的の場所に着く。

「すみません。残念なサムエルを捕縛したんで、金を下さい」

 カイトは受付と思しき女性に、手配書を見せながら簡潔にそう言った。

「……惨忍のサムエルでしょうか」

 受付の女性は少しだけ間を開け、手配書と一致したのでそう聞き返した。

「そうそう、惨忍のサムエル」

カイトは至極どうでもよさそうに返答をした。

「億越えの賞金首の場合、中将以上の方をお呼びする決まりとなっています。少々お待ち下さい」

 受付嬢はそう言うと電伝虫で電話をし始めた。

「あと10分ほどで着くそうです」

 カイトはそれを聞くと中空に腰掛けて中将以上のお偉いさんが来るのを待つ。

 20分後。

 180はあるカイトを軽々と越えるほどの身長とガタイ、白髪で短髪の正義のマントを羽織った人物が、帽子を被った補佐官と共に現れた。

「センゴクめ、せっかくくつろいでおったのに……人使いの荒いやつじゃ」

「ガープ中将、あちらに」

 ガープはグチグチと呟きつつも、カイトを見つけて声を掛けた。

「ほう、見ない顔じゃな」

 億越えを生け捕りにできる賞金稼ぎなど決まっており、大体知った顔であったガープは見知らぬ若者だっため、そう口にした。

「どうも、これからはどうぞ贔屓に~」

 カイトはそうテキトーに言って軽く頭を下げる。

「そいつが残念なサムエルじゃな?」

 ガープは先程のカイトと同じ間違い方をした。

「中将、惨忍です」

 ガープの後ろに控えていた左官は間違いを正す。

「どっちでもいいわい!!」

「うぅ……」

 ガープの横暴な声と共にサムエルは目を覚ます。

「よう、目が覚めたかサムエル」

 カイトはそう言ってサムエルに声を掛けた。

「てめぇは……夜の!!?」

「どうやら本当にサムエルのようです、中将」

 ガープの補佐官は確認を取る。それと同時にサムエルはここがどこなのかを見渡し、ショックのあまり再度気を失った。

「よし、ボガード。あとよろしく」

「駄目です中将。換金するまで中将が同伴する慣例です」

「嫌じゃ」

 カイトにはホントにこんなのが中将なのかと疑わしく思えてきた。行動が子供のそれのおようである。

「嫌だではありません」

「しょうがないのう。ほれ、金を用意せい」

 ガープは渋々といった様子で換金所の職員に指示を出した。

 数分後。二つのケースと5千300万ベリーの札束が用意された。生け捕りは賞金額の1割多くもらえるのだ。海軍が処刑することに意味があるのだ。

「どうも」

 カイトはそう言って、ケースの中を確認してからワームホールを形成してその中に金を全て放り込んだ。

「なんじゃそれは」

 見たこともない能力にガープは素早く反応した。

「ちょっと俺の能力で作った空間ですよ」

 カイトは一応敬語を用いつつも、かなりおざなりに回答した。

「悪魔の実の力か。初めて見る能力じゃわい。それに便利そうじゃな」

 ガープは妙に関心を寄せ、見送りをすると言いだした。めんどくさいがりと見受けられるガープが付いてくると言ったのだ。カイトの胸中は嫌な予感しかしなかった。

「それじゃあ」

 そう言ってカイトは波止場に着くと、すぐさま何か言われる前に海に飛び降りた。

「あやつ死ぬ気か!!?」

 ガープは慌てて海を見やるが、カイトは海面を地面のように足で踏みしめ、シャボンディ諸島へと向かって走り去った。

 




 ワームホールはドラえもんの四次元ポケットみたいなものです。
 妄想設定として、ワームホールで瞬間移動はできますが、カイト以外はできません。さらに瞬間移動先は大まかにしか決めれません。行きたい地点の100km以上離れた場所に転移する可能性もあります。何度もその場所に行ったり、場所が正確にわかる場所なら誤差は抑えられます。

※ 億越え賞金首の換金の際に、中将同伴が規則と言う設定は原作で言及されていません。それと生け捕りで賞金額1割増も、原作には特に言及ありませんので悪しからず。別名ご都合主義です。
 残念なサムエルはやられ役となったオリキャラです。残念でなりません。
 
 ルフィの旅立ちまで残りおよそ2年。
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