ONE PIECE 自由気ままに   作:海鳴

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4.きっかけ

 カイトは白ひげとの邂逅から数日後、エースのその後が気になった。カイトはワームホールをエースに渡した球へと繋げた。幸いカイトの渡しておいた球は未だエースの元にあったらしく、「ワームホールから抜け出たら深海だった」などということはなく、白ひげ海賊団本船であるモビーディック号の甲板に降り立った。

「おお! カイト、無事だったのか!?」

 そう言ってエースは、白ひげ海賊団の面々が警戒態勢なのを無視してカイトに近寄った。

「エース、ちゃんと生きてたか」

 カイトは体中に包帯を巻かれ、しかし元気なエースを見て表情を緩めた。

「ああ。聞いてくれカイト。おれは息子になることにする」

 エースはとても晴れやかな顔でそう宣言した。息子になれと言われた時は怒りを顕わにしていたエースだが、今は着きものが落ちたようである。

「そうか、エースがそれで良いなら俺は何もいわねぇよ」

 カイトはエースの顔を見て心配は無用だったなと思い、笑い返した。

「エース、そろそろそいつを紹介してくれよい」

 頭頂部以外を剃りあげた男は、部下たちを制止させつつエースに突如現れた人物の紹介を求めた。彼自身も一度だけカイトのことは見たことがある。

「マルコさん。こいつはおれの友達のカイトっていうやつです」

 エースはカイトのことを、マルコを主としてこの場に集まっている船員にも紹介した。

「どうも」

 紹介されたカイトは定型文を口にした。

「カイト? カイトってのはシャボンディ諸島で賞金稼ぎをしてるカイトか?」

 カイトの名を聞くと、マルコではなく他の船員が話に加わった。その船員の言葉を聞いた周りの船員もそのことには覚えがあるのか、ざわつき始める。

「あんたは?」

 カイトは質問に答えずにまず名を問うた。

「ああ悪い悪い。おれはサッチってんだ。ここで四番隊隊長をやってる。よろしくな」

 そう言ってサッチはカイトに握手を求めた。カイトは警戒を怠らずに取りあえず握り返した。

「どんな噂かは知らねぇが、多分そのカイトは俺のことであってる」

 カイトはサッチの質問に答えた。

「賞金稼ぎがエースの友達とは、世の中わからんもんだよい」

 マルコはそう言うと船室へと消えて行った。

「それで『猟犬』がこの船に何しに来たんだ?」

 『猟犬』とはカイトの海賊たちから呼ばれている通称だ。賞金首を狩る者と言う意味と海軍の犬だと言う皮肉が入っている。カイト自身通称は特に興味を持っていない。

「いや、エースがどうなってるか心配してたんだが……」

 カイトはそう言って肩をすくませながらエースを見やる。

「おれはもう大丈夫だ。おれの仲間もオヤジの傘下に入ることになったしな。おれはオヤジを海賊王にして見せる!」

 エースはニッと笑って答えた。

 仲間思いのエースである。船長が抜けたスペード海賊団の行く末を気にするのは当然だったが、白ひげはスペード海賊団を全て息子としたのだ。

「と言うことだから俺は帰るとするかな」

「鼻たれ小僧、今日はエースの加入祝いだ。飲んでけ」

 カイトがシャボンディ諸島への道を開こうとすると、それを遮るように白ひげが現れて豪快に笑う。手にはドでかい酒瓶を握っている。

「……酒は飲まねぇが、お言葉に甘えて飯は食ってこうかな」

 カイトはエースの方を見てからそう答えた。

「そうこなくっちゃな!!」

 エースは友にそう笑いかけた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「クソジジイめ……」

 翌日の正午過ぎ、カイトはシャボンディ諸島の自室で起床した。そして頭を抱えて白ひげに対する恨み事を唱える。

「何が注がれた酒は飲み干せだ。俺は水を頼んだんだぞ……」

 カイトもエースの加入祝いと評して宴を始めた白ひげ海賊団の船員たちに加わった。そこまでは良かった。だが、白ひげに特大の盃で酒を飲まされたのだ。

 さらに仲間の友は歓迎するというのがスタンスらしく、他の船員にも酒を注がれて渋々それを飲んだのだ。

 だが、この宴によりカイトは白ひげの人となりが、少しだけ分かったような気がしていた。

「あぁいってぇ」

 カイトは頭に響く鈍痛に眉をしかめながらも、習慣として新聞を読んだ。

するとそこの一面はエースの白ひげ加入したという記事で埋まっていた。白ひげが技と流出させたのだろう。エースに手を出させないために。

「……俺も一仕事するか」

 カイトはそう言うと、片手で頭を押さえながら部屋から出てルーチンワークのようにシャッキーにコーヒーを注文した。

「そういえばヒッキーちゃん、手紙が来てたわよ」

 シャッキーは思い出したようにカイトに手紙を渡した。その手紙にはご丁寧に蝋で封がされていた。

 差出人は……

「バロックワークス……?」

 カイトに心当たりが全くない組織からの手紙だった。手紙の内容は賞金稼ぎであるカイトを仲間に迎え入れたいとのことと、興味があれば指定した場所に指定された日時までに来てくれとのことだった。

「なんて書いてあったの?」

 シャッキーも気になっていたようでカイトに内容を聞いた。

「賞金稼ぎ集団からの御誘いだそうだ」

 カイトは他言無用の注意書きを無視して、シャッキーに手紙の内容を話した。

「どうするの?」

「明日あたりにそこへ行ってみるか。暇だし」

 カイトは手紙と共に入っていた永久指針(エターナルポース)を握ってそう言った。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「よう」

 エースが白ひげの傘下、息子となってから数週間後、カイトは電伝虫によりエースに呼び出されていた。

「悪いな、呼び出して」

「いやいいさ。どうせ俺は特にやることなんてないしな」

 実際のところ本日もシャボンディ諸島で『猟犬』の犠牲者は出ていた。

「そうなのか。まぁいい。今日は赤髪に会いに行こうと思ってるんだ。カイトも着いて来てくれないか。話したいこともあるし」

「場所は?」

 カイトは快く承諾した。四皇と呼ばれる人物の内の一人であり、剣の達人である。噂に聞くにお気楽奔放な海賊らしく、カイトの性格にもマッチしている。だからカイトもどんな海賊か、一度会ってみたいと思っていたのだ。

「リーバス島ってところにいるらしい。ここらからそう遠くない場所だ」

 そう言ってエースはカイトに永久指針(エターナルポース)を見せた。

 カイトはふーんという顔になる。エースは言い終えると船の真横に取り付けられた小型船のようなモノへと乗り込んでからカイトを呼んだ。

「おれに掴まれ、ストライカーでその島まで行く」

 エースはカイトが能力者だと知っているようで、自分の所有する特殊なボートに乗れといった。しかしどう見ても一人乗りの大きさだった。

「いや、自力で行ける」

 カイトはそう言うやいなや、甲板から海へと飛び出した。

「お、おい!!」

 エースは慌てて、ストライカーを固定していたロープを外して海に着水した。

「どうした、行くんだろ?」

 カイトはエースたちの心配なぞ知らない、とばかりに話しかけた。

「……いや、便利だな」

 エースは苦笑した後ストライカーに炎を送り込んだ。

「エース、早く帰ってこいよ!! お前の隊長昇格祝いなんだ!!」

 エースは船員の呼びかけを聞くと、片手をあげてそれに答えた。

 エースと肩を並べて海を走ること2時間ほどで、目的の島へとカイトたちは到着した。リーバス島では情報通り赤髪海賊団が野営をしていた。

「なんだエースか、久しぶりだな」

 紅の髪をした隻腕の男、シャンクスはエースの再訪に喜びを表した。

「ええ、ちょっと紹介しておきたい奴がいまして」

「そこの男のことか」

 シャンクスは力量の把握に覇王色の覇気を用いた。しかしカイトはケロリとしてそれを受けきった。

「どうも、カイトです」

 カイトはエースが敬語なのでそれに合せた。

「『猟犬』か」

 シャンクスはそう呟く。

 赤髪海賊団にもカイトを知っている者がおるらしく、興味深げな視線をカイトに送る。

「よし!! 野郎ども、宴の用意をしろ!!!」

 シャンクスは先の表情からは一変し、そう声を張り上げた。それに習うようにして赤髪海賊団は声を張り上げる。カイトが聞いた噂どおりにお気楽奔放海賊団のようだ。

 カイトはエースが白ひげ海賊団の船員に、早く帰って来いと言われたのを思い出したが、自分のことではないのでスルーした。

「カイト話ってのはおれの弟のことについて何だが」

 酒宴の席でエースはそう切り出した。

「エースに弟がいたのか」

 カイトにとってその情報は初耳で、興味深げに相槌を打つ。

「なんだ、ルフィの話か!?」

 カイトはルフィと言う名をどこかで聞いたような気がした。

「あいつ今頃どうしてるだろうな」

「そう言えばあと1年もしないうちに、フーシャ村を出るんだな」

 シャンクスたち赤髪海賊団の面々はエースの弟、ルフィなる人物にあったことがあるのか、エースの出した話題に盛り上がった。

「シャンクスはエースの弟のことを知ってるのか?」

 カイトはどう知っているのかを聞いた。

「ああ、おれたちは東の海(イーストブルー)にあるフーシャ村ってところにちょいと滞在したことがってな」

 シャンクスは思い出すように、フーシャ村での出来事を話す。時折ルフィという少年のぶっとんだ行動で笑いが起こる。

「ルフィってやつはなかなか面白いやつだな」

 カイトの抱いた印象はそれだった。

「あいつはバカだがやるときゃやるやつだったよ」

 エースも自分の弟を思い出しつつも、嬉しそうに語る。

「それで頼みなんだが、ルフィの様子を見てきてくれないか?」

 エースは弟の船旅が心配なようでカイトにそう頼んだ。

東の海(イーストブルー)までか?」

「ああ、おれは隊長になっちまうから本船を離れることはできねぇ。あいつはさっきも言ったがバカだから航海術の一つないと思うんだ」

 この際カイトにとって距離は関係ない。行こうという気持ちさえあればどこへだっていける。たとえ世界の反対側だとしても一日あれば着く。

「よくそれで海に出て海賊になるなんて言えるな」

 カイトはエースの説明に苦笑いした。豪胆なのか無神経なのか判断に困る。

「まぁ、旅時まで時間はある。無理にとは言わねぇ」

「そうだなぁ……フーシャ村ねぇ」

 カイトは腕を組んで少しだけ思案する。別に世界を見る旅のついでに、エースの弟のお守りをするのは構わない。とそこまで考えてから一つ思い出すことがあった。

「ガープ」

 ポツリとカイトはこぼす。

「なに?」

 知った人物の名前が出てきてエースは反射的に聞き返してしまった。

「ルフィってのはガープ中将の孫か?」

「よくわかったな」

 エースはカイトの問いにイエスと答える。

「1~2カ月前に孫のことについて延々と語られたからな。主にいかにして海軍の道に入れるかということをだがな」

 カイトはその時のことを思い出して顔を引きつらせた。

「ルフィは海賊になるって言って聞かなかったろ」

 エースは弟の考えを当てて見せる。

「ルフィらしいな」

 シャンクスは酒をあおってそう呟く。

「ガープ中将もそう言ってた」

 カイトはそう言って間を少し取る。

「で、海軍になるように説得するのを頼まれたんだ」

 カイトが頼まれた理由は簡単で、ガープ自身仕事がある。なおかつカイトの移動手段を知っていたからなのだ。勿論カイトも何度かガープや他の海兵に海軍に入らないかと勧誘されたが全て断っている。何故自ら自由を束縛する場所になど入る必要があるのだろうか。

 説得は頼まれただけで、カイトはまだやると入って無かった。勿論それ相応の礼はするとガープは言っていたが、カイトには金はすでに腐るほどあるのだ。

 しかし友人の頼みを無下にするのも締りが悪いし、何より適当に着いて行くだけで旅ができる。気になった場所があれば途中で降りればいい。飽くまでカイトはフォローに回る。

 カイトにとって一番面倒な目的地決めは、我の強いルフィが決めるだろう。カイトはそう予想した。

 その後エースがいろいろシャンクスと話をしてからカイトとエースは白ひげの船へと戻って言った。

 

 エースから頼まれて2月後、カイトはジジバカと兄バカの依頼を受けることにした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 白ひげとの最初の邂逅より時を遡ること少し、カイトは久々の億越え賞金首を捕まえて海軍本部へと直接足を運んでいた。

 いつも行くシャボンディ諸島の支部では、カイトの荒稼ぎのせいもあり懸賞金を払えるだけのお金がなかったのだ。

それを聞いたカイトは面倒だ、という気持ちを抑えて、海軍本部までひとっ走りしてきた。金が支部に届くまで海賊を捕まえておくことよりも、海軍本部で素早く換金した方がいいと判断したのだ。

「カイト!! よく来たな!! そうじゃ海兵にならんか!?」

 カイトが中将を待っていると、毎回のごとく現れるガープが挨拶がてらに海軍に勧誘した。

「誰がそんな縛りの多い場所に自ら行くんだ。まずはメリットを並べて良さを教えろ」

 カイトもガープのいつも通りのテンションを軽く流す。

「メリットじゃと?」

 ガープはすぐに思いつかないのか、腕を組んで悩む。

「中将、換金の準備をしましょう」

 ボガードはガープにそう催促する。ガープのことである。仕事を片付けずに来たのだろう。こんな上司を持ったボガードにカイトは同情した。

「ガープ!! 貴様仕事を放り出してどこへ行くかと思えば……!!」

「なんじゃゼファーか。わしには新しい仕事がじゃな……」

 ガープには珍しく若干の後ろめたさがあったのか、言葉が尻すぼみとなっていく。

「ん? 賞金の換金か。早く終わらせて来い。新兵への挨拶があるだろう。今センゴクが話をしておる最中だ」

 ゼファーと呼ばれた老将校はガープにそう促した。カイトもゼファーの言葉にそう言えばそんな時期かと思った。

「どっかの学校の入学式かよ」

 カイトは少しのあざけりを乗せてぼそりと呟いた。元いた世界でもカイトは入学式、卒業式などの式は経験している。そして何よりもそれが鬱陶しかった。何故毎度同じ文句を長時間聞いていなければならないのか。それも自分が言われている立場でないのにだ。もっともカイトにとっては自分に向けられた言葉であったとしても、鬱陶しいことに変わりはなかった。

「何?」

 カイトの呟きをゼファーは耳ざとく聞きとっていた。

「そんな慣例行事や儀礼になんの意味があるのか疑問なだけですよ」

 カイトは気だるげにそう返答した。

「この入隊式は海軍の正義を教えるためにあるものだ。無意味なものではない」

 ゼファーは自身の考えが絶対であるかのような物言いである。ゼファーは今いる海兵のほぼ全てに正義とは何かを教えてきた人物だ。この物言いは、そこから来る絶対的な自身である。

「海軍の正義ってのは一律なんですかね」

 海兵でないカイトに取って海軍の正義など知りはしない。しかし海軍の兵士全てが同じ正義を持っているわけではないことは知っている。人それぞれの正しさがあり、義があるのだ。一律では決してない。

「そこまでじゃ」

 ガープには珍しく、険悪になりつつある場の空気を悟ったのか二人の会話に割って入った。なおも静かな睨み合いは続く。

「……ガープ早く用事をすませて来いよ」

 ゼファーはそれだけ言うと踵を返して建物の中へと消えて行った。

「どうしたんじゃ、珍しく食ってかかって」

 ガープはカイトの珍しい態度に疑問を口にした。

「いや、やっぱ正義ってのは難しいと思っただけさ」

 カイトはそう言うと、いつの間にか用意されていた懸賞金を受け取るとともに、賞金首を手渡した。

「そうじゃ、お前さんに頼みがあったんじゃ」

 海へ向かおうとしたカイトをガープは呼びとめた。

「なんだ?」

「わしの孫のことは話したじゃろ?」

「ああ、確か東の海(イーストブルー)に置いてきたとか言ってたな。育児放棄だもんな」

 カイトは自分にかなり無関心だった親でもしなかった、育児放棄をしたガープに対して呆れたのを思い出した。

「育児放棄ではない。愛じゃ」

 ガープは心外だと言わんばかりに胸を張った。

「はいはい、で?」

「海兵になるよう説得して欲しいんじゃ。最近は海賊になると言うて、わしの言うことなど聞いてくれんのじゃ」

「なんでここで育てなかったんだよ」

 海賊になりたいなら、ならせればいいじゃないか、カイトは至極どうでも良かったためそう思う。

「ここは何時でも最前線になりうる場所じゃ、そんなところに可愛い孫を置いておけるか!!」

「赤の他人の俺に説得できるのか?」

 カイトの最大の疑問はこれだった。

「大丈夫じゃ」

 何が大丈夫かは知らないが、ガープにとっては大丈夫なようだ。

「わかった。面倒だから断る」

 カイトはきれいさっぱりガープの頼みを切り捨てた。

「そうかそうか受けてくれるか」

 ガープはカイトの言葉が聞き取れなかったのだろうか。

「話聞いてたか? やっぱ人間歳には勝てねぇのか」

 カイトは憐みの視線をガープに向けると今度こそ海に向かった。

「待つんじゃ!! 待て、待って! お願い! 孫と海軍やるのが夢なんじゃよ!!」

 何がそこまでさせるのか、ガープは必死にカイトの説得を試みる。

「そんな夢知らん!! 俺の説得じゃなく孫の説得に力を入れろよ!!」

 カイトはしがみ付くガープを離そうとするが、力では敵わないのか一向に離れない。仕方がないのでガープを中に浮かせ、踏ん張りが利かなくなったところを弾き飛ばした。

「子供時代の接し方を間違えたんだったな!!」

 カイトは純然たる事実を言い残して海の上を駆け抜けていった。

 




シャンクスとの接触は無理やりですね。まさにご都合って感じです。
次々回位からルフィと出会うことになると思います。

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