ONE PIECE 自由気ままに   作:海鳴

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5話投稿後の伸びにビビる


6.旅の始まり

 男はルフィに名を尋ねた。

「おれがルフィだ」

 ルフィも疲労困憊の体を起こして立ち上がる。その横の三本刀を携えたゾロも身構えた。なぜならその名を問うた男から友好的な雰囲気が感じられなかったからだ。まだ彼らの距離には10m以上の距離が存在している。

「そうか、俺はお前のじいさんに頼まれてここに来た」

 至極穏やかに男は言葉を口にする。

「じいちゃん……!? おれは海軍にはならねぇぞ!!」

 ルフィはじいさんということに心当たりがあったようだ。

「お前の意見は聞いちゃいない」

 男はそう言い終えると彼らの目の前にいた。三者三様にだが一様に驚愕に顔が染まった。ルフィの驚愕の顔は即座に苦悶の表情へと変わった。

「いってえ……!!」

「え?」

 ナミは何が起きたか全くわかっていなかった。すぐ間近にまで迫られていたのを認識したと思ったら、ルフィが崖に叩きつけられていたのだ。しかも打撃が効かないはずのルフィであるにもかかわらず、武器を手に持っていない人間に攻撃されて痛みを感じている。

「てめえっ!」

 ゾロは驚きから立ち直ると男に斬りかかる。しかし男は目線を離しているゾロの斬撃をまるで見ているかのようにして最小限の動きで避け、そしてゾロをルフィとは逆方向に蹴り飛ばした。

「ゾロ!!」

「モンキー・D・ルフィ、お前は海軍に俺が連れて行く。来ないというならここで死ね」

 今の一度の攻防で彼らは理解した。自分たちよりもはるかに強い男であると。

「……おれは海軍にはならねぇ!! ここで死ぬってんならそれがおれの運命だ!! おれは海賊王になる男だ!!!」

 ルフィはそう言い放つ。その眼には諦めなど映っていない。ただまっすぐに眼前を見据えていた。

 ルフィはそう言うと男に向かって攻撃を仕掛ける。けが人とは思えないほどの素早い動き。それとほぼ同時に蹴り飛ばされていたゾロも斬りかかった。右のストレートのゴムゴムのピストルに三刀流の大技の鬼斬り。この二人の攻撃を同時に捌けるものなどこの東の海には存在しない。

だが、男は東の海の者ではなかった。

 ルフィの攻撃を左手で受け止め、ゾロの斬撃を突如どこからともなく出した剣で防いだのだ。

「……合格だ!」

 防いで一瞬の間をおいた後に男は口を開いた。今までの無感情で無味簡素とした表情は嘘のような、悪ガキがいたずらを思いついたような顔になった。

「は?」

「ん?」

「え?」

「いい気概だ。気に入ったよ。エースやお前のじいさんが言ってた通りの男だな」

 そういって男は先までの雰囲気を霧散させカラリと笑った。

「エースを知ってるのか!?」

「あぁ、俺の友人さ。グランドラインから遠路はるばる来たのもエースの頼みがあったからだ」

 エースという人名にルフィは激しく食いついた。

「どういうこと?」

 ナミは未だに混乱から立ち直れていないようだ。

「どうやらルフィの知り合いの友人らしい」

 ゾロはそういうと刀を納め、崖にもたれかかる。

「海軍に入れって言ったのは、お前のじいさんに頼まれてた事さ。別に俺はお前が海軍になろうがなるまいがどっちでもいいんでね」

 そういって肩をすくめて見せる。

「じいちゃんには何回も言ってあるんだけどな」

「俺の本題はエースに頼まれたことだ。お前のことが心配でたまらないらしい。だから俺にお前の補助をしてほしんだとさ」

 兄バカには困ったもんだな、と男――カイトはぼやく。

「なんだそういうことだったのか! わかった、そういうことなら一緒に海賊やろう!!」

 ルフィは手を差し出した。

「海賊になるかはわからんが、一緒に居て面倒を見てやるよ。ちょうど俺も世界を回ってみたいと思ってたんだ」

 カイトはルフィに差しのべられた手を取った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「カイトはどこ出身なんだ?」

「そうだな……しいて言えばシャボンディ諸島か。そこでエースとも会った」

 ルフィの質問に食事の手を止めたカイトは、首を半分ほど捻りながら答えた。

「へぇ」

「シャボンディ諸島ってどういうところなの?」

「グランドライン前半の海最後の島だ。グランドラインのあらゆるルートを通ってきた海賊たちはそこで一度集結するようになってる」

「おお! すげーところだな!!」

 ルフィは自分も早くその場所に行ってみたいと言いたげに目を輝かせている。

 魚の骨を喉に詰まらせながら。

「ふー、とれた!」

手を口に突っ込んで骨を抜いたルフィは、再度口に入れ骨をかみ砕く。

「喉を鍛えとかねぇから骨なんか刺さるんだ」

対するゾロはすでに魚の骨はかみ砕いた後だ。

「魚を食べると普通はこういう形跡が残るんだけど」

 ナミはあきれたように自身のきれいに食べられた魚を指差した。

「骨に栄養なんざほぼないから、食っても意味ないだろ」

 カイトもナミのようにきれいに頭、骨、尻尾が残った自分の焼魚を一瞥した。

「ここにいらしたんですね」

 村の定食屋には普段いないであろう少女がルフィたちに声をかけた。

「よう、お嬢様っ」

「寝ていなくていいの?」

 ナミはお嬢様と呼ばれた少女を気遣うように返答した。

「大丈夫です。私の病気は両親を失って精神的不安からくるものでしたから……」

 少しうつむき加減だが、言葉ははっきりしている。本当に具合はいいのだろう。

「ウソップさんにはとてもお世話になりました。彼が励ましてくれていなければもっと症状は悪化していたでしょう」

「ならよかった」

「それよりみなさん。船が必要だと聞きました!」

「くれるのか!? 船!!」

 ルフィが彼女の言葉に見事に食いついた。

「ええ、私が持っても使わないものなので、お礼の代わりにお譲りします」

「ありがとう! お嬢様っ!!」

「着いて来てください」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「キャラヴェルか」

「へぇ……」

「キャラヴェル!」

「うおー」

 4人はお嬢様――カヤに連れられて黒猫海賊団との死闘が繰り広げられた海岸へとやって来て、そこに泊まる船を見て各々の感想を述べた。

 カイトは船を全く使わないのだが、シャボンディに来る船が多種多様であるため自然と判別がつくようになっていた。

「ほんとにもらっていいのか!?」

「どうぞ、使わないより使ってもらった方が船も喜びます」

「ありがとう! ふんだりけったりだな!!」

「至れり尽くせりだ、アホ」

「船の説明をしたいのですが」

 羊顔の執事が船長であるルフィに説明を開始するがまったく理解していない顔をしている。

「説明なら俺が聞きますよ」

「私も聞くわ」

 カイトとナミは船長のていたらくに呆れて執事に声をかける。

「誰かー止めてくれーーーっ!!」

 突如、坂の上から少年の叫び声が響く。

「ウソップ、何やってんだ?」

「そんなことより船に直撃する」

 そんな会話をしつつも巨大なリュックに下敷きになりながら転がるウソップをルフィとゾロが止めた。

「わりぃ……な」

 顔面に蹴りを入れられる形で止まる。

「海へ出るんですね……」

「止めるなよ……」

「止めません。そんな気がしていたから」

 カヤはウソップの言葉に少しだけ悲しそうに伏せる。

「今度はウソみたいなウソじゃない冒険譚を聞かせてやるよ」

 ウソップはそんなカヤにニヤリと自信満々に言って見せる。そんないつもの調子のウソップにカヤは笑顔を取り戻した。

「ウソップ、早く乗れ出港だ!!」

 小舟に乗ろうとしたウソップをルフィは躊躇なく誘う。

「は?」

「俺たちもう仲間だろ」

「……船長はおれだろうな!!!」

「ばか言え! おれが船長だ!!」

 カイトはそんな盛り上がりを見せる一味を端から見つつ、世界を見て回る感慨深さを感じていた。

「行くぞ!! 出港だ!!!」

 ルフィの掛け声とともに帆が風を受け、前進を始めた。天気は晴れ、雲一面ない快晴だ。風は追い風、彼らは酒をジョッキに注ぐ。

「新しい船と仲間に乾杯っ!!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「ところで、お前もこの船に乗っていくのか?」

 カイトはウソップにそう質問される。

「ああ、いつまでかはわからねぇが厄介になる」

「あんたはあの二人に比べれば常識人っぽいな!」

 一言の会話だけでウソップはカイトのことをそう判断したらしい。かなり早計な判断だが、カイト自身自らも常識人だと思っているので何も言わなかった。

「そうか? まぁあいつらはおかしいからな」

 そういってカイトはウソップの意見に肯定した。カイトもそこまで高い航海術を持っているわけではないのだが、最低限のことは頭に入れている。

 実際のところカイトに航海術など無用の長物であるのにである。

 にも関わらず、この船に航海術を持った者はナミ一人を除くとカイトしかいない。本当に海に出て航海をしたいのか少々の頭痛をカイトは感じた。

 エースに聞き及んではいたものの程度を嘗めすぎていた。

「できた! 海賊旗!!」

 カイトが頭を抱えたくなっている頃、ルフィはそういうとよくわからない絵が描かれた布を広げて見せた。

「なんだそれ、新手のアートか?」

「つまりこいつには絵心がないと……」

「やっぱりこれ芸術なんじゃないかしら」

「死の象徴である海賊旗がこれなのか……?」

 あまりにも酷い出来であるためかルフィの満足げな顔をよそに4人とも頭を抱えた。

「どうだ、考えてあったんだ! おれたちのマーク!」

「却下だ。下手すぎるぜ! おれが描く!!」

 ルフィのしたり顔を一蹴しウソップが名乗りを上げた。

「ふーっ 自分の才能が恐ろしい!」

 そういって素早く書き上げた海賊旗には麦藁帽ではなくウソップのような長い鼻のドクロとバンダナが描かれていた。

「……」

 ルフィとゾロに無言の鉄拳をくらいウソップはしぶしぶ描き直し、当初の図案通りに麦わら帽子を被ったドクロの海賊旗が出来上がった。

「帆にも描こう!!」

 ルフィの提案のもとウソップは風を受けて張っている帆にもマークを描いていった。

「これで海賊船ゴーイングメリー号の完成だ!!」

「うまいもんだな」

「だろ? おれは芸術にも長けてるんだぜ」

 カイトの賞賛にウソップは鼻高々にしたり顔をしてみせた。と同時に火薬の炸裂音が響く。

「なんだ!?」

「大砲だな」

 カイトは聞きなれた音に反応して音源を見やると、ルフィが備え付けてあった大砲を撃ったところだった。

「何やってんだお前は……」

「あの岩に当てる練習だ」

「ばかめ、おれに貸してみろ!」

 ウソップは大砲の扱いに自信があるのか勇み足で大砲をルフィから奪って、狙いを着け、放った。

 すると見事に一度の砲撃で岩に直撃した。

「うおー!」

「うおっ当たった!」

 大砲で遊ぶ二人は大盛り上がりだ。

「弾は無限じゃないんだからその辺にしとけ」

 カイトは盛り上がっている二人がまだ大砲を撃ちそうな勢いだったため、釘を刺した。

「ウソップ、お前は狙撃手だな」

 船室で5人揃って次の目的地について話をしつつ、ルフィは先の大砲の腕を見て、ウソップの役職を決めた。

「まぁ今はその地位に甘んじているが、お前が不甲斐ないときにはおれが船長の座をいただくぜ?」

 ウソップは先の一発命中で余程気持ちがいいのかノリノリで狙撃手の地位に就いた。

「腹減ったなぁ」

「長旅には必要になってくるな」

「有料でなら私がやってもいいわよ」

「作れるがめんどくさい」

「やっぱ必要だよな――」

 うーんと皆が悩む。

「――音楽家」

「いやなんでだよ」

「話の流れは無視だな」

「コックだろ必要なのは!」

「とりあえずナミ、作ってくれよ。金なら払うからさ」

 空腹に耐えかねたのかカイトはナミに料理を頼んで船室から出て行った。

「毎度~」

「仲間から金取るのかよ~」

「そうだそうだ」

「ケチケチすんなよ」

 カイトとは違い他のメンバーはナミのケチさにブーイングを発する。

「仲間じゃなくて協力関係よ」

 それをばっさりと切り捨て自分の分とカイトの分の料理を作り始めた。

 その時外から怒声が響く。

「てめぇぶっ殺してやる!!!」

「なんだ!?」

「外にはカイトがいるだろ? 任せとけよ」

 ゾロは気楽なもので欠伸交じりに言った。

 ゾロの予想が当たったのかそれ以降それ以外の怒声は一切船室には聞こえてこなかった。

「終わったのか?」

 ウソップが少々冷や汗をかきながらゆっくりとドアの窓から外をのぞく。

 そこには見知らぬ男の顔があった。

「うおおおおおお」

 ウソップが悲鳴を上げて、ルフィの後ろに隠れると同時にドアが開いて、サングラスをかけた男の頭を掴んだカイトが立っていた。

「賞金稼ぎだと」

「ジョニー!?」

 ゾロはその顔に見覚えがあるのか名前を口にした。

「アニキ!? ヨ、ヨサクが……!」

「知り合いか?」

「ああ、賞金稼ぎの時にちょっとな」

 ゾロに質問をしたカイトはそれを聞くとジョニーを離した。

「ヨサクがどうしたって?」

「病気になっちまったんだ!!」

「病気!?」

 そういうとジョニーは船室を飛び出してメリー号の横に寄せてあった小舟から男を一人担いできた。

「急に青ざめて気絶を繰り返したり、歯も抜け落ちて今じゃこうなっちまったんだ。岩の陰で休息を取ってたらこの船から砲撃を食らって……」

「ご、ごめんなさい」

 ルフィとウソップは即座に謝った。

「おいルフィ、ウソップ。ライムが確かあっただろ。それ絞って持って来い」

「ラジャーッ!!」

 カイトの指示で二人は即座に船室に入ってライムを絞って持ってきた。

「それをこいつに飲ませろ。壊血病ってやつだな。植物性の栄養が足りてなかったんだろ」

 ヨサクの口を開けさせたルフィたちは絞ったばかりのライムを流し込んだ。

「何々?」

 ルフィたちがライムを絞っていったのが気になったのか、ナミが遅ればせながら船室から出てきた。

「ただの壊血病だ」

 カイトはそう言って肩をすくめた。

「ふーん」

 ナミも納得したようで船室へ首をひっこめた。

「カイト、おれはお前がやるやつだって信じてたぜ!」

「さすが副船長だ!」

 ウソップとルフィが首を縦に振ってサムズアップをした。

「船に乗るなら常識だっつの」

 カイトは彼らの顔を見て再度呆れを抱く。

「栄養全開! 復活だあ!!」

 ヨサクはライムのジュースを飲んだのがよほど聞いたのか飛び起きた。今まで死にそうだった人間とは思えない。

「申し遅れました。おれはジョニー」

「あっしはヨサク。ゾロのアニキとは賞金稼ぎ時代にお世話になりやした。以後お見知りおきを」

「東の海で賞金稼ぎか、そんな儲けれねぇだろ」

 カイトは東の海の手配書の紙を見ながらそう呟いた。

「そんなことありやせんぜ、カイトのアニキ」

「そうか? だって最高2000万ぽっちじゃねぇか」

そう言ってカイトは『ノコギリのアーロン』なる手配書を叩いた。

「2000万ぽっちって何年も暮らせていけますぜ!?」

「そうなのか」

 カイトはシャボンディ諸島での賞金稼ぎをしていたせいか懸賞金の感覚が狂っているのだ。実際シャボンディ諸島までくる海賊は一億前後の船長を有しているのが常だ。2000万なぞ海賊船の幹部でも弱い部類のものに付けられている金額である、とカイトは認識している。

「それはそうと、海賊狩りのゾロと言われたアニキが海賊になろうとは……」

「ゴッフ」

 ヨサクは勢いよく吐血した。

「まだ完治してないに決まってんだろ……」

 カイトは呆れ気味に呟く。

「ま、これで長い船旅の落とし穴の一端は分かったわけだ」

「ますます必要になってくるな」

「コックはぜひとも仲間にしなくちゃな。栄養配分は重要だ」

「なによりうめぇ飯も食える」

 倒れたヨサクを見て4人は目標を決めた。

「海のコックと言えば、海上レストランがオススメですぜ」

 ジョニーは挙手してそう言った。

「海上レストランには海のコックがいる。ここから2,3日船を進めれば着くはずだ」

「おお!! 目標、海上レストラン!!」

 決めるが早いか即断即決。ルフィは海上レストランに航路を取る。

「アニキの探す鷹の目の目撃情報もあるようですぜ」

ジョニーはこっそりとゾロに伝えた。ゾロは体を震わせる。獰猛な口元が見えた。

「鷹の目か。会ってみたいな」

 カイトはジョニーの言葉を耳ざとく聞いていたらしく、口角を上げて呟いた。

 昔シャンクスと同等の剣使いだと聞いた。彼もいっぱしの剣使いである。世界最強の剣技とやらを見て見たくなったのだった。

 




一億ベリーをポンとくれたぜ!

次回サンジ登場。鷹の目も多分登場。
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