ゾイド二次創作小説~西方大陸の地にて~完結!   作:もにもに+マウンテンヘッド

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ゾイド二次創作小説~西方大陸の地にて~(未完)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・冒頭――ウェルカムトゥ、エウロペ

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂の大地の上に彼らは居た。

 

 

 

 

 

 乾いた砂はここに立つ何者をも立ち枯らさせんと渇きを誘い、そこに立つ何人までもが、肉も血までもをその砂粒にへと変えられたであろうか――

 

 

 

 

 果たして、熱砂を太陽が焦がす昼ではなく、今は夜であった。

 されど、太陽の消え失せた夜空の下…灼けつくような熱が凍えるばかりの冷気にと暗転した青白い砂漠の只中にあって、一人の例外とていない異邦人たる彼らは、しかしその情景にわずかばかりの親しみを込めつつあった。

 その荒涼たる大地の彼方に果てしなく広がる夜空にである。そこに浮かぶ二つの月は、確かに、彼らたちの故郷である中央大陸――デルポイ――の夜空で見る物と、変わりがないものと取れたからだ。

 

 

 彼ら……ヘリック共和国軍、第三次混合作戦旅団群のひとつ。陸軍第171機械化騎兵連隊C中隊からの機獣化戦力の抽出と、陸軍砲兵機獣隊、車両機械化歩兵部隊の各応援提供からなる第六分遣隊の、その先鋒……は、この西方大陸・エウロペの大地にとっての“よそ者”――言葉をまどろこせば、客人である。

 

 彼ら第六分遣隊の兵員兵士たちが、最初にタートルシップ級輸送艦の船倉内からこの西方大陸の地へと降り立った時、温順な我が故郷・中央大陸の大地が、如何に肥沃であったのか…―― 日が高い、正午の食事時のことであった。そのため、既に先遣隊が拓いていた最大の橋頭堡・共和国軍ロブ基地の食堂で食したハンバーガー・セットの味も、多少感じ方が変わるくらいには辟易とした。

 

 

 辟易とするのは、この現時刻でもの事である。空調冷房の利いていて、“おろしたて”のその空間はどこまでも清潔な……砂の気配なんてどこにもない……、あの白潔としたロブ基地大食堂の光景が、今、彼らが一様に共有するビジョンの一つには違いがなかった。

 それくらい、ロブ基地を出立してから既に二日…北エウロペ大陸中部付近にての前線へ加わるべく、今も続くこの行軍の最中に於いては、ジャリジャリとまとわりつく(いつの間にか、しっかりと装着をしているはずのブーツや手袋の内へと、果てには口の中にさえ侵入している!)砂粒の感触と食感の記憶が、ただでさえ余分には美味しく無いユニット型レーションの集団摂食の機会の度に、つど思うことでもあった。

 

 なによりも、最大の辟易点が彼らにはある。

 それは――彼らが、あの時の咽越し良い清涼なコーラの冷えた味の記憶と同程度には第一のビジョンとしているであろう、“今回の”戦争を仕掛けてきた、その相手、こちらに対する当事国……悪名と災い高き先帝の崩御が引き金で皮肉にも間違いないだろう、邪悪な野望によって無辜の西方大陸民民草を苦しませる、自由と博愛と民主政治を主義とする我が共和国の宿敵、ガイロス帝国。

 

 

 

 そのガイロス帝国のイの字とさえ、彼ら第六分遣隊の面々は、出立準備まで含めると今日までに四日も経っているのに…今の今まで、牙と銃火を交えることなく、今日のこの夜まで来てしまった。――こと。

 

 

 

 いや、ガの字であれば見覚えはある、それは確か、ここまでのハイウェイ上から度々、その姿は目にした。

 こちらの先遣隊は既に最前線を形成している。その進行を阻止しようとして、哀れに返り討ちになった、ヤッコサンの遊撃ゾイド部隊の、その残骸だ。

 

(注記すると、かねてより次回の大陸間戦争の戦場となる事が懸念されていたエウロペには、ガイロス帝国も共和国も、そのリスクを避ける為――あるいは同時に、そう遠くはないホット・ウォーの時に、よりこちらへと有利にするため――度重なる開発援助で支援してきた経緯がある。橋頭堡たるロブ基地も、元々は共和国向け大規模貨物ターミナルの予定地として、その壮大な立地を事前整備して確保していたものである)

 

 

 モルガ…ゲーター…イグアン…、少しばかり珍しいのになると、ヘルディガンナー。

 兵士の一人は思い出す。中にはこちらの敵予測戦術データのアーカイブに含まれていないような旧い機種もあったりして(マーダだとかザットンとかゲルダーだとか! 彼ら第六分遣隊の先鋒は途中までは分遣隊の全隊と同行動であったのだが、その時の司令部部隊の要員の“年季を重ねた”偉大なる先任兵士や将校らの面々は、むしろ懐かしむようなフシさえもあった。もっとも若い兵士達の多くは、この捨て駒にされたであろうゾイドの死骸に憐れみを感じるより先に、訓練兵だったころに散々煮え湯を飲まされた模擬敵の相手たちとあって、少々スッキリした具合だった)、とにかくもまあ、観光としては悪くはない。ステキなロケーションに素敵な眺めだ。これだけのゾイドを保有するガイロス帝国とあっては、早々にその本土を観光地にしたらいいだろう。

 

 

 

 

 だが、肝心なことがあった。それは、彼ら共和国軍兵士は観光のためにこのエウロペに来たのではない、という実際である。

 

 しかし今日までの間、見てきたのはそんな光景しかなかった。自分たちよりも先に戦って、そしてヤツラに勝利した、味方部隊の戦果だった。

 

 

 

 そして今日この現時刻をもっても、未だ目的地への途上に彼らはあった。こちらの第一波によって安定したグリーンゾーンが形成された、其の安全圏の中の行軍である。

 大統領による訓示の演説が、自分たちの祖国からの出立時になされていた。“共和国の正義を以て、西方大陸を守護せよ”と。その使命を持ってふるさとから遠路遠くこの西方大陸まで来たのに、その目的は果たせていなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 張り合いがないことこの上なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・命令下りて

 

 

 

 

 部隊に付属する車両化歩兵・収容装甲車両の列伍がにわかに賑やかしくなったのは、夜も、もっとも共和国時刻では、昼――この現地時刻に直して午後十時頃程の事だったと記憶している。

 隊列最後尾に尾きながら警戒歩哨していたコマンドウルフ・07番機のパイロット、ウィリアム・ハートレイ騎兵伍長の述べる通りだ。

 

 続いて、車列が止まった。すぐにヘッドセットに通信が入った。“前進、停止。”陸軍機獣化騎兵であるウィリアムのコマンドウルフ隊の、その隊長(コマンダー)からのものだった。出身原隊から二個小隊ほどがそのままにこの第六分遣隊へと組み込まれた故、これは元の隊から続く関係である。

 伍長は確認した。“敵の攻撃か?”、しかしすぐに応答が入った。“違う、一時的な物だ。”。

 

 

 なんとも悪態が咽から出かけた。――と、ウィリアムは述べる。

 今日の半日、不味い食事(ウィリアムはこれを“餌”と称する)を…デザートにしてはそこそこ上等でありがたい…粉末ココアのシェイクによって洗い流し込んでから以来、この新造まもないコマンドウルフのまだこなれていないコクピット・シートの上で、しかもMFDディスプレイが組み込まれた操縦桿システム部が、このウルフ型のコクピットの特徴なのである……搭乗員の脚太ももの直上を可動展開式のこれによって塞がれることで、中々リラックスのためのストレッチはテクニックを要し、(やりかたがないわけではないのだ。彼が陸軍騎兵部隊のコマンドウルフのパイロットに成れたのは、多分にこの技法の取得を新兵の内に会得していたからであろう)さらにその上、時にはランダムだったりすることはあるが、それでも冗長な、ハイウェイ経路のただのゾイド前進をこなしてきただけなのである。

 

 たまりかねて、思わず両の操縦桿から手を離した。放るように、パッ、っと。

 ついでに横サイドに附いている警戒僚機のコマンドウルフ一機にも確認の通信を飛ばして、同内容の返答を得、それから…まるで雷がわめいたかのようだ! それは自分の耳に飛んできた、このコマンドウルフの背部ビーム砲銃座…緊急時にはビーグルを兼ねるというが、彼ら騎兵部隊ではもっぱら、小回りの良い武装UAVの代わりとして用いていた…のガンナーから、何故急に隊も機体も止まったのだ! という怒鳴り声での発信だった。それなので、こちらも同じ以上でのヤケクソ声にて、確認を取った内容の応答で返してやった。

 

 

 ウィリアムのコマンドウルフもとうに止まって、ゾイドはアイドリングのまま、隊が停止してから二分も立っていないかだったと思う。

 自機の前方の隊列には機獣化騎兵・機獣化砲兵・車両化歩兵の三種が合同されているのだが、その内の砲兵……つまりはカノントータスの一機、その後部キャビンから、であったろう。

 丸眼鏡をかけた、如何にも我が軍の砲兵屋の評定係だ、とウィリアムは認識する風体の兵士が一人、コマンドウルフのキャノピー越しに、こちらへ息を切らして走ってくるのが見えた。

 

 未だ敵領域への途上にあるから、交通での事故を防ぐために、カノントータスや歩兵車両の灯火は灯っていた。

 その灯火の光に照らされる形で、冷たい大気により吐息が白く映るその兵士の手の中になにやら紙片が握りこまれているのが分かった。

 

 

 

 ん?――

 見覚えがある。あれはペーパーだ。それもトイレット・ペーパー、レーションのセットにも付属しているし、基地からの出立時に各自へ渡された分もある。それの紙片である。

 

 シット、意味通りのシットか!? ――とウィリアムは恐れおののいたが、それはまあそんなことは無かった。

 

 

 

 

 その兵士はウィリアムのコマンドウルフの近くまで、頭部コクピット内のウィリアムからの眺望視界内に入る形で接近し、そしてジェスチャーを取った。

 その意味はコマンドウルフ乗りならば、共和国軍一般において…それはウィリアムからすれば天の上のエリート様たちである高速戦闘隊などの特殊兵科などにも関係なく、と聞く程に…内容が通じる物である。

 

 

 

 すなわち、“機体の首を下げろ”。

 

 

 

 とまどいはあったが、まあ逆らえることはなく、意味通りにウィリアムは操縦桿を微操作させ、ウルフの頭を下げた。

 

 

 元々はコマンドウルフ頭部・吻部先端のいわゆる“鼻”にあたる箇所、そこに集約実装されている、この機種の採用以来の特徴である各種探知・検知装置の効果を最大に使うための、機体モードの一つである。

 それなのだが、外部の非搭乗者によるゾイド搭乗員への連絡・指示の手段に簡便として、センサーモードを“切”とした上で、運用に於いては主に機体動作モード側のみについても好評に繁用しているのであった。

 それはとにかく…

 

 

 ガクン、と…自分の体ごとウルフの頭が“落ちる”感覚。

 

 

 

 しかしそれはそのまま落下と“着弾!”による破壊を示すものでは無く、あくまで降着として、着地の前に減速がされる。

 そうしてウィリアム伍長のスムーズにして緩やかな降下がなされた後には、件のその兵士の姿が、グラスキャノピー越しにもう目前であった。

 

 

 おそらくは引きつっているであろうと自覚はしていたウィリアムの顔の前に、その兵士は見るように、といった具合に、トイレット・ペーパー紙片の一面をキャノピーへとベタリと張り示した。

 

 いよいよもって絶望となりかけたウィリアムであったが、その紙片の中に走り書かれている内容を理解するに至り、次の瞬間には、表情は精強な共和国軍ゾイド騎兵のそれへと変化していた。

 

 

 

 ウィリアムは短く、荷物のガンナーにへとその走り書きの内容を中継した。原隊からの縁だ、知り合ってから短くはない。ジョークの通じ合う分にはそれなりに、信用はそこそこであるが、あくまでもぞんざいであった。

 

 ただ、同時に、ウィリアムの第一の相棒である、この“ウルフ”へと、こちらは本当に真剣の……相棒への信頼、そして親愛の念、それから何よりも、今からここからのウィリアムの重要な時間を、特に預ける、一緒にやってやる――……ウィリアムは操縦桿コンソールの淵を撫で留めながらであった。そうして自らのゾイドへの愛情を、まるで語り掛けるように、されど確実に、この“ウルフ”へと伝えた。

 

 

 それは、この第六分遣隊・先鋒部隊のゾイド乗り全てが、おなじような時を共有する瞬間であった。

 それぞれのやり方で、ゾイドへの信頼を彼らは示し、そして機体に伝えた。

 同時に車両歩兵の乗組員であったが、彼らは彼らで、故郷の親しい人たち…恋人、家族、友人、あるいは人に限らず、心の中に気に掛かっていることだとかを吐き出した者も居ただろう。

 

 

 

 ブオォン、――とゾイドのモーター駆動子が、うなりの音を上げたのはその時だった。

 それもウィリアムのコマンドウルフだけではない。

 

 この先鋒部隊のすべてのゾイドが、一斉に呼び答えるものであった。――ゾイド乗り、パイロットたちの願いと思いへ。

 

 

 

 それはゾイド乗りにとって、最高の答えの一つである。

 さらに各々のゾイドの操縦席に座る搭乗員ならば、自分の乗る乗機の…そのゾイド・コアの暖かな脈動が、自分の鼓動と直にリンクする体験を感じただろう。相棒と己との、何倍にも増幅されたパルス! まるで漲るようなエネルギーが込められたそれ…他の何物でもない己へと宛てられたそのエナジー、ゾイドのパワー。

 ウィリアムはそれを、確かに受け取った!

 

 そしてその勇壮なモーターの回転トルクのうなりの脈動は高らかなエクゾーストとなって、故郷の土地では平和な生活を送る青年たちでしかない、今この場にいる、非ゾイド乗りの共和国軍兵士、歩兵達をも勇気づけた。

 

 

 ウィリアムの乗る機体の背部銃座のガンナーも、ガッハッハっと笑いながら、戦士の祝福を挙げている。

 

 

 

 

――隊列の灯火が落とされる。アイドリングから、ゾイドや車両が立ち上がる。

 

 唸りをあげるエンジンとモーターの音と共に、部隊の全ての機体が発進していく。

 そして件の砲兵も、消えゆく灯の中で、己のカノントータスへと戻っていくのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハイウェイの上から、ゾイドと車両の姿が消えた……砂漠の夜の向こうへと、

 

 そして、第六分遣隊・先鋒部隊は無線封鎖へと入った。

 

 

 分遣隊本部、すなわちロブ基地司令部からの通達によって、この部隊へと作戦命令が下されたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ポイント・ホテル・カリフォルニア

 

 

 

 

 

 

 共和国軍第一波がこの西方大陸の地へと足を踏み入れたのは、累計して第三波に類当する第六分遣隊の面々がこの地へ至る、その僅か一週間前の事である。

 

 事態は緊急を要していた。既に敵・ガイロス帝国軍は西方大陸陸地群・北エウロペ――北部大地中央部までもを影響域とし、その勢力拡大の勢いの旺盛さと規模体制の圧倒は政府首脳部の誰の目からも明らかであった。

 されど、共和国はここで引き下がったり、もしくは見過ごす、ということは……絶対に出来ない、困難な状況でもあった。

 

 なぜならば、相手側・帝国の目標と見られるのは、かつての大陸間戦争……中央大陸内戦から連続的に勃発した、他の何物でもない、惑星北限の暗黒大陸に本拠を構えるガイロス帝国との戦争……、“大異変”と現在では称されている、そのウォーゲームのチェス盤・返しによって決着の付かなかったあの悪夢的な戦争を、此の度は両大陸間の迂回中間地点に位置するこの西方大陸を経由して、他ならぬヘリック共和国の本土・中央大陸へと攻め込み、そして終わりとする――最悪の有事危機事態の想定として常に最上位にあり続けたその状況が、半ばまで現実のものとなりかけているからである。

 

 

 

 そして今日までの激戦により、戦闘の最前線は北部大地中央部付近へと絞り込まれつつあった。そこより東半分は、おおまかに仮の安全域…勢力圏下…とされる現在であった。されど、その局面というのは、入念な準備の結果であろう…戦力の規模で極めて大きく優勢する帝国軍が、前線正面にて、こちら共和国軍を過大に押し込みつつある、という状況であった。

 

 

 共和国派遣軍第三波の前線現地への急行は、軍司令部にとって急務であった。

 第六分遣隊もその大戦力のわずか一つの端くれであり、そして彼ら先鋒部隊の他隊よりもの先行進出というのは、グリーンゾーンは比較的安定しているとはいえ、その主・通行経路の定期陸上啓開というのが、第一の任務とされたからであった。

 

 

 

 故に、この作戦が割り当てられたのも、彼ら先鋒部隊が現地へもっとも近い地点にいるという以上に、その使命によって必然たらされるものだったに違いない。

 

 

 

 

 

――北部大地ハイウェイ12号線付近での敵・陣地構築の発見

 

 それも、本日のつい夕方、専門の偵察飛行隊の所属ではなく、中継補給陣地から前線へと応援に向かうプテラス型航空ゾイド・戦闘爆撃機隊の一部隊が、偶然に捕捉した物である。

 

 その時の航空写真の解析の結果、設営物のおおよそは、もともとは旧内戦の時点にて実用のされている、高速構築展開型・ユニット式拠点ベースシステムに類するもの、もしくはそれそのものであった。つまりはグスタフなどの補給機ゾイド(あるいはサイカーチスによるヘリ作戦)を用いる工兵支援によって作られた、あくまでも仮設的な構築物と考えられた。

 

 

 しかし、その規模と内容が懸念とされた。

 航空写真には、その仮説陣地が多少大型であること、そして…多数のコマンド・ゾイド、それも、“24級”と思われしき機影が、彼ら自身のカモフラージュから偶然に暴露したのであろうが、その数だけでも複数小隊規模で確認できたからだ。

 

 

 コマンド・ゾイドとは歩兵支援単位にて用いられることの多い、多くは四メートル以下程の全高の、超小型ゾイドと分類されるものである。

 そしてその“24級”とは、旧内戦時にて加速度的にゾイド戦闘機獣が強力化・高性能化していく過程にて生まれた、

 コマンドゾイド級としては最強に近い絶大な高性能を持つ機種群の事である。

 

 

 機動歩兵の延長としても容易にあなどれない能力を持ち、高性能ゆえの高コスト化によって絶対的な生産保有数は少ないとはいえ、かつての内戦時には、かの有名な“白骨部隊(スケルトン・バタリオン)”の蛮名でも知られる通り、最も効果を発揮するゲリラ戦法での運用に、共和国軍はさんざんに苦しめられてきた。

 

 

 

 その強力ゾイドの部隊が、複数小隊存在しているのである

 さらになによりも、この仮設陣地が、従来安全圏と考えられていた範囲内の地点に、突如出現した…――というのも軍首脳を慄かせた原因でもあった。

 

 

 安全圏内の、重要交通路の、その直近に、強力なゲリラ部隊が、――目的は明白である。同経路の利用の必要性は今に切迫している以上、その対策は急務であった。

 

 

 

 しかし、仮に敵該当部隊が本格的に活動を開始したとしても、それに伍することのできる、共和国側の24級ゾイドによる特殊コマンドの派遣は、前線方面にてその活躍が最大となっている以上、なかなか難しいという状況でもあった。

 

 

 

 

 

 

 されど、分析の結果、陣地はまだ本格活性化の“直前”であろうと推測できた。

 

 

 

 

 すなわち、出来た巣は、大きくなる前に早く摘み取れ、――ということであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、第六分遣隊・先鋒部隊の面々は、その仮称ホテル・ポイントの、僅かに十キロメートルの距離へと肉薄していた。

 

 既に戦闘は開始されていた。五分前からのことである。困難と予測されていた作戦であったが、だが、相手はさりとて大と小との小…コマンドゾイドであった。

 共和国軍の勝利は目前であった。

 作戦は、事前にコマンダーが組み立てた手順通りの算段によって丁寧な処理が進んでいたのだ。

 

――基本は事前砲撃後のコマンドウルフによる強襲とされ、機獣化された騎兵と砲兵の連携による敵抵抗の掃討処理後に、随伴車両化歩兵による陣地構築物の制圧を行う――、そうして、荷電粒子ビームの砲爆が轟いて戦闘開始の鐘が鳴らされてからは、おおまかなその通りに戦闘は推移していた。

 

 

 そしてそれからも……後方の、六機のカノントータスの重砲が次々と火を噴き、繰り返され、その二基四連の対空速射砲の銃撃掃射が絶やすことなく続けられ、歩兵装甲車の自衛用対ゾイドミサイルが発射飛翔して、さらに直接には…踏みつけんばかりの高機動で跳梁するコマンドウルフの牙と砲が時にずたずたに切り裂くとあっては、既に敵方のその損耗は一小隊分相当は累積したものと見られる。

 

 

 砂漠でのその戦いは、熾烈なものではあった。一分の油断も許されないほどに。

 されど、最大に快調であったのは、相手が完全な、“後手”に回ったことであった。

 最初に…彼らは待ち伏せの形で、ゾイド機力により砂地内に形成した密閉掩体壕にダックインして所定の必殺区域(キリング・ゾーン)を設定し、その設定経路への、敵部隊の導入と通過…つまり、こちらの“入場”を迎え撃つ形である様だった。

 

 帝国軍の24級ゾイドは、その機体ボディーを形成する白色の特殊複合強化装甲カウルに由来をもつ、強力なステルス性能も特徴の一つである。

 一般のゾイド機種の部隊であれば、彼らによる奇襲の成功によって、さながら七面鳥狩りの如く…完膚無きまでに砂漠の骸へと変えられたことであろう。

 

 しかし、それらはコマンドウルフの持つ複合対地センサーによって、にわかに“御見通し”であった。むしろ、おおまかに気配を割り出すことのできたその予測潜伏ポイントを通過する形に経路を変更したくらいでもあった。

 

 

 その上、大型装甲兵器の直掩無くしては、如何に強力な24級とはいえ、こちら共和国軍の入念な用心と実績ある対策法を織り込んだ、この三手段攻撃を破ることが出来なかったのである。最も大きな被害はカノントータスの砲爆が与えているものと推測できるが、それを何とかするには現在正面のコマンドウルフ部隊をなんとかしなくてはならない、その両方が、相手には只今できないものと推察できた。

 

 

 

 今まさに、狼と蠍の戦いが繰り広げられる瞬間があった。

 

 虚のような夜の空を背後に、狼のシルエットが青白く閃いた。

 そして躍動からの着地――まさに月下の砂漠を駆け巡る最中の、今は窪地状の傾斜砂地を滑り降りる体勢のコマンドウルフの一機に、その砂地の底から、24級コマンドゾイドのサソリ型……デスピオンが、牙と爪を開いて飛び出してきたのだ!

 

 強力な爪……命中時に強烈な電磁波を相手ゾイドの電装品に流し込み破壊するクロー・バイスによる攻撃は、中型ゾイドたるコマンドウルフとはいえ、高機動型機種故に、要部装甲以外の部分ならば致命傷ともなりうる。激しい戦闘の最中、デスピオンのパイロットは、まさにこの瞬間を待っていたのである。

 

 さながら蟻地獄のつもりであったろう。狼を獲物と見て蠍が喰おうとしたのだ。

 さりとて其れは果たされなかった。

 次の瞬間にはそのコマンドウルフは同時の対応をふたつ執っていた。即ち、スモークディスチャージャーの発動による急速煙幕展開、そして、再びの跳躍である。その時……――

 

 

 ゴリ、ッ!

――ともガンっという音とも取れぬ、兎に角鈍いながら軽くもある音が、“弾けた”。それは、そのデスピオンの装甲が文字通り弾けた音であった。狼のしっぺ返しとは聞いたことはないけども、跳躍する際に勢いよく伸ばされたウルフの前足の一つが、接近しすぎたデスピオンの頭部装甲を踏みつぶす形でまぐれのスマッシュ・ヒットとなったのであるようだ。

 

 

 だが、ゾイドはそのくらいでは死なない。心臓と脳と心と思いの在処は、ゾイドは腹部内のゾイド・コアという球状器官としてひとまとめにされているからである。

 

 同様に、デスピオンのパイロットも死んではいなかった。強力にして強固な白い蠍のコクピット装甲殻が、フレーム構造の頑健さと合わさり、かろうじて圧死の憂を彼に与えずに済んだのである。

 

 

 だけど、頭部センサーアレイは完全に損壊し、マニュピレータである両の爪も、付け根付近で不調を来していた。

 

 とどめに、生き残ったはずの射撃管制と一元化した尾部センサーも様子がおかしい。パイロットの彼は、即座に電磁クロー・バイスの状態がスタンバイであったことに思い至った。このデスピオンの機体電装品が機構ごと損傷した際に、逆流した電圧のサージ放電によってセンサーの精密回路が焼けたのか? まさか!

 

 装甲殻をジョイントの発破によって開放排除し、彼は目視にて相手を評定しようとした。彼の装着する装甲服の搭載コンピューターを介して、射撃の直接照準を着ける試みである。しかし窪地の中には濃密に煙幕が沈殿してもいたのだ。なおさらに視界を失う結果となった。

 それでも、跳躍し自らの直上に居るであろう憎きオオカミへと向かって、その尾に懸架装着されたパルス・ビーム砲の掃射を、やみくもながらに引きはなった!

 

 

 

 

 しかし――それも次の瞬間、ねらいのウルフからの攻撃ではなく、そのウルフによって位置座標を伝えられた、後方のカノントータスによる精密砲爆によって、デスピオンとそのパイロットの彼は、瞬時に荷電粒子とオゾンの残滓へと気化させられたのである。

 

 

 

 

 砂の窪地はそのビーム砲爆によって直後に吹き飛び、ガラス質に焼け焦げた砂と灰のダストを吹きあげつつ、かくして蠍の蟻地獄は消滅した。

 一方コマンドウルフの方は悠々と着地した直後には高速機動走行へと軽快に復帰し、幻影の如き青白い姿を疾らせながら、再び次の獲物の発見へと移る――

 

 

 

 このコマンドウルフ部隊のコマンダーは、実力もさることながら、直接には前大戦の戦闘を経験していないとはいえ、しかし対24機種への対処法の基本は入念に講習を受けていた。

 その上で自らたち、ゾイド騎兵兵科のコマンドウルフ型機種装備部隊という、そのアドバンテージの最大特徴をも、把握と熟知が行き届いた人物だったのである。

 そして今回に於いて、随伴の機獣化砲兵までもが手元にあったのだから……

 

 

 

 故にこの戦いにおいては、コマンダー以下、部隊の十一機のコマンドウルフの、その全てが活躍を見せていた。

 高い性能を誇るコマンドウルフ型とはいえ、強力である24ゾイドとの直接交戦には小さくないリスクがある。

 その為、高速戦闘ゾイドであるコマンドウルフの能力は敵機捜索と探知捕捉に専念させる形で最大発揮させ、実際の掃討・撃破を、(そこを目標とする敵の対抗浸透開始のシラミツブシな阻止を機獣騎兵部隊が実施しつつ)機動力と直接の自衛能力に欠けるが強力な火力を持つ砲兵のカノントータス、及び局所的に歩兵装甲車の搭載火器に担当させる――

 そしてここまでの自部隊側損耗は、撃破及び死亡はゼロ。

 

 

 交戦開始の瞬間、先攻を切ったこちらのカノントータスのビーム砲撃に、仕掛けているつもりであったと思われる相手の側は完全に面食らったようともとれた。

 入念な地中・隠伏偽装を行っていたが故に個別機体の高速な散開を図ることも叶わず、続けてのコマンドウルフによる強襲突撃によってその具体位置が次々と暴露特定されていく中、今もこのように、ピンポイントの砲爆によって狩られ続けている。

 

 

 相手側の不備もあろうし、ワンサイド・ゲームとはいかなくとも、このハンター&キラーのドクトリンに則った慎重な運用が、最大の成果を持って結実したのである。

 月の光に照らされた砂漠。そこに砲声と砲爆の残滓が一つずつ響く度に、それは帝国軍敵機の確実な消滅と無力化を意味していた。

 

 

 

 

 

 

 ウィリアムもまた、コマンドウルフ07番機のパイロットとして勇敢に戦闘を戦っていた。ガンナーの彼もまたそうであった。

 

 彼のコマンドウルフは、単騎での敵機撃破には至らなかったが……僚機との協調戦闘により、共同での戦果で一機ほどならばツブした!

 

 

 

 相手はドントレスというカマキリ型の24ゾイドであった。

 “ウルフ”が急に唸ったのと同時! ――砂の中からの突然の出現と襲撃にはウィリアムは驚愕したが、その瞬間の味方機からの阻止射撃により、こちらがやられるというのは間一髪でならなかった。そうして直後には、その傷ついたドントレスの機体はウィリアムの乗るコマンドウルフが、電磁牙(エレクトロン・バイトファング)の行使によって、バラバラに噛み砕いていた!

 

 

 

 共和国軍の兵士になってから、初めての手柄だった。

 というよりも――この部隊の兵士たちに、今まで実戦を経験してきた者は、いなかった。

 

 

 はじめての戦争だったのだ。

 そしてその初めての戦いで、こんなにもあっさりと、成果を得ることができた!

 もうそれだけで、今日までの二日間もどうってことはなかったし……あるいはもっと言えば、いままでの人生の意味の全てが、今日のこの時間の中にあるような気までもがしていた。アドレナリンの分泌は著しかった。

 そうして、そのような思いに至る兵士は、この部隊の全ての兵員がそうであったともいえた。何しろ、共和国は四十年間、平和だったのだ。

 

 

 

 故郷に帰ったときの土産話ができた…――それも最高の!

 

 

 

 爆音と炸裂に掻き消されて、只でさえ白い装甲殻に覆われていた帝国軍兵士たちの悲鳴と断末魔は、この若き共和国軍兵士たちには見えるものの内ではなかった。

 そこから滴る紅い血潮の滾りであっても、果てしない砂の下へと、全てが吸われていってもいた。

 

 

 肉は木乃伊となるだろう。残る骨も、そうしてさらに長い年月を経て……この砂漠の砂の一粒となるのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、24ゾイドの出現は見られなくなった。

 コマンドウルフの探知装置にも、検知が見られなくなっていた。

 そうして、残骸の数を評定すると、その数は事前の推定よりも一個小隊多い、三個小隊規模は累積していた。

 

 

 

――掃討は完了したのだ。

 

 

 コマンダーはそう判断し、しかし念を入れて、二機のコマンドウルフを護衛に残した上で、歩兵装甲車両の隊は、後方での準備待機をするように伝えた。カノントータスは後方配置であるのは変わらず、しかし、これより逐次、我が隊と連動運用させる。

 

 

 続いては、自身も含めると残る九機のコマンドウルフを稼働する形で、しかし全速力の前進命令を飛ばした!

 

 つまり、“敵の仮設構築物”が、その目標地点である――制圧の前に、威力偵察をしかけるのだ。

 

 

 

 

 

 コマンダーからの発信を受け取った八機のコマンドウルフのパイロットたちは、その全身から立ち昇るような旺盛で最高潮の戦意のまま、乗機――いや、今は相棒、愛機だ!――のアクセル・ペダルと操縦桿を引き絞り、狼の機獣も供に吼えることでそれに答え、機獣の機体は発進し…冒険的な、さながらデザート・ラリーのハイライトを、ウルフと彼らは共に楽しんだ。

 

 

 

 そこから二キロ先のホテル・ポイントまで接近する間、ウルフとそのパイロットたちは、月の光に照らされながらの……まるで青い海のような美しい砂漠を駆けることを、相棒と共に走ることを目いっぱいに実感して、そして楽しんだ!

 

 

――静かとなった夜の砂漠が、大地の息吹を息衝き始める。

 

 風が凪ぎ始めた。そして風が向かう方向へと、砂が流れ始めていた。

 さざなみのような、白い砂の風紋が、海原のような蒼い砂漠の奥へと、果てることなくたなびいている。それを背景に、九機のコマンドウルフとその搭乗者たちは駆け抜けていった。深い蒼の夜空に二つの月とともに九つの白く輝くシルエットを走らせながら――ただそれだけでもあった。されども…

 

 ゾイドの楽しさとその楽しみ方というのを、そうしながら彼らは丹念に実践し、あるいはひとつずつ確かめ、今ではゾイド乗りとして、それは自分の一部となった。

 とうのゾイドにとっても、彼らは優秀なゾイド乗りの資質があった上に、実際に自分たちのちからを思う存分引き出してくれる彼らの存在に、最上の信頼と実力によって答えたい気持ちとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテル・ポイントへの到着は、そうしてすぐの事である。

 整地であれば、コマンドウルフの理想最高速は210キロは出すことができる。

 そして不整地であっても、その速度性能の余計となるカノントータスや歩兵装甲車などの勘定も今は必要なかったので……ウルフとパイロットたちにとっての悠久の時間であったが……わずか数分で現地に到着となった。

 

 

 

 陣地正面・残り八百メートル近辺の地点にてのことである。ハイウェイ・ルート12からは五百メートルの近辺でもあった。

 既に警戒渡渉に入っていたコマンドウルフ隊は、そこに至ってようやく散発的に遭遇した、散逸する地雷原の啓開――想定から比すと申し訳程度の走行障害としか埋設されていなかった地雷物等を、通行路の陸上啓開という初期の目標通り、各機の砲による斉射掃討によって爆破させ、大部分を薙ぎ払っていった。

 

 

 啓開――進路を切り開く――ための銃撃は入念に及んだ。

 コマンドウルフからの銃火が、発射の低重音とともにばらまかれる。

 その背中のウェポンポッドの銃口から、破線状の光条と曳光弾の点滅をふりまくように引き放ち続けていく。

 

 すると、青い砂漠に、連続して爆薬が炸裂する炎と轟音が遠く響いていった。

 ねらいとされた砂漠上の浅く埋められた地雷が、直撃や擦過したそれによって誘爆し、掃討されていったのだ。

 

 

 そうしてクリアーにした進路を、機体の足で砂の感触を確かめるように、低速で徐々に進行しながら地点へ近づいていく。

 そうしながら、道の先に埋まるさらなる爆発物を処理していった。……銃撃は尚も続けられた。そしてその炸裂と爆発の轟音は、まるで気兼ねの無いドアノックの様である様だった。

 発砲炎の明滅が、ウルフたちの機体を炎の色に照らし出す。自身たちを相手に見せつけるように。

 

 

 即ちそれが、敵陣地側が、自らへの共和国軍の接触を感知した瞬間であった。

 後詰めの人員たちで、必死に予測評定がなされたのであろう…その設営砲座から銃撃が飛来したが、しかし当該現地のその地点に於いては、起伏のある砂丘が並並と続く地形環境下であり、詰まる所相手側からの目視が困難につき、コマンドウルフ隊に損害たらしめる効果とはならなかった。

 

 

 遠くから立ち昇った弾火の輝きは、飛来してきても、ウルフたちの機体へはかすりもしなかったのである。

 まるで弾丸の個々がまぐれ当たりも諦めたかのように、光点は、砂丘の連なる地形の彼方へと消えていった。

 

 

 その上それは、コマンドウルフ隊にとっては織り込み済みの事でもあった。

 

 既にそのリ・アクションを見こしての行動が執られていたのだ。

 まず一つの意味に、相手の留守かどうかを確かめるためのテスト・アラームとして、今の砲撃というのはあった。

 そしてこのさらに数分前、九機のコマンドウルフの内の三機ほどから、そのビーム砲座・ビーグルを切り離して運用、現場運用的に臨時の偵察攻撃機とし、相手には察知されないまま、監視配置されたそれらは敵目標ホテル・ポイントの陣地構築物の全容を完全に捕捉できていたからである。

 

 つまり、目標の暴露と捕捉は完全に完了した瞬間だった。

 

 さらに通行路の啓開も完了していたので、そのままゾイドの高機動によって陣地への肉薄を実行できる。

――さすればどうなるか、

 

 

 コマンドウルフの機体が、吼えた。

 そして発進をした。

 徐速の状態から一気に加速したそれは、直後に、部隊のすべての機が一斉に疾走を開始した物になった。

 

 

 

 機動を執ったコマンドウルフ隊は、しかしそのまま陣地へと“殴り込み”を掛けたのではない。

……敵目標の捜索と同時に、コマンドウルフのアンブッシュが可能な遮蔽地形の発見と随所への確保も、ビーグル員の運用の目的とされていた。

 

 

 すなわち、機動の開始とはそれらへの自機たちの隠伏も意味していた。

 そして敵陣地の目標地点評定は、それを監視する配置に只今もある各ビーグルが果たせるのだ。

 両者のその意味にさらに注釈すれば、この隊のコマンドウルフには、その複数機かに複合ウェポン・ユニットのバックパックを装備した、“重装型”とも言うべき装備仕様の機も含まれていた。

 これは口径120ミリのマルチレンジ型実体弾・高威力ガンポッドと三連装ミサイルパックの三基とを組み合わせたもので、開発まもないこの新装備は、今回の西方大陸遠征軍ではハンコック大佐麾下の部隊に特に優先して配置がなされていたものであったが、実験的にこの隊のコマンドウルフにも架装がされていたのである。

 

 

 つまり彼らの今からの機動行動は、回避散開というよりはそれぞれに割り当てられた射点への移動であり、

 そしてその射点への配置が完了した直後には特に重装型コマンドウルフの機体は射撃体勢へと入っていた。

 

 砂塵を巻き上げて、一瞬で九機のコマンドウルフは遮蔽地形へと進入――すべりこむように地形へと隠れ伏せ、ダックインとなった、次の瞬間でのミサイルパックからの誘導弾の順次発射!

 同時に、現在までも進行を継続していた後方からのカノントータスによる砲撃、および直接照準が可能な射点からは通常型コマンドウルフも加えてのその銃撃の開始は、現地を評定するビーグル各機からの座標観測指示管制により、敵陣地構築物への……正確かつ効果的な着弾がなされていった――

 

 

 

 

 

 ビーグル観測員から、射撃停止の合図が号令された。

 

 とうに向こうの反撃はできぬものとなっている。飛んでくる弾丸なんてのは数分前から存在しない。

 以上の一連が完了した時には、敵陣地の抵抗能力は…そのほとんどが喪失していたのだ。

 たった数瞬、そして数分も立たない時間経過の内のことであった。

 そしてこの完了の瞬間から、彼ら先鋒部隊の任務の最終局面が――開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……―――!―――……

 

 

 

 

 

 

 コマンダーの乗るコマンドウルフから、照明弾が撃ち上がった!

 それは事前のブリーフィングにて確認がされた通りの、陣地本体への騎兵強襲の合図である。

 

 

 

 蛍光色の白色に、蒼い闇色の砂漠は明快に照らし出されていた。

 

 ゆっくりとした足取りで、砂丘から機体を上げて敵陣地に肉薄したコマンドウルフ隊の機体のすべてもそうであった。

―――乳白色に浮かび上がる九つの機影、点のような光源となって空に留まる照明弾…それに照らされた地平と夜空のすべては、浮ついた白ばみに染め上げられている。

 そうして敵陣地の全景も明瞭になって、夜沙の向こうの、そのプレート状のベースシステムの連なりは粉砕されて、残骸となった構築物のそれが炎上しているのが見て取れた。

 

 

 ここまでやれば、敵は撃破され、任務は達成されただろう……

 

 

 降伏勧告を出すまでもなく、歩兵部隊が乗り込み、制圧とする。

 

 司令機であるコマンドウルフ01番機に乗るコマンダーが、後方の歩兵装甲車部隊へと、前進の連絡を送ろうとして…――

 

 

 

ガァン!

 

 

 

 ―――突如として、射撃の弾火が瞬いた!

 

 コマンドウルフでもカノントータスのでもない、しかし強力なビームの銃撃だ。四門の砲口から放たれたそれがコマンドウルフ隊の個々の機体の間を切り裂くように這い巡り、乱れ飛び――次の瞬間…照準の焦点が合わせられたのだ。銃撃の火線が収束し、あえていちタイミング遅れさせて放ったのだろう、飛来した三発のミサイルの弾体と共に、隊列最後方にいたコマンドウルフの一機を火球に変えたのだ!

 

 

 

通信で、その機体のパイロットと射撃手の叫びが響いた。

 

 

 

“散開!”

 

 

 

突然の悲劇に硬直していたコマンドウルフ隊の残存は、しかし次の瞬間のコマンダーからの怒鳴りに我に返った。

そうして逃げるように味方が散開していく最中…火球に包まれた後、火達磨になったウルフは、やがて背中の熱中和放熱ステルス式排気グリルから大きく炎を吹きあげた後、搭乗員とゾイド生命体の断末魔を残し、爆散した。

零れ落ちるように脱出できた射撃手が這うように逃げる中、

その炎の明かりと、未だ燃焼を続ける照明弾の蛍光白とのコントラストの狭間に、この破壊をもたらした、“それ”は潜んでいた。

 

 

 

 

コマンドウルフの搭乗員は見た。

 

――砂のなかに潜んでいたのだ。

その機体を沙漠の砂から守るために覆ったのだろう防護シートを、起動による機関始動に伴う膨大な冷却排気で切れ端から砂を落としながら膨らまし、真紅の身体に纏わりつく流砂をマシン各所のスリットからのガスで吹き洗い流し……そして砂の中に形成した仮設バンカーの中から、“それ”は姿を現した。

 

機上コンピューターによる割出は同時であったが、逆光に塗りつぶされた闇の向こうの存在。

それを見た時、目撃した時…コマンドウルフの搭乗員たちは驚愕に顔を染めていた。

 

 

 

…――サーベルタイガー!

 

 

 

旧内戦の時、高速戦闘ゾイドの始祖にして到達点として共和国軍を相手に猛威を振るった、その虎型大型ゾイドの一機が、目の前に現れていたのである。

40年以上前に用いられていた機体だ。この機種の友軍による分析と解析では、内部機構を中心に近代化のための若干の改造と改修が加えられたセイバー・タイプであろう、とされている、その一機だろう。

ステルス性では24ゾイドよりも格段に低い…だが、ゾイド生命体…ゾイド・コアを一時的に休眠状態にまですることでコマンドウルフのセンサーによる探知を脱していたというのがそのからくりであった。

―――コマンダーのヘッドセットに、歩兵部隊とカノントータスの重砲隊からの状況の仔細の報告を求める通信が殺到していた。

引きつり、後ずさるようなウルフたちと愕然とする搭乗員たちの気配を尻目に……

 

 

 

――一歩、その虎が足を繰り出した。まるで気品を纏った麗人が振る舞うかのように、その足遣いには優雅さがあった。そして…

 

 

 

……―――………―――……

 

 

 

闇の奥の暗光に、虎の気配が“迸った”。

そうしてウルフたちも…獣たちは呼び合った。

 

獣のうなりに呼ばれたのだ。

 

聞こえたのかも、音として発されたのかもわからない。ただ、自分たちよりも格上の獣のその吐息にゾイドのウルフたちは慄くような息を発したあと、しかし次に、猛々しい戦意でそれを振り払うようにうなりを散らした。

 

それは自分たちの“仲間”の喪失に対する怒りの表明であると共に、動転して怖れと怯えにやられてしまった自らの“相棒”…ゾイド乗りたちに発破をかけるものでもあろう。

ただ……

 

 

 

 

―――……!―――

 

 

 

 

サーベルタイガー、改めセイバータイガーが、吼えを上げた。

 

 

ウルフ乗り達には、そのタイガーの顔が、笑っているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 この戦いに於ける双方の最終的な交戦が、遂に開かれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

――以上はゾイド・コアに付随するメモリー部ユニットに記録された、あるウルフの記憶の残滓である。

 

 

 

 

 

 

 

 

・セイバー・タイガー

 

 

 

 

 

 

 

…―――……!――――

 

 

 ががぁん!…――と、衝撃と轟音と共に装甲が砕けた破片を散らしながら、コマンドウルフの一機が吹き飛ばされ、弾かれた。

 

 失敗だった! 転倒による揺動に激しく揺さぶられながら、コクピットの中のコマンドウルフの搭乗員は絶句に呻いた。

 セイバータイガーの機体が暴露された次の瞬間に、コマンドウルフの隊は即座に射撃による反撃を仕掛けた。だが牽制になるための一撃離脱の肉弾戦を挑んだこのコマンドウルフは、逆に“狩られた”。

 軽量ながら高強度な、プロテクター状になっている脚部付け根の装甲を割られたほどに、さんざんに痛めつけられたのだ。

 立て直す暇も力もないほどに、その機体の身体をおぼつかなくくねらせながら、ダメージのままにウルフの機体が砂上を滑走する…その直後、追い打ちをかけるビーム銃火がウルフに降り注ぐ!

 悲鳴のようなウルフの鳴き声が砲火と轟音の響く砂漠に点った。振り絞るようになんとか機体を立て直して、そうして這うように、このウルフ6号機が砂の上で逃げながら避けていくのを、ゆらぐような砂塵を暗幕にしながらシルエットを落とし、生物の目に当たるコクピットキャノピーを光らせた――セイバータイガーは追いかけんとする……が、その行く手を他のウルフが銃撃で塞ぎ、道を遮る。

 

 

DOWDOW、BAWBAW!!!!!!!!!…―――

 

 

 目くらましと時間稼ぎのそれが数斉射、続けられた後だ。

 泣くようなウルフ6号機のパイロットの感謝の声の後…

―――直後、息を合わせての統制射撃……コマンドウルフの背部ウェポン…各機のそれぞれ各種による集中射撃の猛烈な弾雨が、セイバータイガーの機体に向けられた!

 

 

BABABABABAMMMMMW!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

―――120mm砲が火を噴き、ビーム砲の砲口が赤熱する!―――

 

 集中砲火。

 本命の一撃だった。

 そうしてその弾雨の奔流の切っ先で、確かにこの攻撃は、始まりの数瞬は、セイバータイガーの側もたじろぎ、驚いたようでもあった。

 しかし、それがセイバータイガーの次手が止まることを意味するものではなかった。

 僅か一瞬しか効果はなかったのである。

 

 初撃の数弾、コマンドウルフの隊の必死の銃火に、その砲火を喰らうしかなかったタイガーだったが、しかし、セイバータイガーの全身の重装甲は耐えきった!

 そしてゆらぐようにセイバータイガーは機体を震わせた。ビームの炎熱による陽炎が滾る向こうの事だ。びくともせず…とはいかなかったろう。が、内部構造までの致命傷は及ぼさなかったのだ。

 それはコマンドウルフの隊の、そのコマンダーも織り込み済みの事であった。だから連続しての命中が肝要であると踏んでいたのだ。しかし……

 

 

 

―――………!―――

 

 

 

 ハートレイ騎兵伍長は回述する

 あの時、ウィリアムに、自分が乗るウルフから呼びかけられたような感覚があった。“来るぞ”。

 戸惑ったウィリアムだったが、続けざまにウルフから伝えられたかのようなその感覚は、セイバータイガーとそのパイロットが、ウルフたちと自分たちの“命”を値踏みを通り越して直に舐めづるかのような、嫌にしておぞましい感触……怖気が差すものだった、と。

 

 

 そして、それは予告通りか―――直後、攻撃を見切ったように、セイバータイガーは踵を切って、砲爆の炎に機体を翻し―――全力のパワーで発進し、走り出して、駆け抜けた! ガンカメラの記録に残る通りだ。

 そうすると、ぐんぐんと速度を加速させて、飛んでくる弾雨を鼻先をかすめるような間隙で…―――しかし余裕をもって、軽々と…―――かわして避けてゆく―――まるで悪夢だ。大柄な機体に似合わない、セイバータイガーの本気の機動性能だった。

 

 

 ウィリアムも射撃手も動転した。

 コマンドウルフ背部ガンターレット・ビーグルの露天銃座の中で、肝心の射撃手は震え上がり、恐怖と悪態に舌打ちしながらであった。

狙いは今定めた。だが…――速い!

 トリガーを引いた。轟音と共に、銃座型ビーグルのビーム砲から、紅蓮の閃光が迸った!

 だが当たらなかった。FCS(火器管制システム)の誘導照準に狂いはないはずだ。だが、まるでビームの方が、虎のシルエットから逃げるように、避けるように、逸れるように。

 恐怖だった。

 照準を司る射撃用ターゲットスコープ・ファインダーの中で、セイバータイガーの紅い機体が、炎と明白光に挟まれたその姿が、勢いよく、どんどん接近して……大写しにするのだから!

 

 

 その瞬間、セイバータイガーがビームを放つ。

 ウルフの一機に、触れるように掠めた……わずか間際であったが当たりはしなかった。

 だが咄嗟の制動でそれを回避したウルフの機体は、数歩分、身じろぎで身体を退いた。

 すると、タイガーはさらに加速して、そのウルフをめがけて距離を迫らせる…

 ウルフの搭乗員の怯えた呻きが通信に漏れた。

 

 

 虎の猛威は留まる所を知らない。

 それでもウィリアムの機体で今まで荷物だった射撃手(ガンナー)が、渾身の狙撃を見舞った。

 相手がエモノを定めて、機動進路の軌道が単純になった、今の瞬間を狙ったのだ!

 だが当たらなかった。連射する。他のコマンドウルフたちも、パイロットがトリガーを引き、連続の発砲を仕掛けている。

 しかし当たらない。地を這う電流の如く…擦り抜けるように紅い虎の機体が奔るからだ。

 虎は走る。砲爆の光条を潜り抜けて。

 砂塵を掻き切り、ビームの轟く電光石火の暗雲を切り裂き、爆炎の狭間を擦り抜け…

 

 

 サーベルタイガーの渾名には、“紅き暴風”という名がある。まさに今がそうだ。

 爆風が吹き込むような猛然としたパワーで、砂塵の壁を、弾火の雨を打ち破ってくるのだ!

 コマンドウルフの装備する射撃用センサーの光学スコープの中で、紅い虎のシルエットが一瞬で肉薄し、大きくなる。

 白兵戦を挑もうとしているのだ。それにはウルフ隊の誰もが唖然とした。もう一キロにも満たない、彼我の距離は目前だった。限界だ。逃げるように……いや、実際に、逃げるために機体を走らせるしかなかった。

 

 

 たったいま、たまりかねた重装型コマンドウルフの一機が、ミサイルパックのひとつを使用した。

 砲塔状に纏められた複合ウェポンパックの銃口の切っ先を後方部へと旋回させ向けて、直後にミサイルパックの発射部で、プラスチックのカバーがはじけて破片が散った。すると露わになった発射口から、カバーを突き破ったミサイルの先端が吸いだされる様に吐き出される…―――

 距離540、必殺の間合いであった。

 されど、そこから放たれた三連装誘導弾の弾体のひとつずつは、遥か高速なセイバータイガーの辿った軌跡に、弧のような軌道を描いて遥か遅れて弾着し、その紅い機体を三連の爆光によって逆光に轟かせる、そのばかりでしかなかった。

 

 そうして巻き上げられた砂漠の砂を、さらに追従のビーム砲の弾火が焼き付かせる!

 だがタイガーはそれさえも突進のまま潜り抜ける。

 ビームの電光によって砂が灰とガラス質のダストの集合に変質したガス状の毒雲に突っ込ませた機体の、その赤色の残像は幻影のように大気に焼け付くようだった。そして……

―――がっぷりと開けた口の中で、作動を開始した鉛色の牙…レーザーサーベルが、高周波超振動の光に鈍色を輝かせた。

 

 

 ウルフ隊のコマンダーはそれを見ると息をのんで慄き、しかし発破をかけた。“追い付かれるな”、“距離を取れ”と。

 並のゾイドなら、このままセイバータイガーの突進を受けるに甘んじ、食いつかれたならばこの口部格闘用レーザーサーベルによってずたずたに裁断される……というのが目に見えた終わり方であったろう。

 しかし、コマンドウルフは中型ゾイドながら、かつてセイバータイガーの種機・サーベルタイガーを元に開発された謂れを持つ、共和国軍の大型高速戦闘ゾイドであるシールドライガーに、一回り小さい中型ながら随伴走行が可能な高速戦闘ゾイドである。

 その上相手と我方とは八対一で、逃げる分には余裕があるし、それはマシンスペック上では可能である。

 

 されど、最高速が百キロに満たない、カノントータスと歩兵装甲車の連れ合いを、今回ウルフ隊は連れてきている。すなわち現実にウルフのみだけで逃げて遁走する……訳にはいかない。

 

 ならばどうするか。

 撃破するのだ。セイバータイガーを。

 初手にしてひとりをやられた。が、しかし八対一、だ。

 

 

 まだやりようならなんとかなる……

 策があった。

 指示の応答を怒鳴りながら、コマンドウルフ隊のコマンダーはMFDに出現させた機体後方映像を睨んだ。

 そこに写る、此方を追跡し、走行する虎の機体をだ。

 虎からすれば、最早オオカミどころか子犬のように可愛らしいウルフたちが、追えば追うほどに散って散らしていく、ただただ愉快なそれだけだと思っていた。

 だが、狼を舐めるな。

 コマンドウルフの各機は、逃げて散っていくと同時に、鳥瞰で見ると、その配置と距離の取り方は、徐々にセイバータイガーを囲むようになっていたものだった。

 

 

 鉄の獣の脚が砂を踏みしめ、巻き上げられた砂塵を突き解ぐように、ビームと実弾の応射が放たれていく。

 向こうで紅いシルエットが疾走する。此方も走っている。僚機も走る。誘引は成功しつつある。だが、それを遮る、立ち込める暗雲の此方から向こうが、地獄の入口が待つ処刑場に他ならない…

 

 セイバーの動きは機敏で、高速だ。

 暴風のような鉄弾火雨をものともせず、己の揺るぎない動きで、狼たちをおびえさせ、怒らせ、嬲ってゆく……その現象の一方的行使が、まるでその紅い虎にだけに許されているかのように。

 

 

 だが、そうしていつしか気づいたとき、ウルフたちはその決戦場の、淵の端でぐるりと取り囲むように、周りからは見通しのよいだろう砂丘の上に、セイバータイガーは誘導されていた。

 そのことにセイバータイガーの搭乗員が気付いた時に、ウルフ隊のコマンダーは張り付いた笑みをこぼした事だろう。

 コマンドウルフ型の真価は、単独攻でも集団戦でも高い戦闘性能を発揮できることにある。

 そして、なによりもこの突発的な戦いには、此方の持ち分はウルフ型のゾイドだけではないのだ。

それは……

 

 

 

―――――………!…―――――

 

 

 

―――虚空を紫電が切り裂いた!

 

“今だ”ウルフ隊のコマンダーが通信で合図して、セイバータイガーの搭乗者が訝しがった、そのまさにその瞬間の事だ。

そして、連続して数発の青白い雷が、ウルフの包囲が完成して、その周囲からは味方のゾイドの姿が消えたのを見計らったカノントータスからの重砲から放たれた――重荷電粒子砲だ。

 

 

 命中の成功を確認するのは関係なかった。

 それよりも早く、大型重ビーム砲による照射は連続されて繰り広げられた。

 続いて、荷電粒子砲の冷却のためのインターバル……その間、射程限界一杯ながらも、こんどは対空速射砲二連六門による制圧射撃が浴びせられていった。

 

 

 

 しかしセイバータイガーは、その強烈な矢のような弾火弾雨の最中さえも、咄嗟の機動によって潜り抜けていた。

――再び砲撃が始まった。

 電光が閃く中、砂漠の丘の上で、しかし紅い虎は、踊るかのような回避の躍動を繰り広げるのがしばらくであった。

 恐ろしいことに重荷電粒子砲は直撃も命中も、もたらすことはできなかったのだ。

 

 

 

 されど、コマンドウルフ隊のコマンダーは緊張を保ったまま、息を漏らした。

 

 まず、最初の…タイガーの機動性のまま、ウルフたちの機体間がまとまって隊形が固まっているところをセイバータイガーに蹂躙される……というのは、脱することができた。

 

 次の手がある。やれることはそうのこっていないが、明白だ。“白兵戦でセイバータイガーの動きを仕留める”、それだけだ。

 

 

 決意して、操縦桿を踏み込ませる。

 コマンドウルフ01番機が、遠吠えの唸りを挙げた。

 すると他のウルフとその搭乗員は、文章での情報によって通信の受信がなされた。

 狼の声を用いた、音響情報信号通信のシステムだ。

 これによって、コマンドウルフの装備部隊は、たとえ通信が使えない状態であっても、一糸乱れない連携を成すことができる――

 

 

 再び、コマンダーの乗るウルフは吼えた。

 

 月下の咆哮だった。

 爆光に明滅する機体の操縦桿のディスプレーに、受け取られた短文の情報が表示された。

 それを受け取ったコマンドウルフの搭乗員は……特にウィリアムとそのガンナーは、明白に怯えた。

 

 

 それにはこう記されていた……“ウルフ全機で、格闘による集団戦を挑む”、と。

 

 

 

 

(以下未完)

 

 

 

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