ゾイド二次創作小説~西方大陸の地にて~完結!   作:もにもに+マウンテンヘッド

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分割版#7:セイバー・タイガー(1)

 

 

 

 

・セイバー・タイガー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…―――……!――――

 

 

 

 

 

 ががぁん!…――と、衝撃と轟音と共に装甲が砕けた破片を散らしながら、コマンドウルフの一機が吹き飛ばされ、弾かれた。

 

 

 

 失敗だった! 転倒による揺動に激しく揺さぶられながら、コクピットの中のコマンドウルフの搭乗員は絶句に呻いた。

 

 セイバータイガーの機体が暴露された次の瞬間に、コマンドウルフの隊は即座に射撃による反撃を仕掛けた。だが牽制になるための一撃離脱の肉弾戦を挑んだこのコマンドウルフは、逆に“狩られた”。

 

 軽量ながら高強度な、プロテクター状になっている脚部付け根の装甲を割られたほどに、さんざんに痛めつけられたのだ。

 

 立て直す暇も力もないほどに、その機体の身体をおぼつかなくくねらせながら、ダメージのままにウルフの機体が砂上を滑走する…その直後、追い打ちをかけるビーム銃火がウルフに降り注ぐ!

 

 悲鳴のようなウルフの鳴き声が砲火と轟音の響く砂漠に点った。振り絞るようになんとか機体を立て直して、そうして這うように、このウルフ6号機が砂の上で逃げながら避けていくのを、ゆらぐような砂塵を暗幕にしながらシルエットを落とし、生物の目に当たるコクピットキャノピーを光らせた――セイバータイガーは追いかけんとする……が、その行く手を他のウルフが銃撃で塞ぎ、道を遮る。

 

 

 

 

 

DOWDOW、BAWBAW!!!!!!!!!…―――

 

 

 

 

 

 目くらましと時間稼ぎのそれが数斉射、続けられた後だ。

 

 泣くようなウルフ6号機のパイロットの感謝の声の後…

 

―――直後、息を合わせての統制射撃……コマンドウルフの背部ウェポン…各機のそれぞれ各種による集中射撃の猛烈な弾雨が、セイバータイガーの機体に向けられた!

 

 

 

 

 

BABABABABAMMMMMW!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

―――120mm砲が火を噴き、ビーム砲の砲口が赤熱する!―――

 

 

 

 集中砲火。

 

 本命の一撃だった。

 

 そうしてその弾雨の奔流の切っ先で、確かにこの攻撃は、始まりの数瞬は、セイバータイガーの側もたじろぎ、驚いたようでもあった。

 

 しかし、それがセイバータイガーの次手が止まることを意味するものではなかった。

 

 僅か一瞬しか効果はなかったのである。

 

 

 

 初撃の数弾、コマンドウルフの隊の必死の銃火に、その砲火を喰らうしかなかったタイガーだったが、しかし、セイバータイガーの全身の重装甲は耐えきった!

 

 そしてゆらぐようにセイバータイガーは機体を震わせた。ビームの炎熱による陽炎が滾る向こうの事だ。びくともせず…とはいかなかったろう。が、内部構造までの致命傷は及ぼさなかったのだ。

 

 それはコマンドウルフの隊の、そのコマンダーも織り込み済みの事であった。だから連続しての命中が肝要であると踏んでいたのだ。しかし……

 

 

 

 

 

 

 

―――………!―――

 

 

 

 

 

 

 

 ハートレイ騎兵伍長は回述する

 

 あの時、ウィリアムに、自分が乗るウルフから呼びかけられたような感覚があった。“来るぞ”。

 

 戸惑ったウィリアムだったが、続けざまにウルフから伝えられたかのようなその感覚は、セイバータイガーとそのパイロットが、ウルフたちと自分たちの“命”を値踏みを通り越して直に舐めづるかのような、嫌にしておぞましい感触……怖気が差すものだった、と。

 

 

 

 

 

 そして、それは予告通りか―――直後、攻撃を見切ったように、セイバータイガーは踵を切って、砲爆の炎に機体を翻し―――全力のパワーで発進し、走り出して、駆け抜けた! ガンカメラの記録に残る通りだ。

 

 そうすると、ぐんぐんと速度を加速させて、飛んでくる弾雨を鼻先をかすめるような間隙で…―――しかし余裕をもって、軽々と…―――かわして避けてゆく―――まるで悪夢だ。大柄な機体に似合わない、セイバータイガーの本気の機動性能だった。

 

 

 

 

 

 ウィリアムも射撃手も動転した。

 

 コマンドウルフ背部ガンターレット・ビーグルの露天銃座の中で、肝心の射撃手は震え上がり、恐怖と悪態に舌打ちしながらであった。

 

狙いは今定めた。だが…――速い!

 

 トリガーを引いた。轟音と共に、銃座型ビーグルのビーム砲から、紅蓮の閃光が迸った!

 

 だが当たらなかった。FCS(火器管制システム)の誘導照準に狂いはないはずだ。だが、まるでビームの方が、虎のシルエットから逃げるように、避けるように、逸れるように。

 

 恐怖だった。

 

 照準を司る射撃用ターゲットスコープ・ファインダーの中で、セイバータイガーの紅い機体が、炎と明白光に挟まれたその姿が、勢いよく、どんどん接近して……大写しにするのだから!

 

 

 

 

 

 その瞬間、セイバータイガーがビームを放つ。

 

 ウルフの一機に、触れるように掠めた……わずか間際であったが当たりはしなかった。

 

 だが咄嗟の制動でそれを回避したウルフの機体は、数歩分、身じろぎで身体を退いた。

 

 すると、タイガーはさらに加速して、そのウルフをめがけて距離を迫らせる…

 

 ウルフの搭乗員の怯えた呻きが通信に漏れた。

 

 

 

 

 

 虎の猛威は留まる所を知らない。

 

 それでもウィリアムの機体で今まで荷物だった射撃手(ガンナー)が、渾身の狙撃を見舞った。

 

 相手がエモノを定めて、機動進路の軌道が単純になった、今の瞬間を狙ったのだ!

 

 だが当たらなかった。連射する。他のコマンドウルフたちも、パイロットがトリガーを引き、連続の発砲を仕掛けている。

 

 しかし当たらない。地を這う電流の如く…擦り抜けるように紅い虎の機体が奔るからだ。

 

 虎は走る。砲爆の光条を潜り抜けて。

 

 砂塵を掻き切り、ビームの轟く電光石火の暗雲を切り裂き、爆炎の狭間を擦り抜け…

 

 

 

 

 

 サーベルタイガーの渾名には、“紅き暴風”という名がある。まさに今がそうだ。

 

 爆風が吹き込むような猛然としたパワーで、砂塵の壁を、弾火の雨を打ち破ってくるのだ!

 

 コマンドウルフの装備する射撃用センサーの光学スコープの中で、紅い虎のシルエットが一瞬で肉薄し、大きくなる。

 

 白兵戦を挑もうとしているのだ。それにはウルフ隊の誰もが唖然とした。もう一キロにも満たない、彼我の距離は目前だった。限界だ。逃げるように……いや、実際に、逃げるために機体を走らせるしかなかった。

 

 

 

 

 

 たったいま、たまりかねた重装型コマンドウルフの一機が、ミサイルパックのひとつを使用した。

 

 砲塔状に纏められた複合ウェポンパックの銃口の切っ先を後方部へと旋回させ向けて、直後にミサイルパックの発射部で、プラスチックのカバーがはじけて破片が散った。すると露わになった発射口から、カバーを突き破ったミサイルの先端が吸いだされる様に吐き出される…―――

 

 距離540、必殺の間合いであった。

 

 されど、そこから放たれた三連装誘導弾の弾体のひとつずつは、遥か高速なセイバータイガーの辿った軌跡に、弧のような軌道を描いて遥か遅れて弾着し、その紅い機体を三連の爆光によって逆光に轟かせる、そのばかりでしかなかった。

 

 

 

 そうして巻き上げられた砂漠の砂を、さらに追従のビーム砲の弾火が焼き付かせる!

 

 だがタイガーはそれさえも突進のまま潜り抜ける。

 

 ビームの電光によって砂が灰とガラス質のダストの集合に変質したガス状の毒雲に突っ込ませた機体の、その赤色の残像は幻影のように大気に焼け付くようだった。そして……

 

―――がっぷりと開けた口の中で、作動を開始した鉛色の牙…レーザーサーベルが、高周波超振動の光に鈍色を輝かせた。

 

 

 

 

 

 ウルフ隊のコマンダーはそれを見ると息をのんで慄き、しかし発破をかけた。“追い付かれるな”、“距離を取れ”と。

 

 並のゾイドなら、このままセイバータイガーの突進を受けるに甘んじ、食いつかれたならばこの口部格闘用レーザーサーベルによってずたずたに裁断される……というのが目に見えた終わり方であったろう。

 

 しかし、コマンドウルフは中型ゾイドながら、かつてセイバータイガーの種機・サーベルタイガーを元に開発された謂れを持つ、共和国軍の大型高速戦闘ゾイドであるシールドライガーに、一回り小さい中型ながら随伴走行が可能な高速戦闘ゾイドである。

 

 その上相手と我方とは八対一で、逃げる分には余裕があるし、それはマシンスペック上では可能である。

 

 

 

 されど、最高速が百キロに満たない、カノントータスと歩兵装甲車の連れ合いを、今回ウルフ隊は連れてきている。すなわち現実にウルフのみだけで逃げて遁走する……訳にはいかない。

 

 

 

 ならばどうするか。

 

 撃破するのだ。セイバータイガーを。

 

 初手にしてひとりをやられた。が、しかし八対一、だ。

 

 

 

 

 

 まだやりようならなんとかなる……

 

 策があった。

 

 

 

 

 

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