ゾイド二次創作小説~西方大陸の地にて~完結! 作:もにもに+マウンテンヘッド
指示の応答を怒鳴りながら、コマンドウルフ隊のコマンダーはMFDに出現させた機体後方映像を睨んだ。
そこに写る、此方を追跡し、走行する虎の機体をだ。
虎からすれば、最早オオカミどころか子犬のように可愛らしいウルフたちが、追えば追うほどに散って散らしていく、ただただ愉快なそれだけだと思っていた。
だが、狼を舐めるな。
コマンドウルフの各機は、逃げて散っていくと同時に、鳥瞰で見ると、その配置と距離の取り方は、徐々にセイバータイガーを囲むようになっていたものだった。
鉄の獣の脚が砂を踏みしめ、巻き上げられた砂塵を突き解ぐように、ビームと実弾の応射が放たれていく。
向こうで紅いシルエットが疾走する。此方も走っている。僚機も走る。誘引は成功しつつある。だが、それを遮る、立ち込める暗雲の此方から向こうが、地獄の入口が待つ処刑場に他ならない…
セイバーの動きは機敏で、高速だ。
暴風のような鉄弾火雨をものともせず、己の揺るぎない動きで、狼たちをおびえさせ、怒らせ、嬲ってゆく……その現象の一方的行使が、まるでその紅い虎にだけに許されているかのように。
だが、そうしていつしか気づいたとき、ウルフたちはその決戦場の、淵の端でぐるりと取り囲むように、周りからは見通しのよいだろう砂丘の上に、セイバータイガーは誘導されていた。
そのことにセイバータイガーの搭乗員が気付いた時に、ウルフ隊のコマンダーは張り付いた笑みをこぼした事だろう。
コマンドウルフ型の真価は、単独攻でも集団戦でも高い戦闘性能を発揮できることにある。
そして、なによりもこの突発的な戦いには、此方の持ち分はウルフ型のゾイドだけではないのだ。
それは……
―――――………!…―――――
―――虚空を紫電が切り裂いた!
“今だ”ウルフ隊のコマンダーが通信で合図して、セイバータイガーの搭乗者が訝しがった、そのまさにその瞬間の事だ。
そして、連続して数発の青白い雷が、ウルフの包囲が完成して、その周囲からは味方のゾイドの姿が消えたのを見計らったカノントータスからの重砲から放たれた――重荷電粒子砲だ。
命中の成功を確認するのは関係なかった。
それよりも早く、大型重ビーム砲による照射は連続されて繰り広げられた。
続いて、荷電粒子砲の冷却のためのインターバル……その間、射程限界一杯ながらも、こんどは対空速射砲二連六門による制圧射撃が浴びせられていった。
しかしセイバータイガーは、その強烈な矢のような弾火弾雨の最中さえも、咄嗟の機動によって潜り抜けていた。
――再び砲撃が始まった。
電光が閃く中、砂漠の丘の上で、しかし紅い虎は、踊るかのような回避の躍動を繰り広げるのがしばらくであった。
恐ろしいことに重荷電粒子砲は直撃も命中も、もたらすことはできなかったのだ。
されど、コマンドウルフ隊のコマンダーは緊張を保ったまま、息を漏らした。
まず、最初の…タイガーの機動性のまま、ウルフたちの機体間がまとまって隊形が固まっているところをセイバータイガーに蹂躙される……というのは、脱することができた。
次の手がある。やれることはそうのこっていないが、明白だ。“白兵戦でセイバータイガーの動きを仕留める”、それだけだ。
決意して、操縦桿を踏み込ませる。
コマンドウルフ01番機が、遠吠えの唸りを挙げた。
すると他のウルフとその搭乗員は、文章での情報によって通信の受信がなされた。
狼の声を用いた、音響情報信号通信のシステムだ。
これによって、コマンドウルフの装備部隊は、たとえ通信が使えない状態であっても、一糸乱れない連携を成すことができる――
再び、コマンダーの乗るウルフは吼えた。
月下の咆哮だった。
爆光に明滅する機体の操縦桿のディスプレーに、受け取られた短文の情報が表示された。
それを受け取ったコマンドウルフの搭乗員は……特にウィリアムとそのガンナーは、明白に怯えた。
それにはこう記されていた……“ウルフ全機で、格闘による集団戦を挑む”、と。
ウィリアムはどう顔の表情を作ればよいか、わからなくなった。
汗の伝う顔の、その目は虎の踊る丘の、そのセイバータイガーを見据えていた。
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