ゾイド二次創作小説~西方大陸の地にて~完結! 作:もにもに+マウンテンヘッド
・コンビネーション攻撃
果たして、状況は一転した。
白い雷槌が、擦過していく…セイバータイガーの、その至近を。
雷光は、渦を巻いていた。
その渦の渦中に、紅い一点たるセイバータイガーは、溺れるように埋もれつつあった…
あまり深くない差し障りではあるが、寸差を掠めていくたびに、虎のボディーに、そのイカヅチたちは、たいあたりの打撃や爪の一撃となって、ぶつかって行っていた……のだ。
雷光の条数は、8つ、ある……
白い塗装の、コマンドウルフの機体の8機である。
周囲を錯綜していくその白い雷たちが、
セイバータイガーの直近を通過していくたびに、
紅いトラの体表には、小なり中なりのダメージが累積していく。
だが、素早い捌きで加速度的に増幅していくそのダメージ被害は、無視し得ないほどに威力の堆積が、極めて短時間の内に、高速で…集まり蓄積がされていっていた。
怒り狂った虎は、やみくもな銃撃射撃だったり、
あるいは口腔内のレーザーサーベルだったり脚部足首のストライククローだとかを、稼働状態に都度セットしたそれを震わせて、
縦横に振るおうとしたりもした!
搭乗者たるパイロットと、そのゾイド生命体の闘争本能が為せる技だった。
……先刻から一転し、虎がオオカミになぶられる様となったことへの、その焦りも含まれていたことだろう。
だが、虎は完全に、狼の渦中に孤立した状態だった。
なにかひとつ!でも、虎が攻撃を振るおうとすれば、
冷静さを欠いた今、
その向かう先の矢印は一方向しか無く、向けられる対象も、また、一つでしかない。
しかし、その一撃を、オオカミたちに向かって浴びせよう…としたなら、
何か一体、そのうち何かの一機を、狙って殺そうとしたならば、
途端に他の各方向・全周囲からのどつきの浴びせというのが他のオオカミたちから浴びせられ、
そうして威力と勢いは大幅に削られた虎の一打というのは、果たして…狙いの相手の狼の一つには、届きもしないまでに威力は削られてしまうか、
あるいはそうまで弱った一撃というのは、
その狙いの相手は余裕綽々、飄々軽々に…
回避の行使とその成功が、約束されて狼にはもたらされる……そのようなあらましであった。
袋叩き、集団リンチ、というにこの上ない。
もっといえば、その誘い出しの受け子役をするのは狼の一機づつたちが輪番で担当し、
そうして引き出した虎をおちょくり、煽り絡め取るかのように、
そのたびに、他のオオカミたちの全機たちが、
スキを逃さず…集団戦の暴力を、その一体のみの虎にへと、逃さずに浴びせ続け伸す、そればかりの光景が繰り広げられていた……
狼の本気だった。
全8機のコマンドウルフの残存、それらが一致団結して、その連携を、はたして一体限りのこのセイバータイガーにへと浴びせていった…
セイバータイガーの損傷と破損は、時間を経るごとに、加速度的に手負いの度合いを深めていった……
羽を得た虎の如きだった動きの精彩は見るも無残に奪われていき、
疲弊のみが蓄積したのか、
セイバータイガーのゾイド球(コア)は、息も絶え絶えに、呼吸の脈動がだいぶ息切れしてきた、そのような様子となっていた…
8つの白き狼の、それは、白い電光の、回転槽の底のミキサーの刃のようでもある。
八条の白刃……
その刃の只中で、セイバータイガーは切り削り割れ崩され潰されていっていた!
ここまでに至るまでに、まず、3段階があった。
工程の初手の一段階としては、
先程の遠巻きに虎を見据えた状態となっていたウルフたちが、
部隊長とウルフ01機の発破の号令の元……
まず、各地点から、機体搭載火力による銃撃を、
各機連携と統制を持った状態で、
息を合わせての一斉射撃、
それも、まだ、この段階においては、静止射撃。…
これをおこなったのである。
射撃は一斉射、……と続けられ、数斉射、と繰り返された。
それが端緒となった…
遠吠えの獣声があがったのはその時のその瞬間のことであった。
続けて、ほかのウルフたちも遠吠えをし合った…
機体間音声電信で、連携の最終確認を行った…のだ。
そうして、第二段階にへと移った…走行間射撃に、へとである。
ウルフたちは、セイバータイガーの一機を中心に見据え、円を描きながら、サークル状に旋回を開始…
その間中、射撃は一寸も止められること無く、続けられた!
セイバータイガーの側は、はたしてここまでの苛烈な攻撃というのに、さほど動じること無く、敢えて言えば無警戒だった。
セイバータイガー自体の装甲がかなり重装甲なので数発の直撃ならば…ということもあったし、
はっきり言えば、慢心していた。
いや、セイバータイガーとその搭乗者は、
自分たちとその操縦による、美しい回避の躍動劇が、なんべんいくらでも愚かな観衆たちからアンコールが求められているのだと、そうとまでに、酔っていた…
踊らせているのが、己か、それとも…か、が解っていなかったのだ。
ゾイド自身とその搭乗者のひとりとひとつが、
自身の性能と己の操縦の実力というのに、
無警戒に溺れていたのは事実ではあろう。
だが、それが最大の慢心であった…
そうしている間にも、タイガーのエックス:ワイの座標というのは、その場で静止を余儀なくされていて、どちらの軸にへも…機動転換移動できなかったのである!
こうして、セイバータイガーは脚を止められている間に、ウルフたち狼の孤円は徐々に狭められていっていた。
そして、その瞬間が弾けたのは、残りわずかな間合いのことであった。
いつのまにか肉薄しつつあった周囲のゾイドのウルフたちから、怖気がよぎる程の、殺気…これが、立ち上ったのである。
突然の冷感に、セイバータイガーは戸惑い、果たしてその搭乗者は酔いが余韻はあったとはいえ、文字通りの冷水を掛けられた格好となった。
酔いが冷めかけ不信がよぎった、愚かな虎とその搭乗者が目を配ろうとした時……
そのときには、もう寸前である。
だが、なおもウルフたちは高速走行をサークル状に取りながら銃撃を緩めること無く向けて撃っていたので…
虎の側は、回避に勤しむしかない!
そうしてウルフ隊のコマンダーの目論見通り、
相互我彼のエックスとワイの座標が各軸でプラスマイナスゼロ、になった、そのときには…!
ウルフたちは、
徐々に集合密度の度合いを上げていき…
ゼロ距離に相対相互が達した今現在、
そうして前述にへと至った…ということであった。
そしてたった今、ウルフたちは“仕上げ”に入ろうとしていた。
仲間たちのウルフたちにより相互に繰り出し合うのはそのまま、
吻の中の牙を使って…文字通りの必殺攻撃の行使、
“エレクトロン・バイトファング”…これによる、
噛みつきを浴びせていった!
虎の悲鳴が、海原の只中ともとれる、果てのない夜の青い砂漠のその中心で、溺死の断末魔かのように、上がった…
猛然とした、ウルフたちのかみつきが繰り広げられていた。
虎は抵抗する。
だが、数に勝り、意欲もボルテージも旺盛で、スタミナも今まさに発奮中。
そんなウルフたちの噛み付きを何遍幾度無数多数と浴びせられていくのでは、虎の方は沈んでいくしかない!
砂の中にへと、虎は絡め取られつつあった…
冥界の死神が、砂の渦中で手を引いている!
ふたたびの悲鳴を、虎は上げるしかなかった。
だが、仲間の一体と、その人間の相棒を殺された、そのウルフたちは、毛の微塵ほども手加減のつもりは、まるで、ない。
虎の各部装甲が、スナップボルトの接続が弾ける音を鳴らしながら、
小気味よく弾け千切れ飛びつつあった。
とうとう破断を来した部品各部や装備構造品が裂かれていくと、
ウルフの噛合の顎力のままに、
力任せに引きちぎられたその破けた破損箇所で、引きずり出されたパイプ配線類や配管、機体の電子神経系統のその配置センサーとその接続回路線などが、まるで腑分けの実演かのように大きく、まざまざと露出する瞬間だった。
そうしてオオカミの牙が、歯の先端切っ先からの電光の迸りでフラッシュとスパークに照らし出されて輝いた!
食らいついた機のパイロットが、エレクトロン・バイトファング…電磁牙…の作動リミットを解いたのである。
牙単体での電磁振動振削の効果もあるこれであるが、
さらに主効果の一つである、放電電撃端子としての作用が発揮された結果として、
千切れかけていた虎の各部は電流の放電に色鮮やかに照らし出され、
いよいよついに電子神経が死んだ部品から順に、
最後の集合ハーネス類は焼けて切れて跳ねて、
分離断裂した各箇所や装甲品類などが、
オイルエキスや最終接続結線、配線ハーネス類の繊維質や残滓などを散らしながら、とうとう砕け散っで、剥がれ取れた!
虎は機体を震わせて、オオカミたちを振り払おうとした……だが、もう遅い。
ウルフのうちの一機による、
脚の爪の一撃が、セイバータイガーの頭部のコクピットハッチ頭蓋に、直撃した瞬間があった。
脳天への一撃となったこれは、だいぶセイバータイガーの搭乗者も堪えたらしい…
途端に、いままでもウルフたちに気圧されていたこのセイバータイガーの動きが、そこからは、決定的にヨタついたものとなり始めたのだ。
とうとう、虎の機体各部機関が、故障や損傷の積み重ねにより、機能不全を来しつつあった。
そうしたころ、ウィリアムに、輪番の鉢が回ってきていたのがこのときだ。
ウィリアムは、なんとかこの戦いを無事に生き残れそうなことに、
信じる神にへと感謝していた。
この相棒の、ゾイド・コマンドウルフにへと、のも、遅れて思い至った…
あれほど底しれぬ、邪悪の如く恐ろしかったあのタイガータイプが、もう、撃破目前になっている!
そのことを思うだけで、心は武者震いを隠すことができた。いや、よしんば隠せなかったとしても、何分なんべんかは鎮めることに専念していた…
油断であった。
その僅かな浮いた気配を、逃すタイガーではなかった。
ウィリアムは動転した。
“機体軸をぶらすな、退けるんじゃない、
中心を据えたままにしろ、このままでは自分の射撃が、当たらない”…
ウィリアム機の射撃手が、そう怒鳴った。
…ウィリアムは、そのとおりに、機体の制動を、取らせてしまった…
ようやく戦争の現場にも場馴れしてきて、
射撃手は、ようやく己が一流の戦士たられることへの実的体感に、これ以上もなくアドレナリンの奔流が全身を貫通し突き抜けてくるのに打ち震えていた。
タイミングもまさにそうだった。
同輩の仲間を殺したあの紅い虎にへと、次の瞬間には、必殺の一撃が叩き込めることを、この時射撃手は確信していた。
そのスコープのピントと、虎のシルエットが、一致した……その瞬間、
なにか、噴射される瞬間をウィリアムは目撃した。
数瞬遅れて、思い至った…
虎のあがきであった。
ウイリアムは、その時目撃した。
虎の機体全身各部に装備されたウェポンユニットオプションのうち、そのうちの一つ…電装系や対人への火焔放射器的活用を目的とした装備品である…高圧濃硫酸砲が、唯一生きていたのだ。
そのことを。
ポイズンジェットスプレー・高圧濃硫酸噴射砲。
それは、かつてのコマンドゾイドの頃からの半ば慣習とも化していた、
バンパー据え付けのみの露天銃座への着座のみの、
基本は個人装着装甲服程度の防御力も持たされていない、
そんなコマンドウルフ型背部のビーグル銃座の射撃手には、あまりにも……致命的な威力をもたらしていた。
電流をひっかくかのような叫びが通信から聞こえた後、
じゅうじゅうと生きた肉が灼けてただれ蒸発する、
酸気のある音が射撃手のヘルメットのインカム・マイクだろうそれから聞こえたのが最期だった。
「射撃手、クソみたいなジョークはよしてくれ!」
ウィリアムは、この唐突な悲劇に、叫ぶことしか出来なかった。
悲劇は続いた。
パイロットが動転した結果完全に操縦操作が止まった、
このウィリアムのコマンドウルフは、そのスキに、セイバータイガーの突進を受けた。
……──俺もやられるのか!
ウィリアムは一瞬、怯えた。
だが、ゾイドのそのウィリアム機のコマンドウルフは、
ゾイドみずからの独自判断として、とっさに受け身を取っていたのだ。
その事によって、少なくとも、頭部ユニットへの致命的な一撃は、そうなることは避けることができた。
これにより、共和国軍のゾイドの機体構造特徴としてしばしば言及されることが多く、そしてこのウルフ型においても例外ではない…他の金属質部位とくらべて、柔く、耐久性が一段回以上は劣る…コクピットのグラスキャノピー風防。
その風防部にセイバーの無遠慮な一撃が叩き込まれて…
ウィリアムが死亡する、戦死する、…ということは、まあ避けることができた。
しかし、運が悪いのはウルフの方だった。
割りを食ったのだ。あるいは、この新人のゾイド搭乗者たるウィリアムにへと、出来得る限りの、最上級の信頼を伝えようとして…
これにより、全備重量で78トンもある虎の全体重のかかった状態の、脚部足首のストライククローの踏打を、機体腹部に受けた。…結果、その一撃は“重大な損傷”となり…
ウルフは、致命傷にちかいダメージを得るに至った。
少なくとも、直ちに専門の修理部隊の手にかからねば、損傷を受けたゾイド生命体が、永久に…生命を停止してしまうのか、というほどに。
のしかかられる、というよりは、轢き逃げに近かった。
そうして、ウィリアムの機体を破ったその一点を突破して、虎は……駆け出して、逃げていこうとする。
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