ゾイド二次創作小説~西方大陸の地にて~完結!   作:もにもに+マウンテンヘッド

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分割版#12:“砂上の楼閣”

 

 

 

 

・砂上の楼閣

 

 

 

 はたして、砂漠は朝焼けに照らし出されていた。

 

 あれから半日以内には、第六分遣隊本部からダブルソーダー型の航空ヘリゾイドによる、

 救援と援護の便が到着し、

 

 そうして白日の下となった陣地構築の全容に、

 隊の首脳部は戦慄するしかなかった。

 

 

 

 なにが論点であったか、というならば、

 その陣地施設に、通称“D”の……そのゾイド細胞サンプルが、まるで見せつけるかのように…

…展示されて、置かれていたからである。

 

 

 

 加えて、施設は、何らかのゾイド・エッグの、その発掘現場と推測がされた。

 現場検証によってえた試料から見ても、その可能性は大きく考えられた。

 

 

 

 隊の首脳部からこの一件は共和国軍と政府の上層部にへと話が運ばれ、

 それが所以となって、

 今後の同様の事案においては、最初から専門の高速戦闘隊部隊などの集中投入、これが鉄則とされることが厳命された。

 

 

 敵の強化発展したセイバー・タイプに真正面から対抗できるのは、

 最低でもライガー・クラスの投入、これに行き着く、という判断である。

 

 

 

 

 

 この戦闘で得られた具体的な成果は、敵仮設陣地の制圧による共和国軍進出進路の再確保とその維持の成功と、このように、帝国が“何か”――少なくとも、このエウロペの古代遺跡と関連があるらしい――の研究及び発掘をしているらしいという、その断片の先端のみが、その時点から共和国軍の首脳部において実際に把握された、それのみである。

 

 

 この偶然的な“発覚”が、後にオリンポス山頂上にて繰り広げられる一連の戦いの…その契機であったかは、まだ判断の付く段階には現時点でも至っていない。

 

 

 

 続けて、この戦闘での戦訓を元に、後に極短期間の急造ともいえる開発期間を経て、前線コマンドウルフ運用部隊の単一機種化・完結を可能とするための、通称アタック・ユニット装備が正式化されることにもなる。

 

 

 これはそれ以降の戦いに於いても、コマンドウルフの性能とポテンシャルの高さの実力を長期間に渡り証明し続ける、有効な強化プランの一つとしてあり続けることとなった――が、いずれにせよ、今この瞬間の、その彼らには意味がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ただ一つ、たしかなことはあった。

 

 

 

 

 

 

 多くの戦友たちが、この西の大地の乾いた砂埃となった……その事実である。

 

 

 

 

 

・。。。。。

 

 

 

 

ウィリアムは泣くしかなかった。

今の自分の目前にあるモノに。

いや、それから時間が経って、今は、呆然とも茫洋ともしていた。

なぜなら、泣きわめくには遅すぎて、

後悔は深く、

泣きはらすためには、もう涙は流れなくなるほど、底をついて枯れていたからでもあった…

 

 

死にかけているウルフが、

目の前で横たわっていた。

 

自分の“相棒”…ウルフ07番機である。

 

果たして、機外に出たウィリアムの目前で、

その相棒だったウルフは、牙の間から、掠れかすれの吐息を、漏らすように吐いていた。

 

弱々しい、衰弱した命の気配。

 

ウルフはそれでも、ウィリアムにへと意思を伝えようとした…のだろうか。

 

 

──よくやった、おまえの、わたしへの御しは良かった。

相手が悪いのもあるし、ただ、運がわるかっただけさ──

 

ウルフが、気配をこちらに向けてくれていることは、それは解った。

 

精一杯の、しかし、もう、ささやかなほどの…

 

 

…ウィリアムにとっては、慰めにもならない。

それを通り越して、自分自身の自己中心的な誇大妄想が聞かせたものだとも、いまの自分に過ぎったそれを、断定するまでに、悔いていた。

 

よしんば泣きわめくとしても、自分の操縦が原因で、ウルフをこうしてしまったのは!

 

射撃手も、さっき、死亡の確認を取っていた。

酸で焼けただれ、肉と骨の残骸残滓が、液質状の痕片を散らした状態で、焼けた背部銃座の着座席と、半ば同化した状態で発見したのである。

 

 

二重の喪失であった…──

 

 

 

 

ウルフの、肉体…コマンドウルフの機体本体は、

各所の部位に於いて、神経回路線の損傷による壊死として、

機体の末端部位は、徐々に金属細胞の“石化”…が、起こりつつあった。

 

 

ウィリアムは、症状たるそれの進行を、

呆然と見ながら、佇んでいるしかない…

 

 

 

 

 

 

そのとき、音が聞こえた。

ウィリアムは顔を上げた。

 

 

上空に、マグネッサー翼の駆動動作の音が、聞こえていた……友軍。

そう、自軍共和国軍の、ダブルソーダ型航空ゾイドの飛翔音だ。

 

果てのない青空となりつつある、夜明けの砂漠の空に、果て無く、聞こえていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウィリアム、コクピットにもどれ。

 そうして、コマンドウルフの胸部コアチャンバーの、開放操作を行え」

 

 

どうしたというのだろう…

頭部を破壊された、コマンドウルフ01番機…

戦死したコマンダーが乗っていた機体だ…

損壊した頭部からの統制操縦ができないために、

現在はコンバットシステムを休眠状態にさせて待機姿勢にさせている、その機体の、

この部隊ではコマンダーの副官を務めていてその次に階級の高かった、その背部射撃手からの声だ。

 

──コクピットにもどって、早くそうしろ、お前のウルフが死ぬのを、お前は見ているだけなのか!

 

 

ダブルソーダで、すぐ後方まで来ている、修理部隊のところまで、おまえのウルフのコアを空輸する。

その準備ができている。さあ!

 

 

 

 

聞いて、脳が理解して、体が動き出したのは、その直後のことだった。

 

 

渇いていた涙が、ふたたびにじみかけている…そのことの、それに気づくよりも、早く。

 

 

ウィリアムは、急いで顔を上げて、コクピットへと戻った。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

朝日だ。異国の地、エウロペの。

母国であるヘリック共和国のような温順なそれではない。

 

その日昇は、

拭いがたいほどにダイナミックで、忘れ得ないほどに、ドラスティックな物だった。

 

溶けるような地平線の果ての陽光。

それから立ち上った太陽と…その背後から碧色に広がる夜明けの空は、遠く果てしなく、風の匂いをどこかから此処へと、弛むこと無く、運んでくる。

だとするのなら、ここの戦場で死んでいったモノたちの、その魂というものを、死後の安楽地にへと、遠く連れて行った物でもあろうのか?

 

異国の神に、その望みと願いが叶われるというのなら…

されど、どうであろう?

それでも、大地の上の、横たわったモノたちの、その肉体の死骸というのは、焦げ臭さと焼け溶けた屍体の猛烈な臭気というのを立ち上らせている…

それが、ひとつの事実であった。

そして、そのどうしようもない悪臭が、風の大気の流れに流されて、

代わりの空気にへと取り替えられるように入れ替わる、その一連があったというのも、また確かだろう。

神の所在とその寄り辺というのは、その実際が、事実であったろう。

 

 

そうなのだ。そうであろうのだ。

昨日の晩のことが、もう、それ以上遠ざかることは出来ないのに、永久に過去のものとして存在し、

遡ることも、その瞬間までに戻ってやり直すこともできない。

彼ら兵士たちの物語の書があるのだとしたなら、そこに差し込まれた、一枚の栞(ブックマーク)かのように!

或いは、紅色の血の色で引かれた傍線かのようで…

当たり前ではあろうが、そのことの、その事実としての、ピリオド…あるいはカンマ、そのどちらか、いずれか、であろうという…そのことの、記入時点が、今この瞬間だというのか。

 

そして、しかしそれでも、…

この砂漠の風に抱かれるように吹かれていると、

そんな象徴的な事実ですら!

まるで砂礫でできたその墓標のように、風化していって、

そして、いつかの果てには、完全に…大洋のように目前に広がる、この果てしない砂漠の砂のひと粒として、崩れ去って混じり合い、そして…

いつかには、感慨の中の遠い記憶として、昔話の折のひとつにへと、自分たちの人生の中へと、埋もれていくものなのか。

 

 

涙もあろう。叫びもあろう。

己の感情のあるがままを、慟哭として吐き出す、それでもいいだろう。

だが、彼ら兵士たちは……疲れ始めていた。

歴史には、ここからが長く忌まわしい戦争の戦いの、その始まりにも満たしていないのがこの彼らのその瞬間である。

しかし……泣きつかれて、それでも叫び、そして喉も渇ききって。

彼らは、まるで乳を求める赤子のように、今からは眠りに就くしかなかっただろう。

そう…戦争という母の処女を破って生まれいでた預言者。

その“戦士”という存在の出生/出征とその証明が、ここまでに成され遂げた、そのすべてであろうのだから!

 

 

いつか人の記憶という砂漠の砂の、そのうちの一粒が、キラリと輝くように思い出せたとき…

そのときに、この物語は、遠い昔話に、なれていたなら、それで良い。

 

 

:END

 

 

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