ゾイド二次創作小説~西方大陸の地にて~完結!   作:もにもに+マウンテンヘッド

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分割版#4:ポイント・ホテル・カリフォルニア(2)

 

 

 

 

 

 そうして、第六分遣隊・先鋒部隊の面々は、その仮称ホテル・ポイントの、僅かに十キロメートルの距離へと肉薄していた。

 

 

 

 既に戦闘は開始されていた。五分前からのことである。困難と予測されていた作戦であったが、だが、相手はさりとて大と小との小…コマンドゾイドであった。

 

 共和国軍の勝利は目前であった。

 

 作戦は、事前にコマンダーが組み立てた手順通りの算段によって丁寧な処理が進んでいたのだ。

 

 

 

――基本は事前砲撃後のコマンドウルフによる強襲とされ、機獣化された騎兵と砲兵の連携による敵抵抗の掃討処理後に、随伴車両化歩兵による陣地構築物の制圧を行う――、そうして、荷電粒子ビームの砲爆が轟いて戦闘開始の鐘が鳴らされてからは、おおまかなその通りに戦闘は推移していた。

 

 

 

 

 

 そしてそれからも……後方の、六機のカノントータスの重砲が次々と火を噴き、繰り返され、その二基四連の対空速射砲の銃撃掃射が絶やすことなく続けられ、歩兵装甲車の自衛用対ゾイドミサイルが発射飛翔して、さらに直接には…踏みつけんばかりの高機動で跳梁するコマンドウルフの牙と砲が時にずたずたに切り裂くとあっては、既に敵方のその損耗は一小隊分相当は累積したものと見られる。

 

 

 

 

 

 砂漠でのその戦いは、熾烈なものではあった。一分の油断も許されないほどに。

 

 されど、最大に快調であったのは、相手が完全な、“後手”に回ったことであった。

 

 最初に…彼らは待ち伏せの形で、ゾイド機力により砂地内に形成した密閉掩体壕にダックインして所定の必殺区域(キリング・ゾーン)を設定し、その設定経路への、敵部隊の導入と通過…つまり、こちらの“入場”を迎え撃つ形である様だった。

 

 

 

 帝国軍の24級ゾイドは、その機体ボディーを形成する白色の特殊複合強化装甲カウルに由来をもつ、強力なステルス性能も特徴の一つである。

 

 一般のゾイド機種の部隊であれば、彼らによる奇襲の成功によって、さながら七面鳥狩りの如く…完膚無きまでに砂漠の骸へと変えられたことであろう。

 

 

 

 しかし、それらはコマンドウルフの持つ複合対地センサーによって、たやすく“御見通し”であった。むしろ、おおまかに気配を割り出すことのできたその予測潜伏ポイントを通過する形に経路を変更したくらいでもあった。

 

 

 

 

 

 その上、大型装甲兵器の直掩無くしては、如何に強力な24級とはいえ、こちら共和国軍の入念な用心と実績ある対策法を織り込んだ、この三手段攻撃を破ることが出来なかったのである。最も大きな被害はカノントータスの砲爆が与えているものと推測できるが、それを何とかするには現在正面のコマンドウルフ部隊をなんとかしなくてはならない、その両方が、相手には只今できないものと推察できた。

 

 

 

 

 

 

 

 今まさに、狼と蠍の戦いが繰り広げられる瞬間があった。

 

 

 

 虚のような夜の空を背後に、狼のシルエットが青白く閃いた。

 

 そして躍動からの着地――まさに月下の砂漠を駆け巡る最中の、今は窪地状の傾斜砂地を滑り降りる体勢のコマンドウルフの一機に、その砂地の底から、24級コマンドゾイドのサソリ型……デスピオンが、牙と爪を開いて飛び出してきたのだ!

 

 

 

 強力な爪……命中時に強烈な電磁波を相手ゾイドの電装品に流し込み破壊するクロー・バイスによる攻撃は、中型ゾイドたるコマンドウルフとはいえ、高機動型機種故に、要部装甲以外の部分ならば致命傷ともなりうる。激しい戦闘の最中、デスピオンのパイロットは、まさにこの瞬間を待っていたのである。

 

 

 

 さながら蟻地獄のつもりであったろう。狼を獲物と見て蠍が喰おうとしたのだ。

 

 さりとて其れは果たされなかった。

 

 次の瞬間にはそのコマンドウルフは同時の対応をふたつ執っていた。即ち、スモークディスチャージャーの発動による急速煙幕展開、そして、再びの跳躍である。その時……――

 

 

 

 

 

 ゴリ、ッ!

 

――ともガンっという音とも取れぬ、兎に角鈍いながら軽くもある音が、“弾けた”。それは、そのデスピオンの装甲が文字通り弾けた音であった。狼のしっぺ返しとは聞いたことはないけども、跳躍する際に勢いよく伸ばされたウルフの前足の一つが、接近しすぎたデスピオンの頭部装甲を踏みつぶす形でまぐれのスマッシュ・ヒットとなったのであるようだ。

 

 

 

 

 

 だが、ゾイドはそのくらいでは死なない。心臓と脳と心と思いの在処は、ゾイドは腹部内のゾイド・コアという球状器官としてひとまとめにされているからである。

 

 

 

 同様に、デスピオンのパイロットも死んではいなかった。強力にして強固な白い蠍のコクピット装甲殻が、フレーム構造の頑健さと合わさり、かろうじて圧死の憂を彼に与えずに済んだのである。

 

 

 

 

 

 だけど、頭部センサーアレイは完全に損壊し、マニュピレータである両の爪も、付け根付近で不調を来していた。

 

 

 

 とどめに、生き残ったはずの射撃管制と一元化した尾部センサーも様子がおかしい。パイロットの彼は、即座に電磁クロー・バイスの状態がスタンバイであったことに思い至った。このデスピオンの機体電装品が機構ごと損傷した際に、逆流した電圧のサージ放電によってセンサーの精密回路が焼けたのか? まさか!

 

 

 

 装甲殻をジョイントの発破によって開放排除し、彼は目視にて相手を評定しようとした。彼の装着する装甲服の搭載コンピューターを介して、射撃の直接照準を着ける試みである。しかし窪地の中には濃密に煙幕が沈殿してもいたのだ。なおさらに視界を失う結果となった。

 

 それでも、跳躍し自らの直上に居るであろう憎きオオカミへと向かって、その尾に懸架装着されたパルス・ビーム砲の掃射を、やみくもながらに引きはなった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし――それも次の瞬間、ねらいのウルフからの攻撃ではなく、そのウルフによって位置座標を伝えられた、後方のカノントータスによる精密砲爆によって、デスピオンとそのパイロットの彼は、瞬時に荷電粒子とオゾンの残滓へと気化させられたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂の窪地はそのビーム砲爆によって直後に吹き飛び、ガラス質に焼け焦げた砂と灰のダストを吹きあげつつ、かくして蠍の蟻地獄は消滅した。

 

 一方コマンドウルフの方は悠々と着地した直後には高速機動走行へと軽快に復帰し、幻影の如き青白い姿を疾らせながら、再び次の獲物の発見へと移る――

 

 

 

 

 

 

 

 このコマンドウルフ部隊のコマンダーは、実力もさることながら、直接には前大戦の戦闘を経験していないとはいえ、しかし対24機種への対処法の基本は入念に講習を受けていた。

 

 その上で自らたち、ゾイド騎兵兵科のコマンドウルフ型機種装備部隊という、そのアドバンテージの最大特徴をも、把握と熟知が行き届いた人物だったのである。

 

 そして今回に於いて、随伴の機獣化砲兵までもが手元にあったのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 故にこの戦いにおいては、コマンダー以下、部隊の十一機のコマンドウルフの、その全てが活躍を見せていた。

 

 高い性能を誇るコマンドウルフ型とはいえ、強力である24ゾイドとの直接交戦には小さくないリスクがある。

 

 その為、高速戦闘ゾイドであるコマンドウルフの能力は敵機捜索と探知捕捉に専念させる形で最大発揮させ、実際の掃討・撃破を、(そこを目標とする敵の対抗浸透開始のシラミツブシな阻止を機獣騎兵部隊が実施しつつ)機動力と直接の自衛能力に欠けるが強力な火力を持つ砲兵のカノントータス、及び局所的に歩兵装甲車の搭載火器に担当させる――

 

 そしてここまでの自部隊側損耗は、撃破及び死亡はゼロ。

 

 

 

 

 

 交戦開始の瞬間、先攻を切ったこちらのカノントータスのビーム砲撃に、仕掛けているつもりであったと思われる相手の側は完全に面食らったようともとれた。

 

 入念な地中・隠伏偽装を行っていたが故に個別機体の高速な散開を図ることも叶わず、続けてのコマンドウルフによる強襲突撃によってその具体位置が次々と暴露特定されていく中、今もこのように、ピンポイントの砲爆によって狩られ続けている。

 

 

 

 

 

 相手側の不備もあろうし、ワンサイド・ゲームとはいかなくとも、このハンター&キラーのドクトリンに則った慎重な運用が、最大の成果を持って結実したのである。

 

 月の光に照らされた砂漠。そこに砲声と砲爆の残滓が一つずつ響く度に、それは帝国軍敵機の確実な消滅と無力化を意味していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウィリアムもまた、コマンドウルフ07番機のパイロットとして勇敢に戦闘を戦っていた。ガンナーの彼もまたそうであった。

 

 

 

 彼のコマンドウルフは、単騎での敵機撃破には至らなかったが……僚機との協調戦闘により、共同での戦果で一機ほどならばツブした!

 

 

 

 

 

 

 

 相手はドントレスというカマキリ型の24ゾイドであった。

 

 “ウルフ”が急に唸ったのと同時! ――砂の中からの突然の出現と襲撃にはウィリアムは驚愕したが、その瞬間の味方機からの阻止射撃により、こちらがやられるというのは間一髪でならなかった。そうして直後には、その傷ついたドントレスの機体はウィリアムの乗るコマンドウルフが、電磁牙(エレクトロン・バイトファング)の行使によって、バラバラに噛み砕いていた!

 

 

 

 

 

 

 

 共和国軍の兵士になってから、初めての手柄だった。

 

 というよりも――この部隊の兵士たちに、今まで実戦を経験してきた者は、いなかった。

 

 

 

 

 

 はじめての戦争だったのだ。

 

 そしてその初めての戦いで、こんなにもあっさりと、成果を得ることができた!

 

 もうそれだけで、今日までの二日間もどうってことはなかったし……あるいはもっと言えば、いままでの人生の意味の全てが、今日のこの時間の中にあるような気までもがしていた。アドレナリンの分泌は著しかった。

 

 そうして、そのような思いに至る兵士は、この部隊の全ての兵員がそうであったともいえた。何しろ、共和国は四十年間、平和だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 故郷に帰ったときの土産話ができた…――それも最高の!

 

 

 

 

 

 

 

 爆音と炸裂に掻き消されて、只でさえ白い装甲殻に覆われていた帝国軍兵士たちの悲鳴と断末魔は、この若き共和国軍兵士たちには見えるものの内ではなかった。

 

 そこから滴る紅い血潮の滾りであっても、果てしない砂の下へと、全てが吸われていってもいた。

 

 

 

 

 

 肉は木乃伊となるだろう。残る骨も、そうしてさらに長い年月を経て……この砂漠の砂の一粒となるのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、24ゾイドの出現は見られなくなった。

 

 コマンドウルフの探知装置にも、検知が見られなくなっていた。

 

 そうして、残骸の数を評定すると、その数は事前の推定よりも一個小隊多い、三個小隊規模は累積していた。

 

 

 

 

 

 

 

――掃討は完了したのだ。

 

 

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