ゾイド二次創作小説~西方大陸の地にて~完結! 作:もにもに+マウンテンヘッド
蛍光色の白色に、蒼い闇色の砂漠は明快に照らし出されていた。
ゆっくりとした足取りで、砂丘から機体を上げて敵陣地に肉薄したコマンドウルフ隊の機体のすべてもそうであった。
―――乳白色に浮かび上がる九つの機影、点のような光源となって空に留まる照明弾…それに照らされた地平と夜空のすべては、浮ついた白ばみに染め上げられている。
そうして敵陣地の全景も明瞭になって、夜沙の向こうの、そのプレート状のベースシステムの連なりは粉砕されて、残骸となった構築物のそれが炎上しているのが見て取れた。
ここまでやれば、敵は撃破され、任務は達成されただろう……
降伏勧告を出すまでもなく、歩兵部隊が乗り込み、制圧とする。
司令機であるコマンドウルフ01番機に乗るコマンダーが、後方の歩兵装甲車部隊へと、前進の連絡を送ろうとして…――
ガァン!
―――突如として、射撃の弾火が瞬いた!
コマンドウルフでもカノントータスのでもない、しかし強力なビームの銃撃だ。四門の砲口から放たれたそれがコマンドウルフ隊の個々の機体の間を切り裂くように這い巡り、乱れ飛び――次の瞬間…照準の焦点が合わせられたのだ。銃撃の火線が収束し、あえていちタイミング遅れさせて放ったのだろう、飛来した三発のミサイルの弾体と共に、隊列最後方にいたコマンドウルフの一機を火球に変えたのだ!
通信で、その機体のパイロットと射撃手の叫びが響いた。
“散開!”
突然の悲劇に硬直していたコマンドウルフ隊の残存は、しかし次の瞬間のコマンダーからの怒鳴りに我に返った。
そうして逃げるように味方が散開していく最中…火球に包まれた後、火達磨になったウルフは、やがて背中の熱中和放熱ステルス式排気グリルから大きく炎を吹きあげた後、搭乗員とゾイド生命体の断末魔を残し、爆散した。
零れ落ちるように脱出できた射撃手が這うように逃げる中、
その炎の明かりと、未だ燃焼を続ける照明弾の蛍光白とのコントラストの狭間に、この破壊をもたらした、“それ”は潜んでいた。
コマンドウルフの搭乗員は見た。
――砂のなかに潜んでいたのだ。
その機体を沙漠の砂から守るために覆ったのだろう防護シートを、起動による機関始動に伴う膨大な冷却排気で切れ端から砂を落としながら膨らまし、真紅の身体に纏わりつく流砂をマシン各所のスリットからのガスで吹き洗い流し……そして砂の中に形成した仮設バンカーの中から、“それ”は姿を現した。
機上コンピューターによる割出は同時であったが、逆光に塗りつぶされた闇の向こうの存在。
それを見た時、目撃した時…コマンドウルフの搭乗員たちは驚愕に顔を染めていた。
…――サーベルタイガー!
旧内戦の時、高速戦闘ゾイドの始祖にして到達点として共和国軍を相手に猛威を振るった、その虎型大型ゾイドの一機が、目の前に現れていたのである。
40年以上前に用いられていた機体だ。この機種の友軍による分析と解析では、内部機構を中心に近代化のための若干の改造と改修が加えられたセイバー・タイプであろう、とされている、その一機だろう。
ステルス性では24ゾイドよりも格段に低い…だが、ゾイド生命体…ゾイド・コアを一時的に休眠状態にまですることでコマンドウルフのセンサーによる探知を脱していたというのがそのからくりであった。
―――コマンダーのヘッドセットに、歩兵部隊とカノントータスの重砲隊からの状況の仔細の報告を求める通信が殺到していた。
引きつり、後ずさるようなウルフたちと愕然とする搭乗員たちの気配を尻目に……
――一歩、その虎が足を繰り出した。まるで気品を纏った麗人が振る舞うかのように、その足遣いには優雅さがあった。そして…
……―――………―――……
闇の奥の暗光に、虎の気配が“迸った”。
そうしてウルフたちも…獣たちは呼び合った。
獣のうなりに呼ばれたのだ。
聞こえたのかも、音として発されたのかもわからない。ただ、自分たちよりも格上の獣のその吐息にゾイドのウルフたちは慄くような息を発したあと、しかし次に、猛々しい戦意でそれを振り払うようにうなりを散らした。
それは自分たちの“仲間”の喪失に対する怒りの表明であると共に、動転して怖れと怯えにやられてしまった自らの“相棒”…ゾイド乗りたちに発破をかけるものでもあろう。
ただ……
―――……!―――
サーベルタイガー、改めセイバータイガーが、吼えを上げた。
ウルフ乗り達には、そのタイガーの顔が、笑っているように見えた。
この戦いに於ける双方の最終的な交戦が、遂に開かれたのだ。
――以上はゾイド・コアに付随するメモリー部ユニットに記録された、あるウルフの記憶の残滓である。
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