異世界隠居 身勝手に呼ばれて身勝手に捨てられたので隠居したい   作:ジト民逆脚屋

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シーナ
トラウマスイッチ軽くON

リラ
今回で職業が明らかに

フェリド
あまりやる気は無い

サヤマ
やる気は無いし、戦闘は避けたい

ハルファ
やる気? ある訳無い


醜亜巨人戦線 傷

「さて、どうするよ?」

 

 フェリドが口を開く。部屋には全員集まっており、今からの方針を決めようとしていた。

 

「……さっさとファーゼルまで行く」

「まあ、そうなるわな」

 

 醜亜巨人(トロール)は、その革も肉も骨も内臓も、売れなくはないのだが、間違いなく労力には見会わず、リスクに合わない。

 ハイリスクローリターン、それが醜亜巨人。

 その上

 

「やるなら、お前ら男だけでやれ」

「同意する」

「あ、あはは……」

 

 女の身で、あの怪物の討伐に参加するのは、ハイリスクどころの話ではない。

 その様子に、サヤマが乾いた笑いを溢し、頭を掻く。フェリドも似た様な反応を返す。

 

「しかし問題は、その件の醜亜巨人が、何処に潜んでいるのかが、まったくもって不明だという事です」

「嬢ちゃんの言う通りだ」

「醜亜巨人は巨体、隠れる場所は限られる」

「連中は個体で強い。餌が豊富なら、人間の手が入っていない土地に潜んでいる可能性もある」

 

 シーナが、レミエーレでの経験から、広げた地図に描かれた町近辺の森林地帯を指し示す。

 醜亜巨人は餌が存在する限り、際限無く食べ続け、際限無く強くなり続ける。醜亜巨人の強さは、その体躯だ。

 食べれば食べる程、生きれば生きる程、奴等は寿命の許す限り強くなり続ける。

 

「サヤマ、町の様子は?」

「あ~、冒険者が半分町から出て、残ってるのはこの町出身か、町に捕まったのか、名声目当ての連中くらいかな?」

「碌なもんじゃねえな」

 

 フェリドが溜め息混じりに呟く。醜亜巨人一体なら、そこまでの問題にはならない。だが今回は、醜亜巨人一体とは限らない。個体数が不明、個体の強度も不明、そしてこの近辺に居るのかも不明なのだ。

 何もかもが不明でありながら、それでも醜亜巨人による被害が確認されている。

 シーナは背の砲剣の柄を撫でる。柄、砲身、刀身、その全ての強度が、この世界の武装の中でも群を抜いているこれ。醜亜巨人程度の力なら、傷も入らず歪みもしない。

 

「ご主人様、如何致しましょう?」

「どうもしない」

「畏まりました」

 

 シーナは死ぬ気は無いし、この町の為に戦う気も無い。

 だが、戦いに巻き込む気なら容赦はしない。シーナは砲剣の柄から手を離し、三人の話に耳を傾けた。

 

「兎に角、ラルフェの町に行く。それが、今の行動目標だ」

「この町に、そこまでの義理は無いしね」

「決まったら、早く動く」

 

 ハルファが言うと、全員が纏めていた荷物を担ぐ。

 まだ醜亜巨人は出現していない。余計なリスクを抱えるのは、身の程知らずの勇者か英雄願望の愚か者だけだ。

 シーナ達は身の程を知っているし、英雄願望などと言う狂気も持ち合わせていない。

 五人が部屋を出ようと、サヤマが扉に手を掛けた時、リラの耳が動いた。

 

「どけ」

「え? シーナさ……!?」

 

 砲剣を抜いたシーナが、薬室に魔力で形成した砲弾を装填し、扉を刺し貫いた。

 サヤマが驚愕に目を見開き、サヤマの襟を掴んだハルファが杖を構える。リラが曲刀を逆手に抜き、フェリドが盾と剣を構え前に出る。

 シーナが引き金に指を掛けた時、廊下から声が聞こえた。

 

「ま、待ってくれ!」

「ああ? 完全武装の《ソードマン》に《ダークハンター》、ついでに《セスタス》揃えて待てだぁ?」

 

 フェリドが盾を構えて、廊下に居た冒険者三人を睨む。

 三人ともに近接戦闘に特化した職業(ジョブ)であり、《ダークハンター》は鞭を用いた捕縛術にも特化している。

 そして、三人は全員〝男〟であった。

 

「屑が、話にもならない」

 

 ハルファが吐き捨て、リラが塵芥を見るより酷い目を向ける。シーナに至っては、興味すら向けずに砲剣を向けている。

 

「大方、お嬢さん方を囮にして、自分達が手柄を、とか考えたんだろうよ」

「悪趣味以外なんでもないなぁ」

 

 サヤマが短槍を抜いて、女衆の前に立つ。体格の良いフェリドと、高身長のサヤマ。この二人が狭い廊下に並んで立つと、向こう側を見通すのは難しくなる。

 

「待ってくれ! 勘違いだ!」

「勘違い? ははは、面白え冗談だ」

 

 《セスタス》の男が、手のひらを見せて弁解しようとするが、フェリドがそれを笑い飛ばす。

 しかし、男は腰を抜かした二人の前に出て、諦めず弁明を続ける。

 

「誤解を招く真似をしたのは、事実だ。だが頼む。話だけでも聞いてくれ」

「嫌だ」

 

 だが、その弁明をシーナが斬って捨てる。

 

「お前の話を聞いて、私達に利益があるのか?」

「それは……」

「即答出来ないなら、意味は無い。醜亜巨人退治は、お前達だけでやれ」

 

 聞く耳持たないシーナに、《セスタス》の男は二の句が告げず、ただ立ち尽くし、《ソードマン》と《ダークハンター》の二人も同じく、ただ俯くだけだ。

 シーナはどうでもよさげに、砲剣をフォアグリップに持ち直し、廊下の反対側にある階段へと向かう。

 リラがすぐにシーナの側に寄り、ハルファが続く。サヤマとフェリドが後詰めとして下がった時、凛とした声が五人を呼び止める。

 

「お待ちください」

 

 歩みを止める気は無かったシーナだったが、あまりによく通る声に足を止め、振り向いた。

 

「私の仲間が要らぬ誤解を招いた事を謝罪します。ですから、どうか話だけでもお聞きくださいませんか?」

 

 そこに居たのは、軽鎧を纏った声と同じく凛々しい女だった。

 

「……無理だ」

「ご主人様?」

 

 頭を下げる女、その〝武器〟を見たシーナが、顔色を青くして後ずさり、リラが曲刀を構え、前に出る。

 

「おいおい、大丈夫か?」

 

 フェリドが女から視線を外さずに、シーナに声を届けるが、シーナに声は届かず、女が肩に担った長い棒状の包みを睨む。

 

「あ、あの、私がなにかしてしまったのでしょうか?」

「それ以上、我が主に近寄るな……!」

 

 リラが空いた手に投刃を構え威嚇する。その投刃の刀身が僅かに湿りを帯びているのを、フェリドが確認すると、舌打ちを一つ鳴らす。

 リラは《ナイトシーカー》、曲刀や投刃等の軽量武器を用い、素早い連続攻撃を得意とする他、各種毒物の扱いにも長ける。

 リラは従者であり、護衛の役割も担っている。その為、そこまで強い毒物は使わないだろうが、今の状況では厄介だ。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待とう! 無駄な争いはよくないよ!」

 

 フェリドが思案していると、サヤマが慌ててリラを止める。

 

「とりあえず、皆一旦落ち着こう。ね?」

「……リラ、もう、大丈夫だ。構わない……」

「……畏まりました」

 

 いまだ顔色を悪くしたままのシーナが、リラの肩に手を置き、彼女の警戒を解かせた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。だが、〝それ〟を持って、私にあまり近寄るな」

「す、すみません……」

 

 女が肩に担った包みを、《ダークハンター》の男に手渡し、再び五人に頭を下げる。

 

「お騒がせした身で、この様な事を頼むの誠に恐縮ですが、どうかお願いします。話だけでもお聞きください」

 

 疲れた顔のシーナが、他四人を見る。四人も頷き、話を聞く事にした。




ソードマン
早い話が剣士。前衛で刀剣の扱いに長ける者を指す。

ダークハンター
鞭や細剣の扱いに長け、捕縛術や毒物にも精通する。

セスタス
自らの肉体を武器とするモンク。

ナイトシーカー
ダークハンターに似てはいるが、曲刀や投刃をメインに、毒物や魔力を用いた気配遮断等、暗殺者と同一視される。

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