異世界隠居 身勝手に呼ばれて身勝手に捨てられたので隠居したい   作:ジト民逆脚屋

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麻野
どうしてお前が後衛なんだと、全員から言われた。因みにその全員は錫杖でしばいた。
地味に名前募集中

浜名
イケメンだけど地味。親友二人がきらびやか過ぎた。金髪巨乳派閥、犬臭くない。
地味に名前募集中

和泉
只今無茶してる

神野
只今無茶してる

竜胆
暗躍中



同じオリジナル作品のいせまじょもよろしくお願いいたします。


陣と忍

「あ、旨い」

「予想外だったな」

 

 シチューを匙で掬い、薄いベーコンを挟んだ黒パンを齧る。宿の外見に合わず、その料理の質は良かった。麻野は残さず食べると、浜名のトレイに残っていた黒パンに手を伸ばす。

 

「浜名ってさ、食べないよね」

「逆にお前が食い過ぎなだけだ」

 

 浜名は伸びてきた麻野の手を払い、黒パンを齧る。

 硬いが、噛み千切れ、塩の利いたベーコンが、タンパクな味わいの味覚に嬉しい。

 

「けっ、レディーファーストって知ってる?」

「ああ、女性を身代わりにしていた習慣から、生まれた風習だな」

「え、マジで?」

「ああ、マジだ。諸説あるがな」

 

 シチューの残りを皿から浚いながら、浜名が言うと、麻野は驚きに目を剥く。

 

「暗殺阻止の為、先ずは女性に扉を潜らせ、先に食事に口をつけさせる。中世の女性の人権が無かった時代だな」

「うえぇぇ……、和泉が聞いたら全員打ち首だぁ」

 

 トレイに乗っていた果実を齧り、手首にまで垂れた果汁を啜る。酸味の殆ど無い強い甘味、生の果実まで出してくるとは、随分サービスの良い宿だ。

 

「しかし、よく食うな」

「あ?」

「一瞬で臨戦体制に入るの、辞めませんかねぇ?」

 

 浜名の分の果実も平らげた麻野が、錫杖に刻んだ陣に魔力を通す。恐らくは打撃強化か加速強化、否、麻野の性格的に両方の重ね掛け。

 

「まったく、女子の食事に口を出すなっての」

 

 回避した浜名の頭上で、鋭い風切り音と金属音が聞こえ、浜名の額に冷たい汗が流れる。

 木製のジョッキに常温の麦酒を注ぎ、喉を鳴らして一気に呑み干す麻野。片手には振り抜いた錫杖が握られていた。

 

「……殺す気か?」

「あんたが、避けられない訳ないでしょ。ほら」

「おう」

 

 麻野が中身を満たしたジョッキを差し出し、浜名がそれを受け取る。木製のジョッキを打ち鳴らし、麦酒を呑み干す。麦酒独特の苦味と喉越しを楽しみ、酒精の息を吐き出す。

 

「麦酒って、冷やして呑むって思ってたけど、実はそうでもない?」

「冷やして呑む麦酒は、日本が主流らしいな。他は常温か、冷やしてもそこまで冷やさないらしい」

「ほへ~、そうなの」

 

 陶器の瓶を傾け、黄金色の酒を態と泡立てる。馬車の荷物から抜き取った干し肉を齧り、麦酒で流し込む。

 

「あまり、呑み過ぎるな」

「うるせぇ」

 

 錫杖の石突きで小突く。赤みが差した頬を、片手で支える。麻野は眇で浜名を見る。

 

「金谷も菱田も、仁村も峯岸も、新寺の馬鹿も誰も彼もバカヤロウだ!」

 

 麻野が吼える。

 

「椎名がグレイさんを殺した?! 反逆した?! んな訳あるかぁ……!!」

「麻野……」

 

 吼える麻野が、ジョッキを乾かす。

 浜名が陶器の瓶を遠ざけるが、すぐさま奪い取られた。

 

「バカじゃないの?! 椎名がそんな事する訳ないじゃんか!」

 

 浜名は小さく溜め息を吐いて、ジョッキに麦酒を注ぐ。

 麻野がこうなったら、もう話を聞くしかない。何時もつるんでいた、竜胆と椎名を含めた四人の中で、一番付き合いが長いのが浜名だ。

 麻野の扱いに慣れている浜名は、黙ってジョッキを傾け、麻野の叫びを聞いた。

 

「どうしてよ?! どうして、椎名だけ、こんな辛い目に遇わなきゃいけないのよ!!」

「そうだな」

「もっと、もっと、早くに気付けた筈なのに、助けられた筈なのに……」

 

 次第に声が小さくなっていく。出来る事なら、浜名もあの瞬間は、何も考えずに椎名を責め立てる連中を、一人残らず斬り捨てたかった。

 自分達が、この世界で今の立場を確立させる事が出来たのは、神野や和泉、竜胆と言った傑物が、国を相手に媚びずに対等の立場を主張し、椎名の様に現実を冷めた目で見ていた者達のお陰だ。

 だが、連中はそれを易々と切り捨てた。連中の中には、人質を取られていた者が数名居たのは、竜胆の調べで分かっている。

 その中には、協力したにも関わらず、椎名と同じく愛する者を奪われた者も居た。

 

「椎名、ごめん、ごめんなさい……」

「ああ、もし会えたら、謝ろう。謝って済む話じゃないが、僕達も山科も、前に進むにはけじめを付けないと」

 

 進めなくなる。麻野をベッドに寝かし付け、自分達から離れた射手を思い出す。

 

「まったく、なんともならない話だよなぁ……」

 

 椎名と並んで、自分達の遠距離攻撃を担当していた彼女は、椎名の事件の後、竜胆に自分の知る情報を渡して、レミエーレを去った。

 何処に行ったのかは、竜胆しか知らないが、話を聞く限りは竜胆が、個人的に交流のある国に行ったらしい。

 

「和泉、お前はどうするつもりなんだ?」

 

 親友と言える男、誰よりも最も叫びたかったであろう彼は、仲間の抜けた穴を全て自分で埋めている。

 椎名の抜けた穴は、流石に埋められてはいないが、《ブシドー》と《ジェネラル》の複合職業《ショーグン》、その能力(スキル)を使い切り、彼は魔属との戦線を支え続けている。

 だが、そんな無茶が何時までも続く筈が無い。神野も前線に立ち続ける訳にはいかない。彼は自分達の象徴としての役割がある。

 

 オーフィリア家も、今はグレイの妹が家督を継ぎ、レミエーレ王政と距離を取っている。

 地方では疫病が発生し、領主の重税に耐えかねた民が、反乱を起こしていたりもする。

 魔属との争いも、国境沿いから攻め入る事も出来ず、こちらが損耗するばかりで、大した戦果も挙げられていない。

 内外的に、レミエーレ王国は危機的状況に陥っている。

 

「山科、お前は今、何をしている? 少し、ほんの少しでも笑えているか?」

 

 そんな奇跡が起こっていればいい。

 浜名は後ろに結んでいた髪を解き、眠る麻野に布団を掛け直し、もう一つのベッドに寝転がり、蝋燭の灯りを落とし、目を閉じた。

 まだ見ぬ友に、優しい奇跡が起こっている事を祈りながら。




《シノビ》
忍者。攻撃特化型。

《ショーグン》
大体の武器を扱える。攻撃超特化型。

射手
名前不明、考えてないとも言う。仕方なくシーナを糾弾し、シーナと同じく愛する者を奪われた。
只今、西の大陸に居るらしい。
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