異世界隠居 身勝手に呼ばれて身勝手に捨てられたので隠居したい   作:ジト民逆脚屋

51 / 76
書いてて思う事、話纏めるのクソド下手くそだね私……!


悲劇を

 町外れの住宅街に続く街道で、バルザスは見知った小柄な後ろ姿を見付けた。

 

「オルク」

「む、バルザス殿か。……生きておられたか」

「まあ、そう構えんなって」

 

 しかし、無理もないだろうと、バルザスは肩を竦める。

 バルザス本人も、あれを見ればそうするし、今も僅かな不安もあるのだ。

 

「俺は生きてる。お前の所は……」

「何とか、団としての体裁は保てておりますが、《アルヴディナ》は……」

「……本隊じゃなかったてのが、唯一の救いではあるだろうよ」

 

 救いの無い話だが、《アルヴディナ》は全滅はしていない。犠牲となったのは、経験稼ぎに来た新人と中堅、そしてそれらの引率役であった本隊の数名。

 

「仮にも純血エルフ、こっからの動き次第で価値が決まる」

「終わるなら終わる、でいいと?」

「なら、手を貸すか?」

 

 流石にそこまでの義理は無いと、オルクが苦笑する。求められれば手助けはするが、あまり手を出し過ぎても、余計な軋轢を生むだけだ。

 それに、相手は行き過ぎた純血主義の集まり。関わるだけ、損をする。

 軽く息を吐き、オルクが愛槍で肩を叩いた。

 

「……バルザス殿、貴殿は何用で?」

「ん? ああ、フェリドが連れてたガキ共が居たろ? あの一人が寝込んでるって聞いてな。知らねえ仲じゃねえし、暇潰しがてら見舞いでもな」

「……ふむ」

「お前は、何かあるのか?」

 

 オルクの人柄は、信頼に値する。実力も、バルザスが知る中で五指に入る腕前だ。

 仕官すれば、オルクという名の評価も含めて、今すぐにでも騎士団に入り、それ相応の立場に就けるだろう。

 故にではないが、バルザスは彼の様子が気になった。

 

「どうしたい? あまりらしくねえじゃねえの」

「某、少し考えておった事がありましてな」

「なんだよ」

「先の戦、間違いなく仕組まれていたものかと」

「……どういうこった?」

 

 先日のあの戦いが、実は仕組まれていたものだった。

 さて、この言葉が何を意味するのか。

 理解出来ないバルザスではないが、しかしその意図が分からない。

 

「仕組まれていたって、何か意味があるのかよ?」

「意味を問われると、少々弱いですが、集められた冒険者や傭兵に、あまりに腕利きが多かったという点ですな」

 

 成る程と、バルザスも納得する。しかし、それでは仕組まれていたと判断する理由にはなるが、実際にそうだったとする理由にはならない。

 

「まだ根拠あるんだろ?」

「……早すぎるのです」

「あ? 何が早いんだよ」

「戦場漁りが、ですな」

「よくある話じゃねえか」

 

 戦場での遺品漁りは、もはや当然となっている。貧しい農村では臨時収入として、無法者には己の装備と金を稼ぐ為、戦場で戦死者の装備品を漁る。

 国も戦死者全てを管理する力は無いので、半ば黙認している状態だ。バルザスもオルクも、よく知っている事だ。

 

「バルザス殿、早すぎるのです」

「いやだから……。何時だ?」

「……某が知る限りで、戦中には」

 

 嫌な予感が繋がり、膨らんだ。

 戦中にはという事は、あの戦いの最中に死体漁りをしていた輩が居たという事だ。

 そしてそれは、

 

「紛失じゃなく、戦場漁りって断定するからには、それなりの数があった」

「左様です。そして、まだ幾つか気味が悪い話があるのですよ」

 

 重い息を吐き、オルクが腰の刀に目をやる。何かあったかとバルザスが疑問する。オルクの得物は槍と刀だ。

 それに何の違和感も無いが、オルクは違う様だ。

 

「……無かったのです」

「無かったって何がだ?」

「装備と、……遺体がですよ」

「あ?」

 

 オルクの言葉の意味が、理解出来なかった。

 装備品が無くなっていただけなら、まだ理解は出来る。だが、遺体まで無くなっているなら話は別になる。

 

「一応聞くが、判別出来なくなっていたって訳じゃないな」

「他のパーティの者達なら、判別は難しかったでしょう。しかし、我らの輩も居なくなっておりました」

 

 しかもと、オルクは腰の刀を帯から抜いて、バルザスに渡して続ける。

 渡された刀を観察するが、中々の業物である以外に、然したる特徴も無く、強いて言うなら鍔と柄が新しい。それだけだった。

 

「我が無二の友の遺刀です」

「お前、そういう大事な事は早く言え。だが、これがどうかしたのか?」

「その刀、実は妖刀と、そういった括りの業物でありました」

 

 少々、面を食らったが、オルクやバルザスクラスの実力者ともなれば、曰く付きの得物や道具を所持していても、なんらおかしくない。

 だが、何かが引っ掛かった。今のオルクの口振りでは、今のこの刀は妖刀ではなくなっている。そう言いたげだ。

 

「今でも十二分に業物だろうがよ」

「ええ、しかし、その刀の本体は刀身より鍔と柄。所有者の魔力を糧に、刀身に無双の切れ味を与える。その様な代物でありました」

「だが今は、その鍔と柄が無いか」

「そして、戦が終わり残っていたのは、刀身と瀕死の友の救護をしていた輩の遺体。友は遺体すらありませなんだ。……某、友の弔いすら出来ず、輩にもいまだ見つからぬ者が居り、遺品の一部も同じ様に」

「……国には言ったか?」

 

 黙って頷く。

 オルク率いる《レーア騎士団》は、個の強さも知られているが、特に集団戦の強さが知られいて、彼は仲間を大切にする。

 その喪失の痛みは如何程か。バルザスは刀を返し、溜め息を吐き出す。

 

「国もまだ、戦死者の確認に追れていまして、王城内や町にまでアレが出て、他のパーティやギルドにも、被害が出たのは効いた様ですな」

「他人事だな」

「そうでもせねば、今すぐにでも仇討ちに駆け出してしまいそうで……」

 

 オルクの話を聞く限り、他にも行方不明者は増えるだろう。バルザスは傭兵業を主とした冒険者、余計な危機には関わらず、報酬に要らぬ欲を出さない。それが長生きのコツだ。

 しかし、今回のこれに関しては、どうにも嫌な予感しかしない。

 

「俺も、調べてみるか」

「何をだ? バルザス・キルシュ」

 

 低い声がした。背の大剣の柄を手に、バルザスが声の方向に身を翻す。

 オルクも十字槍を構え、声の主を見据える。

 

「おいおい、待て待て。俺だ俺、クラウス・ヴェルディだ」

「……脅かすな」

「まったくですな」

「悪かったって」

 

 笑みで謝る辺り、分かっていてやったのだろう。

 しかし、振り向いて改めて、珍しいものを二人は見た。

 

「エミリオの坊主はどうしたよ?」

「エミリオなら、ギルドで事後処理に当たっている。俺は情報収集兼見舞いだな」

 

 何やら上等そうな包みを抱える背には、長い布包みがあった。何時も一緒に居るエミリオが居ない事も珍しいが、現場に出る事も少なくなったクラウスが、自分の得物を背負っている姿は、二人が知る限りでも更に珍しい。

 

「護身だ。一応、《金鹿の蹄》の頭だからな。自衛能力は有ると、たまには見せんとな」

「しかし、《金鹿の蹄》の長たる貴方が、何故態々?」

「言ったろ? 情報収集と見舞いだ。後、謝罪。こっちが強いな」

 

 二人が首を傾げる。これから向かう先に、ファーゼル王国最大の冒険者ギルドの長と、繋がりのありそうな人物が居るとすれば、フェリドくらいなものだが、彼が見舞う様な怪我を負ったとは聞いていない。

 

「青い鎧と獣人の美女二人は知っているか?」

「ああ、フェリド達の仲間だろ。獣人は確かにキレイどころだったが、青い鎧の方はそうだったか?」

「バルザス殿、些か失礼かと。しかし、あの女性ですか。確かに体調を崩されていた御様子でしたな」

「知っているならいい。それでまあ、俺はちょっと先日やらかしてな。情けない話、謝罪をする暇も取れず、今やっとだ」

 

 疲れた顔だ。予測するに、《金鹿の蹄》も相当に被害が出た様だ。

 

「今は腕っこき達が戻ってきて、俺が居なくても回る。だから今の内にな」

 

 しかし、

 

「お前ら、気になる話をしてたな。行きながら、ちょっと聞かせろ。代わりに俺の話も聞かせてやる」

 

 まあ、嫌な話になる事は確実だがな。

 疲れた顔と声で曇天の下、クラウスはそう言った。




次回は竜胆さんか、過去編的な昔語りかな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。