異世界隠居 身勝手に呼ばれて身勝手に捨てられたので隠居したい   作:ジト民逆脚屋

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平穏という事で、前回から少し時間が飛んでます。大体、半年ぐらいかな?

椎名¦気を許した相手には、ポヤポヤ状態

フェリド¦そろそろ年か、腰が痛い

フレッド¦全快。だが、最近死ぬ程忙しい

ニコラス¦全快。フレッドとコンビで忙しい

ソフィア¦椎名と二人は猫友、最近、猫カフェの推しが被って、どう愛でるか喫茶店で協議している

モンド¦ソフィアの付き合いで、猫に詳しくなった。本人はどちらかと聞かれたら、まあ猫も好きだが、犬派。

浜名¦ははは、分身十五体維持しながらの強硬査察は死ねた。


というか、この前書きも久し振り。


とりあえずの

「よっす、御姉さん」

「フェリド」

 

 装備の無い、普段着のフェリドが気楽そうに、片手を上げて、椎名と同じ席に座った。

 

「どうだ? 最近は」

「悪くないよ、うん」

「そうか、そりゃ何よりだ」

 

 フェリドが若い店員を呼び止め、弱い果実酒と肴を幾つか頼む。

 その時に、若い店員が今日のおすすめを薦め、フェリドはその中から、魚を中心としたものを追加した。

 

「昼間から酒?」

「あー、御姉さんの世界だと、昼間酒はよろしくないんだったか?」

「んー、少しだらしないかな」

「文化の違いだな」

 

 そうに違いないと、神妙な顔つきでフェリドが頷く。それが何故か可笑しくて、椎名はコロコロと、口元を隠して笑った。

 

「お、ウケた様で何よりだ。直にサヤマ達も来る、アサノとハマナも、依頼が早く済んだら合流するってよ」

「うん、分かった」

 

 椎名が頷くと、テーブルに木製のタンブラーが二つと炒り豆の盛り合わせ、揚げた川魚と野菜の酢和え、サモルの燻製、ベーコンと根野菜のスープが置かれ、そして追加と四つ翼雉の丸焼きに、ソーセージとベーコン、ジャガイモの黒胡椒炒めと、冷えたラガーのジョッキがテーブルに置かれた。

 

「おい、こっちの麦酒と丸焼きは頼んでねえぞ」

「こちらは、このテーブルに運んでほしいと、あちらの方から」

 

 店員が指し示す先、長い白髪と眼帯で、顔を半分隠した女が手を振りながら、こちらに歩いていた。

 依頼が終わって、そのまま来たのか、背には長銃を背負い、軽鎧を着たままだ。

 

「ソフィア」

「シーナさん」

 

 店員から、蜂蜜酒のボトルと笊に入った果物を買い、ソフィアが二人の席に着いた。

 黄金というには、少々透き通った液体を、ボトルの蓋代わりのグラスに注ぐと、一息にそれを飲み干した。

 

「はあ……、一月振りの酒は沁みますね」

「依頼、難しかったの」

「ああ、いえ、そういう訳ではないのです。依頼はただの害獣駆除、しかしその群れのボスが、魔獣化してまして……」

「む、群れが集落規模じゃなくて、地域規模に膨らんでてさ。急遽、アーネスト達を呼びつけて、漸く昨日群れの駆除が終わったよ」

 

 そう言って、重く溜め息を吐いてから、ラガーのジョッキを傾けたのは、いつの間にか席に着いていたモンドだった。彼も獲物である突剣と長鞭を、腰に提げたままだ。

 

「地域規模の群れ? 魔獣をそこまで放置していたの?」

「へ、へへへ、これには、辺境特有の事情がありまして……」

 

 モンドが、態とらしく両手を擦り合わせながら、椎名に少し近付き、新しく頼んだグラスに、井戸水で冷やした果実水を注ぐ。

 酒を好まない椎名に出すのは、決まってこれだ。

 

「事情?」

「か、簡単な話、金が無いんだ」

 

 香草の新芽を浮かせたグラスを傾けながら、椎名が疑問すれば、モンドは取り皿に、ソーセージやベーコン、ジャガイモを取り分けて、取り皿に盛り付けていく。

 

「わ、分かり難いけど、この大皿がファーゼル王都として、この少し多目の皿がその近郊で、こっちの少ないのが辺境とするよ」

「うん」

 

 椎名が興味津々に頷く。ソフィアもどういう話かと、話す内容を纏めているモンドをジョッキ片手に眺め、フェリドはニヤニヤとにやけながら、肴を摘まんでいる。

 

「こ、このソーセージとかを、金品と考えて、依頼や何かで金を使うと、当然その分は減る」

 

 近郊とした皿から、ソーセージやベーコンを大皿に戻す。

 使えばその分は減る。これはどの分野でも当然の事だ。使えば減り、使いきれば無くなる。なら、無くさずに使い続けるには、どうすればいいか。

 

「だ、だから、稼ぐ。領民の仕事や産業で、金を稼ぐ。又は、その下地を作って、更なる発展を目指して、税を徴収して、領地、つまりこの皿を大きくする。それが、領主や町長、村長といった指導者の役目だ」

「けど、それが辺境特有の事情に関係あるの?」

 

 ああ、それはと、モンドはジョッキを飲み干して、辺境とした皿から、ベーコンを取り咀嚼する。

 そして、また大皿から食べた分のベーコンを取り分けた。

 

「た、単純な話、稼ぎの上限と許容範囲が狭いんだ。辺境は、まだ未開の土地も多くて、開拓村の色が強い。事業を興そうにも、確証が無いから貸付けも難しい」

 

 そして

 

「か、稼ぎが少ないから、必然的に出費を抑えようとする。魔獣退治なんかは、腕に覚えがあるなら、素人にだって出来るから、自分達でやっちゃう集落も多い」

 

 アーネスト達が、その典型だ。

 辺境はまだ、稼ぎとなる事業や産業に乏しく、土地も未開のものが大半となる。

 故に、外部の者に駆除等を依頼する余力が少なく、仮に依頼しても、極小規模なものになりがちだ。

 だから、地元で猟師擬きの冒険者が増え、しかしそれで環境の維持が為されていたから、国の対応もそれなりにでしかなかった。

 

「だけど、今はそうはいかねえよ」

「だよなぁ」

 

 そう続けたのは、フレッドとニコラスの二人だった。 

 

「だあー、しかしよ、最近妙なもんだぜ」

「妙って、また?」

「おお、シーナ。まさか、そっちもか」

「うん、やっぱり増えてる。今回は、四足鳶が魔獣化してた」

「こっちは首が三つに増えた蛇だった。毒持ちじゃないのが幸いだったな」

「私達、猿でした。ニコラスよりも巨大化した猿、だから額に三発、ぶちこんでやりました」

「え、なんで俺名前出されたん?」

「ニコ、触れるな。我らの女神は、少し機嫌が悪い」

 

 この半年で、魔獣化した獣や、魔物の討伐依頼は例年の倍近く増えていた。原因は不明だが、ここ最近の地脈の活性化が、何らかの影響を及ぼしているのではないか。

 というのが、ベアトリーチェと麻野の調べによるところであり、急ぎ対策と解決案を王国と模索している。

 だが、一連の出来事が何も、悪影響だけを及ぼしているという訳ではない。

 

「妙と言えば、魔獣も増えたが収穫も増えたらしいな」

「クラウスが頭抱えてた。食い扶持に困って、冒険者になった農家の次男三男が、いきなり実家に呼び戻されて、人手が足りないって」

 

 地脈の活性化により、ファーゼル王国の農家一戸辺りの収量が二倍、多い所で三倍近くにまで上昇し、家畜の肉や乳、毛や革に至るまで、軒並み品質が向上していた。

 前代未聞の豊作に、農民達は休む暇無く、作物を収穫しては、国が急遽用意した荷馬車隊に渡し、今までにない稼ぎを得ていた。

 

「俺らも今のうちに稼げるだけ、稼いどかねえとな」

「それはいいが、席を空けてくれないか」

「あ、浜名」

 

 椎名がフォーク片手に顔を上げれば、浜名が少し疲れた表情で、木のトレイに数種類のチーズと蒸かしたジャガイモ、木製ジョッキに注がれた蜂蜜酒を載せて、ニコラスの後ろに立っていた。

 

「おう、ハマナ。疲れてるっぽいな」

「ははは、ベアトリーチェについて、ファーゼル中を駆け回った駆け回った。ははは、死ねる」

「浜名、大丈夫?」

 

 椎名が問えば、浜名は気にするなと片手を挙げる。

 

「魔属領の前線より遥かにマシだ。というか、最近はどうだ?」

「うん、《金鹿の蹄》の皆良くしてくれるよ」

「任せろよ、我らの女神の友だ」

「ああ、任せろ。化け物相手でも、何とかするぜ」

 

 フレッドとニコラスが肩を組み、モンドとソフィアも頷く。

 

「まあ、ここまで来たんだ。今更、一抜けたなんざ言わねえよ。それよりも、ハマナどうだった?」

 

 フェリドがそう聞くと、浜名は口の中のチーズを蜂蜜酒で流し込み、フェリドの言葉にこう答えた。

 

「もうすぐ、麻野達も来る。詳しい話はその時にしよう」

 

 あまり、景気のいい話ではないがな。

 蜂蜜酒を飲み干して、新しく頼みながら、浜名はそう言った。




次回は、浜名達の調査と、半年前の椎名の話かな?
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