異世界隠居 身勝手に呼ばれて身勝手に捨てられたので隠居したい   作:ジト民逆脚屋

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アーネスト¦中堅の入り口に立った

フェリド¦もう四十路だよ俺

浜名¦分身から情報収集中。絶対的金髪巨乳派

ヴァニー¦浜名と情報検分中。圧倒的金髪巨乳

クラウス¦観光デートといきたかった

リラ¦早々簡単に事を運ばせると?

椎名¦あ、この串焼き。もう一回買おう


潮騒の町

 しかし、と浜名は地図を広げて、宿の部屋で首を傾げる。

 国も町も、よく発展し、今のところは目立った争いの気配も無い。

 少々気にかかる事もあるが、いい国だと思う。

 

「……〝竜神の玉体〟か」

 

 元の世界ではオカルトの類いでも、この世界でならそうではない事は、山の様にある。

 しかしそれでも、これはあまりにもいき過ぎた代物だった。

 

「ハマナ様、事実です」

「見ちゃったしなぁ。はあ、竜胆に投げたいが、あれが気付いてない筈が無いからなぁ……」

 

 つまり、レミエーレは何らかの対策はしてあるという事で、竜胆はこれを静観するという事だ。

 

「ヴァニーさん、現状での見解を聞きたい」

「現状、私の見解として、触れず関わらず、ネフェリタ様に報告し、指示を扇ぐべきかと」

「だよなぁ。しかしな……」

「ええ……」

 

 まだ、麻野達が戻っていないので、結論は出せないが、恐らくは現状、触れず関わらずに落ち着くだろう。

 

「うん、だけど、そうも言ってられないか」

 

 部屋の窓を開ければ、僅かに波の音と、潮を風が運んでくる。

 いい町で、いい国だ。本当にそう思う。

 穏やかで、目立った争いも無く、飢饉の気配も無い。皇国の全てを見た訳ではないが、政治が安定していて、経済が機能している証拠だろう。

 だからこそ、

 

「招かれざる客、か」

 

 宿の外、闘技者戦劇の舞台で、暴漢というには、あまりに装備の整った連中が、気を失って積み上げられていた。

 

「おい、さっさと縛っちまえ。また、暴れ出すと面倒だ」

 

 どよめく観衆を他所に、フェリドが肩を回しながら、一人を縄で縛っていたアーネストに指示を飛ばす。

 

「なら、手伝ってくださいよ。数多いんですよ」

「年寄りを、これ以上働かせるなよ。ったく、素手でやり合うなんざ、久々だ」

 

 言いながら、足元で倒れている暴漢の覆面を、少し手荒に剥ぎ取る。長く傭兵や冒険者を続けていると、知らぬ所や思わぬ所から、恨みを買う事も多い。

 ひょっとすると、その怨恨かとも思い、覆面を剥ぎ取った顔立ちと装備を、よく観察してみる。

 

 ──サヤマや御姉さん達、ニホンジンに似てるが、こいつらは……──

 

 と、見上げ宿から見下ろす浜名に、視線を向けると彼も頷いた。

 浜名達が言うところのアジア系の顔に、鱗の様に編み込まれた鎖と鉄板の簡素な鎧。武器は総じて、細身の両刃剣。刃を見るに、斬るより突いて斬り裂くか、

 

「……エグい仕込みを」

 

 突いた瞬間に、柄を捻り鍔から、溢れてきた毒を流し込む。

 他にも、吹き矢や投刃、どれも毒の種類は解らないが、しかし相手を確実に殺すといった、意思を感じる武器ばかりだ。

 

「おい、アーネスト。お前、何かやった?」

「いや、フェリドさんじゃないすか?」

 

 二人で、はははと笑い合うと、深く溜め息を吐いた。

 これは多分、何処かからか情報が漏れるか何かして、カミナギ皇国側が牽制してきている。

 それらしく見せた他勢力の偽装という線もあるが、国側の牽制と見るのが一番妥当だろう。

 

「ハマナ、他はどうしてる?」

「付近に隠れていた奴は、分身で拘束済みだ。アーネスト、キスカ達は心配いらない。……麻野が今、膝で顔面凹ました」

 

 浜名の分身越しの報告でも、何が起きているのか容易に想像出来た。

 面倒だと、正直に思う。

 特に密偵らしい行動は取っていないのに、ここまで把握されているという事は、自分達の中に内通者が居るか、それを可能にする手段があるという事になる。

 

「フェリドさん、麻野達は既に現場から逃走、フレッドとニコラスの二人は交戦中、山科とクラウスはまだ見付かってない。後はベアトリーチェと、佐山とハルファなんだが……」

 

 そこまで言ったタイミングで、町の中央部にある公園の方角から、池のものだろう水柱が高く打ち上がった。

 この上なく、分かりやすい目印だった。恐らく、というより確実に、ベアトリーチェ組はあそこに居る。

 

「国の金で、観光するつもりだったんだがな」

 

 と、口の中で小さく呟き、フェリドがポケットから、木組みの煙草入れを取り出すと、横から洒落たオイルライターが、視界に入ってくる。

 

「ははは、旅人さんは活きがいいね」

「いや、そんなんでいいのかよ、女将さん」

 

 ライターの火を受けて、フェリドが紫煙を燻らせる。

 

「闘技者戦劇はやってるが、どうにも最近は骨が無い輩が増えてねえ」

「毒仕込みはいいのかよ?」

「そんなもんでやられる腕じゃないだろ?」

 

 どうやら、この程度の小競り合いは、日常に含まれる様だ。

 

「観光、のつもりだったんだがなぁ……」

「ま、人生そういうもんさ」

 

 紫煙と共に吐き出した言葉は、女将に豪快に笑い飛ばされた。

 

 

 

 

 

 〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

 さて、これは一体どうしたものか。

 クラウスは銃剣の峰で、肩を叩きながら思案する。

 

「こいつら、一体何?」

「ふむり、残念だが俺にも検討がつかないな」

「いくらか、偽装はしてありますが、暴漢や賊の類いにしては、やけに装備が上等ですね」

 

 リラの毒で痙攣する覆面達を、検分すれば、確かに上等過ぎる鎧に剣、そしてそれに仕込まれた毒。

 そのどれもが、暴漢が手にするには、過ぎた質のものばかりだ。

 

「腕もそれなりだけど……、うん?」

「まあ、シーナ。君の言いたい事も判る。明らかに実戦慣れしてねえな、こいつら」

 

 クラウスの発言に、何か反論があるのか。数人がもがくが、リラによって縛られ、猿轡まで噛まされては、身動き一つ、発言一つのすら、まともに行えない。

 

「あー、良い観光スポットがあるって話だったんだが、済まんな、シーナ」

「大丈夫、あまり気にしてない」

 

 言うと、シーナはまた砲剣から、空になった薬莢を取り出して、新しく砲弾を装填した。

 カミナギ皇国に来る道中もそうだったが、椎名は砲剣を肌身離さず、到着後も宿や食事、暇を見つけてはこの行動を繰り返している。

 クラウスが不思議に思い、問うてみても、とっておき、もしもの備え、切り札と濁した答えしか返ってこない。

 試しに、麻野と浜名に聞いてみても、大量の冷や汗を流しながら、椎名最大最悪の一手の準備だとしか言わなかった。

 

「しかし、如何致しましょうか」

 

 確かに、周囲は近くで行われていた、闘技者戦劇の盤外戦としか思っていないらしく、先に毒仕込みを使った連中が悪いと、勝手に納得している。審判は違う様だが、何かに気付いてはいる様で、こちらが一方的に巻き込まれた被害者という形で、話を作ってくれている。

 これに関しては、有り難く利用させてもらうとして、問題はこれからだ。

 

「観光は無理だな。この連中の仲間が出ないとは限らん」

「ここは素直に、宿に戻った方が無難かと」

「それか、ベアトリーチェ達と合流する?」

 

 確か、ベアトリーチェはこの近くの市場に、サヤマとハルファを連れて、食べ歩きに向かっていた。

 魚が旨いと聞いて、ウキウキでサヤマとハルファを引き摺って行ったのを、よく覚えている。

 

「ベアトリーチェに合流出来たら、一番安全か」

「まあ、そうだよね」

「では、その様に。私が先導致しますので……」

 

 着いて、そう日数の経っていない町の地理を、いつの間にか把握していたリラが、二人の前に立つのと同時に、市場の近くにある公園付近から、特大の水柱が打ち上がった。

 確実に、あの位置にベアトリーチェは居る。

 

「……取り敢えず、少し急ごう」

「……畏まりました」

「……何、やったんだあいつ?」

 

 喧騒と人が集まる流れに乗って、三人は市場へと向かった。その途中、先程の暴漢達によく似た装束の者達が、こちらを観察している事を、リラは察知し二人に目配せをすると、クラウスは溜め息を吐いて、無視しろと連中に見えない様に、ジェスチャーで伝えてきた。

 

 ──折角の観光が……──

 

 最近、クラウス達との交流もあり、椎名の様子は非常に落ち着いている。

 以前の様に悪夢に魘されて、飛び起きる事もめっきり少なくなり、ファーゼルに来た頃よりも、よく笑う様にもなった。

 これは良き兆候と、リラは喜び、椎名本人も乗り気だったので、今回の調査依頼を受けたのだが、

 

 ──取り敢えず、この騒ぎの首謀者には、少々後悔して戴きましょう──

 

 リラは人混みを掻き分け、暴漢の仲間の人数を数えながら、騒ぎの中心地である公園へと、二人を先導した。




次の投稿は外伝になると思います。
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