透流少女にが連れてこられた場所は校舎と寮の間にある庭園だった。
花と緑の映える季節ということもあり、庭園は色とりどりの薔薇で覆い尽くされている。
充満する薔薇の香りの中を彼女は石畳の細い路みちを迷い無く進んでいく。
その足の向かう先には西洋風あずまや(ガゼボ)があり、中で執事姿の女子が待機していた。
その執事は黄金の少女姿を確認すると恭しく頭を下げる。
ガゼボの中央にあるテーブルには鮮やかな刺繍の入った白いクロスが掛けられ、その上にはティーセットが置かれていた。
そこへリーリスと透流が席に着くと、執事姿の少女が紅茶を入れ二人に差し出した。
「あ、ありがとう…」
「(ギロッ)……」
透流がお礼を言うと何故か執事姿の少女は透流を睨みつけた。
(な、なんでだ…)
透流はこの少女が何故自分に敵意を向けるか分からないまま紅茶を一口飲んだ。すると、
「っ!スゲー美味い」
「でしょ?サラの紅茶は絶品なんだから」
「ありがとうございます」
その紅茶の美味しさに透流とリーリスは素直な感想を言い、リーリスの言葉に対し、サラは感謝の言葉を述べた。
(…ユリエにも飲ませてやりたいな)
透流は今この場所にいない自身の絆双刃の事を思っていた。すると、
「さて本題。九重 透流、今日からあんたは私の絆双刃よ」
「は…?今…何て?」
突然のことに透流は困惑した。
「二度は言わないわ」
「言わないって…ちょっと待ってくれリーリス。俺にはもう他の絆双刃が…」
リーリスの突然の言葉に透流はユリエのことを伝えようとしたが、
「知ってるわ、でも関係ない。だって私は《特別(エクセプション)》なんだもの」
「エクセプション…?何だよそれ?」
初めて聞く単語に透流は疑問を持ち、リーリスに聞いてみた。
「…イギリスで異能(イレギュラー)の存在は聞いていたわ。それでわざわざ転校してきたんだから感謝しなさい」
「感謝しろって言われても…て言うかまさか!?俺と組むためだけにわざわざイギリスから転校してきたってことか!?」
「ええそうよ、あんたは私と同じ唯一無二(アンリヴァルド)。故にあんたは私の絆双刃に相応しいのよ」
あまりの事に透流は驚きを隠せなかった。しかし…
「ちょっと待ってくれ…そもそも校則じゃ絆双刃の解消は認められてないんだぞ」
そう、よほどのことがない限り絆双刃の変更は一切認められない。しかし、リーリスは
「それが何?私はそんな規定に縛られない。思うがままが許される。故に《特別》なんだから」
この時確信した。彼女にはそんな規律は関係ない。それだけの力があるのだと。
「…一応返事は、聞かせてもらうわ、考えるまでもないと思うけど」
どうやらリーリスにとってはもう透流が絆双刃になることは決まっているようだ。
「…確かに考えるまでも無いな」
「決定ね」
「ああ」
透流の言葉にリーリスは満足がいったような笑みを浮かべた。しかし、透流の返事は彼女の予想を裏切るものだった。
「俺はリーリスと組む気は無いし、今の絆双刃を解消する気も無い」
「なっ…!?」
透流が断るとは思ってもいなかったのかリーリスは驚きを隠せずにいた。
「ご馳走さん。お茶、美味かったよ」
そう言うと透流は席を立ち、教室へと戻ろうとした。
「まっ待ちなさいよ九重 透流!!あんた今…何を言ったか分かってんの!?」
我を取り戻したのかリーリスは立ち上がり、透流に問い詰めた。
透流は足を止めるとリーリスの方を振り返り、
「君の言葉を借りるなら…『二度も言わせないでくれ』。答えはNOだ」
そう言うと去って行った。
透流が去ってしばらくした後、リーリスは背の高い垣根の一角を見て、
「盗み聞きとは良い趣味ね。天峰悠斗」
そう言うと、垣根から悠斗が現れ
「流石に気付いていたか、イギリスで有名な企業であり、ドーン機関の出資元の一つでもあるブリストル社。そこのトップの孫のリーリス・ブリストル」
笑みを浮かべながらリーリスの素性を明らかにした。
「まさかこの学校にあんたみたいな大物がいるなんて思わなかったわ。ボンゴレファミリーの雪の守護者さん」
「まぁ色々あってな。こっちとしてはあんたが俺のことを知ってることに驚いたけど」
俺はマフィアとして色々な組織を調べており、その中の1人に彼女がいた為知っていたが彼女が自分を知っているのには驚いた
「これでもドーン機関の関係者よ。ボンゴレファミリーのことくらい知ってるわ、それに朔夜が最近スカウトしたって前に教えてくれたもの」
リーリスは得意げにそう言った。
「…しかしまぁ透流を自分の絆双刃にするためにわざわざイギリスから来るなんて大したもんだが諦めな。透流はあの様子じゃ絆双刃を変える気はねーよ」
「一度断られたくらいじゃ私は諦めないわ。まだ時間は十分あるもの」
そう言うとリーリスはサラに紅茶を入れさせ悠斗に差し出した。
俺はそれをためらわずに飲むと、
「なるほど、確かに美味い」
その紅茶の味が気に入りしっかりと味わった。
「まぁあれだ、俺の目の黒いうちはあんまりなんか企むなよ」
「姑息なことはしないし、する必要もないわ。だって私は《特別》なんだから」
「そーかよ。まぁ悪さするときは俺が相手になるって忘れんなよ」
そう言って俺は去って行った。
「そんなわけでリーリス・ブリストルの方は今んところ敵意無し。月見 璃兎もとりあえず保留って感じだ」
『うん、報告ありがとう天峰くん』
俺は学校裏で再びツナに報告を入れていた。
『ところで、九重くんだっけ?彼の方はどう?』
「ん?あぁ、今んところは問題無いよ。ちょっと宿題出したけど」
『宿題?』
「まぁ自分の本心を知れってな感じだ」
『そっか…あ、そうそう天峰くん実は『10代目〜書類まとめてきました〜って電話でしたか?』』
ツナが何か言おうとした時、電話越しに俺と同じ守護者の一人であり、《10代目の右腕》獄寺 隼人の声が聞こえてきた。
『あ、獄寺くん。天峰くんから今電話があって…』
『天峰ぇ!?あの野郎どのツラ下げて…ちょっとだけ借りますね』
そう言うと獄寺はツナから電話を取ると、
『天峰オメェ!!守護者でありながら10代目のお側を離れたと思ったら何の用だ!?』
獄寺は俺がツナの側を離れて昊陵学園にいることに突っかかってきた。
「…別にボンゴレ守護者は必ずファミリーについてなきゃいけないって縛りは無いし良いだろ…それに俺が昊陵に入ったのは調査もあるって聞いてねえのかよ?」
『うぐっ…とにかくテメェも守護者なら10代目のピンチの時まで雲雀やアホ牛みてぇにサボったりバックれたりすんなよ!!』
「ハイハイ、分かってんよ。俺だってボンゴレファミリーの守護者だ。そこんとこは忘れてねえから安心しろ。それよりツナと代わってくれ、俺になんか言いたいことあるみたいだし」
『チッ…分かったよ。10代目、どうぞ』
獄寺は俺の言葉に渋々ツナに受話器を渡した。
『ごめん天峰くん、獄寺くんも悪気があるわけじゃ無いんだ』
「分かってるよ。それで?なんかあったのか?」
『うん…なんでも最近僕たちが未来で戦ったヤツらが数名門外顧問の監視から行方をくらましたんだ』
「…マジか?」
『うん、それで…もしかしたらそっちの方にも近いうちに来るかもしれないんだ。だからもし何かあったらすぐに連絡して』
「《超直感》か…分かった。なんかあったら連絡するよ。それじゃあ報告は済んだし切るな」
『分かった。気をつけてね』
そうして俺は電話を切ると校舎の方へと戻って行った。
その日の夜
「よーしっ後残り10周な」
俺たちは月見璃兎に授業をサボった罰として走らされていた。
「フザケンナ!!一周4キロだぞ!!今からフルマラソンとかあんた鬼か!!!」
「鬼じゃないもん♪兎だぴょん♪くはっ、あのお嬢様はしゃーねーがテメェらは授業サボった罰を受けやがれ」
「くそっ…大丈夫だ透流!!まだ10周残ってるじゃない!!あと10周だけだと思う」
「それでもフルマラソンだぞ!!」
透流はクタクタになりながら俺に文句を言った。
「てゆーか悠斗!お前も授業サボってたのか!?」
「オメェらの会話が気になってつけてた!!」
「じゃああの話きいてたのか!?てゆーか悠斗!!オメーこいつの正体見抜いていたし暗部のことも詳しいみたいだけど何もんなんだ!?」
透流のこの質問は最もであろう、裏社会に詳しく璃兎を倒すだけの実力がある。気にならない方がおかしい。
「ソイツは今に話すけどすまん、今は言えねー」
「チクショー!!なんか色々理不尽だー!!」
月夜の中透流の叫びだけが響いていた。
「はぁ〜流石に疲れたわ」
「お疲れ悠斗くん。大丈夫だった?」
悠斗が部屋に帰ってくるとみやびが心配そうに話しかけてきた。
「なんつーか、いろいろと疲れる一週間だったな…」
「そうだね、何が何だか分からなかったよ」
俺の言葉にみやびがクスリと笑いながら答えた。
「あ、そーだみやび」
「何?悠斗くん」
「今度の休み、俺とどこか行こうか」
「…え?えぇぇぇ!?」
俺の言葉にみやびは顔を真っ赤にして驚いた。