アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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13話 生存闘争

(生存闘争ねぇ………)

 

悠斗は月見の講義中にそんなことを考えていた。

今の悠斗は咬竜戦をメチャクチャにされた怒りよりもツナからの警告のことを思い出していた。

 

(もし生存闘争の最中に敵が襲撃してきたら透流達だけではおそらく敵わない。やっぱり正体がバレてでも俺が動くべきだよな…)

 

透流たちの強さは知っている。しかしそれでも透流たちは裏社会の連中との戦闘経験は殆ど無い。これまで闘ってきた自分だから分かるが、ただ戦闘力があるだけでは奴らは倒せない。奴らは時には相手を殺す気でやってくる。そんな奴らにいくら《超えし者》である彼等でも危険である。

 

(もし俺よりも格上の相手が来たら…いや、絶対にこいつらは守ってみせる…)

 

「悠斗くん…」

 

そんなことを考えてると、隣からみやびが話しかけてきた。

 

「ん?あぁみやびか、どうした?」

 

「大丈夫?何か考えてるみたいだけど…」

 

「大丈夫だ。悪いな心配かけて、問題ねぇよ」

 

「無理しないでね。私もなにか手伝えることがあったら…」

 

「分かってるよ。サンキューな」

 

悠斗は笑みを浮かべながらみやびにそう返した。

 

(無駄に考えてもダメだな。今は目の前のことに気をつけないと)

 

自滅してしまっては意味が無い。悠斗は再び気を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜深夜 校舎裏〜

 

「はい、それでは《生存闘争》の開催地、時間帯、周囲の警備状況はそちらに送った情報通りです。ですので九重透流や天峰悠斗、リーリス・ブリストルらが潰し合いで疲弊した後なら簡単に制圧できるかと…」

 

『ご苦労様です。それではそのまま引き続き潜入を続けてください。貴方の素性はバレてませんね?』

 

「はい、大丈夫です。今のところ正体はバレていません。このまま潜入を続けます。」

 

『ならば問題ありません。そうそう、《装鋼の技師》殿から《素材》の方は目星はついたかと聞かれているのですが?』

 

「それならもう本命を見つけました。《彼女》ならば確実に上手くいくかと…」

 

『分かりました、貴方を信じましょう。それでは、今後もよろしくお願いしますよ』

 

「分かりました《K》隊長。それでは…」

 

そうして影は電話を切ると、

 

「…かならず成功させる。それが私の…任務だから…」

 

少し悲しそうな声で去って行った。

 

 

 

 

 

〜生存闘争当日〜

悠斗たちはモノレールに乗り駅に停めてあった専用バスに乗りながら生存闘争のルールを振り返っていた。

 

生存闘争ルール

○一年生全員VSリーリス一人

○制限時間は一時間

○場所はあらもーど北館

○一年生チームの勝利条件は次の二つのいずれか。

A.全滅(全員が気絶)をしないこと。

B.リーリスが胸元につけている薔薇の花を散らすこと。

 

変わったのは三点

 

まず相手。

二年生選抜からリーリス一人に変わったが、

リーリスは二年の選抜メンバーをあっさりと倒したリーリス。悠斗たちと同じ《 II 》だが、眼前で見た実力からするに遥かに格上だと考えた方がいいだろう。

 

次に場所。

あらもーどが会場に選ばれたのは、二つの理由からだった。

一つ目は遮蔽物のある場所にしなければ、一年生チームが圧倒的に不利となるだろうとのこと。これは格技場の一戦を見ている限り、非常に納得のできる話だ。遮蔽物のある場所なら学園の敷地内でもいいのでは?という疑問への答えが二つ目の理由だ。

学校よりもショッピングモールで闘った方が面白そうだから(リーリス談)らしい。ちなみにあらもーどには、大企業のお嬢様が自主制作映画を作る…永遠に未完成とのこと、という理由で貸し切らせて貰ったとのことだ。

 

最後の勝利条件。

これは透流たちにとっては極めて有利だった。

最悪、制限時間まで生き残ればいい透流たちと違い、リーリスは一年生全員を制限時間までに倒さなければならない。中でも一年生の中では現在最強と名高い悠斗も制限時間までに倒さなければならないのだ。彼女の立場になってみればそれがどれだけ大変かは容易に想像出来る。

 

二つめのリーリスの胸の薔薇を散らせば勝利というのは、とても彼女らしい。普通に闘えば負けることはないという自信の現れ故に、ハンデを自分に課したのだ。それでもあの黄金の少女は、自身の勝利が揺るぎなきものと考えているのだろう。

 

(その自信の源こそが《無二なる焔牙》、《銃》か……)

 

「天峰、もうすぐ着くぞ」

 

悠斗が考えていると巴が話しかけてきた。

 

「ん?あぁ悪いな」

 

悠斗は今回、流石に自分たちだけではキツイと考え、透流&ユリエ、トラ&タツ、巴&梓達と共闘することにしていた。

悠斗一人でもリーリス相手に遅れをとることはまず無いだろう。しかし、悠斗はそれでも一緒に闘いたかったのだ。

この学園で知り合った仲間達と…

 

すると、車種はわからないが黒塗りの高級そうな車が、陽射しを反射しつつ屋上駐車場へと姿を見せる。車はゆっくりと透流たちの乗ってきたバスの隣へと停車し、リーリス・ブリストルが降りてきた。

 

「主催者の登場か」

 

その背後から黒衣の少女が妖艶な笑みを湛えたままに姿を見せる。彼女らに息を呑む者が多い中、透流たちの引率としてバスに乗っていた月見がぶつぶつと呟く。

 

「ったく、なんでアタシだけガキのお守りなんだよ……」

 

「騒がしいから一緒の車に乗せたくなかったとか?」

 

「確かに先生たちの疲れがさらに増しそうだな」

 

「潰すぞ。……主に三大欲求の一つを」

 

「やめてくれ……」

 

本気でやりかねない相手なので、悠斗と透流は念のため一歩下がって距離を取る。

 

「皆さん、これより理事長よりお話があります。静かにするように」

 

三國先生が進行を始め、全員の視線が九十九理事長へと集まった。

 

「皆さん、ごきげんよう。既に存じているとは思いますが本日は本来ならば《咬竜戦》を行うはずでした。けれど… 」

 

理事長が隣に立つリーリスと無双を紹介するように手を向けると、黄金の少女と漆黒の少年はすっと頭を下げた。

 

「当学園の兄弟校であるフォレン聖学園から転入してきました、こちらのリーリス=ブリストルさんたってのご希望もありまして、予定を変更し親睦会《生存闘争》を行うこととなりましたわ」

 

予定変更と言っても、《咬竜戦》の目的である格上の相手へ戦略を以って挑むということは《生存闘争》において変わりはない。故に、透流たちが如何様にしてリーリスと闘うのかを楽しみにさせてもらう、と理事長は語る。

 

「この《生存闘争》が貴方たちの良き経験となるよう、心から祈り願っていますわ」

 

理事長の挨拶が終わると、三國先生からルールについて改めて説明される。特に変更があるわけでもなく、俺たちが先に館内へ入り、十分後にリーリスと無双が入ったところで開始とのことだった。説明が終わり、親睦会の名を借りた《焔牙模擬戦》を始めるために、続々とあらもーど館内へとクラスメイトが入って行く。けれど透流はみんなを尻目に、その場を動こうとはしなかった。

 

しばらくすると、透流が戻ってきた。悠斗は透流の顔を見ると、

 

「話は済んだか?」

 

「まあな。悠斗、絶対勝つぞ」

 

「勿論だ」

 

2人は互いに勝利を誓った。

 

「全力でぶつかりあえば認め合える___まるで子供ですわね」

 

呆れたように言う朔夜へ、リーリスは何も答えない。

 

「朔夜様。周辺配備の確認が終了しました。いつでも始められて問題ありません」

 

「ご苦労様、三國」

 

三國はかつての教え子たちに指示を出し終え、朔夜へと報告する。貸し切っているとはいえ公共の場で《焔牙模擬戦》を行うということもあり、あらもーど周辺はドーン機関より派遣された《超えし者》によって警備されているのだ。

 

「そういうことですので、そろそろ始めますわよ」

 

「ええ、わかったわ。一時間ほど楽しみましょうか。……ま、唯一の脅威と言えるのは天峰悠斗ただ一人。その天峰悠斗も対策は十分調べた。負けることは万に一つと無いわ」

 

館内入り口へ顔を向けたリーリスへ朔夜が話しかける。

 

「同じ《唯一無二》であり、同じではない《焔牙》を持つ、同じ退けし者たちの闘い……。楽しみに拝見させて頂きますわ、リーリス・ブリストル」

 

「ご期待に添えられるように祈ってて。」

 

「…それと、あまり天峰 悠斗を甘く見ないように」

 

「ええ、分かっているわ。天峰 悠斗には最新の注意を払って闘うわ。逆に言えば天峰 悠斗以外は問題無いわ。九重 透流も私が負けるわけ無いしね」

 

リーリスは自信を持って言うと、リーリスは会場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

悠斗とみやびが指定位置で待機していると《生存闘争》開始の合図とも言える銃声が聞こえ、二人は透流たちに合流するためにショッピングモール内を走っていた。

 

「みやび、リーリスの銃は遠距離からの攻撃はもちろん接近戦も完璧だ。油断するなよ」

 

「う、うん…」

 

みやびは緊張しているらしく、少し体が震えていた。悠斗はそれを見ると、

 

「大丈夫だみやび、俺がついてる。それに、みやびもあれから強くなってきてる。自分を信じろって」

 

そう言ってみやびの頭を優しく撫でた。

 

「悠斗くん…ありがとう、頑張るよ」

 

みやびは顔を真っ赤にした。すると、

 

 

タァァァン

 

 

すぐ近くから銃声が聞こえてきた。

 

「みやびっ!!」

 

「う、うん!!」

 

悠斗とみやびは銃声の聞こえた方向へと向かっていった。

するとそこにはリーリスが数人の生徒を倒していた。

 

「あら、まさか貴方にいきなり会うなんて意外だったわ」

 

リーリスは自信の《焔牙》である《銃》を回しながら悠斗の方を向いた。

 

「御託はいい。《咬竜戦》を台無しにされた恨み、しっかりと晴らされて貰うぜ!!」

 

「良いわ、全力で倒させてもらうわ!!!」

 

そう言うと、リーリスは《銃》を構えると、悠斗に向けて発砲した。しかし悠斗はその銃弾を見切り軽々と避けた。

 

「驚いたわ…まさか本当に銃弾を避けてしまうなんて」

 

「あんただって俺がこれくらいで倒せるとは思っちゃねえだろ?」

 

「そうね…それならこれはどうかしら?」

 

そう言うとリーリスは再び《銃》を俺に向け、発砲した。

 

「同じことだ!!」

 

悠斗はそれを完全に見切り交わしたが

 

カキンカキィィン

 

銃弾が周囲の壁を跳弾し悠斗に再び襲ってきた。

 

「悠斗くん!!」

 

「うぉ!!あぶね!!!」

 

悠斗がそれを間一髪でかわすとリーリスの《銃》からさらに銃弾が放たれ跳弾が悠斗へと襲いかかってきた。

 

「く…そっ!狼王満月!!」

 

悠斗は(長槍》を超高速で振るって竜巻を生み出し、銃弾を防いだ。

 

「さすがね、天峰 悠斗。やっぱり貴方はメインディッシュにとっておくべきね…だけど、だからこそ解せないわ」

 

「…なにがだ?」

 

「貴方の絆双刃のことよ。こういうのは彼女に対して失礼だけどやっぱり貴方と実力に差がありすぎるわ。武器の相性が最適ってほどじゃ無いみたいだし」

 

「…っ」

 

リーリスの言葉にみやびの体は震えだした。みやびも少なからず感じていたのだ。自分と悠斗の実力の差に。だからこそ、それを指摘されてしまったことに反論出来ずにいた。

 

「聞き捨てならねぇな、リーリス・ブリストル」

 

しかしそれを悠斗は否定した。

 

「みやびは俺が認め、俺が選んだ絆双刃だ。それを否定するってことは俺を否定するってことだぜ」

 

「…どうやら言いすぎたようね。ごめんなさい、だけどやっぱり貴方との実力差は事実よ」

 

「…だったら証明してやる。みやびの凄さを」

 

「…それじゃあ期待して待っているわ」

 

リーリスはそう言うと二人の前から去っていった。

 

「悠斗くん…」

 

「みやび、リーリスを見返してやろーぜ。みんなの力で」

 

「う、うん」

 

二人は再び透流たちに合流するために走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「《装鋼の技師》殿。準備が出来ました。」

 

「フハハハハ、では行こうか《魔女》殿も元へ」

 

「ではミスト。リーリス・ブリストルの方は頼みました。」

 

「…解ッタ。ダカボンゴレハ俺ガ倒ス。忘レルナヨ」

 

「もちろんです。天峰 悠斗は貴方に任せます」

 

脅威がすぐそこまで迫ってきた。

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