「さーてっここで大発表ー♪」
悠斗たちは月見に呼び出され船の甲板に集まっていた。他の一年生も皆集まっていた。
「この船は間もなく目的の島にとーちゃくしまーす☆で、船がもうすぐ停まるから降りる準備をするよーに♡」
『…………?』
月見の言葉に周囲が何を言ってるのか分からなかった。
…何故なら
「…先生、陸がありません」
悠斗が全生徒の思いを代弁する。
無理もない。確かに目的地となる島は見える。……遠く数キロ先に。
「泳げってこと♡」
「泳げって…マジで言って…」
(ギロッ!!)
「…それは本気で言っているのですか?」
透流はとっさに月見にタメ口で聞こうとしたが、月見に睨みつけられて慌てて敬語を使った。
「もっちろん♪あっ、特訓も兼ねてるから制服着たまま泳いでね♡《超えし者》なら、それくらいこなさないとね♪」
月見の言葉に皆が騒ぎ出したが、悠斗はふとこちらを見下ろす九十九 朔夜を見つけた。
(…なるほど、自分のモルモットの生態をじっくり見ようってんのか…)
こちらを笑みを浮かべながらこちらを見る彼女を睨みつけていると、トラも彼女の企みに気付いたらしく、同様に彼女を見ていた。
「最終目的地は島の中央にある合宿所の建物だよ☆それじゃあ行ってみよ〜♪あっそれと、この間学期末の『昇華の儀』があったけど、レベルアップした子はともかく、レベルの上がらなかったダメッ子動物は絆双刃の足を引っ張らないようにね〜♪」
「………………っ」
月見の言葉に、みやびは悠斗の隣で少し顔を俯かせた。
みやびはこの間の《昇華の儀》ではレベルが上がらず《Ⅱ》のままだったのだ。そのことに彼女は落ち込んでいて、ここのところ元気がなかったのである。
「みやび…」
悠斗はそんなみやびに何か声をかけようとした瞬間
ガシャンッガシャンッウィィィン
突然甲板が揺れ出し、開き始めた。
「こ、これって…まさか…」
悠斗は何か察したが時すでに遅く、
「そんじゃ、とっとと行っちゃいなさーい♪」
皆まとめて海の中へと落とされた。
『うわぁぁぁぁぁぁ!?』
生徒たちは突然のことになすすべもなく海へと落ちていった。
「ぷはっ…ゲホッゲホッ…ホントこの学校やることが滅茶苦茶だ!!俺たちじゃなかったら下手すっと死ぬぞ!!」
「び、びっくりした…」
突然のことに悠斗は気管に海水が入り思いっきりむせた。
「そんじゃみやび…とりあえず島の方へ進むか」
「う、うん…」
悠斗とみやびはそのまま島に向かって泳ぎだした。
島までは果てしなく遠かったが、今の悠斗たちには泳ぎきれる距離であった。
悠斗はもともとボンゴレとして鍛えられていた身体にさらに《醒なる者》として目覚めたことで悠斗の身体能力は格段に上がっている。そのため悠斗は難なく泳いでいたがみやびは身体能力は《超えし者》として超化されていたがそれでも悠斗に比べて劣っておりかなり遅れていた。悠斗自身もみやびに合わせてゆっくり泳いでいたが、
「痛っ足が…」
突然みやびが溺れ出した。どうやら足を攣ってしまったようだ。
「みやびっ大丈夫か!?」
悠斗は慌てて溺れるみやびの元へ行き、彼女を抱き寄せると
「……っ!!」
「あっ…」
みやびの顔がすぐ近くにあった。
突然、悠斗は顔が急に熱くなってきた。
「わっ悪い……安静にした方が良いから岸まで俺がおぶるよ」
「あ…ありがとう」
「お、おう…」
それからは悠斗はみやびと何も会話せずに岸まで泳ぎだした。
(なんだ…?急に顔が熱く…風邪でも引いたか?)
悠斗も自分の反応の意味がわからず戸惑っていた。
その後、悠斗とみやびは島にたどり着き、合宿所へと向かっていった。みやびの足も浜辺で休んだ際に治ったらしく普通に歩けるようになった。
「大丈夫かみやびー?もう少しだぞー」
川の岩場を歩きながら悠斗は後ろからついてきているみやびへと声をかけた
「う、うん…なんだかわたし、悠斗くんの足を引っ張ってばかりで…」
「ははっ何言ってんだよ。そんなわけ…」
ツルッ
「きゃあ!!」
「…っ!みやび…うわぁ!!」
ドッポーン
突然みやびが足を滑らせ、悠斗は助けようとしたが、バランスを崩し、みやびと一緒に川へ落ちた。
「うへぇ〜ビショビショだなこりゃ」
悠斗は岩場へ腰掛け、濡れた制服を絞っていた。
「…みんな、もう到着しているかな…?」
「どうだろうな、まあ俺たちは俺たちのペースでいけば良いって」
みやびは悠斗の足を引っ張ってる自分が嫌であった。
彼一人なら、もうとっくにで目的地へと着いてる頃だろう。しかし、自分に合わせているせいでかなり時間が掛かってしまっているのだ。
「ごめんね悠斗くん…わたし…」
「それ以上は言うな」
みやびの言葉を悠斗は遮った。
「みやびは俺の絆双刃だ。みやびが自分を否定するってことは絆双刃の俺を否定することにもなるんだぜ」
「そ、そんなつもりは…」
「前にも言っただろ。みやびは俺が選んだ絆双刃だって。だから…自分に自身持てって」
悠斗の言葉にみやびは少し嬉しかった。
(やっぱり悠斗くんは優しい。私はそんな悠斗くんのことが好きになったんだ…)
「ちょうど良いや、ここで海の塩を洗い流そうぜ」
悠斗はそういうと、顔や腕に川の水をかけ始めた。
悠斗たちは目的地の近くまで来た頃には空も赤くなりだし、日が沈み始めていた。
「もう少しで目的地だみやび、頑張れ」
「う、うん。」
「よし、その意気…っ!!止まれみやび!!」
突然悠斗がみやびを止めて前方に警戒した。
「悠斗くん…?」
「そこに隠れているやつ!!出てこい!!!」
すると、周囲から複数の黒装束の集団が現れた。
(以前の奴らじゃない…?)
すると黒装束たちの周囲に、《焔》が舞った直後に。《焔》が形を成し、武器と化した。
「《焔牙》…!?」
「みやび、来るぞ!!」
すると黒装束たちが一斉に悠斗たちへと襲いかかってきた。悠斗はすぐさま《長槍》を使って黒装束へと攻撃を仕掛け、数名を薙ぎ払った。
「くそっ………こいつかなり強いぞ!!」
「一斉にかかれっ!!」
黒装束の一人の指示で複数の黒装束が一斉に悠斗めがけて襲ってきた。しかし悠斗は、
「俺を…舐めんな!!」
《長槍》を高速回転させて、全て薙ぎ払った。しかし、
シュルッ
悠斗の右手にワイヤーロープが絡まり、動きを封じられた。
「悠斗くん!!」
「くそっ……トラップか!!」
その隙を逃さずに黒装束たちが悠斗めがけて襲ってきた。
悠斗も左手だけで《長槍》を振るい何とか抵抗しているが機動力を封じられた上に足場が悪く思ったように動かずにいた。黒装束たちはそんな環境をうまく利用して悠斗に攻撃を仕掛けてきた。
「くそっ地の利は向こうにあるってことか…」
悠斗も《長槍》で防ぎつつあるが相手の攻撃はどんどん繰り出されて、悠斗もどんどん追い込まれていた。
(どうして…どうして動かないの…!?)
みやびは恐怖で動けずにいる自分が許せなかった。悠斗が必死で戦っているのに自分が動けない。《生存闘争》の時も自分のせいでみんなの足を引っ張ってしまった。自分はそれが許せなかった。
『みやびは俺が選んだ絆双刃だ』
『だから…みやびも自分を信じてくれ』
その時、みやびは悠斗の言葉を思い出した。いつも自分を応援して支えてくれた彼の事を思い出し、自然と口が動いていた。
「《焔牙》!!」
そしてみやびは自身の《騎兵槍》を振るって黒装束たちへと攻撃を仕掛けた。
「ヤァァァァァ!!」
「なっ……ぐわぁぁぁ!!!」
突然のみやびの攻撃に黒装束たちはなすすべもなく吹き飛んでいった。
「サンキューみやび、助かったぜ」
悠斗はみやびに感謝の言葉を述べ残った最後の一人の方を向くと、
「さて…これで残りはあんただけだ。降参するか?」
しかし、黒装束は手に持っている《大剣》を構えると悠斗にめがけて斬りかかってきた。悠斗も《長槍》でガードし、そのまま反撃するが、《大剣》でガードされ、カウンターをしてきた。
(この太刀筋………もしかして………)
悠斗は《長槍》で《大剣》の柄近くを突き、相手の《大剣》を弾いた。
「くそっ………以前より強くなってんな………」
「お前…もしかして…」
すると、黒装束が自身の顔の布を剥がすと、
「…っ勝元!!」
そこには、入学式で悠斗と闘い敗れた本郷勝元がいた。
「久しぶりだな悠斗」
「ようこそ、昊陵学園分校へ‼︎入学式やら本日の《焔牙模擬戦》とやらといろいろあったけど、その辺りは水に流すと言うかお肉と一緒に飲み込んで、今日から一週間よろしくお願いします‼︎」
みんなに向かって伊万里がそう演説すると、周囲から笑い声が聞こえ拍手をした。
「驚いたな…まさか分校があったなんて」
「俺も最初は驚いたぜ、なんでも《資格の儀》で敗れた生徒も希望があればこの分校への入学が許されたんだ。ま、環境も訓練もスゲー過酷だけど、毎日が充実してるぜ」
「なるほど、確かに以前より強くなってたな」
「ははは、てめえだってメチャクチャ強くなってんじゃねえかよ」
「フッ…まぁこっちもいろいろ修羅場をくぐってきたからな」
勝元の軽い文句に俺は笑いながら答えた。
「おいてめえっ!!」
すると、突然背後から声が聞こえ、振り返ると髪をオールバックにしたいかにもヤンキーって感じの男が話しかけていた。
「俺のことを覚えてるな」
男は敵意丸出しでこちらを睨みつけてきた。
「誰?」
「テメェェェ!!自分の過去をよく思い出しやがれぇぇぇぇぇ!!てめえに本校入りを断たれた猿渡 大輔(さわたり だいすけ)様をよぉぉぉ!!」
猿渡とか言う男の言葉を聞き入学式を振り返る…あの時は…入学式の最中にいきなり《資格の儀》が始まって…勝元と闘って…勝元が吹っ飛んで…みやびと闘ってた男が巻き添えに…
「あ、お前か…」
どうやら吹っ飛んだ勝元に押しつぶされてそのまま伸びてしまったあの時の男らしい…
「ここであったが100年目!!あの時の怨み…くらいやがれぇぇぇぇえ!!!」
猿渡さんは手の《片手斧》を振りかぶって飛びかかってきた
「きゅう………」
そして俺は一撃で猿渡さんを倒した。
「わりーな悠斗、俺の絆双刃が迷惑かけて…ちょっとこいつ適当な場所に運んどくから…」
そう言って勝元は猿渡の足を持ってどこかに引きずっていった
「さて…肝心のみやびは…」
「さっきの闘い凄かったです!!」
「さすが本校の生徒ですね!!」
するとみやびは分校の生徒数名に先ほどの闘いについて関心されていた。
「そ、そんな…私はそんなに…」
「当たり前さ、みやびは俺の絆双刃なんだぜ」
俺はみやびを褒めながらその一団に混ざると
「そういえば……男女の絆双刃って珍しいですね」
「しかも凄いイケメン!!」
「まさか二人は…キャー♡」
なんだか急に分校生徒の女子が盛り上がり出した。
「え、えぇぇぇぇ!?そ、そんな違うよ…(ツルンッ)キャッ」
慌てたため、みやびは足を滑らせてしまった。
「みやび!!」
俺は咄嗟にみやびを抱きかかえると
ムニュン
俺の左手が運が良いのか悪いのかみやびの胸をしっかりと掴んでしまっていた。
「………っわ、悪い!!」
「う、ううん、こっちこそゴメンね…」
俺とみやびは顔を真っ赤にしてしばらく黙っていると
「「「キャァァァァ♡」」」
なぜか女子たちがさらに騒ぎ出した。
「み、みやび…ここは一度離れるぞ…」
「う、うん…」
みやびと悠斗は顔を真っ赤にしてその場を離れた。
(…どうなってんだ?胸のドキドキが止まらない…今までこんな事一度もなかったのに…俺の身体…どうしちまったんだ?)
俺は自分の中に芽生えた感情に戸惑いを隠せなかった。
林の中
「準備は出来ました。あとは《神滅部隊》をお迎えするだけです」
『うむ、ご苦労じゃったな。やはりお前さんに任せて良かったわい』
「ありがとうございます。これで貴方の悲願は間も無く達成するかと…」
『うむ、後はこの最新型を《素材》に纏わせばもうこっちのものだ…それに、いざとなっても《ミスト》が残っている。奴のおかげで《焔牙》だけでなく《死ぬ気の炎》の力まで儂の《装鋼》に加えることができる…儂に敗北はあり得んよ』
「勿論です。それではまた何かあったら連絡します」
『うむ、よろしく頼むぞ』
そう言って影が電話を切った。
「これで…全てが終わる…」
闇夜の中、影の声が静かに溶けていった。