アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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19話 少女の涙と襲撃

俺の驚いた表情に、一瞬でみやびの顔色が変わる。やってしまったとばかりに、口元を手で隠すも___もう、遅い。

 

「聞こえ、ちゃった……?」

 

俺はあえて答えない。けれど沈黙こそが、答えだった。足元へ視線を落とし、俺へ向けてなのか、それとも自分へ対してなのか、言葉を続ける。

 

「あ、あはは……。聞こえちゃった、よね……。え、えっとね、本当は波の音に紛れて、聞こえないように言うつもりだったの。そうしたら悠斗くんが、何て言ったんだって聞いてきて、ううん何でもないよって答えて……後で、いつもよりも頑張ったよねって自分に言えて……それで……それだけで、良かったの……」

 

「みやび……」

 

呼び掛けると、みやびはびくんと肩を震わせ___ゆっくりと、顔を上げる。

 

「あの、あのね、悠斗くん……。聞いて、欲しいの……。さっき聞こえちゃったけど……。それでも聞いて欲しいの……!」

 

顔をこれ以上無いというくらいに真っ赤にし、それでもまっすぐに俺を見つめ___思いの丈を、伝えてきた。

呼び掛けると、みやびはびくんと肩を震わせ___ゆっくりと、顔を上げる。

 

「好き、なの……。まだ知り合って、短いけど……それでも、好きなの。わたしに優しく声をかけてくれたあのときから…ずっと……好きだったの……。だから……だから、悠斗くんのことが……大好きなの‼︎」

 

波の音が響く中でも、はっきりと届く告白。まっすぐな想いとともに、不安に揺れる瞳を向けられる。

 

俺は驚きを隠せなかった。すぐ側にいたというのに彼女の気持ちに全く気づけずにいたのだ。

しかし、それ以上にまさか自分の様な男を好きになるやつがいるなんて思ってもいなかった。天峰 悠斗は裏社会において《天狼》と恐れられる存在だ。闇組織に雇われたことだってあるし、時には人を殺したことだってある。ツナの守護者の中でも特に闇の中にいた1人だろう。そんな自分を受け入れてもらえただけでも嬉しかったのにまさか告白されるなんて思ってもみなかった。だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…その…えっ…と…」

 

言葉が纏まらず、戸惑ってしまった。

刹那___思考が顔に出た。出てしまった。不安を抱えて尚、俺を見つめ続けていたみやびは、その一瞬を見逃さなかった。

しまったと思ったときには、既に遅く__みやびの表情は、みるみるうちに泣き出しそうなものへと変わり___それでも精一杯に、笑った。

 

「あ……。あは、は……。やっぱり、そう……だよね……。わたしなんかに好きって、言われても……迷、惑……だよ、ね……。ご、ごめんね……!」

 

「みやび………!!」

 

砂浜を駆け出すみやび。その名を叫ぶも、俺は足が動かなく、追いかけることが出来なかった。

 

「みやび……」

 

夕暮れの海岸で立ち尽くしたまま、小さくなっていく背中を見つめ、呟く。その姿が岩陰の向こうに消えた後、

 

「何…やってんだよ…俺…」

 

その時、みやびの笑顔が浮かんできた。いつもみんなに慕われる優しくて、明るいみやび、

 

あの笑顔を、俺が壊してしまった。

 

「くそっ……!」

 

俺は自分の過ちに酷く後悔した。しかし、事実は決して変わらない

 

しかし、どう答えれば良い。俺のような裏社会の人間に必要以上に関わればさらに危険に巻き込むことになる。何より…俺の手は汚れてる。こんな俺なんかを好きになったら…だけどどう応える?まっすぐに俺を見て、思いの丈を伝えてきた少女に俺はどう応えればいい。いっそのこと冷たくして突っぱねるべきか?いや、そんなことは出来ない…

 

日が落ち、月が出ている空を砂浜に寝転びながら見ている。

 

(……はぁ、これからどうやって声をかけりゃいいんだよ……)

 

今の時間帯だと広場では夕食を準備している頃だろう。俺は今もみやびのことを考えていた。

 

すると、「ドゴォン‼︎」と、凄まじい爆発音が耳に入ってきた。俺は直ぐに体を起こし、爆音の方を見ると、それは広場の方からで、広場からは炎と黒い煙がもくもくと立っていた。

 

「な…こんなとこまで攻めてくんのかよ!?」

 

俺はは怒りを覚えながら、炎の方向へと向かっていった。

 

「始まりましたか…これで任務は達成したも同然…」

 

岩の上から、炎を見つめ影が呟く。

争いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

「すまない!遅れた!」

 

「もう、何やってたのよ⁉︎みやびはどうしたの?」

 

俺が急いで広場へ行くと、そこには戦闘服を着た連中と戦っている伊万里達がいた。

 

「先に来てないのか⁉︎___っ!それにしてもなんだ、あれは……?」

 

広場で闘う、巨大な環状の刃が目に入った。

 

「あれは月見の《焔牙》の真の能力だそうだ。なんでも《焔牙》は《Ⅳ》になると真の力を解放できるらしい」

 

透流が悠斗と合流しながら説明した。

 

「透流っ!無事だったか!?」

 

「まあな、みやびが見当たらないけど…」

 

「…っそれが」

 

「悠斗、透流!無事だったか!?」

 

そのとき、巴が悠斗たちと合流した。

 

「橘か、梓がいない様だけど…」

 

「ここにいます」

 

草むらから梓がでてきた。

 

「梓!!よかった、無事だったんだな!?」

 

「すいません、心配かけました…途中ではぐれたとき、敵と遭遇して…」

 

ドカァァァン

 

そのとき、洋館の方で爆発が起き、辺りに破片が散った。

 

「トラ…あの洋館に誰かいるか?」

 

「理事長とブリストル、あとあの執事がいたと思うが…」

 

「クソッ!」

 

俺がもっと早く来ていればリーリス達を危険にさらすことは…ほんとに自分が情けない!!

 

「透流、そっちは頼めるか?…俺はみやびを探しに行ってくる」

 

「私も行くわ!島に詳しい人がいた方が良いでしょ?」

 

伊万里も心配して声をかけた。

 

「伊万里…すまん、俺一人で行かせてくれ…頼む」

 

「悠斗…」

 

伊万里は悠斗の様子から『もしかして』と思った。そして自分のおせっかいが余計なことをしてしまったのではないかと思った。悠斗はそのまま森の方へと向かおうとした

 

「悠斗!!」

 

そのとき、勝元が悠斗を呼び止めた。

 

「詳しくは聞かねぇけどなぁ…しっかりあの子と向き合え…『答えを出さねえ』ってのが一番相手を傷つける行為なんだからな」

 

「勝元…わかってる…」

 

俺はそのまま森へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ…みやび…何処にいるんだ。」

 

俺は草や枝を掻き分けながらみやびを探していた。途中で《装鋼》を纏った敵と接触したが俺は全て一撃で倒していた。

森の奥まで探していると、

 

「待ッテイタゾ」

 

森の奥から他の《装鋼》と明らかに違う《装鋼》を纏い、仮面をつけた男が立っていた。

 

「《ミスト》…テメェ…」

 

「以前と同ジト思ウナヨ、既に《装鋼》ハ調整済ミ。オ前ヲ倒ス武装モ用意シテアル」

 

そういって手に機械のパーツで覆われた両刃剣を取り出した。

 

「俺ハ遂ニ最強ノ力ヲ手ニ入レタ。俺ノ居場所ヲ奪ッタオ前達ニ復讐スル。」

 

「さっきからなんなんだお前は!!正体を明かしやがれ!!」

 

「…マダ分カラナイノカ…良イダロウ仮面ヲ取ッテ話シテヤル」

 

そう言うと、《ミスト》は自身の仮面を外した。

 

「ヨク目ニ焼キ付ケロ…コノ…

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の顔をな」

 

「……っ!!!………テメェは…」

 

そう言って仮面を外した《ミスト》の顔を見て俺は驚愕した。そう、俺はその顔を知っていた。何故なら、その男はかつて未来でボンゴレが戦った敵なのだから、俺自身は《奴》とは戦っていない…彼と戦ったのは八年後の雲雀 恭弥とボンゴレ雨の守護者山本 武、そして自分たちのボスである沢田 綱吉だけであるからだ。しかし、彼のことはよく知っている。何故なら《奴》はその時代において最強の剣士と呼ばれていたのだから…その男の名は…

 

 

 

 

 

 

「幻騎士…」

 

 

幻騎士、未来で巨大な勢力を誇っていた《ミルフィオーレファミリー》で霧の六弔花となっていた剣士である。その力は六弔花の中でも高い実力を持っており、リボーンですら、『体技においては雲雀に匹敵する』と言わしめた男である。

 

「どうなっている…何故テメーがここに…」

 

「俺がここにいるのは全てのボンゴレを滅ぼすために、まずはお前を倒すためだ天峰 悠斗。俺の協力者の標的がいる学園にお前がいたからな」

 

「…ボンゴレを倒すってんのはどういうことだ?白蘭の敵討ちってわけでも無さそうだしよ」

 

「な訳が無かろう…白蘭を崇拝していたのは未来の俺であって俺ではない」

 

「…?ますますわかんねーぞ、白蘭のことじゃねーんなら何だってんだ、」

 

「…貴様らが白蘭を倒したあと、その時代の記憶が過去の本人たちにも伝わった…そう、俺がファミリーを裏切ったという記憶もな」

 

幻騎士は怒りの形相で俺を睨みつけた。

 

「貴様らのせいで、俺はジッリョネロでの居場所を失った…だからお前たちを倒す!!」

 

「…なるほど、テメーの動機は分かった。だけど俺は殺されるつもりはねぇ!!俺自身も今虫の居所がわりーからな、手加減しねーぞ!!!」

 

俺は白い炎を帯びた《長槍》を構え、幻騎士に強烈な突きを繰り出した。しかし、幻騎士はそれを両刃剣で防ぐと、両刃剣に藍色の炎を纏わせ、巨大な剣撃を放った。

 

「うおっ!?」

 

俺がそれを何とかかわすと、背後の大岩がいとも容易く真っ二つになった。

 

「…チョイスのときよりもやけに強くなってるみたいだな…」

 

「あのときの俺を基準にするな。もう俺に油断などは無い。完膚なきまでに叩きのめしてやる。」

 

「…どうやらそうみたいだな、だから本気出すぜ…こいっガロ!!」

 

俺の首にかけてあった《雪のチョーカーver.X》に銀色の光が輝くと、そこから白銀の毛並みにあちこちに装飾をつけた狼、《雪狼(ルーポ・ディ・ネーヴェ)ver.X》こと、ガロが現れた。

 

「頼むぞ、ガロ」

 

「ガルルル…」

 

「…それが貴様のVG(ボンゴレギア)か…面白い、見せてみろ」

 

そう言うと、幻騎士は自身の匣兵器に霧の炎を注入し、自身の匣アニマル《幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)》の幻覚空間を作り出した。

 

「くらえっ!!!」

 

幻騎士な合図とともにミサイルが出現し、俺へと発射された。しかし、俺はそれをいとも容易く避け、幻騎士へと攻撃した。

 

「今度はこっちの番だ!!」

 

と、言いながら幻騎士に突きを放つが、幻覚で姿を消し、死角から攻撃を繰り出してきた。しかし、俺も反応し、幻騎士の剣を掴むと、槍を幻騎士に向けて

 

「くらいやがれ!!」

 

渾身の突きを繰り出した。しかし、幻騎士の両刃剣から大量の炎が一気に放出され悠斗も思わず吹き飛んでしまった。

 

「死ぬ気の炎をチャージして一気に放出する…厄介な剣だなそれ」

 

「《機巧・幻剣(マキナ・スペットロスパダ)》…《装鋼の技師》が俺専用に作った特殊武装だ。性能は未来の俺が使っていた《幻剣(スペットロ・スパダ)》をはるかに凌駕する」

 

「…そうかよ、確かに破壊力はトンデモねーようだけどな」

 

「…俺は貴様を倒す。この新たな力でな」

 

幻騎士は自身の剣を俺に向け、そう宣言した。

 

「わりーが俺も負ける気は無い…だから…これで終わりにする」

 

そう言うと俺は息を思いっきり吸い、

 

「いけっガロ!!」

 

すると、ガロは超スピードで走り出し、幻騎士に攻撃を繰り出してきた。しかし、幻騎士はそれを容易く見切っていく。

 

「…これでもう終わりか?」

 

「ああそうだ、テメーの負けだ」

 

「…っ!?」

 

突如上から悠斗の声が聞こえ、幻騎士が上を向くと悠斗が空中を走りながら幻騎士へと攻撃を繰り出していた。

よく見ると、空間に無数の氷の道が出来ていた。

 

(これは…あの狼の能力か!?)

 

悠斗の匣兵器《雪狼》は走りながら高密度の雪の炎を放出し、空間を凍らせる。それによって悠斗は空間全てを使った立体機動を可能としたのだ。

 

「狼王一閃!!」

 

悠斗の渾身の一撃が幻騎士へと当たった。そして、幻騎士はそのまま意識を失った。

 

「よし…早くみやびを探しに行かねーと」

 

「…なるほど、確かに良い一撃だったな…当たっていれば」

 

「っ!?」

 

声の先には先ほど倒したはずの幻騎士が平然と立っていた。

 

「霧の幻覚…でも全く気づかなかった、幻覚の精度が以前と全く違う…」

 

「力を手にしたのはお前たちだけでは無い。俺は、お前たちの戦った未来の俺よりも遥かに強くなっている…このまま貴様を倒したいところだが…終了のようだ、帰らせてもらう」

 

すると幻騎士の手にある無線機から連絡が入っていた。

 

「…このまま逃すと思っているのか?」

 

「ああ、そのつもりだ…いや、もう逃げさせてもらった」

 

すると、幻騎士の身体が徐々に消えていった。

 

「幻覚…!?っまさか、もうここには…」

 

「欺いてこそ霧…この様子なら、次に会う時に貴様を殺すのは訳無さそうだな…ではまた会おう天峰 悠斗、次に会うときは貴様の最期だ」

 

そのまま幻騎士は姿を消していった。

 

「完全にしてやられた……くそぉ!!!」

 

俺は怒りながら近くの木を殴りつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コッコッコッ

 

暗い廊下を二人の影が歩いていた。

一人は白衣の老人《装鋼の技師》エドワード・ウォーカー、もう一人は悠斗の絆双刃穂高みやびだった。

 

「…本当に強くなれますか?」

 

「ああ、己の弱さを知る者こそ真に強くなれる素質を持つ…このわしが保障しよう」

 

みやびの問いに《装鋼の技師》は当然のように答えた。

そして、奥にたどり着き、目的のものをみやびに見せ、

 

「お嬢さん、そなたにきっかけを与えよう…心の底から強くなるためにな…」

 

みやびはその《悪魔の囁き》を聴き、《それ》を見つめ、

 

(強くなれば…悠斗くんは…)

 

偽りの力を求めてしまった。

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