アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

21 / 55
4章 天に覇を成す狼
20話 本心と覚悟


翌朝___分校組との別れがやってきた。波止場に立ち、船を見送る分校組。彼らの判別がつかなくなって来ると、船尾デッキから十人近くいたクラスメイトが一人、また一人の次々に船内へ入っていく。最後まで残ったのは悠斗だけであった。透流たちは少し離れたところからその様子を見ていた。

 

「みやび…」

 

悠斗は自分が不甲斐なくて仕方がなかった。絆双刃のみやびを傷つけてしまったばかりかその行方もわからず、悔しさ以上に情けなかった。

 

「何がボンゴレの守護者だよ…ちくしょぉ…」

 

「悠斗さん…そろそろ…」

 

すると、背後から梓が声をかけてきた。

 

「みやびさんは分校の皆さんが全力で探してくださるそうです…大丈夫ですよ。必ずみやびさんにはすぐ会えるはずです」

 

島の方は伊万里たち分校組が捜索するそうだ。学園の方でも捜索するらしい。

 

「……分かった。悪いな」

 

「気にしないでください。私もみやびさんが心配ですから」

 

梓の言葉を聞きながら島を見つめた。

 

「みやび、すまない。先に昊陵学園で待ってるぞ……」

 

船は東京へと向かっていった。

 

 

 

 

 

臨海学校から戻ってきて最初の土曜日を迎えた。時期的に世間はすっかり夏休みムードだが、昊陵学園において関係の無い話だ。最低限の一般教養の授業に加え、昊陵ならではの技能教習___戦闘技術の訓練時間を考慮して、夏休みはお盆を中心とした一週間にも満たない連休があるだけだ。そういったわけで七月下旬の今日も、学校へ向かった。

 

教室へ入ると、始業間近だというのにクラスメイトは退学者を除いても七割程度しか登校していなかった。進退を悩んでいる奴らが、不登校気味となっているためだ。

俺は室内にいるクラスメイトを見回し、その中に自身の絆双刃の___みやびの姿が当然のように見当たらないことで、ため息を漏らす。

それもそうだ、みやびは未だに見つかっていなかったのだから。

 

『大好き、だよ』

 

 

まっすぐに俺へと向けられたみやびの告白、しかし俺はそれに答えられなかった。

裏社会の人間として生き続けた俺、そんな俺のことを理解した上でみやびは俺に『好き』と言った。

俺はそのことに戸惑い、結果、彼女を傷つけてしまった。

 

「みやび…何処にいるんだよ…」

 

 

 

 

今日は臨海学校以来となる格闘訓練が行われることとなった。臨海学校で負傷した生徒が二桁を越えたため、先週は座学中心となっていたので体を動かす訓練は久しぶりになる。訓練は打撃や投げという格闘術の基礎修練を主とし、《無手模擬戦(フィストプラクティス)》が終わり、本日の最後の訓練は、一対一の《焔牙模擬戦(ブレイズプラクティス)》を行っていたが___

 

「はぁ!!」

 

「くっ…」

 

悠斗は橘と戦っていたのだが、橘の動きに翻弄され、思うように戦えていなかった。

 

「どうした悠斗!?キミの実力はこんなものではないだろ!?」

 

「くそっ…オラァ!!」

 

悠斗も反撃するが動きにキレがなく、すぐに橘に翻弄されてしまった。そして、一瞬の隙を突いた橘が《鉄鎖》で悠斗の足を縛り橘の勝ちとなった。

 

 

 

「はぁ…」

 

俺は訓練所の外でスポーツドリンクを飲んでいると…

 

「隣良いか悠斗?」

 

横から橘がペットボトルのお茶を持って話しかけてきた。

 

「橘…別に良いぜ」

 

橘は隣に座るとお茶を飲みはじめ、

 

「今日の訓練は雑念だらけだったな悠斗」

 

「…すまん」

 

橘の言う通りである、今日は自分でもわかるほど闘いに集中できていなかった。

 

「気にしなくて良い…しかし悠斗、あまり自分を責めるな。」

 

「…違うんだよ……」

 

「あれはキミ1人の所為じゃない…我々の責任でも…」

 

「違うって言ってんだろ!!」

 

「…っ!?ゆ、悠斗?」

 

突然怒鳴ってきた俺に橘は驚きを隠せなかった。

 

「…悪い、急に怒鳴って…でも違うんだ…そうじゃないんだよ…」

 

「悠斗…?」

 

「俺…お前たちと別れた後……みやびに告白されたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?えぇぇぇぇぇ!?」

 

俺の突然の言葉に橘は驚愕した。

 

「な…そ…その…こ、告白?それってつまり…みやびが悠斗に…」

 

「ああ、好きって言われた…」

 

「そ…そうか…それで…なんて答えたんだ?」

 

橘は取り乱しながらも俺に聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…答え…られなかった…」

 

「…………!!!」

 

その返事に橘は悠斗の顔を見た。

 

「だってそうだろ?俺は裏社会の人間だぞ…俺みたいな奴なんかを好きになっちゃ…みやびを危険に巻き込んじまう…だけど…俺にはみやびを突き放すことが出来なかった…ただ…取り乱して何も答えられなかったんだ…」

 

「……………………」

 

「その所為で…俺はみやびを…」

 

「この…」

 

「…え?」

 

「この大馬鹿ものがぁぁぁ(バッチーン)」

 

「ってぇ!?」

 

突然橘が悠斗の顔を思いっきり殴った。

 

「な…なにを…?」

 

「キミは…それがどれだけみやびを傷つけたのかわかっているのか!?」

 

橘は悠斗へ怒りを露わにした。

 

「橘…?」

 

「悠斗…私はな…幼い時から恋愛というものをした事がない…しかしな…それでも告白というものをするのがどれだけ勇気が必要かはわかる…みやびはその時…とても勇気を振り絞ったんだと思う…だから!!悠斗がその告白に答えを出さなかった事が許せない!!」

 

橘は許せなかったのだ…女だからこそ好きな人に気持ちを伝える事がどれだけ勇気がいる事が分かった…だからこそ、それに答えを出さなかった悠斗が許せなかったのだ。

 

「…分かってる…勝元にも言われたよ…『答えを出さねえ』ってのが一番相手を傷つけるって…だけど…なんて答えりゃ良いんだ…なんて答えるのが正解なんだよ…」

 

「決まっているだろ」

 

「…え?」

 

「キミの本心を伝えるんだ、キミのみやびをどう思っているのか考えてみろ」

 

「俺の…本心…」

 

悠斗は橘の言葉を繰り返し、自分の気持ちを振り返ってみた。

 

恥ずかしがり屋だけど、優しく可愛らしいみやび。そんなみやびと絆双刃になり、いつの間にかそんな彼女に心を許していた。そして気づけば彼女のことになると胸が苦しくなるようになった…そうか…

 

「俺の気持ち…ハハッ…考えるまでもなかったな…」

 

悠斗は自分の気持ちに気づいた。穂高 みやびへの自分の想いに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は…みやびの事が好きなんだ」

 

そう、考えるまでもなかった。俺はみやびが好きだったのだ。ただみやびを失うことが怖かったのだ…………気づいた途端、自分の中の何かが吹っ切れた

 

「ありがとう橘…おかげで吹っ切れた」

 

俺はそう言うと立ち上がり歩き出した。

 

「悠斗、何処に…」

 

「ちょっと用事ができた」

 

そう言うと、目的の場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

〜理事長室〜

 

「…まさか貴方の方から来るとは思いませんでしたわ」

 

俺は理事長室で朔夜と対峙していた。

 

「あんたに聞きたい事がある」

 

「《焔牙》の真の力のことですね?」

 

俺の問いを聞くまでもなく朔夜は聞き返した。

 

「…お見通しってことか。なら話が早い…教えてくれ…俺はどうすれば真の力を解放する事ができる?」

 

俺の問いに朔夜は笑みを浮かべた。

 

「貴方は《醒なる者(エル・アウェイク)》。《黎明の星紋(ルキフル)》を投与された《超えし者(イクシード)》とは違いますからね。…ですが心配いりませんわ。貴方が強く力を求めた時、それは目覚めます」

 

「…そうかよ、そんじゃとりあえず信じてみるよ。必ず手にしてみせる」

 

そう言って俺は部屋から出て行こうとすると、

 

「天峰 悠斗、貴方には《絶対双刃(アブソリュート・デュオ)》に至る素質がありますが仮に貴方が至ったところで私の歩みは止まらない…ですが…見てみたいですわ、貴方が行く先を…………」

 

朔夜の言葉を聞き理事長室を去っていった。

 

 

 

 

 

 

幻騎士はもともと歴史あるマフィア、ジッリョネロファミリーのメンバーの一人であった。しかし、ある日突如見た夢、それは未来での記憶だった。未来の自分はファミリーを裏切り白蘭と言う男に忠誠を誓っていた。

その日から彼の周囲の視線が今までと別なものに見えるようになった。まるで自分を『裏切り者』と蔑んでいるように見えた。γも太猿もそんなことは思っていなかっただろう…しかし、幻騎士はとうとう耐えられなくなりジッリョネロファミリーを去った。

しかし、幻騎士は裏社会では名の知れた存在ゆえ、何度も命を狙われた。たいていの敵は倒すのは容易かったがそれでも徐々に精神は疲弊していった。

 

なぜ自分がこんな目にあうんだ。未来の俺だって命の恩人であった《彼》に忠誠を誓っただけじゃないか。なぜ…………そうか、ボンゴレの所為だ。奴らが余計なことをした所為だ。だから自分がこんな目にあったんだ。憎い…にくい…ニクイ…ボンゴレガユルセナイ…

 

 

『少し良いかの?』

 

ある日、自分が隠れ家にしている廃墟に白衣の老人が訪ねてきた。

 

『何者だ貴様?』

 

『儂はエドワード・ウォーカー、《装鋼の技師(エクイプメント・スミス)》と呼べばわかるかね?』

 

《装鋼の技師》…裏社会でもヴェルデ、ケーニッヒ、イノチェンティ同様名の知れた技術者であった。幻騎士はその男の突然の申し出に興味を持った。

 

『…何が目的だ?』

 

『いやなに、儂の発明した《装鋼》をお前さんに纏って欲しいんじゃよ。無論ただとは言わん。お前さんの要望には出来るだけ答えよう』

 

《装鋼の技師》の言葉に幻騎士は興味を持った。もしその装備が強力ならボンゴレに復讐する良いチャンスだ。うまいこと利用出来る。

 

『…なら俺の復讐に協力しろ』

 

その言葉に《装鋼の技師》はニヤリと笑い

 

『良いだろう、交渉成立だ』

 

 

 

 

 

 

幻騎士がふと目を覚ますとそこはアジトの研究室の部屋の隅であった。

 

「…夢か」

 

幻騎士は最近見ていなかった夢に溜息をつくと

 

「さて…《装鋼の技師》は何処に…」

 

ドコオォォン

 

「…?」

 

突然近くから大きな音が聞こえ、その場に向かうと…多数の《装鋼》を纏った《神滅部隊》が最新の《装鋼》を纏った少女に倒されていた。

 

「これは…」

 

「遂に我らの研究が完成したのですよ《ミスト》…いえ、もう素性を隠す必要が無さそうなので幻騎士と改めて呼ばせていただきますが良いですか?」

 

すると、背後から金髪の青年《K》が現れた。

 

「…名前などどうでも良い。それより《装鋼の技師》は何処だ?奴に用がある」

 

「儂ならここじゃ」

 

幻騎士の問いに《装鋼の技師》エドワード・ウォーカーが現れた。

 

「どうじゃ幻騎士?《彼女》こそ儂の研究の成果じゃ…なかなか見事じゃろ?ただの少女でさえこれだけの力を発揮する…儂の部隊にこの力を加えればもはや恐れるものはない…儂の《装鋼》の力はお前さんがよくわかっているだろう?」

 

「…あぁ、確かに良い力だ…俺の力がここまで強化されるとはな…貴様には感謝している。この力なら沢田 綱吉であろうと恐れることはない…」

 

「そうかそうか」

 

幻騎士の言葉に《装鋼の技師》は満足そうに頷いた。

 

「だか油断は出来ん…例の装備は完成しているか?」

 

「あぁ、もう調整済みじゃ。お前さんの《装鋼》に組み込んでおこう」

 

「感謝する、その力で天峰 悠斗を……っ!?」

 

 

ガキィィィン

 

 

突然少女が幻騎士に攻撃を仕掛けてきた。幻騎士は咄嗟に《機巧・幻剣》を抜き防ぐが、強力な一撃に後ろに下がった。

 

「貴様…何の真似だ?」

 

「駄目だよ…悠斗くんを傷つけるなんて…許さないよ…」

 

少女の目は虚ろであった。おそらく洗脳の類で操られているのだろう

 

「ふむ……すまんが幻騎士、天峰 悠斗は彼女に任せてくれんか?その代わり他のボンゴレを倒すのは全てお前さんに任せると約束しよう…」

 

「貴様……まあ良いだろう…その時は天峰 悠斗はその程度であったということだからな」

 

幻騎士と《装鋼の技師》の会話の中、少女は虚ろな目で

 

「待ってね悠斗くん…私…こんなに強くなったんだよ…」

 

愛しい彼の名を呼んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。