アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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21話 殺破遊戯

「《七芒夜会(レイン・カンファレンス)》ねぇ…」

 

現在学園の外には昊陵学園の卒業生で現在はドーン機関所属の護綾衛士(エトナルク)が周囲を警護しており、一般生徒は外出禁止、《Ⅲ》に至っている生徒は警護の手伝いをしていた。その理由は《七曜(レイン)》と呼ばれる七人の宴《七芒夜会》が開かれるからだ。俺は他の護綾衛士とともに持ち場で警護をしていた。

 

(それにしても…ボンゴレ以外にも巨大な組織があるって改めて思うな…正直ボンゴレが最も巨大な組織って思っていたからな…なにより…)

 

「表情が固いぞ、後輩」

 

俺が考えていると護綾衛士の一人が話しかけていた。

 

「気を張るのもほどほどにしとけよ、もしことが起きても俺たちに任せておけ、良いな?」

 

「…はい、ご指導よろしくお願いします」

 

「まぁ何事もないのに越したことはないがな…」

 

「そうですね、平和なのが一番ですよ」

 

俺は護綾衛士の心配する言葉に表情を柔らかくして返答した。

 

(無駄に気を張っても仕方がない。落ち着いておかないとな…)

 

 

 

 

 

「同盟…?」

 

「左様、良い話じゃろ?」

 

《装鋼の技師》の言葉に朔夜はもちろん、他の《七曜》も驚きを隠せずにいた。

 

「素晴らしい(トレビアン)。まさか《七曜》の中より、手を取り合おうという意見が出ようとは」

 

華やかな軍服の青年、《颶煉の裁者(テンペスト・ジャッジス)》クロヴィスが感心の声をあげた。

 

「そいつぁ興味深いね。たしかに爺さんの《装鋼(ユニット)》と、嬢ちゃんの《超えし者(イクシード)》は相性がいいかもしれんしなぁ」

 

「噂で耳にしましたよ。貴方がかねてより口にしていた《装鋼》が、もう完成まじかと」

 

「ふははは、さすがに耳が早いのう」

 

どこから得た情報かと問うたとしても、《裁者(ジャッジス)》ははぐらかすだろうことをわかっているからこそ、《技師(スミス)》も追求せずに笑う。

 

「それで、先ほど話をした同盟についての答えを頂けるかの」

 

改めて答えを求める痩躯の老人へ、朔夜は告げた。

 

「お断りしますわ」

 

「…………ほう?」

 

「以前、《装鋼の技師》様は仰いましたわね。私たちと貴方は近い、と……。たしかにそのとおりですわ。《黎明の星紋》も、《装鋼》も、外的要因にて人を超えさせる___その一点においては同じでしょうね。……ですが、それだけですわ」

 

ここで朔夜は見る者の背筋がぞっとするような冷たい笑みを浮かべた。

 

「それに___私、気付いていますのよ」

 

「気づくじゃと?いったい何にじゃ」

 

「貴方の真意、ですわ」

 

朔夜の一言に、エドワードの眉が僅かに動いた。

 

「《装鋼の技師(エクイプメント・スミス)》様。貴方は十二年前、私の祖父《操焔の魔博(ブレイズ・イノベイター)》に敗北していることを。《絶対双刃(アブソリュート・デュオ)》を知り、祖父は至る道を、貴方は滅する道を選び___結果、貴方がブリストル様たち機関三頭首(バラン)に切り捨てられたということを、過ぎし日の野望を実現させようとしているようですが、そんな世迷言に付き合ってられませんわ」

 

朔夜の言葉に周囲は沈黙し、《装鋼の技師》もしばらく沈黙していたが

 

「フハハハハこれは手厳しい。魔女の言葉には毒があるというが…これほどの猛毒とはな…しかし、ここまで侮辱されてはこちらも引き下がるわけにはいかん。そこでどうじゃ?ここはひとつゲームで決着をつけんか?」

 

「…ゲーム?」

 

《装鋼の技師》の提案に朔夜は興味をもった。

 

「なに、簡単なゲームじゃよ。儂の《神滅部隊(リベールス)》にこの学園を強襲させ、お前さんの部隊がそれを迎え撃つ。相手を全滅させた方が勝ちというゲームじゃ。なに、要は《殺破遊戯(キリング・ゲーム)》じゃ」

 

《装鋼の技師》のゲームの誘いに朔夜は微笑み

 

「良いですわ。相手になりましょう…」

 

「決まりじゃな」

 

ゲームへの参加を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに!!《神滅部隊》がもうすぐここに!?…今から10分後!?なんでそんなことが…《殺破遊戯》!?どういうことだ!?」

 

その慌てた発言により、護衛のため待機していた俺たちは驚いた。

 

(どうやら中でなにかあったみたいだな……)

 

そう思っていると___

 

「___っ‼︎」

 

突如、凄まじい風と騒音が頭上を通り過ぎる。巨大な輸送型___かつて《生存闘争(サバイヴ)》の際に見たヘリが再び目に入る。

 

「《神滅部隊》のヘリ…………とうとう来やがった!!」

 

そしてヘリからは《装鋼(ユニット)》を装着している《神滅士(エル・リベール)》達が降下して来る。それに対迎え撃つのは、総勢二十九名の護陵衛士(エトナルク)と、悠斗、トラ、透流、ユリエ、橘、リーリスの六人だけだ。そして、最後に《K》と幻騎士が降りて来る。

 

「テメェら…」

 

「お久しぶりですね九重透流、そして初めまして天峰悠斗。私は《神滅部隊》の隊長《K》と言います」

 

《K》は丁寧な口調で俺に挨拶した。

 

「天峰悠斗…以前見逃してやった命を改めて葬りに来たぞ」

 

幻騎士は背中に以前は無かった大型のケースのような物を背負っていた。

 

「テメェら…何の用だ」

 

「そう怖い顔をしないで頂けますかね。今日はあなた達が探していた人を連れてきたのですよ」

 

「え……?」

 

《K》のその言葉に俺たちは唖然となった。

 

「ほら、あちらに居ますよ」

 

指を指した方を見ると、そこには__

 

臨海学校の際、島で行方が分からなくなっていた俺の絆双刃、穂高 みやびがいた。

 

「みやび!!」

 

俺は一瞬みやびのもとへ行こうとしたが、

 

「まて悠斗!!何か様子がおかしい…」

 

透流に遮られた。

 

そして、みやびが《神滅部隊》と俺たちの間に立つ。

 

「ねえ、見て、悠斗くん……」

 

すると、胸元につけているアクセサリーらしき物から、黒い粒子のようにも見える何かが溢れ出し、全身へと絡みついていく様が目に映る。腕、指先、足、つま先が厚く覆われていき、やがて放出が止まった。

 

「み、みや、び……?」

 

黒い粒子が消え、現れたみやびの姿を見て、かすれた声を出したのは橘だった。

黒を基調とした戦闘服は全身にフィットし、体のラインをはっきりと出して女性らしさを強調する反面、手足は無骨な装甲で覆われている。そして頭にはヘッドギアを装着している。

 

「さあ、望みを叶える刻がやってきましたよ。存分に彼へ見せてあげなさい。___貴女の手に入れた、神殺しの《力》を‼︎」

 

「《K》!お前みやびに何をした!」

 

「私は何もしておりませんよ」

 

すると、みやびが俺の前に立つ。

 

「わたし……強くなったんだよ、悠斗くん……」

 

どこか虚ろな瞳でそう言った。

 

「見て……これが生まれ変わった私の姿だよ」

 

「下がっていろ後輩!!」

 

敵と判断したのか護綾衛士数名がみやびを取り囲んだ。

 

「一気に制圧するぞ!!」

 

『はっ!!』

 

「待ってくれ!!彼女は…」

 

俺が護綾衛士を止めようと声をかけた瞬間

 

「……《焔牙》」

 

みやびが自身の《騎兵槍(ランス)》を手にした。

護綾衛士たちは自身の《焔牙》を手にし、一斉に飛びかかるが

 

「…邪魔だよ」

 

しかし___一蹴。

 

彼らの牙は届くことなく、一度《騎兵槍ランス》が振るわれた結果、全員が吹き飛ばされ地に倒れ伏した。

 

目の前のみやびが現実のものとは思えず、俺は唖然と佇んでいた。

 

「ふふふ…見てくれた悠斗くん?…私、こんなに強くなったんだよ」

 

「……もう一度聞くぞ《K》、みやびに…何をした?」

 

「与えただけですよ…天をも穿つ、神殺しの力をね…」

 

怒りに震える俺の問いに《K》は笑みを浮かべて答えた。

 

「彼女こそ《装鋼の技師》殿の研究の極致、《超えし者》と《装鋼》の融合体です!…彼女の協力によって完成したんですよ」

 

「行くよ…悠斗くん…」

 

次の瞬間、みやびが目にも留まらぬ速さで俺に攻撃を仕掛けてきた。

 

「…っ危ねぇ悠斗!!」

 

その瞬間、透流が咄嗟に俺を突き飛ばすと、俺がいた場所の地面が《騎兵槍》を叩きつけた衝撃で粉々に砕けた。

 

「っ透流…スマン、助かった。」

 

「いや、気にすんな。それより…」

 

「九重くん…邪魔をするの?」

 

みやびが透流を恨めしそうに睨んできた。

 

「あぁ、穂高が悠斗を傷つけるっていうなら…」

 

『《焔牙》!!』

 

透流たちは自らの《焔牙》を手にした。

 

 

 

 

 

「もう始まってましたか…………」

 

すると、俺たちの後ろから梓が歩いて来た。

 

「梓、おそらくみやびは奴らに操られている…みんなでなんとか止めるぞ」

 

橘はみやびの方を向きながら梓に指示を出した。

その時、

 

「……《焔牙》。」

 

「なっ!?」

 

梓は自身の《大鎌(デスサイズ)》を出し、橘に斬りかかった。

 

「あ…梓!?いきなり何を…」

 

「…相変わらず理解が遅いですねぇ…」

 

慌てて橘が梓を問い詰めると梓は嗜虐の笑みを浮かべていた。梓はみやびの方へ向かうと

 

「みやびさん、他の人たちは私が相手にするので貴方は天峰さんに強くなった自分を存分に見せてあげてください」

 

「うん、ありがとう梓ちゃん」

 

梓の言葉にみやびは虚ろな目で礼を言った。

 

「まさか…そういうことね…」

 

「リーリス?」

 

リーリスは何かに気づいたようだった。

 

「《生存闘争》の時も、臨海学校の時も、明らかにこっちの情報が漏れていた…だから…おそらく内通者がいるとは思っていたけど……貴方だったのね梓」

 

リーリスの言葉に梓は微笑むと

 

「正解ですよ《特別》、《生存闘争》の時も《品評会》の時も、場所、時間、警備の数などを《装鋼の技師》殿に流したのはこの私です!!私は博士の命令で学園に生徒として入学してこの日のために最も適した《素材》を探していたんですよぉ!!中でもみやびさんは最高でした!!《超えし者》としての強靭な肉体とはアンバランスな脆い精神…それでいて力への強い渇望…彼女こそ、博士の研究の完成に最もふさわしいと思いましたよ!!」

 

梓は今まで見たこと無いような凶悪な笑みで笑いながら喋り出した。

 

「…騙していたのか…今までずっと…」

 

俺は怒りに震えながら梓に問いかけた。

 

「…えぇ、貴方が意外と鈍くて助かりましたよ。なにより、悠斗さんには感謝していますよ。なんせ貴方のおかげでみやびさんを連れてこれたんですから…」

 

「何…?」

 

「自分を袖にした男に振り向いて欲しいなんて…泣かせますよねぇ…」

 

「っ!?」

 

なぜあの海岸でのことを知っている?…あの時には俺たちしか…

 

「貴方たちは常に監視されていたんですよ」

 

「…やめろ」

 

「ほんと最高でしたよ、あんな告白リアルであるんですねぇ」

 

「やめろ」

 

「まるで青春映画のワンシーンみたいで」

 

「やめろって言ってんだろぉぉ!!!!」

 

俺は思わず怒りながら叫んだ…これ以上聞いていられなかったからだ

 

「…梓ちゃん…梓ちゃんばっかり悠斗くんとお話していてずるいよ」

 

すると、みやびが恨めしそうに梓を睨みつけた。

 

「おっと…ごめんなさいみやびさん、あとは2人で存分に過ごしてください」

 

梓の言葉にみやびは悠斗の方を向き、

 

「くすっ、やっとだね。やっと悠斗くんに、見せてあげられる。いっぱいいっぱい《力》を見せて強くなったことを信じてもらえたら___これからは、わたしが悠斗くんを護ってあげるんだから」

 

みやびは再び歪んだ笑みを浮かべ、言った。

 

「素晴らしいショーですね……ですが、遊びはここまでに致しましょう」

 

「ふん、さっさと終わらせるとするか…」

 

すると、《K》と幻騎士が他の《神滅部隊》を率いて立ち去ろうとした。

 

「待てよテメェら…どこに行く?」

 

「ゲームの途中ですが、部隊の代表として《操焔の魔女(ブレイズ・デアボリカ)》にお会いに行かなければなりません」

 

「理事長を狙う気か⁉︎」

 

「あの頭脳と才能の持ち主です、さぞ良い素材となるでしょう。……では、失礼。皆様はどうぞゲームをお楽しみ下さい」

 

「天峰 悠斗…俺を倒したいのならさっさとその女を倒すことだな」

 

そう言いながら彼らは学園に向かっていった。

 

「…みんな、みやびは俺に任せてくれ」

 

「悠斗…お前…」

 

「これは俺の不甲斐なさが招いたことだ!!それに…俺はみやびの絆双刃だ…頼む」

 

悠斗の目には迷いがなかった。それを見たユリエは

 

「…悠斗に任せましょう…」

 

「ユリエ…でもっ…」

 

「…悠斗とみやび…絆双刃の絆を私は信じています」

 

ユリエはまっすぐと透流を見ると…

 

「…分かった、お前に任せる」

 

透流も悠斗を信じて《K》たちの後を追い始めようとした。その時、

 

「分かってませんねぇ貴方たちは私が倒すって言ってるでしょ?」

 

梓が《大鎌》をこちらに向けてきたが、橘が《鉄鎖》で梓の動きを拘束した。

 

「みんな!!梓は私に任せてもらおう!!」

 

「橘っ!?」

 

「私は梓のことを何もわかってなかった…こんな時に向き合えずして…何が絆双刃か!!!…頼む、彼女は…」

 

「橘……信じていいんだな?」

 

「…無論だ」

 

「…分かった。行くぞみんな!!」

 

透流はそう言うと、《K》たちの後を追っていった。

 

「貴方一人で…私に勝てると思っているんですか…私も舐められましたね…良いですよ、絆双刃だったよしみです…相手になってあげますよ…」

 

「来るがいい梓…君の目を覚ましてみせる!!」

 

「…《神滅部隊》諜報員、不知火 梓…行きます」

 

「橘 巴!!行くぞ!!」

 

そうして二人は戦いながら林の奥へと消えていった。

 

「…そんじゃあみやび、俺たちも始めるか…」

 

「うん、私を見て悠斗くん…邪魔の入らないうちに見て、見てよ、もっとわたしを見て…私の力ぁ!!」

 

そう言いながらみやびは俺へと向かってきた。

 

「みやび…お前を助ける…そして、俺の気持ちを伝えてみせる!!」

 

そして、俺は《長槍》を振るってみやびと対峙した。

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