「……意外とあっけなかったですね」
九十九朔夜は嘲笑うかのように《装鋼の技師》エドワード・ウォーカーへと話しかけた。
「あれだけ自信をもってゲームの誘いをしたからどんなものかと思って見てみれば《雪》の炎を使わない天峰 悠斗に敗れる程度。これでは期待外れも良いところですわ」
朔夜の言葉にエドワードはしばらく黙っていたが、
「フハハハハ、確かに天峰 悠斗の相手は彼女には荷が重かったようじゃな。残念じゃわい」
しかし、エドワード・ウォーカーは平然と笑っていた。
「……?随分と余裕ですね、融合体が敗れたというのに」
「確かに、彼女は儂の技術の成果と言える…じゃが、それでも天峰 悠斗の強さはそれ以上、特に奴の《死ぬ気の炎》の力は未だ解明されていない部分もあるからのう…なら、《死ぬ気の炎》には《死ぬ気の炎》をぶつければ良い。」
「…つまり、最初から幻騎士を天峰 悠斗にぶつけるつもりであったと?」
「まぁ、そういうことになるな」
朔夜の問いかけにエドワードは笑みを浮かべて答えた。
「もちろん彼女が倒してくれれば御の字ではあったが彼女だけでは天峰 悠斗相手は難しい、《死ぬ気の炎》での戦闘に精通している幻騎士を仲間に引き入れ、力を与えたというわけじゃ。奴のように憎しみに飲まれているような奴は扱いやすいからのぉフハハハハッ、ちょっと奴の憎しみを煽ってやったら一発だったわい」
得意げにエドワードは笑いながら言葉を続けた。
「なにより…儂の《装鋼》をもってすれば《死ぬ気の炎》の力を強化することも容易いことだ、先ほどの少女が《超えし者》と《装鋼》の融合体なら幻騎士は《死ぬ気の炎》と《装鋼》の融合体…何より今の幻騎士は復讐の為にのみ動く完全な戦闘マシーンじゃ」
そして両手を広げ
「諸君らもゆるりとご覧あれ、この《殺破遊戯》を制する…この儂の最高傑作をな」
声高らかに宣言した。
「…それが、てめえの隠し玉ってやつか」
幻騎士の纏う《装鋼》の各部位に更にパーツが加わり、まるで騎士の鎧を機械にしたようなものへと変わっていた。
それはまさに未来における幻騎士の最強の武装《大戦装備》のそれとよく似ていた。
「……行くぞ、ボンゴレ」
幻騎士は剣を構え突撃した。
一瞬で間合いを詰めると俺に剣撃を放った。
ズガァァン
一撃で地面が大きく割れた。まともに食らえば無事では済まないだろう。
「ほらよっ!」
俺は自身の《長槍》を振るい幻騎士に反撃した。
「無駄だ」
しかし、幻騎士は既に幻覚を創り出しており、《長槍》は空を切った。しかし俺はすぐに体勢を立て直すと殺気を感じ咄嗟に体を捩ると剣撃が放たれた。
「やっぱりチョイスの時より強くなっている…それだけじゃねぇ、炎の剣撃の威力も桁違いだ」
幻騎士の炎の属性は《霧》。《霧》の炎は《構築》という特殊な力がある分8つの《死ぬ気の炎》の中では特に攻撃力が低い。しかし、幻騎士の剣撃の破壊力はかつて未来での白蘭とのチョイスで見せた剣撃よりも遥かに威力が高かった。
「その《装鋼》…《死ぬ気の炎》の力を高める能力があるのか」
「正解だ、この《装鋼》には俺の肉体とリンクし装着者の潜在能力を解放する機能が備わっている。ブースターになるパーツを取り付けることでその機能は更に強化される。《装鋼の技師》はこのパーツを《F.B(フレイム・ブースター)》と名付けていたな」
「…思ってたよりノーマルなネーミングだな」
俺は幻騎士の言葉に精一杯の皮肉を言ったが内心は焦っていた。
幻騎士の戦闘力は予想以上に向上していたことであった。
それだけではなく、俺自身も先のみやびとの戦闘の際、《騎兵槍》が体を貫いたことによって体に大きなダメージがあった。いくら肉体を傷つけないと言っても全く負担がないわけではなく俺自身もかなり無理していたのだ。
「だからって負けられないしな……来い、ガロ!!」
そう言うと悠斗は《長槍》に炎を纏わせチョーカーから《雪狼》ガロを出した。
「行くぞガロ!!一気に攻めるぞ!!」
俺の言葉にガロは大きく吠えて答えた。
「はぁ!!」
俺はガロの作り出した氷の道を駆けて幻騎士に攻撃を繰り出した。
しかし、俺の動きは鈍く幻騎士に悉く防がれた。
「…随分と消耗しているな、あんなつまらん女一人に深手を負うなど…本当に甘い連中ばかりだな、貴様たちボンゴレは」
「…何だと?」
幻騎士の言葉に俺は怒りを覚えた。
「そうだろ?ただ男に見て欲しいなどという浅ましい願望で《装鋼の技師》のモルモットにされる様な女を愚かと言わずに何と言う?まぁその女を救うために深手を負い俺に苦戦する様なやつも」
「………いしろ…」
「……なに?」
「撤回しろ!!」
俺は怒りを抑えられず幻騎士へと叫んだ。
「みやびは俺の大事な…自慢の絆双刃だ!!あいつがいつも頑張ってきたから俺も負けられないって思えた!!そして…あいつのおかげで…生まれて初めて恋というものを知ることができた!!ただ憎しみで動いている奴が…俺の大好きな人を馬鹿にするなぁ!!!!」
幻騎士は俺を見てため息を吐くと
「…下らん、そんな感情に囚われたお前に俺は倒せんよ…俺の最強の技でとどめを刺してやる」
剣を振り上げ炎を刀身にチャージしだした。
「我が最強の一撃を喰らえ…《機巧・幻剣舞(ダンツァ・マキナ・スペットロスパダ)》!!」
幻騎士の剣から巨大な剣撃と《幻海牛》のミサイルが悠斗に向かって放たれた。
「なっめんなぁぁぁぁ!!!」
俺は《長槍》に纏わせた炎の炎圧を高め迎え撃った。
――邸内
「いかがかな魔女殿?儂の切り札の力も中々じゃろ?」
そこでは朔夜たち《七曜》がモニターで悠斗たちの闘いを見ていた。
「まず幻騎士の《死ぬ気の炎》を極限まで高める特殊パーツ《F.B(フレイム・ブースター)》、次に死ぬ気の炎を刀身にチャージし解放することで強大な破壊力の剣撃を生み出す《機巧・幻剣(マキナ・スペットロスパダ)》、この二つを纏うことで炎の力を何倍にも強化するだけでなくより幻騎士の戦闘スタイルに適したものへと進化させた儂の《神滅装備(アルマメント・エル・リベール)》の力は見ての通りじゃ…そしてこの力にお主の《超えし者》の力が備わればどうなると思う?」
笑みを浮かべながらエドワードは言葉を続けた。
《装鋼》を《超えし者》が纏った場合の《力》は、先ほど見せた通りじゃよ。日常生活などという 不純物を交えて訓練を施した学生であっても、あれ程の飛躍を見せたのじゃ!何より…《超えし者》と《死ぬ気の炎》の相性が良いこともお主が新型《黎明の星紋》を開発していることも調べはついとる!!」
《技師》は椅子から立ち上がり、声が段々と熱を帯びてくる
「純粋な兵士として訓練を施し、戦闘マシーンとして完成し、《死ぬ気の炎》を操る《神滅士》へと 新型《黎明の星紋》を投与したならばどうなるか想像してみるがいい!」
「…………」
「そやつらは《更なる高み》へ至るのじゃ !!その時こそが真の《神滅部隊》の完成であり、立ち塞がる者全てを凌駕し、滅ぼすじゃろう …そう、たとえ立ち塞がる者が――《神》であろうとも!! わはははは!!」
エドワードは高笑いをしながら宣言した、
「さて、先ほどの話を考慮した上で今一度、同盟についての《答え》を頂けるかの」
改めて答えを求める痩躯の老人へ、黒衣の少女は告げた 。
エドワードは幻騎士が天峰 悠斗を追い詰めていることに満足らしく、これなら目の前の少女も此方の要求に応じるだろうと確信していた。
「……そうですね、これから忙しくなりそうですね」
「うむ、そうかそうか」
朔夜の言葉にエドワードは此方の要求を受け入れるのだと確信した。しかし、彼女から放たれた言葉は予想していないものであった、
「まずは内通者たちの掃討とこれからの警備強化を急いだ方が良いですね、女生徒を良からぬ目的で監視する様な御老人がいる様では、学校運営に支障をきたしますから」
「わはは、ちげえねぇ」
「フッ…」
「ククッ…」
「クスクス」
王城の笑い声を皮切りに他の《七曜》も笑い始めた。
「………………(ギリッ)」
その空気に初めてエドワード・ウォーカーは怒りを顔に出した。
(……そんな態度をとれるのは今のうちだぞ小娘…儂と貴様の血筋との因縁もこれで終わりにしてくれる)
九十九 朔夜は冷静な態度で紅茶を飲み、己が生まれて初めて興味をもち、行く末を見てみたいと思った一匹の狼のことを考えていた。
(天峰 悠斗、貴方はそんなところでは終わらないはずですよ…でなければ私は貴方を此処には連れてきていませんのだから)
そう、本来なら彼は自分の目的には必要ない存在だった。それでも彼女が学園に彼を迎え入れたのは彼という存在がどの様な道を見せるのか見てみたかったからだ。だからこそ九十九 朔夜は本来の目的を少し曲げてまで彼を迎え入れたのだ。
(さて…《彼ら》もそろそろ来る頃ですね、これなら《今回は》特に犠牲者は出なさそうですね…)
「…ちょっとまずいかもしれないわね…」
「クソッ……あと何人いるんだ」
リーリスとトラは周囲を取り囲む《神滅士》の軍勢を見ながら悪態をついていた。
敵の数は思っていたよりも多くいくら倒してもキリがなかった。彼らは度重なる戦闘でかなりの負担となっていた。
「クソッ…キリがないぞこいつらは…」
「くっ…」
その頃、巴と梓たちも他の《神滅士》たちの強襲に苦戦していた。
「ふんっ…てこずらせやがって…まぁこれでもうこいつらも終わりだな…とっとと小娘と裏切り者を始末するか」
《神滅士》の一人が言うと、彼らは銃を構えて二人に向けた。
「巴さん……」
「クソッ…万事休すか」
「時雨蒼燕流…攻式八の型
篠突く雨」
その時、鋭い斬撃が《神滅士》に繰り出されて複数の《神滅士》が吹き飛ばされた。
「………えっ?」
「な…何が?」
突然のことに二人は何が起こったのか分からなかった
「なっなんだこいつ…と、とにかく撃…」
「させるかよ!!《赤炎の矢(フレイムアロー)》!!」
すると、さらに赤い炎が《神滅部隊》へと放たれ、《神滅士》たちは吹き飛ばされた
「…たくっ口程にもねぇ奴らだな」
「なぁ獄寺、あいつらのパワードスーツってなんかかっこいいな」
「何のんきな事言ってんだ野球バカ!!」
その二人は戦場だというのにのんきに平和な会話をしている様であった。
「極限太陽(マキシマムキャノン)!!!」
ドコォォォン
「グワァァァァア!!」
「つ、強い…」
「何者だ奴らは…」
一方リーリスとトラの元には短髪の男がおり、複数の《神滅士》を吹き飛ばしていた。
そして、
「ガハハハッ行け牛丼〜」
牛柄の服を着た子供が雷をまとった牛に乗り《神滅士》へと突進していた。
格技場
「く…くそ!!なんだよこれ!!幻覚か!?こんなもの…」
「無駄」
「ガッ………」
一人の少女が幻覚で《神滅士》を翻弄し三又の槍で意識を奪い倒していた。
「…………」
「がは…………」
「つ…強え…」
その近くでは、雲雀恭弥が平然と歩いておりその背後には多くの《神滅士》が伸びていた。
校門前
「クソッ気をつけろ!!絶対に見逃すな…グハッ」
「この…ガッ」
此処では多くの《神滅士》がたった一人の少年に倒されていた。
その少年は額と両手からオレンジの炎を纏い、手刀で《神滅士》の意識を奪っていた。
「あ…貴方は一体…」
あまりの光景に《護綾衛士》の女性はその少年へと問いかけた。
「心配するな、誰も死なせはしない」
「な…なぜ奴らが此処に!!」
エドワードは彼らの登場は想定外だったらしく激しく動揺した。
「やはり来ましたか…まぁ当然ですね」
朔夜は笑みを浮かべ紅茶を口にした。
いつも眉間にしわを寄せ、祈る様に拳を振るう
それがボンゴレⅩ世____沢田 綱吉
そして彼が率いるボンゴレ10代目ファミリー
「……!!この気配は…沢田綱吉と山本武!!それだけではない…ボンゴレファミリー全守護者がいるのか!?」
その頃、幻騎士は突如感じた気配に気づいていた。
「丁度いい!!このまま奴らを殲滅しに行くか!!」
「おい…テメェの相手はこの俺だぜ…」
突如背後から声が聞こえ振り向くと傷だらけになりながらも悠斗が立ち上がっていた。
「たくっ…来るのが遅えよ…ま、いいか、間に合ったみたいだし…そんじゃ、使うか…」
すると、悠斗は目を閉じ、息を吸い、
「ガロ、形態変化(カンビオ・フォルマ)」