(……奴の《死ぬ気の炎》が上昇していく……この感じは覚えがある…山本武との闘いで奴が見せた形態変化(カンビオ・フォルマ)とかいうやつだな…一気に勝負に出る気か……)
悠斗から溢れ出てくる《死ぬ気の炎》の炎圧がどんどん上昇していく中で幻騎士は警戒を強めた。
「貴様……やっとその力を出したな、まぁ当然だ。その力でなければ俺を倒すことは出来ん、最も…その力でも俺を倒すことは出来んだろうけどな。俺は既に貴様らのその形態変化(カンビオ・フォルマ)の力の凄まじさを学習している…もうその力に油断し敗北することは無い。全力で排除してくれる。」
「………山本の能力の一部を見ただけでもう俺たちのことを攻略したつもりなのかよ……そう思っている時点でテメェは俺たちのことをなめてんだよ幻騎士。」
俺は幻騎士のことを睨みながら呆れたように言葉を返した。
「言っておくが……《こいつ》も俺の全てってわけじゃねーからよく覚えておけ、テメェのその余裕を全力で叩き潰してやるよ。」
そう言うと呼吸を整え、目を開き
「ガロ、形態変化(カンビオ・フォルマ)、モードI世(プリーモ)。」
その瞬間、
「アオォォォォォォォン……」
俺のボンゴレギア、ガロが遠吠えをあげたかと思うと、光となって両足を包み込んだ。
光が消えると、俺の足には銀色に染まった鋼の分厚い装甲が取り付けられていた。
「それが貴様のボンゴレギアの初代の武器とやらか……」
「どうだろうな……自分で考えてみろよ。俺だって手の内を全部敵に教えるほどお人好しじゃねーからな。」
そう言うと、自身の《長槍》を構え、
「………いくぜ。」
ドガァァァァン!!!
そして、足を地面に踏み込ませたその瞬間、巨大な音とともに地面が揺れ大地が抉れ、俺の体は宙を舞った。
「ドリャャャャァァァァ!!」
幻騎士は咄嗟に剣を前に出し、悠斗の蹴りを防ごうとしたが、しかし、悠斗の蹴りはそのガードをも撃ち破るものであり幻騎士へと直撃した。しかし、それは幻騎士の幻覚であり、すぐに消え、少し離れた場所へと幻騎士が現れた。
「なるほどな……この破壊力、流石はボンゴレギアというだけの事はあるな……だが、ただ破壊力が凄まじいというだけでは俺には勝てんぞ、やれっ!!幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)!!!」
幻騎士の声に従い、幻海牛のミサイルが現れ俺へと向かっていった。
「なっめんなって……言ってんだろぉがぁぁぁ!!!」
俺は《長槍》を回転させ、それによる斬撃で周囲のミサイルを破壊した。
「甘いな。」
しかし、ミサイルが爆発し、周囲に煙が包まれた隙を幻騎士が逃すはずもなく背後へと周り斬りかかってきた。
「ちぃっ!!」
咄嗟に身を躱し蹴りを放つが幻騎士は軽やかに躱してしまった。
「興ざめだな……」
突如、幻騎士が声をあげた。
「確かに貴様のボンゴレギアの武装の破壊力はとてつもない…しかしパワーに特化しすぎたせいでスピードも以前より遅くなっているどころか身のこなしも鈍くなっている。これでは以前の方がまだ手応えがあった。」
幻騎士の言葉には軽い失望があった。しかし、悠斗は気にすることなく平然としていた。
「安心しな幻騎士、俺の全力はむしろここからだ。この闘い…俺は絶対に負けられねぇからな」
「……………。」
「なんせ俺には…仲間たちとの約束…ボンゴレの守護者の使命…そして、俺自身の想いを背負ってるからな。だから…この《足枷》を外させてもらう」
俺はそう言うと足の炎の力を高め、そして
「拘束解放(キャストオフ)。」
その瞬間、足の装甲のパーツが弾けだした。
「おいおい嬢ちゃん、あのボウズの武装にゃあまだ隠し球があんのかよ。」
《冥柩の咎門(グレイヴ・ファントム)》の王城は悠斗をモニターから見ながら《操炎の魔女(ブレイズ・ディアボリカ)》九十九朔夜へと問い出した。
「ええありますよ、と言うよりはあの形態は彼の…いや、初代雪の守護者の一面でしかありませんわ。」
「初代守護者だあ?」
「そう言えば、聞いたことがあります。」
すると、華やかな軍服の青年、《颶煉の裁者(テンペスト・ジャッジス)》クロヴィスが何かを思い出した。
「初代雪の守護者は家族をマフィアに殺された怨みから裏社会で多くのマフィアや犯罪者を殺し表社会でも裏社会でも恐れられた罪人だったそうです…しかし、I世に命を救われボンゴレの一員となった彼はI世に忠誠を誓い、己の過去の戒めとして常に足には足枷をつけていたと言われています。」
「そうですわ。しかし、ファミリーに危機が訪れた時には己の足枷を外し、誰よりも速く戦場を駆け抜け…そして誰よりも多くの命を救ったと言われています。」
「なるほどなぁ、だから初めは《足枷》ってなわけか。」
朔夜たちの説明に王城は納得したような態度をとった。
「そう、あの武器の真髄は《足枷》の頑丈さによる一撃ではなく、それを解放した際の速さにあります……あの武器こそが
闇を切り裂き、白く染める吹雪と謳われた
《シルヴァの神速脚》。」
「なっ………二段階解放の《形態変化》だと!?そんな力、見たことがないぞ!!」
突如足の装甲が外れ、白銀の鉄靴へと変化した俺の《シルヴァの神速脚》を見て幻騎士は驚愕した。
「だから言ったろ? 俺を舐めんなって。」
「………………。」
俺の言葉に幻騎士は黙り込み、暫くすると、
「面白い…だがその力を持ってしても《装鋼》でパワーアップした俺には遠く及ばない…忘れたか?俺にはまだ切り札があることに…」
すると幻騎士は霧を纏った凶悪な怨霊を彷彿させるリングを取り出した。
「……ヘルリングか。」
「思い知れ、これで貴様の勝利は無くなった。」
その瞬間、リングから炎が現れ幻騎士の体を包み込んだ。
「ぐっ……ウオァァァァァァァァァァ!!!!」
幻騎士の叫びとともに炎が膨張し、目の前に全身が骨へと変わっただけでなく、体格も巨大になり、凶暴な形相の幻騎士がそこにいた。
「ハァァァァァア、どうだ天峰 悠斗ォ!!これが俺の真の力だ!!ヌゥゥゥゥウ、力が何倍にも増大していく…………しかし何故だ、何故これほどの力を持つ俺が、こんな惨めな思いをしなければならないのダァァァァア!?」
「……っ!!」
変貌を遂げた幻騎士が突然叫びだした。
「未来の俺だって、己を絶望から救ってくれた白蘭に忠誠を誓っただけじゃないかァァァァ!!!何故それを蔑まれなければならない!?何故俺ほどの男が、裏切り者の烙印をおされなければならんのダァァァァ!?何故この俺がこんな目にあわなければならんのダァァァァ!?」
あたりに幻騎士の怨みのこもった叫びが響き渡った。
「なんだあいつ?急に様子がおかしくなったぞ?」
「おそらくあれは……ヘルリングによる能力強化によっておこる精神汚染でしょう。」
幻騎士の突然の変貌に対する王城の疑問に《洌游の對姫》(サイレント・ディーヴァ)ベアトリクス・エミール・イェウッドは答えた。
「ヘルリング……たしか死ぬ気の炎が発見される以前より存在した、6種類の「霧属性」最高ランクの呪いのリングでしたよね?。そのレア度は5ツ星。それぞれが別の呪いを宿しているとされ、使用者との契約により強大な力を享受するとされています…しかし、その力を得るための必要な契約…地獄との契約をしなくてはならず、その力を受けたものは代償としてリング自身に己の精神を食わせることとなるそうです。」
クロヴィスは自身の記憶からヘルリングの特性を説明しだした。
「使用者の中には理性を失い人格が変わってしまう者もいると言われていましたね。温厚だった人物が凶悪な独裁者になった裏にはこのリングが関係していたとされるなど、曰く付きのリングであるとされています。私も実際に見たのは初めてですが、おそらく幻騎士のあれはヘルリングに精神を食わせたことによって理性を失いつつあるのでしょう」
「ふはははは、残念じゃったな魔女殿、幻騎士がああなっったらもう天峰 悠斗に奴は倒せんよ。ただでさえ儂の《装鋼》で強化されていた幻騎士の炎がさらに何倍にも膨れ上がったのだからなぁ……」
《装鋼の技師(エクイプメント・スミス)》エドワード・ウォーカーは更に機嫌を良くし、朔夜へと話しかけた。
「果たして……そう上手くいくでしょうかね?」
しかし、それでも朔夜は余裕な表情で笑みを浮かべていた。彼女は確信していたのだ、あの程度の力に天峰 悠斗が、己の認めた男が敗北するとこはないと、