アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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26話 煉業

「…やっぱおぞましい力だな…そのヘルリングって…」

 

俺は目の前の空中に立ちはだかる狂気の騎士を見ながら《長槍》を構えた。ヘルリングは自身もかつてチョイスで見たことがある。あの時は自身の仲間の山本 武のボンゴレ匣《朝利雨月の変則四刀》と彼の《時雨蒼燕流》になす術もなく敗北した。しかし、今の幻騎士はその時よりも遥かに戦闘力が上がっているだけでなく一切の油断も存在していなかった。

 

「天峰 悠斗!!俺は今虫の居所が悪い!!ギッタギタにしてやるから覚悟しろ!!……それと、一つ良いことを教えてやろう!!お前が死んでも一人では死なさないから安心しろ!!!なぜなら、沢田 綱吉は勿論、ボンゴレファミリーの奴らも、この学園の生徒も、それからお前の惚れている女もみんなまとめて後を追わせてやるからなぁ!!!」

 

幻騎士は邪悪な笑みを浮かべながら俺の方を向いて笑い出した。

 

「そうかよ……じゃあ尚更負けてやれないな、もうそんなことが言えなくなるくらいにテメェをぶちのめしてやる。」

 

「ヌゥゥゥゥウ!!!!まだそんな事を言うだけの余裕があるのかァァァァ!!!!良いだろう!!ならば貴様に俺の恐ろしさを骨の髄まで叩き込んでやる!!《装鋼》とヘルリングの力でパワーアップした俺の剣戟を喰らうが良い!!!!」

 

俺の態度に怒りを覚えたのか、幻騎士は怒りを露わにして剣を振りかざした。

 

「俺の真の力を思い知れ、天峰 悠斗!!機巧・幻剣舞(ダンツァ・マキナ・スペットロスパダ)!!」

 

幻騎士が剣を振り下ろすと、炎に包まれた巨大な剣撃と《幻海牛》のミサイルが放たれた。剣撃は悠斗のいた場所へと直撃した。煙が晴れると悠斗の姿はなく、崩れた瓦礫しか見当たらなかった。

 

「しまったァ!!!天峰 悠斗の首を沢田 綱吉に見せつけてやろうと思ったのに……これでは肉片一つ残らないじゃあないか!!!……まぁ仕方が無いなァ、それだけ天峰 悠斗が弱かったということなんだからなァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、どこ向いてんだよ幻騎士。俺は其方にはいねーぞ。てゆーか、みやびが巻き込まれたらどーすんだよ」

 

その時、幻騎士が声に気づき、そこを振り向くと瓦礫から離れたところにみやびを抱き抱えている悠斗が立っていた。

 

「っ!!?な、ナニィィィイ!!天峰 悠斗ぉ!!貴様、何故そこにいる!!!いつの間に、どうやって躱わしたァァァァ!!!」

 

「べつに…普通に避けただけだよ…」

 

 

 

瞬間

 

 

 

「こんな風にな。」

 

「ぐゔっ!?」

 

悠斗が一瞬で幻騎士の目の前にあらわれ、渾身の一撃が幻騎士へと直撃した。

 

「貴様ぁぁぁぁ!!俺を舐めるなぁァァァァ!!」

 

幻騎士は怒りながら悠斗へと斬りかかるが、悠斗は再び消え、少し離れた場所に現れた。更に幻騎士は《幻海牛》のミサイルで悠斗を攻撃しようとするが、悠斗は凄まじい速さ手間その攻撃を全て躱してしまった。

 

「姿が消えて…いや違う、速いのか!!!俺が認識するよりも速く移動しているのカァァ!!!」

 

 

これが天峰 悠斗のボンゴレギアの武装その1、《シルヴァの神速脚》の能力、《超高速移動》である。

戦場において《誰も捉えることも、逃れることも出来ずに命を刈られる》と恐れられた初代雪の守護者シルヴァ、悠斗はこの《シルヴァの神速脚》を纏うことで超高速移動を実現させたのである。この能力はただ高速で移動するのではなく、雪の炎の風を生み出し風に乗ることも可能としているのである。

 

「どうした?今度は十倍に分裂でもしてみるか?」

 

「ヌゥゥゥゥッ!!この俺をコケにするな天峰 悠斗!!ならば俺の最強の一撃を貴様に見せてやる!!」

 

そう言うと《機巧・幻剣》の刀身に膨大な炎が込められた。

 

「この俺に刃向かった、その愚かさを悔いながら死ね天峰悠斗ぉ!!《断罪剣(コンヴィンツィオーネ・スパダ)》ァ!!!!」

 

瞬間、今まで見たことないほど巨大な斬撃が悠斗へと放たれた。

 

ドコォォォォォン

 

幻騎士の剣撃によって地面は抉れ、巨大なクレーターへと変貌していた。

 

「ハァ…ハァ…終わったな、如何に天峰 悠斗と言えど…この剣撃をくらって無事ているはずがない……俺の勝ちだ……」

 

幻騎士は確信した。天峰 悠斗を倒したと、己の絶技をくらって無事でいるはずがないと、自分は天峰 悠斗を倒したのだと……

 

 

 

 

 

「そういうセリフと吐くって時はなぁ!!!!大抵倒せてねえ時なんだよ幻騎士ぃ!!!よく覚えておきな!!!」

 

突如声がした方向へ幻騎士か振り返ると、天峰 悠斗は宙を浮いていた。《シルヴァの神速脚》は前述したとおり、冷気の竜巻を生み出し、それを纏い風に乗ることで超高速移動を可能とする。そして、その力によって空を駆けることも可能なのだ。

 

 

 

「ば…馬鹿なぁ!!あの一撃をいつの間に躱して…」

 

「確かに破壊力は凄かったが…大雑把過ぎんだよ、威力にこだわり過ぎたな」

 

凄まじい一撃だった…しかし当たらなければ意味がない、威力に頼り過ぎた為に幻騎士の一撃は俺の神速で見切ることが出来たのだ。

 

「止めだ幻騎士。」

 

俺は空を蹴り超高速で幻騎士へと向かっていった。

 

「真正面とは愚かな!!!そのまま貴様を斬り刻んで……っ!?か、体が動かん!!!何故だぁ!!?」

 

幻騎士が悠斗へ剣を構えようとしたその瞬間、幻騎士は己の体が動かなくなってきていることに気づいた。

幻騎士は己の体をよく見てみると

 

「っ!?しまったァァァァ!!!いつの間に俺の体に雪の炎ガァ!!体がどんどん凍っていく!!!」

 

何度かあった接触…その間に幻騎士の体に雪の炎を流し込む…そうすれば相手の体を氷漬けにする事も可能である。

 

「たしかに、ヘルリングは確かに巨大な力をお前に与えたよ…けどなぁ…お前の真骨頂はその剣の腕と相手の自分の有利な展開に引き込むところにあるだろ?だけど今のお前は怒りに身を任せてただ力任せに攻撃しているたけだ!!そんな攻撃じゃあ俺は倒せねぇ!!テメェはそのリングで自分の最大の強みを殺しちまったってことだ幻騎士!!!」

 

俺はそのまま幻騎士へと《長槍》を構えた。そして、

 

「くっ……くそぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!」

 

「狼王一閃!!!」

 

渾身の突きが幻騎士へと繰り出され幻騎士は地面へと落下した。

 

「よし、はやくみやびを安全な場所に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻騎士side

 

何故だ……何故俺はまた敗北した?

沢田 綱吉の時みたいに《眼》に惑わされることもなかった。

山本 武の時みたいに油断も慢心もなかったはずだ……なのに何故奴を倒せない……

何故俺が敗北する?

嫌だ……負けたくない……奴らに復讐を……

 

◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎…………

 

突如声がした。その方向を見てみると、

 

ヘルリング……

 

邪悪な力を秘めた呪いのリングが輝いていた。

 

……力を貸してくれるのか?

 

◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎…………

 

いいぞ、そのためなら…奴らを倒せるなら…俺は、人間を捨ててやる!!!!

 

side out

 

 

 

 

「ボンゴレ…ボンゴレェェェェッ!!!!」

 

「……っなんだ!?」

 

突如聞こえたこの世のものとは思えない「ナニカ」の叫びが聞こえ、その方角へ振り返ると、

 

「コロス…ボンゴレヲ…ナニモカモコロシテヤルゥゥゥ!!」

 

「幻騎士…なのか?」

 

そこにいたのは先ほどよりも更に巨大になり、禍々しい炎に包まれた幻騎士がいた。

 

「まさか…ヘルリングにその身を完全に食わせたのか!?そんな…そこまでして…人間を捨ててまで俺たちを倒したかったのか!?」

 

「シネェェェェッ!!!!」

 

幻騎士は俺へとなんの躊躇もなく攻撃を繰り出した。その一撃は先ほどとは桁違いの威力であり、それによって建物の一部が切り裂かれた。理性を完全に失った幻騎士はもはや殺戮マシーンと言ってもいいだろう。

 

「っ!?あれをまともに食らったらヤベェ…とにかく一旦距離を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ゆ…悠斗…くん…」

 

その時、そこへふらつきながらみやびが近づいてきた。戦闘の音を聞き、力を振り絞ってここまで来たのだろう

 

「っ!?みやび逃げろぉぉぉ!!!」

 

「コロォォォォスッ!!!!」

 

みやびの存在に気づいた幻騎士がみやびへと剣を振りかぶった。

 

ドガァァァァン!!!

 

幻騎士の剣撃によって地面は抉れた。

 

「ハァ…ハァ…大丈夫かみやび?……っ!!」

 

「ゆ、悠斗くん!傷が……」

 

幻騎士の剣撃は直撃こそしなかったが悠斗の体に深い傷を負わせており、そこから赤い血がみるみると流れてきた。

 

「ご……ごめんなさい悠斗くん!!私の…私のせいで…わ、私……やっぱり悠斗くんの足を引っ張ってばっかりで……」

 

みやびは後悔で目から涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みやび……泣くな、お前のせいじゃない。」

 

涙を流しながら謝るみやびの涙を指で拭いながら俺は優しく微笑みかけた。

 

「ゆ、悠斗くん…でも…私が…」

 

「ちげーよ、この怪我は俺の不甲斐なさが招いたことだ。みやびは何も悪くない。」

 

俺は優しくそう言いながら立ち上がると

 

「みやび、俺を信じてそこで待っていてくれ。必ず死ぬ気で勝つ。」

 

「え……っ!!や、やだよ!!!悠斗くん…死ぬなんて言わないでよ!!悠斗くんが死んじゃったら…私…」

 

「死なねえよ。」

 

眼に涙を溢れされながら止めようとするみやびに俺は優しく微笑みかけた。

 

「死ぬ気で勝つって言っても本当に死ぬつもりはねえよ…だって…死んだらまた一緒に特訓も、遊びにも行けねえだろ?だから死ぬ気で《生きる》って意味だ…必ず帰ってくる。だから…みやびも俺を信じて待っててくれ。」

 

俺はみやびの頭を撫で、再び微笑んだ。

 

「悠斗くん……うん…分かった。私、悠斗くんを待ってる。だから…死なないで」

 

「ははっ、意地でも帰ってくるよ」

 

俺はそう言うとこちらを睨みつけている幻騎士の方を向いた。そして、自身の《焔牙》を、《長槍》を見つめた。

 

 

(なぁ…お前が俺の《魂》だってんなら…俺に力を貸してくれ。あいつを倒すための、そして……俺の大切な人を守るための力を!!!)

 

その時、俺は己の中から力が溢れてくるのを感じた。

そして、天峰 悠斗はその力を解き放つ《力ある言葉》を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「天に吼えろ____《覇天狼(ウールヴへジン)》!!!」

 

すると、俺を白銀のオーラが包み込み、額から同色の炎が現れた。

 

「これが…俺の《焔牙》の真の《力》…」

 

いかなる時も倒れず、仲間のために死ぬ気で闘う。それこそが天峰悠斗の《長槍》に眠っていた真の《力》だった。

 

「コロス…オマエヲ…コロォォス!!!」

 

本能でそれが危険だと判断したのか幻騎士は剣を振りかぶって俺へと攻撃を仕掛けた。

しかし、俺はその剣撃を容易く躱して攻撃を繰り出した。

 

「ガァァァァァァァ!?」

 

幻騎士はその一撃に吹き飛ばされ、壁に衝突した。

幻騎士は立ち上がると、幻覚を使い姿を消し、悠斗へと剣撃を放った。しかし、

 

「そこだぁ!!!」

 

 

俺は幻騎士の居場所を容易く見つけ、《長槍》による突きをはなった。

 

悠斗の煉業《覇天狼(ウールヴへジン)》は自身の肉体のリミッターを解放し、戦闘力を強化する能力。そして、自身の野生本能を解放し、危険を察知し、敵の気配を察知することも可能とする。

言うなれば天峰 悠斗専用の《死ぬ気モード》である。

 

「コロシテヤル…ナニモカモコロシテヤルゥゥゥ!!!」

 

幻騎士は剣を振りかぶり、炎をその剣にチャージし始めた。この一撃で終わらせるつもりのようだ。

悠斗は《長槍》を構え、炎を先端に纏わせた。

 

「シネェェェェェェェェ!!!」

 

幻騎士の剣を振るって巨大な剣撃が俺に放たれた。しかし、逃げるものか。そこにはみやびが、俺の愛する少女がいるのだから

 

「天狼斬月!!!!」

 

《長槍》の斬撃が幻騎士の剣撃を斬り裂いた。

 

「うぉぉぉぉぉぉお!!!」

 

俺はそのまま幻騎士へと接近し懐へと入り込み、そして

 

 

「天狼一閃!!!!!」

 

 

俺の一撃が幻騎士へと繰り出され幻騎士は吹き飛ばされ、そしてその禍々しい体は崩壊し、人の姿へと戻った。

 

天翔ける狼が邪悪な騎士を討ち破った。

 

「勝った…俺の勝ちだァァァァ!!!」

 

俺はふらつきながらも勝鬨をあげた。

 

 

 

 

「天峰……悠斗……」

 

すると、幻騎士が俺へと話しかけた。

 

「何故……俺はお前たちに勝てない……俺は…どうすれば良かったのだ…」

 

よく見ると、幻騎士は泣いていたのだ、泣きながら俺へと問いかけていた。これが幻騎士の…裏切り者としての記憶によってファミリーでの居場所を失い苦しみ続けた彼の本心なのだろう。俺は幻騎士を見つめながらその問いに答えた。

 

「そんなの…決まってんだろ……仲間を頼れば良かったんだよ…1人で悩まないでさ…仲間に助けを求めれば良かったんだよ。」

 

「………そうか…それが…俺に…出来れば…」

 

そのまま幻騎士は意識を失った。

俺はみやびも元へと近づき、

 

「…勝ったぜ、みやび」

 

「うん…良かった…悠斗くんが無事で本当に良かった…」

 

「みやび…」

 

その時、遠くから赤い光と爆発する轟音が聞こえた。

 

「…みやび、ちょっとまた用事ができた。すぐ戻る。」

 

「え…で、でも悠斗くん傷が…」

 

「大丈夫だ、ぜってー戻る。それに、透流たちを助けに行かねーとさ。」

 

俺は優しくみやびの頭を撫で、幻騎士を縛っておくと透流の元へと向かっていった。

 

 

遂に最後の闘いが始まる。

 

 

 

 

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