アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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5章 新たなる物語の始まり
32話 みんなで遊園地


みやびとイノチェンティが友達になった次の日、俺は学校に行くことにした。

 

暑さと訓練という二重の厳しさの中で日々が過ぎて行く。

《神滅部隊(リベールス)》が壊滅したという話を学園側から伝えられたことで、学園内は随分と落ち着きを、同時に活気も取り戻してきていたのだが___俺たち一年だけは、どこか明るさが鳴りを潜めたままだ。

 

その理由は、月見がまだ戻ってきていないからだった。《殺破遊戯》の際、《K》との戦闘でかなりの重傷を負ったらしい。あれで結構なムードメーカーだったと、居なくなって初めてわかるとは、まさにこのことだ。

 

(あの傷じゃあ、当分は無理だろうな……)

 

月見には笹川あたりに頼んで晴の炎で傷を治してやるとは言ったが、断られてしまった。

そのため、今でも集中治療室に入っているんだろうかと、窓際に立ちつつぼんやりと考えていたその時___

 

 

背中に物理的な衝撃が走る。

 

「おわっっ⁉︎」

 

しかもかなりの勢いだったため、俺は無様に、振り向きざまに倒れ大の字となる。

 

(ったく、なんだよっ⁉︎)

 

答えは、窓の外にあった。

うさぎ耳のヘアバンドにメイド服という、見慣れた衣装のそいつはまぎれもなく___

 

「月見⁉︎」

 

「はろはろーん♪センセーがいなくて寂しかった人は手ーあげてー☆」

 

「おっ、白うさ先生だ!」

「久しぶりだね、白うさセンセー♪」

「パ、パンツが……」

 

片膝を立てたまま窓際に腰を下ろし、下着が丸見えというろくでもないポーズのままに、いつもとまったく変わらないノリで月見は室内に声を掛ける。

 

「ってなわけでたっだいまー♪うさセンセーの完全復活だよーっ、ぶいっ☆」

 

「何がぶいっだよ……」

 

呆れながら立ち上がり、俺は月見を指して怒る。

 

「帰ってくるなり人の背中を蹴るなっ‼︎危ないだろうが!それとパンツ見えてるから隠せよ‼︎」

 

「いやーん、天峰くんのえっち☆見えてるんじゃなくて、見・せ・て・る・の♡」

 

「何でだよ……」

 

「しばらく留守にしてたから、お土産に夜のおかずをだな……」

 

「見たくねえし真面目な顔で言うな」

 

こいつ全く変わってねぇ

 

「あ、そっかー♪天峰くんはもうおかずをくれる彼女がいるもんね〜♡」

 

「だからアホな事言うな!!」

 

公衆の面前で何言ってんだこいつ!?みやびが隣で真っ赤になってるじゃねーか!!

 

「相変わらずだな、あんたは……。だけど完全復活って言うけど、その眼帯と包帯は___ 」

 

「あ、これか?かっけーだろ。退院記念うさメイドコス中二病バージョンだ」

 

……心配して損した。

 

こうして、ようやく俺たち一年の教室にも明るさが戻ってくることとなった。

 

 

 

 

昼を過ぎ、食事をそろそろ終えようかといった頃___

 

「おし、出掛けんぞ、天峰!」

 

「は?」

 

突然現れて妙なことを言い出した月見に返し、聞き返す。

 

「は?じゃねーよ。アタシの快気祝いっーつーことで出掛けんだよ」

 

授業は午前中に終了し、午後は確かに暇だが___

 

「なんで俺がおまえと……」

 

今日はみやびをデートに誘う予定があるから断ろうとしたが、今日は月見とともにランチを摂っていたみやびは、苦笑いをしながら俺を見ていた。

 

「あはは……。なりゆきでDNL(デスニューランド)へ行こうって話になっちゃって……」

 

「DNL(デスニューランド)⁉︎」

 

行き先に食い付いたのは、黄金色の髪を持つ少女だ。

転入以来、月に一、二度は遊びに行っているというくらいだから、当然の反応と言えるかも知れない。

 

「くはははっ。話がはえーな、お嬢様」

 

「DNL(デスニューランド)と来たらあたしが参加しないわけないじゃない」

 

「そう言うわけだ、悪いな天峰、お前らも強制参加だ」

 

(…せっかくのデートが……)

 

 

 

1時間後___

 

結局、参加することとなった俺は、DNL(デスニューランド)の入場口前へと立っていた。

 

「さすがに人が結構居るわねぇ」

 

そう言いながら、周囲を見回すリーリス。そんな彼女を先頭に、月見、みやび、橘、梓、透流、ユリエの顔ぶれが続く。

 

「お前も無理やり連れてかれたのか悠斗…」

 

「透流…お前もか…」

 

げっそりとした顔で透流が話しかけて来た。

ちなみにトラたちも誘ったのだが、用事があるらしく断られてしまった。なので男子は俺と透流だけである。

 

「…どうせ遊園地に行くなら…みやびと2人きりで行きたかったな…」

 

「ま…まぁドンマイ」

 

落ち込む俺を見て透流は苦笑いを浮かべた。

 

(しかし、この顔ぶれは目立つだろ……)

 

と言うか目立ってる。しかももの凄く。

周囲からの注視はもちろんのこと、アイドルグループ___同じ制服を着ているからだろう___の撮影なのかと憶測する声まで聞こえてくる始末だ。

 

 

「な、なぁお前どの娘が良い?」

 

ふと、1つの男性集団の会話が聞こえた。

 

「俺はあの金髪の娘かな…」

 

「オレあの黒髪ロングの娘」

 

「銀髪のちっちゃい娘も良いしあのスレンダーな娘も…」

 

「俺はあの茶髪の娘、めっちゃ可愛いしスタイル最高じゃん」

 

 

 

……ギロッ!!

 

「……っ!?な…なんだ…いま殺気が…」

 

俺は思わずその集団に殺気を放ってしまった…正確にはみやびを邪な目で見た男に

 

「くはっ…流石彼氏だな《天狼》」

 

隣で月見が面白そうに笑ってた。

 

 

 

 

 

「さあ、時間も勿体無いしどんどん行くわよ。まずは基本を押さえた上で、各々行きたいところを挙げて順に回りましょ。一通り回り終わったら、そのときはみんなで行き先を話し合いってことでいいわね」

 

パーク内に入ると、リーリスがこれから回るアトラクションについて提案する。基本として回ることになったのは三つのジェットコースターで、後はそれぞれが希望をリーリスに伝えていく。

 

「えーっと、まずライトニングストライクに行って、次はクレイジーパーティー、その次にルーピング___ううん、てきどに落ち着いたものも必要だから先に……」

 

アトラクション名を呟きながら事細かく、コースを考えるリーリス。

 

「___どうしたのだ、天峰?早く行くぞ」

 

「あ、悪いな。ぼーっとしてた。ははは」

 

ぼーっとしてた俺は先を歩くみんなの背を追い掛けるように足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

「フフフ…やっとパーク内に入ったか…」

 

とある一室で黒い影がモニターに映る悠斗たちを見ていた。

 

「《装鋼の技師》の奴が裏で何がしていたからハッキングして見てみれば…《超えし者(イクシード)》か……中々面白いじゃないか…特に…九重 透流、ユリエ・シグトゥーナ、リーリス・ブリストル、そして…天峰 悠斗…」

 

悠斗に目をやり小さな影は少し睨みつける。

 

「前から面白いとは思っていた奴だが…ますます興味が湧いた…この期に研究してみるか…」

 

影の笑いと共に首の《おしゃぶり》がキラリと光った。

 

 

 

 

 

 

「回れ回れ___っ!くぁーっはっは___っ‼︎回れ回れ、花びら大レヴォルューショーン‼︎」

 

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる_____っ‼︎

 

「きゃぁあああああああああ_____っ‼︎」

 

「回し過ぎだ、回しすぎだってっ‼︎人の話を聞け、このバカうさぎ___っ‼︎」

 

現在俺たちが乗っているのはティーカップ、向こうでは月見がはしゃぎユリエ、橘、梓、透流、リーリスが巻き込まれていた。

 

「…向こうは激しそうだな…」

 

「う…うん」

 

それを見ながら俺とみやびは苦笑いをうかべていると

 

 

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる_____っ‼︎

 

 

「え…?うぉぉぉぉぉぉ!?」

 

「ひゃぁあああああああああ_____っ‼︎」

 

突然俺たちのカップも高速回転しだした。

 

「どうなってんだーーーー!?」

 

 

 

 

僅か1分半。長いようで短い悪夢の時間が終わった。

 

「ゆ、悠斗、くん……世界が、ぐにゃぐにゃ……」

 

三半規管へのダメージで、俺とみやびは立つことすら出来ずにカップ内でぐったり。けれど月見は___

 

「くはっ、最高だなぁ♪」

 

ご機嫌だった……。

 

「さて、と……俺たちも降りるか、みやび……」

 

「う、うん……そう、だね……」

 

ふらつきながら俺はみやびに先だって立ち上がったのだが___

 

「うわっ‼︎」

 

カップを降りた瞬間、かくんと膝が折れる。

 

「ゆ、悠斗くん、危ないっ……!」

 

ぐらりと俺の視界が傾いたとき、みやびが俺の手を掴む。

___が、みやびの膝も、かくんと折れた。

 

「ひゃあっ⁉︎」

 

それでも手を放さなかったみやびは、大きくバランスを崩す。咄嗟にみやびの手を引き、彼女を胸の内に抱えた次の瞬間___俺たちはもつれ合って転んでしまった。

 

ゴンッ……!鈍い音がして、後頭部に痛みが走る。

 

「ってぇ……」

 

「だ、大丈夫、悠斗くん⁉︎」

 

「あ、ああ……。それよりみやびは大丈夫か?」

 

「う、うん。悠斗くんのおかげで何ともないかなって___ 」

 

と突然、みやびの言葉が途切れた。

 

「みやび?」

 

どうかしたのかと名を呼びながらに目を開けると、鼻先が当たりそうなくらいの距離に、みやびの顔があった。

 

「「……………………。」」

 

「「________________!!」」

 

 

ぴょんっという効果音がしそうな勢いで二人同時に飛び起きると、俺たちは背中合わせに正座する。

 

「ご、ごめんな、巻き込んで……!」

 

「う、ううん。わたしが手を放さなかっただけだから……」

 

「「………………/////」」

 

「えっと……い、行くか」

 

「そ、そうだね……」

 

みやびを促して立ち上がると、足のふらつきは収まっていた。外へ出ると、既にリーリスたちのグループが俺たちを待っていた。

 

(それにしてもあの高速回転……なんか意図的だったような…)

 

俺は何が嫌な予感がした。

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