派手な音を立てて40メートル先に設置された的が揺れる
「よっしゃこれで20連続目」
「すごいね悠斗くん、また真ん中だよ」
今日の三時限目から射撃訓練が行われていた。卒業後に所属する護陵衛士(エトナルク)の任務では多種多様に亘ため、その様な状況を想定し、射撃訓練も行っていた。
「あら、悠斗もやるじゃない。まぁ私の方がうまいけど」
俺に顔を向けながら____つまりは余所見をしながらもリーリスは最も遠い50メートル先の的へ命中させた。
「俺は元々槍が専門なんだよ、銃が本業の人と比べるつまりは無いって」
「まぁそれでも悠斗があそこまで銃の腕を持ってたのは驚いたけど」
リーリスは俺に少し関心していた。
まぁ俺は並森にいた頃、コロネロやラルと言った銃の達人に教わったこともあるのでそのためである。
「よし、じゃあみやびも練習してみるか」
「う…うん」
みやびはハンドガンを20メートル先に構えると少しビクビクしていた。そこで
「…ふぇ?」
「大丈夫だよみやび」
俺は銃を構えたみやびの腕を支えるように手を回し、背中に体を密着させた。
「手をまっすぐにして標準を的に合わせるんだ…そして引き金をゆっくり引けば…」
「う…うん/////」
俺の指示どうりにみやびは引き金をゆっくり引き
ダァンッ
放たれた銃弾は的の真ん中に当たった。
「よく出来たなみやび」
「う…うん…悠斗くん…あの…そろそろ離してくれないと…恥ずかしい…」
よくみるとみやびは顔を真っ赤にし俺は自分が何をしているのか改めて気づいた。
「………っすまん/////」
慌てて俺はみやびを話 離して互いに顔が真っ赤になった。
射撃訓練の後半___四時限目が始まり、三十分ほどが過ぎた頃だった。
「ほーるどあーっぷ♡手を上げてせんせーのゆーことを聞くよーに♪」
「はーいせんせー」
手を止めてじゃないのかよと思ったが、一人吉備津(きびつ)が手を上げていた。
「さてさて、上手い子は結構当たるよーになってきたみたいだけど、ここからは訓練のないよーをへんこーしまーす☆ってなわけで、せんせーについてきてねー♡」
そう言うなり、月見の後をついていくと___到着した先は、屋外格技場だった。その闘場の中央には、直径五メートルほどの土俵のようなものが二つあった。
すると、月見が振り返って両手を広げた。
「はーい、これからここで十分間、ちょっとしたゲームをしまーす♪ってなわけで天峰くんと九重くん。キミたち___的•ね•♡」
「「 は? 」」
「だからー、二人はこれから闘技場の中で逃げ回るの☆みんなは二人を狙ってパンパンパーンって撃つの☆理解おっけー?」
指で銃を形作り、俺たちを撃つようなポーズを取る月見。
「なるほど、そういうことか。……………ってちょっと待てーーーっ⁉︎」
「待ったないよーん♪動く的を狙った方が技術も上がるしね☆」
「……だそうだ、諦めるしかないな、透流」
そしてその後、クラスのみんなが「それはちょっと……」と言い出したのだが、月見がリーリスに自分に撃つように頼み、その月見に放たれた弾を素手で掴んだことから、クラスのみんなを納得させていた。
「それとそれとー、天峰くんと九重くんにとっても防御の特訓になるから、一石二鳥の特訓なの☆つまり、うぃんうぃんの関係ってやつ♪」
「なるほどなぁ、それだったら……」「そうね。ちょっと痛い程度なら……」
実演も含めた月見の説明が終わると、クラスの雰囲気が変わり始めた。怪我を負わせないという言葉が、背中を押す大きな理由となったみたいだ。
「____っ!?ちょっ、み、みんな!?」
慌てる透流の言葉を遮るように月見が次の一手を放つ
「最初に天峰くんと九重くんのどちらかに当てた先着2人には、超一流として名高いあの帝王ホテルのレストランにペアでごしょーたーい♪」
「「「____っ!!」」」
その一言に半数近くの雰囲気が瞬時に変わり、一斉に視線が俺へと向けられる。……みやびの視線も交じっていた。
「レストランはパスって人は、特別ボーナスを来月の支給費に加算してもいいからねー♡」
残ったほとんどの視線も俺たちへ向けられた。
「ふふっ、勝負事なら最初から負けるつもりは無いけど、透流とデートって副賞付きならやる気が倍増ね」
「ボーナス……!」
「泉を誘って帝王ホテルのレストラン……!」
「天峰と九重もげろ同盟、ファイト‼︎」
「おーっ‼︎」
「悠斗くんとデート悠斗くんとデート悠斗くんとデート……‼︎」
「みやび、あたしたちも協力するわ‼︎」
「せんせーと食事‼︎」
様々な恐ろしいまでの欲望が闘技場に渦巻く。
「月見先生、いくら何でも2人が___ 」
「まあまあ、委員長。ちょいとこれを聞けよ」
「は?何を聞けと……?」
月見は橘の肩に手を回して引き寄せる。何かケータイを見せているが…
「九重、覚悟したまえ……!」
なぜか知らんが橘が急にやる気を出した。
制限時間は10分だが、各人弾数は四十発なので、全員が撃ちきったらそこで終了。射撃側は闘場へ踏み入ることを禁じ、観客席から撃つこと。たださは同士討ちによる負傷を避けるため、闘場の中心から百二十度幅の観客席しか使用不可。
一方、俺たちはというと一発でも直撃したらアウト。ただし擦かするのはセーフ。だが、最も重要なことは、三分間なら俺の《覇天狼(ウールヴヘジン)》も使用許可が出た。透流は《楯》の___三回までなら《絶刃圏(イージスディザイアー)》も使用可能。
「《覇天狼(ウールヴヘジン)》も使っていいのか……」
多方向からの同時攻撃を回避する訓練なんて普通はやれるものじゃない。まぁリボーンのスパルタなら無いことはないが…
(そうだな…全弾回避目指してみるか…)
そして改めて残りのルールを確認する。
俺たちの動ける範囲は、闘場に作られた直径五メートルの円内のみだ。一歩でも円の外へ出たら、その時点で弾が残っているやつからくじ引きでレストランの権利、もしくはボーナスが行く仕組みに。ただし、その場合は俺たちへの支給額から差し引かれるそうだ。そして、一発も食らわなかった場合は、その権利は俺たちのものもなるらしい。
(透流との円の距離は約十メートルってところか……。これなら、こちらにも、あちらの邪魔にはならないだろう)
と、ここで月見が全体に声を掛け、そろそろ開始をする旨を伝えた。透流は《楯》を具現化し、腰を落とした。俺も《長槍》を具現化し両手で構えた。
「ではではー。れでぃー……ごぉっ♪」
「もげろ天峰ー‼︎九重だー‼︎」
「俺たちの癒し、みやびちゃんを手に入れやがってー!!」
「ごめんね、悠斗くーん‼︎」
「帝王ホテルーっ‼︎」
「せんせー‼︎」
月見の合図とともに引き金が一斉に引かれ、それとタイミングを同じくして透流は横へ大きく飛ぶ。一方俺はその場所で見切り続けた。
(なるほど…これは…確かに練習になる…)
何度も回避を続けるがなかなかいい練習になった。
しかし、周りも連携が取れてきたのかどんどん精度が上がっていきそろそろまずくなった。
「天に吼えろ____《覇天狼(ウールヴヘジン)》!!」
身体能力の上がった俺はそのまま高速移動をして弾丸を回避し驚きの声があがる。
俺の得た能力については《Ⅳ(レベル4)》に昇華したと伝えた際に話をしてあったが、いざ実際に目の当たりにするとやはり驚きを隠せないようだ。
「ははっ、まだまだだなぁ___って、おい!透流!上だ、上‼︎」
透流の真上には上空から降下してくるユリエがいた。
「ぶっ⁉︎ユリエ⁉︎」
このままでは、闘場の硬い砂に叩きつけられる形となってしまう。
「危ない……!」
数歩前に進み出てユリエを抱き止める透流。
「大丈夫か、ユリエ⁉︎」
「ヤー。トールのおかげで何事も無く」
こくりと頷くユリエに、透流は一安心する。
「ありがとうございます、トール。……そして申し訳ありません」
「は?どういうことだ?」
と問い質すと、ユリエの手の中に持っていた何かで、とん、と透流の胸を軽く叩くことで答えを示した。
「おいおい、まじか……」
「え……?」
「当たりました」
「…………」
小さな手に握られていたのは、模擬弾だった。
「えぇええええええーーーーーっ⁉︎」
「はーい、しゅーりょー☆九重くんの負け負け負けー♪」
「ま、待ってくれ、これって有りなのか⁉︎」
確かにルール上、射撃側は闘場へ踏み入ることは禁止だが、今のユリエは透流に抱えられているから足が付いているわけじゃないが___
「有効!時間も終了三秒前でギリセーフ!」
どうやらアリだったようだ。ちなみに俺はなんとか逃げ切り帝王ホテルのレストランの権利を勝ち取った。
(やったやった♪みやびとレストランでディナー♪)
狙いのものをゲットし大喜びの俺であった。