アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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42話 剛なる天狼

「いくぞっ!!」

 

俺は《長槍》を振り回し、そのまま間合いを詰めると

 

「天狼斬月!!」

 

気合い一閃、《獣魔(ヴィルゾア)》を名乗る化け物に放つ。

 

ガギィンッ‼︎

 

「無駄だ馬鹿」

 

しかし、《獣魔(ヴィルゾア)》はその一撃を容易くガードし、金属同士がぶつかり合うような音が響く。

 

「それなら……これでどうだ!?」

 

俺は《長槍》をそのまま腕に叩きつけ、その勢いで上に飛ぶと

 

「オラァッ!!」

 

今度は《獣魔(ヴィルゾア)》の頭に《長槍》を叩きつけた。

 

「ぐっ……」

 

これは少し効いたのか《獣魔》は少し下がった。

 

「てめぇ……痛えじゃねえかよ」

 

《獣魔》は怒りを露わにしながらこちらを睨みつけた。

 

「今度はこっちのターンだ!!」

 

《獣魔》は叫びながらこちらに迫ってきた。

 

「くらいなぁ……《死爪(デスクロー)》!!」

 

《獣魔》は腕を思いっきり捻り鉤爪で斬りかかってきた。俺はとっさに回避すると、先ほど俺のいた場所の壁に巨大な爪痕が出来た。

 

「おいおい、なんつー威力だよ」

 

アリクイはアリを捕まえるために岩みたいに硬い蟻塚を爪で砕くと言うが《獣魔》の一撃は蟻塚どころかホテルのコンクリートをいとも容易く粉々にした。

 

「よく避けたなぁ……でも……これならどうダァ!!」

 

《獣魔》はこちらに向かってくると、今度は両腕の鉤爪で何度も斬りかかってきた。

 

「くそっ……思ったよりリーチが長いな……」

 

長い腕と鋭い鉤爪での連続斬りは思いのほか速く更に言えばコンクリートを容易く破壊する一撃、掠っただけでもおそらく危ないだろう

 

「だったら……」

 

俺は一度止まり、《獣魔》の連続斬りを迎え撃ち…

 

「これでどうだ!!」

 

俺は《長槍》を真下から真上に振るい、《獣魔(ヴィルゾア)》の両腕を弾き、《獣魔》の懐に入った。

 

「なんだと…っ!!」

 

「喰らいやがれ!!」

 

奴の腕はリーチが長い分至近距離に入られると攻撃しづらい、これだけ詰めればもう爪は封じたも同然……

 

「なぁんちゃって♪」

 

「________っ!!」

 

直後、俺の《覇天狼(ウールヴヘジン)》の能力、危険察知が何かを予知したので俺はすぐさま後ろにバックすると

 

「死牙(デスタスク)!!」

 

《獣魔(ヴィルゾア)》が体を使って牙を叩きつけてきた。

 

「……いけね、そうだった」

 

そうだった、こいつは複数の力を持つ《獣魔(ヴィルゾア)》、食蟻獣(アントイーター)の腕力だけじゃ無いんだった。当然、海象(ウォールラス)のパワーと長く強靭な牙も使える。

 

「……思った以上に厄介な組み合わせだな」

 

距離を離せばリーチの長い《食蟻獣(アントイーター)》の鉤爪攻撃が、しかし間合いを詰めると今度は海象(ウォールラス)の牙がこちらに襲いかかる。

 

「どうだ!!俺にはどこにも死角が無い!!どうすることも出来ねえだろ!!」

 

《獣魔》は声高らかに勝ち誇った。

だがそれは間違いだ…

 

「いや……死角ならあるぜ」

 

一箇所、奴の死角がある、それは……

 

「ここだろ?」

 

「____ってめえ!?」

 

俺は最高速度で《獣魔》の背中に回り込んだ。

そう、奴の弱点は背中____ここなら食蟻獣(アントイーター)の爪も海象(ウォールラス)の牙も届かない

 

「く……クソォォォォォォッ!!」

 

「天狼一閃っ!!」

 

俺の渾身の天狼一閃が炸裂し《獣魔》は吹き飛び、壁に激突した。

 

「自分の力を過信しすぎてたな…それがお前の敗因だ」

 

だが流石に強かったさっきの一撃もまともな食らったら一撃でやられてたかもしれない…

 

「さて……俺は透流たちの方に行かないと……」

 

上にいたもう一匹の《獣魔》、俺の勘では奴はサイ____犀(ライノセラス)とヤマアラシ____豪猪(ポーキュパイン)の《獣魔(ヴィルゾア)》だろう……奴がこいつと同じ強さなら透流たちでもかなり苦戦する……俺はそう思いながら上を目指そうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死突進(デストレイラー)」

 

「っ!?」

 

突然の危険察知に俺はすぐさま回避すると、先ほどの《獣魔》が体当たりを繰り出してきた。幸いとっさに回避したためかわすことが出来た。

 

「どうなってる……お前は確かに……」

 

「バァァァカ、あんなヘボ攻撃効くわけねえだろ?演技だよ演技」

 

そう言って嘲笑う《獣魔》の姿は先ほどと異なっていた。

奴の背中、頭部、腕にはまるで刃物のように鋭い鱗が並び長い尾が出ていた。

 

「知ってるか?切り札ってのは最後までとっておくもんなんだぜ?」

 

その瞬間、俺はようやく理解した。

 

「そうか……複数の《力》……お前の《力》は2つじゃなくて……」

 

「大正解!!俺の持つ《力》は3つ、海象(ウォールラス)と食蟻獣(アントイーター)……そして穿山甲(パンゴリン)の《力》を持つ《獣魔》……それが俺って訳だ!!」

 

なるほど、納得がいった。それなら背中に攻撃しても意味はない、あの鋭く硬い鱗にガードされてしまうからだ。

 

「いったよなぁ……「俺に死角はない」って……人の話はちゃんと聞いた方がいいって親に教わんなかったか?」

 

「……たしかに……教わったっけな」

 

我ながら迂闊だった…複数、って単語を聞いてたのに2つ目で考えを終わりにしてしまった…3つめを考える必要があったって訳だ。

 

「そんじゃあ行くぜえ…死突進(デストレイラー)!!」

 

再び《獣魔》は鱗を逆立てて体当たりを繰り出してきた。俺は《長槍》でガードするも力負けしそのまま吹き飛んだ。

 

「ぐっ……」

 

俺の体には気づくといくつも切り傷があった。

 

「穿山甲の鱗は鋭くて武器にもなるって聞いてたけど…まさかここまでとはな…」

 

「俺の体当たりは喰らえばただ骨が砕けるだけじゃねえ!!この鱗で斬り刻まれてズタズタに引き裂かれるのさ!!俺が倒した《超えし者(イクシード)》共もみんなこの技で殺してやったよ!!ひゃはははは!!」

 

《獣魔》は自身の《力》を自慢しながらゲラゲラと笑った。

 

「さっきからほんとに気に食わねぇ…子供達を攫って売り物にして……人を殺したことをそんなに笑いながら自慢できるてめえらがな……」

 

ほんとに気に食わん、こんなクズ野郎が平気な顔でいる《666(ザ・ビースト)》がな…

 

「はぁ?ガキ……あぁ、麗奴(レイド)共のことかぁ……ひゃははは…あの《獣(ゾア)》の下っ端といいてめえといい、頭ん中お花畑な奴ばっかだなぁ!!」

 

俺を言葉を聞いて《獣魔》は更に笑いだした。

 

「所詮この世は弱肉強食なんだよバァァァカ!!強い奴が勝ち組になって弱い奴は食われる!!そんでもって強い奴は弱い奴をどんな風に扱ったって許されるんだよぉひゃはははははははっ!!」

 

ゲラゲラと醜い笑い声が俺の耳に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさい」

 

俺は我慢の限界だった。

 

「一個今決めた……ムカついた!!だからお前をぶっ潰す!!」

 

久しぶりに見るクズ野郎だった。笑い声は俺を不快にした。力のない者を平気で食い物にするこいつみたいなやつを…俺は絶対に許さない。

 

「お前は確実にぶっ倒すよ……全力でな」

 

榊に負けてから俺は決めた。これから先出会うであろう格上の強者に負けないだけの強さを手に入れ、大切な仲間を守れるようになると、こんな平気で人を虐げる奴から命を守れる強さを手に入れると

 

「一個だけ…あんたの言う通りだよ…切り札は最後までとっとくもんだ」

 

まさかこんなに早くお披露目になるなんてな…ほんとは榊にリベンジするまでは使うつもりは無かったが…

 

「見せてやるよ……俺の《剛の力》を」

 

俺は覚悟を決め、《力在る言葉》を発した。

 

 

 

 

「天に吼えろ____《剛天狼(シグムント)》!!」

 

すると、俺の全身が高密度のエネルギーに包まれた。その姿は《覇天狼(ウールヴヘジン)》に酷似しているが額から白い炎は噴出していなかった。

 

「てめえ…なんだその姿は」

 

「決まっている。俺の大切な人たちを護る《力》だ!」

 

強く床を蹴り、飛び出す。電光石火のごとく一瞬で《獣魔》の懐に潜り込み、神速のような速さで《長槍》の突きを叩き込む。

 

「無駄だ!!俺の鱗にてめえの攻撃なんざ効かねえ!!」

 

《獣魔》は腕をクロスして俺の突きをガードするが

 

バキィンッ

 

俺の一撃はガードを容易く弾き《獣魔》の体に叩き込まれた。

 

「ガァァァァァァァっ!?お、お前…なんだこのデタラメな力はっ!?」

 

《獣魔》は突然の一撃に動揺を隠せなかった。

 

《剛天狼(シグムント)》は俺が開発した《覇天狼(ウールヴヘジン)》の応用技である。調べていくうちにわかったことだが《覇天狼(ウールヴヘジン)》は身体能力と死ぬ気の炎をそれぞれ5:5の割合で強化している。そこで編み出したのがこの《剛天狼(シグムント)》、5:5の割合の強化を身体能力10の割合で強化することで《覇天狼(ウールヴヘジン)》以上の身体能力強化を可能としたのだ。その代わり死ぬ気の炎を使えなくなるがこの手の頑丈さを武器にする相手にはむしろこちらの方がいいだろう。

 

「このぉ……俺様を……舐めるなぁ!!喰らいやがれ、死突進(デストレイラー)ァァァァ!!」

 

《獣魔》は叫びながら全身の鱗を逆立てて体当たりを繰り出した。

 

「それともう1つ……お前は強者でもなんでもない……」

 

俺は飛び上がりながら《長槍》を振り上げ

 

「天技・一刀狼断(てんぎ・いっとうろうだん)」

 

《獣魔》へと叩きつけた。

 

「ぐふっ……」

 

《獣魔》はそのまま意識を失い倒れ、起き上がらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「お前は強者でもなんでもない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただのクソヤローだ」

 

 




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